キャリア教育とは『一人一人の社会性、職業的自立に向け、必要な基盤となる能力を育てること』です。キャリア教育には企業も参入していますが、課題も生じているのが現状です。この記事はキャリア担当者の教職員に向けて、企業が参入しにくい理由や学校段階別の課題を解説します。キャリア教育の参考にしてください。
INDEX
- キャリア教育とは
- キャリア教育と職業教育の違い
- キャリア教育が重視される理由
- 学校段階別のキャリア教育の課題
- キャリア教育の充実に向けた対策
- まとめ
キャリア教育とは
キャリア教育にはどのような目的があるのでしょうか。概要と併せて詳しく解説します。
概要
キャリア教育とは、子どもたちの職業的、社会的自立を目標にして学ぶ意識を高め、自分らしく生きていく能力を育てる教育的な働きかけのことです。文部科学省では『一人一人の社会性、職業的自立に向け、必要な基盤となる能力を育てることを通じて、キャリア発達を促す教育』と定義されています。
キャリア教育は1999年にニート・フリーター対策として提唱され、現在は学習指導要領としてカリキュラムに組み込まれています。
目的
キャリア教育の目的は、社会の中で生きていく能力を育て、職業人として自立を促すことにあります。キャリア教育では子どもの個性や発達段階を踏まえて目標設定することがとても重要です。小学校や中学校、高校と発達段階に応じて、社会見学や企業での職業体験、インターンシップなどが行われています。
キャリア教育と職業教育の違い
キャリア教育と職業教育はよく一緒に使われる用語ですが、内容は異なります。なぜなら、キャリア教育は生きていく能力を育て、職業人として自立を目指しますが、職業教育は具体的な職業の知識や技能の習得に重点が置かれるからです。そのため、内容は異なりますが、自立を目指すという意味では方向性は同じと考えていいでしょう。
キャリア教育が重視される理由
キャリア教育が重視される理由は時代の変化が背景にあります。たとえば、少子高齢化や終身雇用制度の崩壊、グローバル化など、若年層の就業環境に大きな変化がありました。その中で、大人が働く姿を見る機会が減ったこともキャリア教育が重視される理由です。また、上級学校への出口指導だけでなく、自分で生きていく力を養うためにも必要とされています。
キャリア教育の課題とは
キャリア教育の課題には、イメージが統一されていない、収益化が難しく企業が参入しにくい、企業の担当者に負担がかかるなどがあります。それぞれ具体的に解説します。
イメージが統一されていない
キャリア教育の定義や解釈、イメージが曖昧で救育現場で統一されていないことが課題としてあげられます。また、キャリア教育に対しての受け止め方や教育内容は人によって異なり、内容にばらつきがあるという問題もあります。そのため、現場で何を取り組めばいいのか分からなかったり、その場限りの対応になってしまうことがあります。
収益化が難しく企業が参入しにくい
キャリア教育を行っても収益化が難しく、企業が参入しにくいという課題もあります。キャリア救育は子どもが社会に出たあとの実践の場として、企業と学校の結びつきが必要になります。ですが、キャリア教育をメインに事業展開する企業が少なく、キャリア教育事業を立ち上げても持続的に拡大することが難しいという課題があるのです。
企業の担当者に負担がかかる
キャリア教育を行うには、企業の担当者に負担がかかるという課題もあります。たとえば、キャリア教育の代表的な手法にインターンシップがあります。多くの企業では採用担当者が担いますが、インターンシップの受け入れが仕事の主目的ではないため、通常業務への負荷がかかるのです。また、協力する各部門の社員にも負担がかかります。
学校段階別のキャリア教育の課題
キャリア教育の課題について、小学校~大学まで学校段階別に分けて解説します。
小学校
小学校でキャリア教育を行う場合、キャリア教育担当者を学校に配置してはいるものの、担当者が1人のみで、担当者がほかの担当と兼任しているという課題があります。そのため、担当者がキャリア教育に集中できないという問題が発生するのです。小学校でキャリア教育を成功させるには、組織の確立や全体計画作成を推進する必要があります。
中学校
中学校の場合では、小学校と比較するとキャリア教育が進み、定着化しています。また、多くの学校で職業体験活動が実施されている一方で、体験活動に終始してしまうという課題があります。そのため、体験活動だけにとどまらず、広く社会で通用する知識や技術、技能を幅広く身につけていくことが大切です。
高校
高校の場合のキャリア教育の課題は、就職指導や進学指導は行われているものの、就職指導や進学指導のみに終始する学校が少なくないということです。また、普通科高校のインターン実施が少ないということも課題です。徐々に改善されつつありますが、キャリア教育のインターンシップを行ってほしい、という学生によるアンケート回答も多くあります。
大学
大学におけるキャリア教育の課題は、社会で活躍する実践的なスキルや知識を身につけられるか、という点です。なぜなら、学生と企業のミスマッチで3年以内の離職率が高いという社会問題があるからです。その背景には、キャリア教育は担当教員のみが行うものという認識が強く、全体的なキャリア教育が行われていないという点があります。
そのため、専門的な知識や技能とともに、社会との関わり方や目標を身につける能力をつけさせる必要があるのです。
キャリア教育の充実に向けた対策
ここからは、キャリア教育の充実に向けた対策として、キャリア教育の義務化と企業や社会との連携強化の2点について解説します。
キャリア教育の義務化
キャリア教育の充実に向けた対策として、義務教育から高等教育まで体系的な改善が必要とされます。この期間では働くことを通じて、社会とのつながりや関わり方を身につけます。大学ではキャリア教育の義務化により、就職支援だけでなくキャリア教育科目の設置、学部の設置などが行われています。
企業や社会との連携の強化
キャリア教育の充実に向けた対策では、企業や社会との連携強化も求められます。たとえば、教育体験や教材を充実させるために、学校だけでなく保護者、地域、企業との連携強化が必要です。企業側としては、施設見学、講師派遣、職場体験などが実施できるでしょう。
また、コロナ禍でオンラインを利用したキャリア教育のケースが増えてきています。キャリア教育を行うことで職場の整理整頓や地域社会とのつながり、モチベーションアップにつながるというメリットがあります。
また、人事部からするとキャリア教育を行った若者の意識や実態を把握でき、採用活動に反映できるでしょう。
まとめ
キャリア教育とは一人一人の社会性、職業的自立に向け、必要な基盤となる能力を育てることを言います。小学校、中学校、高校、大学と、それぞれ異なる課題を抱えています。キャリア教育は少子高齢化、終身雇用制度の崩壊、グローバル化など、若年層の就業環境に変化があったことで、注目され必要とされています。本記事の内容をぜひキャリア教育にお役立てください。
JTB法人サービスサイトは学校の課題解決につながる幅広いソリューションを掲載しています。お気軽にお問い合わせください。