新型コロナウイルスにより、2020年度は各大学で様々措置が講じされました。教育・学びの場は従来の対策からオンラインへと移行し、大学の教職員は新しい授業形態への取組に加えて、数々の感染防止対策の対応を求められてきました。そのため、一部の大学職員の業務量は増加傾向にあり、業務の効率化を図れるかが重要なポイントになっております。
そこで注目されているのが、業務の「アウトソーシング」です。今回は大学業務のアウトソーシングの重要性、どんな業務が委託できるのか、その選択肢をご紹介いたします。
コロナ禍で大学職員の業務量は増加傾向にある?
コロナ以前と比較して、大学職員の業務量には違いが生まれているのでしょうか? まずは業務量の変化やどんな負担が増えているのかを見ていきます。
6割以上の大学職員がコロナ禍で「業務の量が増えた」と感じている
東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策研究センター「第2回全国大学職員調査」では、全国の国公私立の大学事務職員に仕事やキャリア観に関して調査しています。
同調査によると、コロナ禍を契機に大学職員の働き方や大学事務組織のあり方が変化していると感じるか、という設問に対して「業務の量が増えた」に「とてもあてはまる」と回答した割合が27.8%、「あてはまる」が38.0%という結果でした。実に6割以上の大学事務職員が業務量の増加を実感していることがわかります。
さらに同じ設問内の「業務効率化が進んだ」に対しては「あまりあてはまらない」が49.8%、「あてはまらない」が13.3%と、業務量の増加に対して効率化が課題になっていることがうかがえます。
コロナ禍で業務効率化を実現するアウトソーシングのススメ
ここではアウトソーシングの概要とコロナ禍で注目されている背景、メリットや注意点などを解説していきます。
アウトソーシングとは?注目されている理由も紹介
アウトソーシングは「Out(外部)」から「Sourcing(調達)」するという意味で、いわゆる「外部委託」や「業務委託」にあたるものです。日本では労働人口が減少している背景があり、限られた人材を優先業務に割り当てるための方法の一つとしても、コロナ以前よりアウトソーシングが注目されていました。
さらにコロナ禍では気軽に外出できないなど人が動けない状況がそこに加わり、リモートワークなど働き方も多様化しています。このような制約のある状況は「その業務を本当に組織内の人材が行わなければならないのか」と、業務プロセスが見直されるきっかけにもなりました。
そこで改めて注目されているのがアウトソーシングです。なかでも「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)」という業務プロセスを一括で委託するモデルにも関心が寄せられています。
一括で業務を任せることができれば、その分組織内の人材が重要度の高いコア業務に集中できる状況が生まれるため、組織の競争力強化も期待できます。このようにBPOは人員の補完や業務効率化だけではなく、一つの経営戦略としても有用なアウトソーシングの形だと言えるでしょう。
アウトソーシング(業務委託・BPO)のメリット
ここでは、具体的なアウトソーシングのメリットについて解説していきます。
メリット01コア業務に集中して取り組める
コア業務とはその名の通り、組織による活動のコアとなる業務のことです。企業であれば直接的に売上に関わるような業務などを指し、営業やマーケティング、開発や経営戦略の策定などが該当します。定型的な業務(書類整理や受付対応、備品管理や経費精算など)をアウトソーシングすることで、より集中してコア業務に取り組める環境が整います。
メリット02外部ノウハウによる品質の向上
例えば就職支援の場合、面接指導や各種就職セミナーなどをアウトソーシングすることで、専門的な知識を有した人材による高品質な学生サポートを実現できます。委託先の企業・団体は専門的にその業務を行っているため、学内だけで準備・実施するよりも効率的に業務を遂行できる点もメリットと言えるでしょう。
メリット03コスト削減につながる
専門的な業務をアウトソーシングすれば、学内で新たに人材教育・育成をするよりも効率化を図れ、かかるコストも基本的にはアウトソーシング費用のみになります。人件費や教育費、人材採用費などさまざまなコストの削減につながるのもアウトソーシングの魅力です。
アウトソーシング(業務委託・BPO)の注意点
アウトソーシングには注意しておきたい点もいくつかあります。例えば、アウトソーシングする場合は業務を外部に委託するため、学内でノウハウが蓄積されにくく、業務を任せきりになればブラックボックスが発生することも考えられます。さらに、業務によっては学内の重要な情報を委託先に渡す必要性も出てくるため、信頼性が担保できる企業・団体かどうかという点にも注意が必要です。
大切なのは、このような注意点を踏まえて委託先の企業・団体と密に連携を取ることです。事前に業務の重要事項を擦り合わせておくことで、未然にトラブルを防ぐこともできるでしょう。
大学運営にあたってのアウトソーシングの選択肢(事例)
何の業務をアウトソーシングしたらいいのか、迷う職員の方もいるでしょう。ここではアウトソーシングできる業務内容の事例を紹介します。
旅費の支払い関連のアウトソーシング
出張業務全般
大学では年間の出張回数が5,000回を超えるケースもあり、数億円規模の旅費が発生するだけでなく出張に伴った業務も多くなることがあります。そこで便利なのが、旅費の計算や交通機関・ホテルの手配など出張関係の業務全般をアウトソーシングすることです。
旅行業務を専門にしている企業では、出張(旅行)に関わるノウハウに長けているのはもちろん、オンラインによる手配やチケットレスにも対応したシステムを用意しています。アウトソーシングすることで、業務効率化はもちろん経費の大幅な削減が期待できます。
キャンパス施設の管理運営のアウトソーシング
図書館業務
図書館業務では、カウンター業務から目録の作成、書架整備業務、システム管理など幅広いアウトソーシングの選択肢があります。大学によってはアウトソーシングを利用することで、職員に負担をかけることなく開館時間の延長や土日・祝日での開館が実現でき、利用者の増加にもつながったという事例もあります。
スポーツ施設の管理運営
スポーツ施設の管理運営業務は専門性が高いことから、専門業者にアウトソーシングしている大学も少なくありません。例えばプールの運営にあたっては衛生面での管理が重要であり、水質検査などの業務を実施する必要があります。外部ノウハウを取り入れることで、学生が安心して利用できる環境を用意できるでしょう。
学生対応・留学関連業務
奨学金業務
奨学金業務として挙げられることとして、学生や保護者への窓口対応や奨学金に関わる書類の内容チェック、説明会の実施、学生への督促などがあります。それぞれの業務をアウトソーシングすることで、職員は奨学金制度の再検討や再設計などコア業務に注力できるようになります。
留学関連業務
留学関連業務に関しても、専門的なノウハウを有した外部企業・団体に委託することでさまざまなメリットが得られます。留学にあたっての査証の取得や出願手続き、危機管理体制の構築や渡航後のサポート、さらには協定校の開拓まで担ってくれる企業もあります。大学のグローバル化という点においても、アウトソーシングの活用は大きな効果を発揮してくれるでしょう。
そのほかさまざまなアウトソーシングの選択肢(一例)
入学試験関連業務
- 入学会場の手配・会場誘導、試験監督業務、願書受付業務
- 海外入試事務局業務、地方入試運営業務 など
学務・教務関連業務
- 学会・教員会議などの運営業務
- 授業や履修登録に関する補助業務
- 成績表の作成や卒業論文の管理などに関する補助業務 など
人事・経理・総務・情報システム関連業務
- 採用や教育研修に関する業務
- 経理や財務に関する補助業務
- 給与支払いに関する業務
- サーバーやネットワークの導入や運用、保守のサポート など
留学・国際交流関連業務
- 外国人留学生の入国支援、空港への送迎、就職支援
- 留学希望者のためのオリエンテーション運営
- 海外大学との渉外 など
広報業務
- オープンキャンパスの企画・運営やDMの発送業務
- ホームページやパンフレットなどの制作業務 など
就職支援関連業務
- 模擬面接や就職セミナーの実施
- 学生カウンセリング など
まとめ
コロナ時代より、大学では対応しなければならない業務が増加しなかなかコア業務に集中できずに悩まれている職員の方を多くいらっしゃいました。その状況を打破するためにも、 アウトソーシングはとても有効的な方法と言えると思います。
近年では、SDGsへの取組が活発となり、地域との繋がりもますます重要なものになってきております。地域や社会との連携を強化していくにあたっては、コミュニケーションやサービスの質の向上が欠かせません、そんな時アウトソーシングの効果を発揮してくれるでしょう。