中国地方の観光スポットである原爆ドームを有し、世界的に平和都市としての認知度も高く、欧米豪からの来訪が多い広島県広島市。広島市中心部から1時間足を伸ばせば、美しい自然や清流が多く残されているものの、近隣地域への来訪が伸びないことが課題でした。そこで、通過型観光地から滞在型観光地へのシフトを目指し、「平和×アクティビティ」の広島でしかできないアドベンチャーツーリズムを造成、在日外国人を招聘したモニターツアーを実施しました。
- 背景
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中国地方の観光スポットである原爆ドームや宮島を有する広島県広島市及び廿日市市。特に広島市は世界的に平和都市として認知度が高く、欧米豪からの来訪が多いものの、近隣地域への来訪が伸びない通過型観光地となっていることが課題でした。
広島市中心部から50分という立地にありながら、美しい自然と清流が多く残されている湯来町は、アドベンチャーツーリズムの構築に力を入れ、近年、体験型コンテンツの開発も進んでいます。そんな近隣地域の自然を生かし、「平和×アクティビティ」をテーマに広島でしかできないアドベンチャーツーリズムを造成できないか、中山間地域の持続可能な観光のあり方を提示できないか、とスタートした事業でした。
JATO(日本アドベンチャーツーリズム協議会)、NPO湯来観光地域づくり公社と連携し、中国運輸局のアドベンチャーツーリズムモデルツアー造成事業を新規受託。広島市・江田島市・廿日市市(宮島)の広域エリアにて、観光課題である通過型観光からの脱却を図ることを目的に、コンテンツの棚卸しや磨き上げを行い、在日外国人を招聘したモニターツアーの実施に至りました。
- 課題
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- 通過型観光からの脱却
- 広島市近郊エリアの認知度拡大
- コーディネーター・ガイドの育成
- 交流人口の減少
- 実施内容
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アドベンチャーツーリズムとは?
アドベンチャーツーリズムとは、「アクティビティ」「自然」「文化」体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行。 旅行者が地域独自の自然や地域のありのままの文化を、地域の方々とともに体験し、旅行者自身の自己変革・成長、地域経済への貢献を目的とする旅行形態です。 欧米豪を中心に72兆円の市場があり、高付加価値アクティビティ体験や長期滞在等の要因から、通常の旅行者の約2倍の消費をすると言われています。
アドベンチャーツーリズム6つの観点
- ユニーク&新しい体験
- 地域への経済貢献
- 自然文化保護
- チャレンジ要素
- 本物らしさ(コンテンツの正当性)
- 欧米アドベンチャーツーリズム顧客へのアピール性
事業内容
01検討会実施
地域事業者等とのコンセプトの確認、地域資源調査報告・モニターツアー実施方針及び招請者の検討。
02地域資源調査
- 体験型の着地型旅行商品のデータベースを活用し、カテゴリー分類を行いながら整理、一覧化。
- 連携団体を中心にヒアリングを実施し、コンセプトに合うコンテンツを選定。
03コンテンツ・モデルツアー企画開発
事務局にて作成した仮説を基に、検討会での議論を踏まえ、モニターツアーに向けコンセプトやストーリーを作成。
04人材育成研修
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アドベンチャーツーリズムに関する研修会
- 対象
- 旅行業者や地域事業者
- 内容
- アドベンチャーツーリズムに対する基礎知識、ツアー造成のポイント理解を深めるためのセミナー、ワークショップの実施。
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コーディネーター・人材育成に関する研修会
- 対象
- コーディネーター、ガイド、アクティビティー事業者
- 内容
- 顧客のニーズに合わせてツアーをコーディネートする人材、コンテンツの体験価値を大きく左右するスルーガイド育成。 (多言語対応含む)に向け、専門機関等と連携して必要な知識やスキル習得。
05モニターツアー実施
- 実施日
- 2021年10月26日~30日
- 内容
- 検討会にて討論したコンセプトを基にツアー内容を構築、3名の有識者を招き、モニターツアーを実施。
DAY01オリエンテーション:市内トレッキング、平和学習、交流会DAY02湯来町 シャワークライミング・大峯山トレッキング・古民家宿泊DAY03江田島サイクリング・SUPDAY04江田島~宮島 宮島弥山登山DAY05厳島神社参詣、広島市内サイクリング 意見交換会06販売体制の構築
- モニターツアーで磨き上げを行ったコンテンツの商品化。
- 旅行会社の海外ネットワークを活用して、対象市場の旅行業者へ広くアプローチを図り、令和4年度以降に販売できるよう旅行商品化の推進、販路の形成。
広島のアドベンチャーツーリズムならではの特徴
- 「平和」や「歴史」にフォーカス
- 自然にフォーカスし過ぎず、コンセプトやストーリーを重視し、精神的な自己変容を促すことに注力
- 専門家、有識者からの視点、意見交換による磨き上げられたコンテンツ
- 導入効果
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「地域資源調査」でネットワーク構築
広島市周辺の観光ルートは、原爆ドーム・平和公園や宮島等既存の観光スポットでほぼ固定されていたが、今回の観光地周辺の観光資源調査により、湯来町や江田島などのアドベンチャーツーリズムと親和性の高い観光資源を発掘し、さらなる可能性の可視化に成功しました。また、各観光事業者や地域に対し、今までにない新たな示唆を与え、今後の広島地域におけるアドベンチャーツーリズム推進に向けたネットワーク構築にもつなげることができました。
「コンテンツ・モデルツアー企画開発」でコンテンツの磨き上げ
検討会にて関係者による熱量ある議論が行われたことで、オリジナリティあふれるコンセプトの策定に成功しました。また、広島地域におけるアドベンチャーツーリズムの理解にもつながり、コンセプトとリンクしたモデルツアー構成により、参加者にとってまた違う広島の扉を開けるきっかけとなりました。
「人材育成研修」でスルーガイドの育成
アドベンチャーツーリズムのコンテンツ造成に関するノウハウの基礎を学んでもらうことで、中心顧客である欧米豪のニーズに対応でき、スポットにおける体験やアクティビティのガイドではなく、複数日の行程を広域的に企画・オペレーションできるコーディネーター育成の第一歩につながりました。
「モニターツアー」で広島県域の新たな魅力を発見
モニターツアー招請者3名を、アクティビティ専門家、ホテル経営及びアクティビティ運営事業を兼務している専門家、欧州市場におけるインバウンド商品造成経験豊富な専門家と、バランスのとれたメンバー構成で編成することができ、各専門家の視点で各コンテンツに対して示唆に富む有効な指摘をいただくことができました。
- おすすめポイント
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観光立国として成長するための4要素である「文化」「食」「気候」「自然」とも合致しているため、今後の「成長市場」として今注目されているアドベンチャーツーリズム。多くのアドベンチャーツーリズム旅行商品に盛り込まれるアクティビティは、単なる「アウトドア体験」の枠にとどまらず、自然の豊かさを感じ、そのエリアの生態系や歴史文化を自らが体験するための手段にもなります。地域の魅力を体験・体感できるアドベンチャーツーリズムで地方創生を目指していきませんか?ぜひ、お気軽にご相談ください。
当該事業に関わった観光事業者を中心に、主体的な取組が出来たことから、広島におけるアドベンチャーツーリズムを推進する機運が醸成され、今年6月には官民一体で広島アドベンチャーツーリズム協議会を設立しました。2023年には広島市でG7開催、北海道ではATWS(アドベンチャートラベルワールドサミット)が開催されることから、広島アドベンチャーツーリズムの魅力を発信できる絶好の機会と捉えています。JTB広島支店も協議会メンバーとして、中長期視点で活動をサポートしてまいります。