その地ならではの、とびっきりの人に逢いにいく「観光人クエスト」。
観光の語源は、「観音菩薩の光」を観ること。つまり、「本質」や「本物」を観ることだと言われています。より良い未来を創るために本質的なモノやコトに光を当て、自らも光り輝くような活動をしている人のことを、私たちは「観光人」と呼びます。
観光人に出逢うことで新たな自分に出逢い、自分の価値観やあり方、心の動きを探求してほしい。そんな思いを込めて、教育プログラム「観光人クエスト」を創っています。この記事では、そんな観光人の一人、福岡奈織さんのストーリーとプログラムの様子をご紹介します。
INDEX
狭いと思っていた広島は、想像以上に広かった
- 福岡さん
- 「正直、広島を信用していなくて。広島じゃだめだと思っていたんです。高校時代は、『将来は東京や海外で働きたい!』と言っていました」
そう振り返る福岡さん。何がキャリアの方向性を変えるきっかけになったのでしょうか。
- 福岡さん
- 「高校卒業後は県外の大学に通いたいと思っていたのですが、結局広島の大学に通うことになってしまって。仕方なく、自分にできる最大限のことをやろうと思っていたときに、広島が国際平和文化都市であることに気づいたんです」
「海外から広島に来る人たちと対話したい」そんな思いを抱きながら関わるようになった平和活動を通して、思っていた以上に広島が世界と繋がっていたことを知ります。その後、被爆者の方とともに地球一周の船旅をするプロジェクトに参加したことをきっかけに、グローバルな視点での広島の役割を考えるようになりました。さらに、世界中の被爆者や戦争被害者にヒアリングを重ねる中で、人種差別を受けている人や経済活動の中で犠牲になっている人がいることに注目するようになります。
「食べる」を見つめ、平和を伝えていく
- 福岡さん
- 「生きることを考えたとき、食べることは切っても切り離せないと思ったんです。人との関係が崩れても、生きていかないといけない。そのためには、食べないといけない。自分で食べ物を生み出すことができて、自分で自分の命を守ることができることを体感覚として持っておくことは大切だなと思って、農園に行き着いたんです」
自然が持つ力を引き出すことが、人間の役割
土から食べる喜びを、みんなが感じられる世界へ
プログラムの最後には、1日の体験や福岡さんのストーリーを通してそれぞれが感じたことを振り返り、数人のグループで共有する時間が設けられました。福岡さんは、イニアビ農園で大切にしている「土から食べる喜びをみんなで」という言葉を紹介し、プログラムを締めくくります。
- 福岡さん
- 「今日みんなは、食べる喜びを感じましたよね。けれど、すべての世界がそうなっているわけではありません。地球上には、土から採っているのに食べる喜びを感じられない世界もあります。食べる喜びを、みんなが感じられる世界をつくっていけるといいですよね」
体験を通して、自然との繋がりを感じてほしい
プログラムを終えた後、大切にしていることについて福岡さんはこう話してくれました。
でも、本当は私たちの生活は自然に支えられていて、人間だけではコントロールできないことがたくさんあります。私たちの一つの選択が、自然のあちこちに影響を与えている事実を、理解しなければなりません。
人間からは邪魔者だと思われる雑草や虫、菌などは自然界にたくさん存在していて、それらの力があるからこの世界は成立しています。なので、人間にとっての一面的な価値観で物事を見るのではなく、自然界の大きな力の中に『食べる』という営みがあるんだと感じてもらいたいなと思っています」
観光人クエストに参加した先生と生徒の声
「世界とつながる農園プログラム」」に参加した先生や生徒は、プログラムについてどのように感じているのでしょうか。安田女子中学校の先生と生徒の感想をご紹介します。
安田女子中学校 佐野 誠 先生
2年生 河合 希望 さん
2年生 神開 茜里 さん
人生に夢中になっている人に出逢い、新たな自分を知る旅へ
教育プログラム「観光人クエスト」は、「MY LIV PROJECT~私のWell-beingに出逢う旅~」のプログラムの一つ。LIVは、デンマーク語で「人生」や「存在」といった意味をもつ言葉です。
たった一人との出逢いで、人生は変わる。
私たちはそう信じ、多様な日本全国の仲間と手を取り合い、子どもたちの人生に価値ある出逢いと対話の機会を創出します。 そして、プロジェクトに関わる全ての人が共に学びあい、成長し、一人一人の中にあるWell-beingが、他者や地域社会へ派生・循環する、平和で心豊かな社会の実現を目指します。
「観光人クエスト」では、より良い未来に向けてウェルビーイングに生きる観光人を訪ね、新たな自分に出逢うきっかけを提供します。プログラムでは観光人の人生ストーリーに触れ、観光人が大切にしている活動に触れる。そして、じっくりと体験を振り返ることで自分自身の価値観を見つめていきます。