現在配信中の第9回 次世代教育フォーラム。第1部では「進路づくり」の講師である、倉部 史記氏が『ミスマッチをなくす進路指導』について講演しています。高校現場の先生方が日々直面する“進路指導の難しさ”や、“探究学習をどう進路選択につなげるか”という問いに対して、豊富なデータと現場事例をもとに鋭い示唆を与える内容となっています。
本記事では、①社会変化、②高校卒業後の現状、③探究×進路指導の工夫の3章構成で、教育現場で活用しやすい形にダイジェストとしてまとめました。
また、第2部では、中学・高校において探究と進路・進学の接続に取り組む2校の先生方に、実践事例をご紹介いただいています。続く第3部では、その2名の先生と倉部氏によるクロストークを通して、これからの進路指導のあり方をさらに深掘りしています。
詳しくは、現在配信中の「第9回 次世代教育フォーラム」をぜひご視聴ください。

第9回次世代教育フォーラム 高大接続時代の進路指導アップデート
~探究と進路のつながりをどう描くか?~
申込締切:2026年3月30日(月)23:59
プログラム(視聴時間:約100分)
第1部・講演 『ミスマッチをなくす進路指導 ~自分らしい進路実現に向けて~』
「進路づくり」の講師、追手門学院大学客員教授 倉部 史記 氏
第2部・事例発表 ①『探究学習で培う学びの礎』
島根県立三刀屋高等学校 主幹教諭 米田 大祐 先生
②『複雑化する大学入試と探究学習を接続させるために』
佼成学園女子中学高等学校教頭、進路指導部長・学園統括進路指導部長 西村 準吉 先生
第3部・クロストーク 『主体的な大学選択を支える、これからの進路指導とは』
第1部講演者

「進路づくり」の講師、追手門学院大学客員教授、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。 倉部 史記 氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。工学院大学職員、早稲田塾総合研究所主任研究員などを経て独立。公務実績として文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」ペーパーレフェリー、三重県立看護大学 高大接続事業 外部評価委員など。著書に『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)、『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)ほか。
01 生徒達がこれから生きる社会とは
講演の冒頭、倉部氏は「いまの高校生が社会に出ていく10年後、20年後の日本がどうなっているか」という根本的な問いを投げかけました。進路指導は“今ある選択肢を紹介する”だけでは不十分であり、生徒が将来向き合う社会構造そのものを理解することが欠かせないからです。
その一例として示されたのが、「消滅可能性自治体」のデータです。

このデータは2020年と比較して、2050年までに20~39歳の女性人口がどれだけ減少するかを示した地図で、濃い青ほど減少幅が大きいことを表します。地図全体を覆う深いブルー(消滅可能性自治体)が、全国の多くの自治体で若い世代が著しく減少することを示唆しています。
また中でも青森市では52.7%減、弘前市では51.4%減、今別町に至っては86%減。この数字は、地域コミュニティの担い手が急激に減少し、行政サービスや教育環境にも影響が及ぶことを意味しています。
倉部氏は、これらのデータをもとに次のような視点を提示しました。
- 「公務員=安定」という前提は永続するのか?
- 「地元に残ることが安全」という価値観は、これからも妥当なのか?
- 人口減少は、キャリア形成や職業選択にも構造的な変化をもたらす
従来型の「正解のある進路指導」では対応しきれない社会がすでに始まっており、生徒自身が“変化の中でどう学び続け、どう選び続けるか”を考える必要性が高まっているという強いメッセージが込められていました。
02 高校卒業後の現状
次に倉部氏が示したのは、高校卒業後の進路データから見える“リアル”です。
特に印象的だったのは、「進路選択時点の表面的な情報では、生徒の未来を語りきれない」という点です。
大学入学がゴールになっていると、ミスマッチが起こる?!
現在、4年制大学への進学率は過半数を超えています。4年制大学への進学は身近になっている一方、入学後のイメージは出来ているでしょうか。以下は全国の大学の進学4年後の状況を調べた読売新聞社が出している調査結果の抜粋です。
- 留年率・中退率が2~3割に達する大学・学部もある
- 留年や進学が過半数の大学・学部もある
留年が多くても海外留学が多いなどの理由があることもあり、何が良い・悪いということではありません。ただ4年で卒業し、就職することをイメージして入学した場合にはミスマッチが生まれてしまうことがあります。
こうした状況の背景には、“自分がどのように学び、どんな価値観で生きたいのか”という視点が十分に育たないまま進路を選んでしまうケースが多いことが挙げられます。
専門職志向の高まりと、その落とし穴
看護、保育、医療系など、「資格が取れて就職に強い」分野は依然として人気があります。しかし講演では、次のような課題も指摘されました。
- 専門職は仕事内容の理解が浅いまま進路決定されるとミスマッチにつながりやすい
- 親世代の価値観(“手に職をつければ安泰”)が強く影響
- 専門性が問われる分野ほど、入学後のミスマッチが中退につながりやすい
また、大学・専門学校側のデータでは、「好きで選んだ学生ほど成績が安定し、学びが深まる」という傾向も報告されており、進路指導の本質が「偏差値の合う学校探し」ではなく、生徒の価値観・興味を起点とした“納得感”の醸成にあることが強調されました。
03 探究学習 ✖︎ 進路指導の工夫
講演の後半は、まさに教育現場で「明日から実践できる」内容が続きました。
探究と進路指導をどのようにつなぐか。ここではいくつかご紹介頂いた中から3つ取り上げます。
①探究は“興味”から始まり、“学問”に接続できる
探究の出発点は、必ずしも立派なテーマである必要はありません。
倉部氏が関わった学校では、次のようなテーマで探究が始まった例が紹介されました。
- アニメが好き→作品に描かれる地域文化を分析
- ゲームが好き→ゲーム業界のビジネス構造を調査
- 音楽が好き→音楽と心理の関係性を研究
重要なのは、「興味を深めると、必ずどこかで学問領域に接続する」という点です。
生徒が“好き”を起点に学問の広がりを知ることで、“何を学ぶとどうつながるのか”が視覚化され、進路を主体的に考える力が育ちます。
②学問領域を“見せる”と、生徒の理解が一気に深まる
倉部氏は、進路指導で最初にすべきことは、「学問の地図を見せること」と語りました。
- 文学・社会科学・経済・工学・看護・・・
- それぞれの学問が何を問い、何を明らかにしようとするのか
- 実社会の仕事と学問はどうつながるのか
学問の全体像がわかると、生徒は初めて“自分は何に興味があるのか”を言語化できます。
逆に、学問のイメージがなく興味にも気づけない状態では、探究も進路も“手探りのまま”になります。
③三者面談の座り方を変えるだけで、生徒の主体性が変わる
お金も時間もかけずに出来るものとして紹介されたのが「三者面談の座り方を変える」という工夫でした。
一般的な三者面談では、
先生ー(机)ー生徒・保護者
のような配置が多く、先生主導で話が進みがちです。
倉部氏が紹介した事例では、
生徒→先生・保護者へ向けて「自分の進路」をプレゼンする
という配置に変更したところ、次のような変化が生まれました。
- 生徒が“自分の言葉で語る時間”が圧倒的に増えた
- 家庭内での進路理解が深まり、保護者の納得度が上がった
- 生徒自身が進路を「自分ごと」として捉えるようになった
座り方という“たった1つの環境要因”が、生徒の主体性を大きく引き出す好例として紹介されました。
教育現場へのメッセージ
第1部全体を通して見えてきたのは、「生徒が自分の人生を選び取る力」を育てることの重要性です。
- 社会変化に“正解”はない
- 入試方法が多様化し、進路の入口より“入ってから”が重視される
- 探究は、興味→学問→社会をつなぐ“進路の土壌”
- 教員は「答えを示す人」から「問いをともに見つける人」へ
変化の大きい時代だからこそ、生徒が「自分の軸」で選び続けられるように、学校は環境と機会を整える必要があります。
倉部氏の講演は、まさにその核心を突く内容でした。
本記事では第1部の一部を抜粋して紹介しましたが、フォーラムの後半では学校での実践事例の紹介や「主体的な大学選択を支える、これからの進路指導とは」をテーマにクロストークをお届けしています。ぜひフォーラムもご視聴ください。
フォーラム第2部以降は本編で
