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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 【2022年度版】教員向けの働き方改革とは?新たに発表された事項と対応方法を解説

2023.01.06
学校運営・総合
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中学・高校向け

教員の働き方改革は、2022年度にも新たな留意事項が追加されるなど継続した改革が進んでいます。記事では現時点における教員の働き方改革のポイントと、具体的な対応方法について解説します。

2022年度になっても教員の働き方改革は進んでいない?

2016年に「働き方改革」が提唱されて以来、さまざまな業界・職種で労働環境の見直しが実施されています。その流れは教育現場も同様で、教員の働き方を根本的に改善して従来の環境から脱するための動きが各地で行われています。しかし、改革が広まっている一方で、教員の働き方改革は、2022年度になっても進んでいないと評されます。以下では、教員の働き方改革における現状について解説します。

過労死ラインを上回る時間外労働が今も続いている

2022年に、全国の教職員約10,000名に対して実施された「2022年 学校の働き方改革に関する意識調査」(日本教職員組合実施)によると、教員の週あたりの平均労働時間は「62時間28分(学校内56時間15分、自宅6時間23分)」となっています。

本来週の勤務時間は38時間45分に収まるはずであるため、これはその数値を24時間弱超過していることになります。月に換算すると95時間32分の時間外労働を行っている計算になり、過労死ラインである80時間を大きく超えています。

もちろん学校によって実態は異なりますが、教員にとって現在の労働環境は、過労死と隣り合わせという危機的な状況にあるケースが多いのです。そのため教員の働き方改革は、今後さらに根本的な部分にまで踏み込んで実施する必要があると言えるでしょう。

教員の労働時間には明確な指標が示されている

政府は2019年に「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を策定し、教員の労働時間に明確な指標を打ち出しています。具体的には教員の時間外勤務の目安は、1か月で45時間、1年間で360時間以内とされているのです。

こういった指標が示されているにも関わらず、上記で紹介したように教員の労働時間は現在も減少に向かっていません。そのため教育現場において、働き方改革はまだまだ浸透していないと判断されるでしょう。

教員の働き方改革が必要とされている3つの背景

教員の働き方が必要とされている背景には、さまざまな理由があります。以下では、教員のために働き方改革を導入すべき理由について解説します。

労働時間の超過による心身への悪影響

先に紹介したデータのように、教員の労働時間は過労死ラインを超えているケースが多いです。休みが取れない状態が続けば心身に悪影響を及ぼし、休職や退職につながるリスクがあります。教員が休職や退職に追い込まれることで、生徒の学習に支障が出る可能性も懸念されるでしょう。

文部科学省の「令和2年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」によると、令和2年度における教員の「精神疾患による病気休職者数」は5,180人となっています。過去最高を記録した令和元年度の5,478人よりは減少していますが、いまだにその数は無視できません。

教員の心身のケアを行うためにも、働き方改革による労働スタイルの変更は必須と考えられます。

円滑な授業が行えなくなる可能性がある

労働時間の超過や業務内容の多様化によって、個々の教員にかかる負担と責任は重くなっています。業務におけるプレッシャーによって心身が疲弊すると、普段の授業が円滑に行えなくなり、生徒の学習に影響する可能性も考えられます。

また、労働環境が劣悪だとモチベーションも上がらず、教員としてのスキルアップに割く時間も作れないことも課題です。教員が自主的に働きたいと思えるような職場環境の構築のためにも、働き方改革の進展が望まれています。

人財の新規獲得が進まない

教員が過酷な労働環境で働いているという事実は、世間にも周知のものとなっています。そのため新規で教員を目指す人が減り、人財の確保が難しくなっているのも課題です。転職などで自主的にキャリアアップすることが珍しくなくなっている現代において、労働環境が悪いという事実は人財離れを加速させる可能性があります。

団塊世代の教員が定年退職していることも重なって、近年は教員の人財不足が深刻化しています。新しい教員を獲得するためにも、働き方改革を実践して働きたいと思える環境作りが必要です。

文部科学省が2022年に発表した働き方改革の留意事項

令和4年1月には文部科学省から、「令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果等に係る留意事項について(通知)」が発表されました。

資料内には「学校及び教師が担う業務の役割分担・適正化について」という項目があり、平成31年事務次官通知でも触れられていた以下3つの業務に関わる取組みを更に促進するようにとの記載があります。

これまで学校・教師が担ってきた役割

上記のように業務内容が区分けされていますが、通知内では、「(令和3年度に実施した)調査結果においては、①~③いずれの業務に係る取組も、一層実施を促進する必要があるものが多い状況であり、学校や地域の実情を踏まえつつ、積極的に取組を進めること」となっています。

今後はそれぞれの業務を①~③に仕分けた上で、教師以外の職業や外部の人財へと積極的に業務を移行していくように方針が示されています。

教員の働き方改革を進める方法

文部科学省の発表した2022年の働き方改革の方針を把握した上で、今後は以下のような改革に積極的に取り組む必要があると考えられます。

教員業務支援員を積極的に導入する

教員業務支援員を積極的に導入して、業務を外部に委託することも働き方改革の1つです。例えば部活動を専門の指導者に任せたり、学習塾に補習を依頼したりといったことが検討されます。

信頼できる外部人財の確保や、安全に生徒を預けられるシステムの構築などが、教員業務支援員の導入におけるポイントになるでしょう。

ICTの活用による校務の効率化

ICT技術を使った校務の効率化は、教員の働き方改革における基本と言えます。現に、先述の通知内には「ICTを活用した校務効率化について」も取り上げられています。GIGAスクール構想が進展したことにより、ICT活用は一定の進捗が見られるものの、校務効率化により積極的に取り組むことで、先生方の負担軽減を図るようにと明示されています。

従来の業務のデジタル化や便利なツールを活用できる環境を整備することで、労働時間を短縮して教員の負担を軽減可能です。例えば採点業務の自動化や、オンライン環境を使った外部との連携などが、ICTによって実現できます。

既存校務の根本的な働き方改革を行う

そもそも教員の仕事内容には、過去の習慣がそのまま継続しているものも多いです。現代においては不要な業務も多々あるため、根本的な見直しを図ることで全体の業務量を削減できる可能性があります。

学校ごとに根付いている無駄な業務を洗い出し、ICTへの置き換えや削減などの対応を取ることも働き方改革の一環です。

2022年の教員向け働き方改革の事例

2022年現在、教員向けの働き方改革の事例を紹介する資料として「改訂版 全国の学校における働き方改革事例集」が公開されています。以下では、その中から注目すべき事例を紹介します。

千葉県千葉市立加曽利中学校の事例

千葉県千葉市立加曽利中学校は、教員業務支援員を活用して教員の業務負担軽減を実現した事例として紹介されています。学習に使用する課題の印刷作業や、郵便物の仕分けなどを担当してくれる人財を外部から導入することで、教員が細かな業務に時間を取られることがなくなりました。

雑務によって奪われていた時間を有効活用できるようになったため、従来は時間外で行われていた授業の準備などに時間を割けるようになっています。結果的に教員業務支援員の活用が、教員の労働時間短縮にもつながると期待されているのです。

福岡県久留米市立篠山小学校の事例

福岡県久留米市立篠山小学校は、「Google Workspace for Education」を活用して、職員室にいる教員と教室にいる教員のスムーズな情報共有を実現した事例として紹介されています。全教員に必要な情報を簡単に伝達できることから、業務効率化につながっている点が特徴です。

その他、「Google スプレッドシート」や「Google カレンダー」を活用して、今後の予定や学校行事に関する情報もデジタルによる共有を可能としています。伝達事項は教員が持つそれぞれの端末からいつでも確認できる他、職員室にあるモニターでも把握できるようにしているため、重要な情報を見逃すリスクを最小限に抑えることが可能です。

教員の働き方改革におすすめソリューション“産官学マッチングサポート”

教員の働き方改革を推進していくには、さまざまなサービス・ソリューションの導入が検討されます。ここでは冒頭の文部科学省が出していた区分けの中でも、「③教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」に焦点を当てて、サービスを1つご紹介します。

教員の業務負担の一つとして、「キャリア教育」に関する課題があります。学校では積極的なキャリア教育が求められていますが、OBOGや保護者頼みとなっている実態があります。講演や訪問を行ったり、企業訪問を行うために、先生方が地元企業に1件1件電話を掛けたりといった対応を行っている事が多いのです。

そこで、JTBでは「産官学マッチングサポート」というサービスによって、学校と民間企業・教育機関・研究機関・政府・地方公共団体などとの連携を支援しています。学校が希望する地域でベストな訪問先企業を選定するだけでなく、各企業への受入依頼やアポイント調整まで一貫して承っているのが特徴です。

このサービスでは、学校のニーズだけではなく、受け入れ側の企業側のニーズもヒアリングを行う事で、双方にとってベストなマッチングを行っています。この事により、単に先生方の業務負担を軽減するだけではなく、生徒の学びも深まり、教育の質が上がっていく事にも繋がります。


まとめ

上記で解説した通り、教員の働き方改革はこれから更に本格化すると予想されています。今後も学校毎の現状を把握し、業務の仕分けをしながら、現在の課題や導入が検討されるサービス・ソリューションを確認し、必要な対応がスムーズに実施できる準備をすることが求められます。

JTBでは今回ご紹介した産官学マッチングサポートにとどまらず、先生方の負担を軽減しながらも、生徒の学びの質を高めることに繋がる幅広いソリューションを提供しています。是非ご相談ください。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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