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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 地域に眠る唯一無二の体験で滞在型観光にかじを切る。

2023.10.16
地域マーケティング
戦略策定
誘客促進
インバウンド
人材育成

滞在地域の自然や歴史を体感するアドベンチャーツーリズム(以下、AT)が今、 地域課題解決という観点から注目され、世界の富裕層からも人気を集めています。 住民の生活と自然環境を保護しながら、地域の活性化を図れるATに魅かれ、 まちづくりの一環としてATに取り組む、NPO法人湯来観光地域づくり公社理事長佐藤亮太氏のインタビュー記事が、ジチタイワークス10月号に掲載されました。

以下、2023年10月16日(月)発行、ジチタイワークスVol.28で掲載された記事になります。当記事の著作権は株式会社ジチタイワークスに帰属します。

プロフィール

NPO法人 湯来観光地域づくり公社
理事長
佐藤 亮太 氏

滞在地域の自然や歴史を体感する「アドベンチャーツーリズム(以下、AT)」が、世界の富裕層に人気だ。観光だけではなく、地域課題の解決手段としても注目されているという。広島市湯来町(ゆきちょう)でATに取り組む佐藤さんに話を聞いた。

湯来の魅力は世界に通じると確信しATをまちづくりの起爆剤にする。

古くから温泉地として親しまれてきた同町。豊かな水と森に恵まれ、大自然を満喫できるロケーションを誇る。しかし、広島市中心部から車で約1時間という好アクセスがかえってあだとなり、日帰りの通過型観光地となっていることが課題だった。

平成26年、同町に移住してきた佐藤さんは、「長期間滞在する外国人旅行者に、私が経営するカフェを手伝ってもらっていました。そこで印象的だったのが、4カ月間滞在したドイツ人青年の“湯来で人生が変わった”という言葉です。エンジニア志望だった彼は帰国後、森林経営の大学に進みました。“湯来の夕方の香りと空気は最高だ”と言ったオランダ人もいました。ここの素晴らしさが世界にも通じることを実感し、“まちを観光で盛り上げたい”と思うようになったのです」と話す。

平成30年、佐藤さんは「NPO法人湯来観光地域づくり公社」の理事長に就任。そして出合ったのが、ATだったという。「ATでは、旅を通じて自己の内面を“変容”させ、環境に負荷をかけない“持続可能な旅”であることが求められます。私の理想と完全に一致していたので、湯来のまちづくりに取り入れようと決意しました」。

住民や環境に負荷をかけずに 地域が潤う仕組みがある。

ATとは“アクティビティ・自然・文化体験”のうち、2つ以上の要素で構成される旅行のこと。数日間滞在して、その地域の自然や文化、歴史などを体感し、人々と交流する旅行形態だ。高付加価値の体験を求める欧米の富裕層に支持され、客単価も高い傾向にあるという。国としても、インバウンド誘致に向けたAT推進の動きがあり、関心が高まっている。

佐藤さんも「ATでは、価値のある体験にはそれに見合った価格を設定するので、地域が潤います。また、対象が少人数グループなのでオーバーツーリズムの心配がなく、外国人旅行者なら土日に集中することもない。住民の生活や、豊かな自然を守りながら、まちの活性化を図れるのが魅力です」と話す。

日本のATには、「交流創造事業※」を展開する「JTB」がグループを挙げて、初期段階から積極的に関わってきた。佐藤さんが同社と出会ったのは、自身で開いたATの勉強会だったという。そこで、地域課題の解決手段としてATを推進する同社の考えに共感し、令和3年、まずは一緒に中国運輸局の事業に申請した。それが無事に採択されて、広島におけるATの取り組みが始まったというわけだ。

「交流創造事業」は株式会社JTBの登録商標です

オンリーワンのコンテンツを整え地域一丸となって世界へ発信。

現在、佐藤さんは広島市周辺エリアでのツアー造成に取り組んでいる。「広島市だけではなく、江田島市(えたじまし)などまでエリアを拡大して、プログラムを考案しています」。旅行者に自己変容を促すためには、ツアーのコンセプトがカギを握る。まちに息づく先人の物語を伝えたり、アクティビティを通して生態系への理解を深めたり、コンセプトに沿ったプログラムづくりを徹底しているという。例えば、広島を知る上で、戦争についての歴史は無視できない。「原爆投下の3日後に動きはじめた市電には、“復興に向けて人々が歩みだせるように”と奮闘した会社員たちの思いがあります。それらの史跡やストーリーを巡ることで、広島のまちを知ってほしいと考えています」。こうして造成したツアーには、同社のサポートで招いた国内外の専門家がモニターとして参加。アドバイスや意見をもらい、コンテンツの磨き上げにも力を入れている。

「広島を伝えたいと願う仲間が集まっています。もちろん、JTBさんもチームの一員。今も毎日のようにチャットでやりとりして、様々な準備や手配を進めています」。広島のツアーはすでに、同社を通じて海外で販売されている。10月からは同社の国内キャンペーンでも、プロモーションを本格化させるという。ATが旅の選択肢として定着する日も近そうだ。

主役は地域の事業者

様々なコンテンツを開発したり、提供したりするのは地域の事業者たち。自治体とJTBには、その取りまとめやサポートが求められる。

自治体の役割

  • ATの普及・啓発
  • 補助金の申請
  • 広報など

JTBの役割

  • コンサルティング
  • コンテンツの発掘・磨き上げ
  • 専門家の派遣
  • 人材育成
  • 流通チャネルの確保など

関連事例

広島でしかできないアドベンチャーツーリズムで目指す!通過型観光地からの脱却!


ホワイトペーパー(お役立ち資料)Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~(Vol.3)「アドベンチャーツーリズム」

アフターコロナの旅行のあり方として、少人数でより付加価値の高い体験を提供できる旅行である「アドベンチャーツーリズム」へのニーズが高まっています。世界的に注目を集め、日本でも取り組みが進む今、アドベンチャーツーリズムを推進していきたいとお考えの自治体様も多いのではないでしょうか。

これからの観光への提言として、自治体のみなさまのお役に立つ情報をマガジン形式で発信している「Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~」。本号では、「アドベンチャーツーリズム」をテーマに、アドベンチャーツーリズム市場の動向や日本におけるアドベンチャーツーリズムの可能性、アドベンチャーツーリズム商品の流通における課題についての有識者の見解をお示しするとともに、ケーススタディとしてスイスと北海道・東川町の取り組み事例をご紹介しています。自治体のみなさまの取り組みの参考としていただければ幸いです。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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