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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 サステナブルツーリズムの事例とは?意味やポイント・SDGsとの関連性も解説

2023.03.01
地域マーケティング
地域マネジメント
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誘客促進

今、世界的にサステナブルツーリズムの取り組みが注目を集めています。日本ではまだあまり知られていない取り組みですが、サステナブルツーリズムを通じて地域活性化に着手する自治体も少しずつ増えてきました。この記事ではサステナブルツーリズムの概要を実際の取り組み事例を交えてご紹介します。ご興味のある自治体のご担当者様の参考になれば幸いです。

サステナブルツーリズムとは

サステナブルツーリズムは、直訳すると持続可能な観光を意味します。サステナブルツーリズムは、従来的な観光業による商業化が引き起こす環境汚染や生活環境破壊などの問題を避け、自然環境を守りつつ、地域の自然や文化を生かした観光地づくりを通じて観光業を活性化させ、住民の暮らしを向上させる取り組みです。

世界で注目されるサステナブルツーリズム

今、日本を含め世界のあちこちでは、過剰な観光客の来訪や行き過ぎた開発などが原因で、住民の生活環境や自然環境に過度な負荷をもたらすという問題が起こっています。このような背景があり、環境保全の観点からサステナブルツーリズムの必要性が高まっています。

サステナブルツーリズムにおける有名な活動事例の1つが、パラオによる「パラオ誓約書」の取り組みです。同国では、観光客が入国する際、環境保護を誓約する文書に署名しなければ入国することができません。

一方、日本ではサステナブルツーリズムの取り組みは一部の地域では進んでいるものの、全体としてはあまり浸透していないのが実情です。

サステナブルツーリズムは国際認証がある

国連では、サステナブルツーリズムの促進に向けて、各地の観光における持続可能性を測る指標として、「サステナブルツーリズム国際認証」を設けています。持続可能な観光地としての認証を受けるには、国連が定める国際基準を満たすことが条件とされています。

世界でサステナブルツーリズム国際認証を受けた地域としては、スペインのバルセロナやカタルーニャ地方、アイスランドの西部フィヨルドやスナイフェルス半島、ニュージーランドのカイコウラなどが挙げられます。

サステナブルツーリズムで重視する4つのポイント

サステナブルツーリズムを効果的に進めるうえで重視すべきポイントが4つあります。ポイント別にそれぞれの詳細をご紹介します。

POINT01環境や文化を維持すること

サステナブルツーリズムでは、環境や文化の維持を重要視しています。観光が大衆化した一方、観光地では高まる需要に応えるために無理な開発を進めた結果、自然が破壊されたり、観光客の増加でゴミ問題が発生するなど、自然環境の悪化が懸念されています。

こうした問題の防止に向けて、自然環境や地域文化の維持を第一に掲げて観光振興に努める必要があります。

POINT02地元の住民に配慮すること

地元の住民への配慮もサステナブルツーリズムにおける重要なポイントです。外部からの資本投入などにより、観光地化が進めば経済的に潤う一方、ゴミ問題や交通渋滞、騒音問題などの発生により、地元の住民の快適な暮らしが脅かされます。このためサステナブルツーリズムでは、地域住民の生活環境を守る取り組みも不可欠です。

POINT03伝統文化を守ること

サステナブルツーリズムでは、伝統文化の持続可能性も視野に入れて取り組む必要があります。例えば祭りなどの行事や食文化、工芸技術など、地域で何百年と受け継がれてきた伝統文化は、過疎化や関心の希薄化などが原因で一度廃れてしまうと再生は困難です。

こうした伝統文化に光を当てて観光にうまく活用すれば、新たな観光資源としての価値が見出され、次世代への継承も可能となります。

POINT04排ガスの規制に取り組むこと

今や国際的な枠組みの下、温室効果ガスの排出量削減に向けて世界各国が自国に課せられた義務の履行に努めています。

観光業界でも、例えば観光客の移動にバスの代わりに鉄道を利用したり、電気自動車の利用を促進したり、温室効果ガスの削減に努める旅館やホテルを利用するなどの施策を通じて、排ガス規制に貢献することが可能です。

サステナブルツーリズムと他のツーリズムの違い

サステナブルツーリズム以外にも、類似する概念がいくつかあります。また、真逆の意味を持つ概念もあります。それぞれ具体的にどう違うのか、ポイント別にご紹介します。

マスツーリズムとの違い

マスツーリズムとは、元々富裕層のみに限定されていた観光という娯楽が、第二次世界大戦後の経済発展を通じて一般大衆にも普及した現象を指します。

幅広い層の人々が旅行を楽しめるようになった反面、過度な商業化が原因で自然環境や地域文化が破壊される地域も続出しました。

サステナブルツーリズムが注目されるようになった背景には、こうした従来的なマスツーリズムがもたらす課題を解消しつつ地域振興を図る狙いがあります。

エコツーリズムとの違い

サステナブルツーリズムと類似する用語として挙げられるのが、エコツーリズムです。エコツーリズムでは、持続可能性と環境保護を念頭に置きつつ、地域の自然や歴史、文化などを観光資源として活用し、その魅力を観光客に学習・体験してもらう取り組みを指します。

観光客がそれら観光資源の価値や魅力、大切さを理解することが保全につながるといった考えに基づいています。

グリーンツーリズムとの違い

グリーンツーリズムもサステナブルツーリズムと混同しがちな概念の1つです。グリーンツーリズムは、例えば農家民泊や農作業体験など、農村や漁村に滞在しながら地域の自然や文化に親しみ、人々との交流を楽しむ旅のスタイルです。農業や漁村の地域活性化、新たな産業の創出などにつながる効果が期待されています。

サステナブルツーリズムに通じるSDGsの目標

今や一般的な社会通念となったSDGs(持続可能な開発目標)ですが、サステナブルツーリズムはSDGsとの関連性が強い取り組みです。

SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成されています。例えば目標8「働きがいも経済成長も」は環境保全と持続可能な経済成長、すべての人が働きがいと十分な収入を得ることを目指している点で、サステナブルツーリズムとの共通性を見出すことができます。

このほか、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標12「つくる責任つかう責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」なども、サステナブルツーリズムと特に深い関連性があります。

サステナブルツーリズムを取り入れた観光業とは

実際にサステナブルツーリズムを取り入れた観光の取り組みにはどのようなものがあるか、2種類の活動から詳しい内容を見ていきます。

01アウトドアアクティビティ

豊かな自然を生かしたアウトドアアクティビティを観光に組み込むのも、サステナブルツーリズムのよくある取り組みです。例えば、川や湖でのカヌー漕ぎや急流を下るラフティング、森林地帯でのツリークライミングなど、地域の自然環境を生かしたアウトドアの楽しみ方があります。

日本国内でのアウトドアアクティビティの事例として有名なのが、群馬県みなかみ町での取り組みです。豊かな自然を生かし、激流を下るラフティングを観光資源として若者を呼び込んだ結果、観光客数減少に歯止めをかけることに成功しました。

02文化体験

地域の伝統や歴史、文化などに親しむ文化体験を軸とした取り組みも、サステナブルツーリズムの一つの形です。豊かな自然や長い歴史のなかで多彩な文化が育まれてきた日本は、陶芸や機織り、蕎麦打ち、染物など、観光客が手軽に体験可能な観光資源の宝庫です。

文化体験は、地元のその道の専門家がインストラクターを務めるため、地域とのコミュニケーションが促進される効果もあります。

日本では、岐阜県がどこよりも先駆けてサステナブルツーリズムを進めた地域として評価されており、地域文化の魅力を観光客に伝えるための数々の取り組みで多くの注目を集めています。

サステナブルツーリズムの観光事業例

日本では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。サステナブルツーリズムに積極的に取り組んでいる2つの観光事業をご紹介します。

【徳島県】伝統や文化を活用した観光事業

徳島県西部の「にし阿波エリア」4市町村では、地域連携でDMO(観光地域づくり法人)を立ち上げ、伝統的な傾斜農法や農業文化を地域資源として活用するサステナブルツーリズムを提案しています。

サステナブルツーリズムの立ち上げで課題となったのは、オンライン予約の環境整備やインターネットでの情報発信、多様な決済手段への対応でした。

そこで、体験コンテンツの申し込みや決済に対応できる専用のオンラインシステムを活用することで、オンライン販売の体制が確立され、提供者側の負担も軽減されました。

異なる事業者間の連携やインバウンド旅行の誘致などにも活用され、地域活性化に寄与しています。

【北海道】アドベンチャートラベルから始まる新しい取り組み

アドベンチャートラベルは、主に富裕層の外国人旅行者を対象に国が進めているインバウンド観光促進施策の1つです。アドベンチャートラベルは、さまざまなアクティビティを通じて地域の文化を知る取り組みとして、サステナブルツーリズムの1つに数えられます。

他地域に先駆けてアドベンチャートラベルに取り組んできた実績を持つ北海道では、2023年にアドベンチャー・トラベル・ワールド・サミットの開催が予定されています。サミット開催に向けて地域連携の下、新たなアドベンチャートラベルの旅行商品の開発も盛んに行われています。

まとめ

従来のマスツーリズムは地域に経済的利益をもたらす一方、生活環境や自然環境が破壊される要因も生み出してきました。過度な商業化を避け、自然環境の保全に努めながら地域を活性化させ、住民の生活向上にも貢献するサステナブルツーリズムは、新たな可能性を秘めた次世代の観光スタイルとして注目されています。皆さまの地域でもサステナブルツーリズムの推進を検討されてみてはいかがでしょうか。

最後に、お役立ち資料を紹介します。本資料では、「持続可能な観光」をテーマに、サステナブルツーリズムに対する有識者の見解や、ハワイと北海道・阿寒湖の取り組み事例をダイジェストで紹介しています。ぜひ、ご覧ください。


ホワイトペーパー(お役立ち資料) Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~(Vol.1)「持続可能な観光」

コロナを経て、観光のスタイルやニーズは大きく変わり、さまざまな課題に直面した自治体様が多いのではないでしょうか。また、SDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みも求められる中、これからの観光のあり方を模索されていることと思います。 本号では、「持続可能な観光」をテーマに、サステナブルツーリズムに対する有識者の見解や、ケーススタディとして、ハワイと北海道・阿寒湖の取り組み事例をダイジェストでご紹介しています。自治体のみなさまの取り組みの参考としていただければ幸いです。

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