キャリア教育とは自分の進路を切り開く主体性や、社会で働くための基盤を身につけるために行います。本記事では教職員の方に向けてキャリア教育の必要性を解説します。具体的には、キャリア教育はなぜ必要か、重要視されるようになった背景や、キャリア教育で育成すべき能力、キャリア教育には地域・企業等の協力も必要なことなどを解説しますので、キャリア教育の参考にしてください。
INDEX
- キャリア教育の必要性とは
- キャリア教育とは
- キャリア教育で育成すべき「基礎的・汎用的能力」とは
- キャリア教育には地域・企業等の協力も必要
- キャリア教育への企業の関わり方
- 企業等の取り組みに対する経済産業省の表彰制度
- 企業のキャリア教育への関わり方の事例
- まとめ
キャリア教育の必要性とは
キャリア教育がなぜ必要か、重要視されるようになったのかについて解説します。
考えられる必要性
現代の子どもたちに働くことの意味を伝えるために必要
世の中はITの進化により人との関わりが減ったり、働く大人の姿を見る機会が減ったりなど、環境の変化が起きています。そのため、子どもたちの「働くこと」に対しての興味や関心が薄れているのではないかといった懸念点があります。その解決策として、働くことの意味を伝えるキャリア教育が必要なのです。
重要視されるようになった背景
日本の社会構造の変化が影響
先述したような若年層の就職、就業環境の原因や子どもたちの抱える問題の原因として、日本の社会構造の変化が影響している点があげられます。たとえば、以下のような問題です。
- 少子高齢化
- 終身雇用制度の崩壊
- IT化などによる外部体験の機会減少
若者の自立の遅れ、とはどのようなことか
若者の自立の遅れは以下のようなことがあげられます。
- 人間関係の構築が上手くできない
- 自己肯定感がない
- 自信が持てない
- 自ら意志決定できない
- 将来に希望が持てない
- 具体的な目的意識がなく進学
- 就職しても長く続かない
その結果、社会の一員としての経験や意識も不足してしまうのです。
キャリア教育を通して若者の精神的・社会的自立を促すことが国の課題になった
上記のような背景への解決策として、具体的には若者の精神的、社会的自立を促すことが求められています。たとえば、生きる力を持った若者の育成が必要とされるでしょう。これは文部科学省の「新しい学習指導要領」の考え方にもつながります。
キャリア教育とは
ここからは、あらためてキャリア教育とは何かについて解説します。
文部科学省によるキャリア教育の定義、目的
中央教育審議会(文部科学省)によると、キャリア教育とは『一人一人の社会的、職業的自立に向け、必要となる基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育』と定義されています。キャリア教育は社会で活躍するための基礎的、汎用的能力を育成すべきとされています。
詳しくは次の見出しで解説していきます。
参考:文部科学省「教育とは何か」
学習指導要領の改訂によりカリキュラムに組み込まれた
学習指導要領の改訂により、キャリア教育がカリキュラムに組み込まれました。具体的には、幼稚園2018年~、小学校2020年~、中学校2021年~全面実施、高等学校は2022年~年次進行で実施、特別支援学校は、小・中・高等学校学習指導要領に合わせて実施されます。詳細は「新しい学習指導要領 生きる力 学びの、その先へ」に題されています。
キャリア教育の2つの側面
キャリア教育には2つの側面があります。
- 学校教育内で社会人になるための能力を開発する
- 主体性の育成
これには学校教育を通じて社会人としての素養を身につけることと、働くことに対して意欲的に取り組む姿勢を育てる目的があります。自分の進路を自分で切り開けるようにすることも目的です。
キャリア教育と職業教育の違い
職業教育とは、実際の職場で業務を行うために必要な、技能や知識を身につける実践型の教育です。それに対してキャリア教育は、職場に就く前の社会人としての姿勢や、考え方を身につける教育ですので、両者は異なります。ただし、最終的に社会人として活躍するための力を育てるという意味では共通点があります。
キャリア教育で育成すべき「基礎的・汎用的能力」とは
文部科学省によると、キャリア教育で身につけるべき「基礎的・汎用的能力」は4つに分類されます。
- 人間関係形成・社会形成能力
- 自己理解・自己管理能力
- 課題対応能力
- キャリアプランニング能力
それぞれは、どれかひとつを身につければいいというわけでなく、相互に関連、依存関係にあります。そのため、満遍なく身につける必要があるのです。文部科学省の内容から以下のようなことが読み取れますので、それぞれの詳細は次の見出しで解説します。
「人間関係形成・社会形成能力」
「人間関係形成・社会形成能力」は他者の立場や考えを理解したうえで、相手の意見を聴いて自分の考えを的確に伝えることが出来る力のことです。そのうえで、自分の置かれている状況を理解し、役割を果たしながら、他者と協力・協働して社会に参加し、今後の社会を積極的に形成することが出来る力がもとめられます。
「自己理解・自己管理能力」
「自己理解・自己管理能力」とは、自分が「したいこと」「意義を感じること」「出来ること」などについて主体的に行動すると同時に、自分の感情や思考をコントロールし、今後の成長のために前進しながら学ぶ力のことです。また、社会との相互関係を保ちながら、自分自身の今後の可能性を含めた肯定的な理解に基づきます。
「課題対応能力」
「課題対応能力」とは、職業に就いてから仕事をする中で、課題を発見、分析し、それらを計画を立てながら仮説検証を繰り返し、結果的に問題解決に導くことの出来る力です。仕事で予期せぬトラブルが発生したときに求められる力になります。
「キャリアプランニング能力」
「キャリアプランニング能力」 とは、「働くこと」の意義を理解したうえで、自らが果たさないといけないさまざまな役割や立場との関係を理解し、「働くこと」を位置付けして、主体的に物事を判断しキャリアを形成していく力です。その際には、多様な生き方に関する情報を適切に取捨選択して活用していくことが大切になります。
キャリア教育には地域・企業等の協力も必要
キャリア教育を推進するには学校だけでは出来ないため、地域・企業等の協力も必要です。地域・企業等の協力による「社会に開かれた教育課程」を実現することが、子どもたちへリアルな学習機会を提供することにつながります。
キャリア教育への企業の関わり方
ここからは、キャリア教育への企業の関わり方について解説していきます。
どのような取り組み(教育支援)があるか
教育支援には以下のような取り組みがあります。
- インターンシップの実施
- 幅広い対象者に向けて会社見学の受入れ
- 職場体験、仕事体験の受入れ
- 各種イベントの実施
- 地域企業と協力し職業体験や研修会を実施する
- 学校に講師として社員を派遣する
キャリア教育支援は企業にもメリットをもたらす
キャリア教育支援は企業にもメリットをもたらします。具体的には、採用活動で適した人材を採用することに役立つでしょう。そのため、キャリア教育は企業にもメリットがあるのです。
企業等の取り組みに対する経済産業省の表彰制度
キャリア教育について、優秀な取り組みを行った企業や教育機関、自治体を表彰する制度もあります。具体的には、経済産業省がキャリア教育支援に取り組む企業に対して表彰制度「キャリア教育アワード」を開催しています。また、学校関係者への表彰制度には「キャリア教育推進連携表彰」があります。
企業のキャリア教育への関わり方の事例
事例01
ある企業ではキャリア教育の取り組みが経済産業省の「第10回キャリア教育アワード大企業の部」で表彰されました。プログラム内容は小中学生が社会問題について学び、その解決策を取り組むという内容です。
事例02
ある財団と大学のプロジェクトでは子どもが科学の分野に興味を示すためのプロジェクトを発足させました。これは科学のさまざまな体験を実施できるプロジェクトとなっています。
事例03
あるIT企業では学生向けにプログラムを発足し、経済産業省主催の「キャリア教育アワード」で経済産業大臣賞を受賞しました。これは火星の暮らしをテーマにした斬新なアイデアのキャリア教育でした。
事例04
ある民間企業では、中学生から大学の活動についての認識を深めようという趣旨のプログラムを発足しました。その結果、中学生と大学生の座談会が実施されたり、交流できたりしています。
事例05
ある都道府県では、県内で働きたい若者と、県内企業とのマッチングをサポートするセンターが開講されています。実際に体験を通じて、県内で働くことにより、働きたい若者と企業との相乗効果が期待出来る取り組みです。
まとめ
キャリア教育は子どもが社会で活躍するための基盤作りを行うために必要とされている取り組みです。キャリア教育を成功させるためには、内容の理解はもちろん、目的に向けて取り組みを行うことが大切です。本記事ではキャリア教育の概要やメリット、取り組み方、事例まで幅広く解説しました。キャリア教育にぜひお役立てください。