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JTB大阪第三事業部 事業創造室

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酒米の王者「山田錦」兵庫県からいざ世界へ!

どういう日本酒が好きですか?

「どういう日本酒が好きですか?」と聞かれたら「すっきりした味わいのお酒が好きだ」、「辛口が好きだ」といった回答をされる方も多いのではと思います。
私も日本酒は好きですが日本酒に詳しいわけではなく、居酒屋や旅先の旅館の夕食で日本酒を頼む時は、銘柄よりも味わいや風味の紹介で選ぶことがよくあります。
仕事柄、日本各地を巡ることが多く「このあたりでお勧めの日本酒ってどれですか?」と尋ね、勧められた日本酒を自分用のお土産に買って帰ることも多いのですが、こういう目利きや選定が自分でできればちょっと素敵だなあと思うこともあります。
兵庫県酒米振興会はその名の通り、兵庫県の酒米の振興を図る組織で、今回ご相談いただいたのは「海外消費者への兵庫県産山田錦の振興」という目的でした。

実は日本酒にも「テロワール」が存在するのです

日本酒が米からできていることはもちろん知っていましたが、食用米と酒米の違いや米の削り具合による味わいの違い、もっと言うならば気候や風土といった産地の特徴によって日本酒の出来栄えが変わります。
言うならばフランスのワインに「ブルゴーニュ産」、「ボルドー産」という生産地ごとの特徴があったり、そこで栽培されるブドウ種そのものに特徴があったりという「テロワール」が存在するように、実は日本酒にも「テロワール」が存在するのです。
私も酒米振興会の方に教えていただき学んだのですが、日本には100種を超える米が存在し、その中でも日本酒造りに適した米を「酒造好適米」と呼びます。そしてその酒造好適米の中で、生産量、品質、知名度のすべてにおいて圧倒的な評価を得ているのが「山田錦」です。
年に1度開催される「全国新酒鑑評会」で金賞受賞をする日本酒の9割が山田錦を使った日本酒だそうです。ですので山田錦は「酒米の王者」と呼ばれています。
そしてその山田錦の約6割が兵庫県で生産されています。そこには六甲山系の寒暖差や粘土質の土壌など、まさにその土地だからというテロワールが存在し、最高品質の酒米を生産する風土があるということなのだと思います。

どのような特徴を価値と感じてくれるのか

今回、難しかったが「日本酒でなく酒米のプロモーション」という点です。
冒頭でも触れましたが、私個人としてもブランドや知名度といった表面的な視点で日本酒を嗜み、産地や酒米といったものが日本酒を選ぶ際の要素になっていなかったわけですから、ましてや海外の消費者に酒米という原料の魅力を伝え、興味を引き付けることが可能なのかという疑問はありました。
そこでまずは海外消費者の声を集めようということになりました。
具体的には「日本酒造りにおける酒米の役割と重要性」、「酒米における兵庫県山田錦ブランドの評価」、この2点をまずは知っていただくこと、その上で「海外消費者が山田錦や兵庫県産山田錦にどのような興味を示し、どのような特徴を価値と感じてくれるのか」を調査する設計です。
越境ECサイトで日本酒やアルコール類の購入実績のある海外消費者に絞り、約10万人にアンケートを配信したのですが、抽選で日本酒が当たるオープン懸賞企画とあわせたため約1000人の海外消費者から回答をいただけました。

山田錦は酒米の王者と呼ばれている

まず私自身が予想した結果との違いに驚きました。
例えば「日本酒のどのようなところに興味がありますか?」という質問をさせていただいたのですが、和食と一緒に楽しむことや、熱燗や冷酒といった飲み方など、「体験」そのものに興味を示すと予想していたのですが、米を原料にした日本独自の文化であったり、製法により味わいや香りが違うことなど、「製造過程」に興味を示した方が多く、酒米が魅力や価値の要素になり得ることがわかりました。
また地域による価値観の違いも明確でした。
例えば、欧米圏の消費者は「全国新酒鑑評会で金賞受賞する日本酒の9割が山田錦を使っている」ということに価値を感じ、東アジア圏の消費者は「山田錦は酒米の王者と呼ばれている」ことに価値を感じていることがわかりました。
世界という市場を見た時、ついつい「日本と海外」、「国内と国外」というような分け方をしてしまうのですが、当然ながら世界には多くの国や地域があり、それぞれに国民性や文化や宗教が存在するわけですから、海外向けのブランディングもターゲット国や地域にあわせた訴求ポイントをどう伝えていくかが大切だということかと思います。

「YAMADANISHIKI!」

海外消費者のリアルな意見を聞く機会はなかなかないですので、アンケート結果をまとめた報告書は兵庫県酒米振興会の皆さんにも興味深く読んでいただけましたし、兵庫県産山田錦の可能性を再認識する機会にもなりました。
またアンケート分析から兵庫県産山田錦のターゲット国や年齢層、性別なども明確にすることができました。
現在、私たちは兵庫県産山田錦の海外向けブランドサイトの構築に向け、デザインやライティングの業務をお手伝いさせていただいています。海外消費者が少しでも兵庫県産山田錦に興味関心を持っていただけるような記事やデータを盛り込めたらと思っています。

近い将来、多くの訪日外国人観光客が日本へ訪れ、「YAMADANISHIKI!」と言いながら日本酒や和食、そして日本の文化を楽しんでいただける、そんなお手伝いをできればと思っています。

筆者松野 友哉