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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 「かっこいい大人の背中に出逢ってもらいたい」これまでにない教育旅行プログラムの開発秘話

2024.06.18
国内プログラム
修学旅行
探究学習
キャリア教育
SDGs

「日本の伝統を次世代につなぐ」をテーマに、伝統産業の職人と作る日用品の開発や教育事業など、さまざまな仕組み作りをしてきた、株式会社和える。

和えるとJTBがともに開発した、中高生向け教育旅行プログラム『「伝統」と「革新」に出逢う旅~五感で体感する探究型プログラム~』は、日本の子供たちの伝統に対するイメージを変化させ、日本の伝統を次世代へつないでいきたいという思いから開発されました。

今回は、プロジェクト開発に携わった、和えるの髙橋すみれ氏と森恵理佳氏、JTBで教育旅行を担当する濱野慎太郎にインタビュー。和えるとJTBの不思議なご縁や、これまでになかった教育プログラムの内容や目的などを伺いました。

『「伝統」と「革新」に出逢う旅~五感で体感する探究型プログラム~』の資料はこちらからダウンロードして頂けます。

プロフィール

株式会社和える

執行役員・中小企業診断士 髙橋 すみれ 氏(Sumire Takahashi)

東日本事業部長 森 恵理佳 氏(Erika Mori)

株式会社JTB

濱野 慎太郎(Shintaro Hamano)

伝統を知ってもらうことが次の世代につながる

—— まずは、和える様の業務内容を教えてください。

和えるは、日本の伝統を次世代につなぐため、さまざまな仕組み作りをしている会社です。その一つに、赤ちゃんのときから使っていただける日用品を全国各地の職人さんと作り、暮らしの中に手仕事を取り入れていただき、ものを通して日本の伝統を伝える取り組みがあります。
髙橋
伝統だから買ってくださいではなく、パッと見て、可愛いな、欲しいな、便利だなと思うものを作って感性に働きかける。それが実は伝統産業だったという、この順番が大事なんです。

—— 「aeru school」という教育事業も行われているそうですね。

「aeru school」では、学びを通して日本の伝統をお伝えしています。本格的に事業として立ち上げたのは2016年ですが、もともと、ものを通して日本の伝統を伝えるのは限界があると感じていて、いろいろな仕組みを作ることでより多くの方に伝えられるという構想があったんです。学びを通して日本伝統に触れ、そこを入口として知っていただきたいと考えています。
株式会社和える 髙橋 すみれ 氏
髙橋
私は執行役員という立場で会社全体の事業を推進するほか、教育事業も森と一緒に行っています。
共通しているのが、伝統を学ぶことが目的ではなく、教育現場や企業から求められることを遂行するために、手段として伝統文化を用いるということです。例えば、幼稚園では非認知能力、中学・高校では探究学習、企業ではチームビルディングといった目的を達成するために、伝統文化を活用する。それが「aeru school」の特徴です。

—— 日本の伝統産業が今、抱えている課題について教えてください。

株式会社和える 森 恵理佳 氏
需要の減少、雇用・後継者不足などが挙げられます。職人さんになりたいと思った方がいても、雇用し、職人として一人前にするための余力のない場合が多いです。その中で私たちが考える一番の課題は、日本の職人の手仕事や伝統産業品を知らない方が多すぎること。選択肢に上がらなければ興味を持っていただけません。
職人が作るものの背景を知り、暮らしに取り入れることで豊かになる。私たち自身も実感しています。古くから培われてきた日本人の美意識も含め、知ってもらうための働きかけを続けていきたいです。

—— 今回、和える様とJTBが協働に至った経緯を教えてください

濱野
弊社内の勉強会で登壇いただいた時に、和える様の企業理念に深く共感しました。以前から、教育旅行での学びが子どもたちの今後につながっているのかという課題意識があったんです。
「aeru school」の取り組みと、選りすぐりの日本の伝統継承者の方々のネットワーク。JTBが持つ、全国の学校様とのネットワークを組み合わせることによって、まったく新しい教育旅行プログラムが生み出せるのではないかと思い、お話を進めさせていただきました。
「aeru school」をさまざまな教育機関で実施できるように働きかけてはいたものの、予算などの関係で、私立校などの限られた学校でしか実施が叶わず、体験格差が生まれていることにモヤモヤしていたんです。「修学旅行」という機会を活用できれば、私立、公立関係なく機会提供ができる。これはこの上ない魅力でした。
髙橋
2020年に、経済産業省のSTEAMライブラリーで配信する伝統産業をテーマにした教材を作ったのですが、上手く活用できない先生方も多いようです。伝統や文化に対する教育の充実の必要性を感じながらも指導が難しいという、教育現場の声に応えたいという思いもありました。

—— 和える様の起業のきっかけが、JTBの会報誌だったと聞きました。

髙橋
弊社代表の矢島が、日本の伝統文化、産業を発信するジャーナリストを目指していて、大学在学中に全国の職人の方々を取材して、記事を書きたいと色々な企業に企画を持ち込んだんです。その記事を最初に掲載していただいたのが、JTBさんの会報誌でした。実はそのときに出会った職人さんの一部が、今ご一緒している方たちです。私たちの原点ですね。

ポイントは五感で体感して記憶に残るかどうか

—— 『「伝統」と「革新」に出逢う旅~五感で体感する探究型プログラム~』の内容について教えてください。

濱野
このプログラムでは、職人さんや伝統産業に従事されている方を、「伝統継承者」と呼ばせていただいています。年齢的にも比較的若く、職人気質で無口なイメージとはまた違った、「伝統」を守りながらも「革新」起こそうとしている方ばかりです。
旅マエには、オリジナルのプロフィールシートで伝統継承者の方々のことを知っていただき、当日の質問内容を考えます。訪問当日には伝統継承者の方と出逢い、対話し、「体感ポイント」を感じていただく。「体感ポイント」とは五感を使いながら体感するコンテンツです。
例えば、京都府の宇治市で「佐波理おりん」を作る南條工房さんの「体感ポイント」は、オリジナルブランド「LinNe」のおりんの音です。おりんの音にも様々な音色があることを聞き比べたり、音色が響き渡る空間に浸る時を過ごす。そのような「体感ポイント」を作りながら、対話をしていきます。
企画の段階から、文化体験にだけはしたくないとお話ししていました。今回ご紹介する伝統継承者の方々は、時代の先端をゆくかっこいい大人ばかりです。伝統が100年、200年続く理由は、何かしらの「革新」が行われてきたからこそ。そういったことも感じていただけたら嬉しいです。
髙橋
受け入れ先の方々も、知ってもらうことで買い手や担い手が次世代につながっていくということを深く理解してくださっているので、「ぜひ協力させてください」と快く受けてくださいました。

—— 今回のプログラムで文化体験を外した理由を教えてください。

株式会社JTB 濱野 慎太郎
濱野
よくある伝統体験学習とは一線を画し、伝統を守りつつも新たな挑戦を続け、変化の時代を生き抜く選りすぐりの伝統継承者との「出逢い」と「対話」を体感できるプログラムにしたいという思いがありました。
さらに「体感ポイント」によって、子供たちの伝統に対するイメージに変化が生まれ、その魅力や日本の美意識、精神性などを自らの言葉で語ることができるようになる。中途半端に体験を入れてしまうと、本質を自らの言葉で語れるようにはならないのかなと。その先に、一人一人が自身の生き方、将来のキャリアを考えるきっかけとなることを目指しています。

—— 「体感ポイント」の具体例をもう少し教えてください。

例えば、うるしの原材料を作る工房ではうるしの香りを嗅いでいただき、織物の工房でははた織り機の音を聞いていただきます。手織りか機械織りかでも音が全く違います。
髙橋
見た目も全然違いますよね。どっちが機械織りでどっちが手織りかを見ていただく。箔屋さんも訪問先にあるのですが、金の箔と真鍮に色をつけた箔とでは輝きが違います。すべてが現地に行かないとわからないことばかりで、職業体験とは全く違います。
濱野
今回、選りすぐりという言い方をしているのですが、和える様のネットワークの中で、教育旅行の観点で見ていただいて、ふるいにかけられて選ばれた方たちですよね。
髙橋
チェックポイントとしては「伝統」と「革新」の要素があるか。香りや音、触れるなど、五感で体感できるコンテンツがあるか。せっかく現地に来ていただくので、五感で体感して記憶に残るかどうかはとても大切です。最後に、仕事の流儀をしっかりとお持ちで、キャリア教育的に学べるものがあるというところをチェックしています。

—— 伝統継承者の方の年代はどれくらいなのでしょうか。

髙橋
30代、40代の方が中心です。跡継ぎの方もいらっしゃれば、以前はサラリーマンをされていた方も。ハローワークを見て職人さんになった方もいらっしゃいます。
家業を全く継ぐ気はなかったのに、当時のアルバイトよりも時給が50円高かったから、家業を継いだ方もいます(笑)。
髙橋
子どもたちには、「それでいいんだ」と思ってほしいです。「職人になるぞ!」みたい人ばかりではありませんから。
なぜ今のお仕事に就いたのかお話しいただいたあとに、生徒たちからの質問を受け付けるのですが、中高生が大人にいきなり質問するのは結構ハードルが高いですよね。
なので、事前学習では、職人さんそれぞれのポイントと、答えを導けるような質問事項を記載して、スムーズに取材ができるようなプロフィールシートを使って準備していただきます。
濱野
プロフィールシートには、対話をするためのポイントがたくさん散りばめられているので、新たな気づきを得られる素晴らしい時間になると思います。
髙橋
和えるの集大成です。

教育旅行のこれからの形

—— 今後、学校にはどのようにアプローチしていくのですか。

濱野
学校様と日々やり取りする中で、現場の声をキャッチアップしながら、修学旅行という場面をどう生かすか考えてきました。JTBには全国に営業所があり、これまでに築いてきた学校様とのネットワークで、多くの先生方や児童・生徒のみなさんにこのプログラムの価値を伝えられる可能性があると思います。
先日トライアルを実施したのですが、担当の先生にコンセプトをお伝えしたら、「こういうことをやりたかったんです」と共感していただけました。今後、さらにブラッシュアップしていきたいです。

—— 先生方もこのプログラムを通して学びがありそうな気がしますよね。

これまでいろいろな学校で伝統文化に関する授業等を実施してきましたが、「どうしたらいいかわからない」という先生方の声を多く聞きます。修学旅行で伝統文化の学びもできる上にキャリア教育にもなる。日本を語れるグローバル人材の育成にもつながるプログラムなので、ぜひご活用いただけたらと思っています。
濱野
たくさんの学校に届けたいですね、今は京都のプログラムのみですが、エリアを広げつつ、いずれは全国各地で展開していきたいです。

—— 修学旅行担当の先生方にメッセージをいただければと思います。

社会の中で、ポジティブに活躍されている方々に出逢っていただけるプログラムなので、社会に出る希望が持てると思います。いい大学に行って、いい会社に勤めることが成功という流れがまだあるとは思いますが、それだけじゃないという新たな価値観を感じていただける機会になるのではないかなと。ぜひこのプログラムを導入いただければと思います。
髙橋
私たちが10代のうちに出逢いたかった、かっこいい大人の背中に出逢っていただけます。今、何かが変わるわけではないかもしれません。20代、30代で社会に出て、人生の岐路やキャリアについて考えたときに、「そういえば中学生のときに出逢ったかっこいい大人がいたな」と思い出してくださったら嬉しいです。一生記憶に残るような旅になると思いますので、本当に体感してみて欲しいです。
濱野
伝統継承者の方々と出逢い、日本特有の美意識や精神性、脈々と受け継がれてきた伝統文化の素晴らしさを知っていただくことで、「日本ってすごいな、かっこいいな」と、日本人としての誇りや信念を持てる機会になると思います。生徒さんたちにどんなことを学んで欲しいのか、修学旅行の目的を先生方としっかりと確認し、気づきや価値観の変化などを提供できればと思っています。

まとめ

アフターコロナの今、子どもたちには出逢いの喜びが必要です。「日本の伝統を継承していきたい」という両者の思いが詰まったこのプログラムで、子どもたちには学校の外に出て選りすぐりの素敵な大人と出逢ってもらいたい。リアルで触れて体感できる、記憶に残る修学旅行をご提供いたします。ぜひ一度ご相談ください。


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