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JTB大阪第三事業部 事業創造室

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国境の島・対馬仕掛けるアフターコロナに向けた反転攻勢!

私たちが暮らしている日本がもしかしたら存在しなかったかもしれない
そう聞いても「まさか、そんなわけないよ」と思う方が大半だと思いますが、鎌倉時代に日本という国を揺るがす出来事は確かにありました。
モンゴル帝国が2度の日本侵攻を試みた「元寇」です。当時のモンゴル帝国は中国~韓国からヨーロッパまでの広大な範囲を支配しており、今でいうロシアかそれ以上の国土を持ち、使用している武器や戦い方等も日本を凌駕しており力の差は歴然でした。
教科書では「2度に渡る神風によってモンゴル帝国軍は撤退」とサラッと終わり、私もその程度の認識しか持っていませんでしたが、今この「元寇」を舞台にしたゲームの登場で、国内・海外で改めて当時の様子が注目されているのをご存じでしょうか?
PS5/PS4用ゲーム「Ghost of Tsushima」は「元寇」をテーマにした内容で、2020年7月発売から世界累計売上が800万本以上(22年1月現在)を超える人気ゲームです。
そしてこの人気ゲームの舞台が長崎県・対馬(つしま)となります。
日本人の私たちにもあまり知られていませんが、モンゴル帝国から島を守ろうとした人々の歴史が対馬にはあり、ゲーム内では主人公を操作し当時の人々のように外敵から島を守る、そんな体験ができます。私も初めて見たとき、対馬の島内が再現されている美しいグラフィックに驚きました。
海外にも多くのファンを持ち、本来ならば「Ghost of Tsushima」を通じて対馬に興味を持ったゲームファンが聖地巡礼として対馬を訪れていたでしょう。
新型コロナウィルスの影響が無ければ…
今回対馬市様から頂いたご相談は、
「新型コロナウィルスの影響で予定していた海外向けプロモーションが実施出来なくなり、代替案を探しています」という内容のものでした。当初決まっていたのは、アフターコロナの反転攻勢としてターゲット国に選定していた台湾向けに対馬をPRするという部分のみで、「どんな内容」を「どのように発信」していくかなど決まっていませんでした。
長崎県の離島・対馬は日本人でも名前は聞いたことがあるけれど詳しく知らない人は多いのではないでしょうか?実は対馬は様々な観光素材を持った島です。
対馬はいわゆるリゾートの離島ではなく、山あいの豊かな自然や奥深い歴史、新鮮な海鮮グルメなど見どころが満載の島で、韓国までは約50キロに位置し「国境の島」と呼ばれています。平地が極端に少なく島土の約89%が山地であり、国の天然記念物ツシマヤマネコ、白嶽などの山岳、大陸系植物ヒトツバタゴ自生地などの独特の生態系が築かれています。
バードウォッチャーには「渡り鳥の十字路」として非常に人気で、なんと日本国内で見ることのできる鳥の半数以上を対馬で見ることができるというから驚きです。
このように観光素材が豊富な島の「どんな内容」を「どのように発信」していくか検討する中で、今回着目したのはコロナ禍で起きている社会的な変化です。
渡航制限により人の交流が停滞する中、お家時間が増え世界的にゲーム需要が拡大しており、同時にコミュニケーションの手段としてオンラインの利用が急速に高まっている状況で、目を付けたのは冒頭で紹介した「Ghost of Tsushima」を活用した切り口でした。
具体的には、実際に「Ghost of Tsushima」をプレイしている在日台湾人YouTuberを対馬へ招聘しゲームの舞台を巡るロケ撮影を行い、動画作成の上YouTubeにて発信する内容です。ゲームを入り口により対馬について興味関心を持ってもらうという施策でしたが、コロナ禍の巣籠需要としてYouTube利用は急速に高まっており、結果今回のYouTube動画の再生は数週間で約45,000視聴回数を超え、YouTube動画のコメント欄には「ゲームそっくりの風景だ。行ってみたい!」「ゲームの舞台がこんなに近くにあるとは知らなかった」「渡航が出来るようになったら対馬に行きます」という声が多く寄せられました。
対馬市様からは「まずは台湾の方々に対馬を知っていただくという意味で非常にコストパフォーマンスの高い取組でした」というお言葉をいただきました。今回の対馬市様のように「コロナ禍で地域の魅力を発信する手段を模索している。アフターコロナに向けた反転攻勢を検討している」という自治体様/観光協会様は非常に多いと思います。
実際コロナ禍で私たちにも同様のご相談が多く寄せられましたが、コロナ禍という社会の大きな変化を捉えた上で、その環境変化に適したエリアの魅力発信方法を検討することが大切だと改めて感じました。
ゲーム「Ghost of Tsushima」は殺伐とした戦いがメインでしたが…
安心してください。実際の対馬には静かで穏やかな時間が流れています。
サイクリング、シーカヤック、ダイビングなどのアウトドアや、魚介類をはじめとする新鮮な食材が楽しめ、中でも圧巻の360度パノラマ絶景が堪能できる白嶽(しらたけ)に登るトレッキングはお勧めです。
是非一度皆さんも対馬を訪ね、ゲームの主人公のように雄大な自然を好奇心の赴くままに巡ってみてはいかがでしょうか?そこにはゲーム以上の美しい景色が広がっています。

筆者末永 努