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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 SDGs動画教材はこう選ぶ!こう使う!生徒の主体性を引き出す動画の有効活用法!

2021.05.21
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コロナ禍により全国の学校でオンライン授業などICTを活用した教育の取り組みが加速しています。GIGAスクール構想による情報端末や学校通信環境の整備を受け、教材のデジタル化も今後ますます進展することでしょう。実際、既に社会には数多くのデジタル教材があふれています。そうした中からそれぞれの学校の教育課程にマッチし、生徒の主体的な学びを引き出す教材を選びだすことに日々ご苦労されている先生も多いのではないでしょうか?今回はデジタル教材の一つとして「SDGsについて学ぶための動画教材」をテーマに、動画教材開発の専門家や授業に動画教材を導入した学校の先生の声をもとに、動画教材の選び方と授業での効果的な活用方法について考えます。読者特典として、すぐに使えるSDGs動画教材1コマ分(動画、ワークシート、教員マニュアル)をご用意しました!ぜひ最後までお読みください。

専門家に聞きました 授業で動画教材を活用するメリットと動画教材の選び方

まず、学校現場で動画教材を活用するメリットについて、動画教材や教育メディア開発のスペシャリストである、デジタルハリウッド大学の石川大樹助教にうかがいました。

デジタルハリウッド大学大学院
専任助教
石川 大樹先生

Q.動画教材の教育効果について教えてください。

動画教材の教育効果は3つあります。1つめは、視覚と聴覚を組み合わせることによる効果です。目と耳の両方で情報をインプットするほうが、どちらか片方の場合よりも記憶に残りやすいことがわかっています。2つめが、人間やサル特有の神経細胞・ミラーニューロンによる効果です。これは他の個体の行動を見聞きすることで、自分も同じようにできる気持ちになれる(シミュレーションできる)という効果です。3つめは、動画は繰り返し同じ内容を復習できるため、“記憶の定着”に効果的であるといえます。

また、動画は授業に取り入れる際の先生方の負担が少ないというメリットがあります。ノートやワークシート型教材の場合、授業の全体シナリオや、どのように授業のなかに取り入れるかを設計する必要があります。しかし、一つの動画のなかでレクチャーが完結している教材を用いれば、生徒に動画を見せるだけで、効果的に授業を展開することが可能です。加えて、現代の生徒はいわゆる“動画ネイティブ世代”であり、情報をインプットする手段として動画を見ることに慣れています。生徒にとっても動画のほうが情報を取り入れやすく、授業にも主体的に参加しやすいのではないでしょうか。

Q.それぞれの学校に合った動画を選ぶ際は何を重視すればよいのでしょうか?

例えば、世界のなかで食料や水不足に悩む地域の問題など、『この事実を生徒に伝えたい』という明確なメッセージをお持ちであれば、SDGsの17の目標のいずれかに合う動画を選びだして授業に取り入れるのも一つの方法です。ただし、それが難しければSDGsの17の目標全体を網羅していて、かつグループで議論するためのワークシートなどがパッケージ化された教材を選ぶと良いのではないでしょうか。

また、これまでの経験から、動画のなかで講師が一方的にレクチャーする形式よりも、出演者同士が“対話形式”で内容を進行するもののほうが、視聴者の“くいつき”が良く、『理解しやすい』と感じていることがわかっています。出演者の対話を通じて生徒が自己投影できる教材は、“問いを自分事化”していくことができます。SDGs授業では、この“問いを自分事化”できる動画であることが、より深く、視野を広く学んでいくための第一歩となるのではないでしょうか。

さらに、動画教材は視聴にかかる時間が決まっていますから、授業での時間配分がしやすいのも特徴です。つまり、学校という場でしかできない話し合い=アウトプットにしっかり時間を割くことができるわけです。動画教材の唯一のデメリットは“学習強制力がない”ことですが、ただ『それぞれ自分で見ておいてね』ではなく、限られた授業時間のなかで、みんなで動画を見て“問いを自分事化”し、見た後にみんなで話し合いの場を持てること、それが自ずと生徒の主体性を育む教育活動につながるのではと思っています。


続いて、デジタルハリウッドとJTBグループが共同で開発した動画教材「SDGs School」を導入した学校の先生に、導入の理由や活用の効果についてお話をうかがいました。

「SDGs School」

「SDGs School」は、教科学習や探究学習・探究活動など、SDGsをテーマにした授業を行うための全14回の動画教材&ワークシートです。

世界で起きている地球規模の課題について、身近な出来事から考えられるよう、ユニークなキャラクターの講師×女子高生との対話形式で進行します。

動画視聴と具体的なアクションなどを議論するグループワークとの組み合わせを、1回50分で完結するよう構成しています。

SDGs Schoolについては、こちら(SDGs School 特設サイト)

SDGs動画教材導入校の先生に聞きました Case01 帝京長岡高等学校

学校法人帝京蒼柴学園 帝京長岡高等学校
学習指導部部長・2学年部長
鴫原 章子先生

Q.SDGs動画教材を取り入れたきっかけは?

今の2年生の入学時から、「主体性」をテーマにしていくことを、保護者も含めて話をしてきました。そのなかで修学旅行について、大人が修学旅行のモデルプランを考えて生徒に選ばせるという従前の方法は、生徒の主体性という観点からすると「違う」と思いました。与えられたものでしか行動できないのでは、Society5.0といわれる時代では機械に埋もれてしまいます。もっと生徒が自分たちで何かを感じて、「ここに行きたい」「これを見てみたい」と自ら意見を出せるような修学旅行を目指しているなかで、SDGsの考え方を旅行先でのプラン作成や事前学習に活かせないかと考え、この教材を採用しました。

Q.「SDGs School」を選んだ理由を教えてください

「SDGs School」は、SDGsの17項目を網羅していて、各項目について全14回に分けて、細かく解説しています。動画のなかで、きちんと17の目標と169のターゲットを説明してくれていると感じました。全項目を網羅したうえで、生徒が「自分はどうなんだろう」と考えられるところも良いと思います。

Q.授業ではどのように活用していますか?

「SDGs School」でSDGsの知識を得て、今の世界が抱えている問題や、解決しなくてはならない課題を頭に入れたうえで、修学旅行でどのような行動に移すかを考えさせています。例えば、海に関心がある子は海に、山なら山に――というように、ちょっとでも気になる部分を見に行けるタクシー行動のルートを生徒たち自身で考えられるようにしています。また、ホテルではビュッフェスタイルの食事となりますが、そこで生徒がフードロスを意識した行動をとれたら良いなと、考えたりもしています。

Q.「SDGs School」を活用した感想を教えて下さい

動画教材を使ってみて良かったことの1つ目は、SDGsに関する正確な情報を伝えることができた点です。2つ目は、私たち教員の負担がかなり軽減できた点です。これまでSDGsをテーマとした探究授業では、教員は予習や授業準備も含めてかなり時間を割いてきました。しかしパッケージ化された動画教材を活用することで、準備にかける時間が減ったのも良い点だと思っています。

SDGsはテーマによっては難しいものもあります。例えば「発展途上国の人の気持ちになって」という項目は、日本の高校生が短い時間で理解するのは簡単ではありません。生徒自身がこれまで得てきた体験などによっても、その投げかけの受けとめ方や、自分の意見が出せるか出せないかが変わってきます。そうしたなかでも、動画を見て、ほかの生徒と意見交換できれば、SDGsに関する知識の定着もさせやすいかと思っています。しかもこの動画教材は、各回で学んだことがワークシートの形で残せますから、後で生徒自身が振り返ることができるのも良いと思います。

Q.今後の活用については?

この動画教材をきっかけに、教員のなかでは自作の「キーワードを抽出して書き込めるシート」を用意するなどの工夫も生まれています。今後は、視覚的に興味が持てるインパクトのある写真をプラスするなど、生徒の興味を引くアイデアを取り入れるなどしながら、さらなる記憶の定着や活発な意見交換につなげていければと思っています。

SDGs動画教材導入校の先生に聞きました Case02 木更津市立木更津第一中学校

元・木更津市立木更津第一中学校 2学年主任
(現・木更津市立富来田中学校 2学年主任)
伊東 雅芳先生

Q.木更津第一中学校の学びのテーマを教えてください。

木更津第一中学校では、3年間を通して学べる共通テーマとして、これまでは職業観や将来の夢につなげる「キャリア教育」を実施していました。昨年度からは国や地域、各企業の社会貢献についての取り組みにも着目し、「社会人になるための教育」という読み取りから、自分たちの未来を作っていける人材の育成に向けた「SDGs教育」にも力を入れています。

Q.「SDGs School」を選んだ理由を教えてください

SDGsを通じて、生徒に地球上の様々な問題について知ってもらいたいと考えたのが最初です。自治体や企業など、生徒の身近なところでもSDGsに関する様々な取り組みが進んでいますし、「自分たちのちょっとした行動が地球環境のためになる」ということを伝えたかったのです。ただ、SDGsをテーマとした中学生向けの適切な教材がなかなか見つけられませんでした。そうしたなか、高校生向けである「SDGs School」を知り、最初は中学生にとっては難しいだろうかという思いもありましたが、動画を見てみたら中学生でも親近感を持って学べそうな構成だったので導入を決めました。

Q.「SDGs School」を活用した感想を教えて下さい

「総合的な学習の時間」で2年生の授業に導入しましたが、生徒にとっては、おそらく知らなかったことがたくさんあったのでしょう。SDGsとは何かについて、生徒が新たな知識を得られたことが一番の着目点だったと思います。また、動画のなかで投げかられけた質問について真剣に答えられているので、SDGsに関する理解も深まっていったと思います。なお各担任の先生には、事前に動画教材を見てもらったうえで、先生自身の体験を織り交ぜながら補足的に生徒に話をするよう働きかけました。

Q.生徒はSDGsを身近な問題としてとらえられましたか?

動画での学びをきっかけに、木更津市役所のSDGsを担当する課の方に学校に来ていただき、自治体の取り組みについて話してもらう機会も作りました。「ちょっとゴミ拾いをするだけで港がきれいになる」「給食を残さないことで食品ロスが少しでも防げる」といった話を通じて、生徒は一層、SDGsを身近に感じることができたのではないでしょうか。今後は、そのように市とも連携して、様々な施設・企業を訪問したり、講演やワークショップなどを織り交ぜながら、体験的・実地的な学びを増やしてあげたいですね。

授業で動画教材を上手に活用するためのヒント

「SDGs School」の制作を担当したデジタルハリウッド大学の石川先生にお話を聞きました。

Q.教材に込めた思いや活用のためのアドバイスは?

SDGsについては、どちらかというと海外の方が先進的ですが、海外の事例を並べて見せても、“自分事化”しにくいと考えました。そのため、生徒が身近に感じられるよう、日本におけるSDGsの問題を取り入れ、疑問を投げかけることを主体にしました。そうすることで、主体的に授業に参加してもらえる構成としています。さらに、議論した後にもう一度海外の事例を見せて、自分の身近な問題と海外の解決策や好例を通じ、「自分ならどういう方法をとるのか」を、再度、生徒同士で議論できるようにしました。

「SDGs School」を活用する際、先生がSDGsに関する予備知識をたくさんインプットしておく必要はありません。その分の時間を、生徒が主体的に話し合える場作りに向けてください。できるだけ生徒に問い続けるようなかたちで、「自分ならどう解決できるか」「どうすればそれを緩和できるか」を考えさせるアウトプット中心の授業方針を立てていただけるとよいと思います。

SDGsについて、個々の活動として取り組んでいる先生も多いと思います。今後は、そうした個々の取り組みの裾野を広げるために、動画を提供するだけでなく、今後はその運用までサポートするかたちでご協力していきたいと考えています。


まとめ

SDGsをテーマとした授業における動画教材は、生徒の主体的な学び(SDGsを自分事化した学び)を引き出すことが肝要です。
そのためのポイントをまとめました。

POINT01動画教材の選び方

  • 一方的なレクチャー形式よりも対話形式で構成されているものがよい
  • SDGsの17ゴール全体を体系的に網羅しているもの
  • 生徒がSDGsを自分にとって身近な問題として考えられる構成のもの
  • 動画視聴(インプット)とワーク(アウトプット)で構成されているもの

POINT02動画教材を活用した授業の進め方

  • 学びのテーマやねらいに即してオリジナルワークシートなど学校独自のアレンジを加える
  • 動画を視聴した後に生徒同士が主体的に議論する時間を設ける
  • 地域の自治体や企業などと連携して「リアルな体験」へとつなげる

(サービス・ソリューション紹介) 動画教材 SDGs School

SDGsを理解して行動に変える動画教材。SDGsを学ぶ生徒と学びを導く先生をサポートする教育支援サービスです。

ホワイトペーパー(お役立ち資料)【動画】SDGs 学習動画教材「SDGs School」トライアル視聴

動画教材を選ぶ際に、実際の中身を見てみたいという先生も多いのではないでしょうか?
そこで今回のお役立ち資料では、動画教材「SDGs School」全14回分の中から、GOAL4「質の高い教育をみんなに」の授業動画全編、生徒用ワークシート、先生用授業案をセットでご用意いたしました。ぜひご覧ください。

SDGs 学習動画教材「SDGs School」は、各分野のスペシャリストが結集して制作したSDGsを理解し、自分ゴト化する全14回の動画教材。今どきの高校3年生”星野りある”のさまざまな疑問を、SDGsの伝道師”WoWキツネザル”が世界中の事例を交えて詳しく解説。グループワークなどを通じて、「なぜ、SDGsがこれからの世界に必要か?」を学び、自分ゴト化していきます。

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