国内外で知名度が高く、熊本県営業部長(兼しあわせ部長)の肩書を持つ、熊本県の公式PRキャラクター「くまモン」。そんな熊本を代表するくまモンをメインキャラクターとしたテーマパークに見立て 、くまモンと一緒に巡る観光として、阿蘇地域の空間全体を再構成。何度も訪れたくなる観光地域づくりを目指す熊本県・阿蘇での事業をご紹介します。
- 背景
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2011年3月の九州新幹線全線開業をきっかけに、熊本県のPRキャラクターとして誕生し、ゆるキャラ®グランプリ2011で一位を獲得するなど国内外で知名度が高いくまモン。そんなくまモンをこよなく愛する熊本県知事の、「くまモンが100年先も愛されるキャラクターへ」という強い想いのもと、くまモンランド化構想がスタートしました。
2022年度スマートツーリズムへの取り組みとして、当初は観光部署と連携し、MaaS軸で観光庁のDX関連事業への申請を検討する中、くまモンランド化構想が目指すべき姿と、JTBのエリアソリューション事業のあるべき姿とのつながりに着目。熊本を代表するキャラクターくまモンを活用し、旅マエ、旅ナカ、旅アトに、それぞれJTBや連携する事業パートナーのソリューションを落とし込むことで、うまく連携できるのではないかと発想を転換。県庁でくまモンを管轄する部署である「くまモングループ」と共に企画立案し、事業実施へと至りました。
- 課題
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- 県内を周遊するための2次・3次交通が不十分(遠方からの観光客が利用可能な移動手段が不足)
- 地域を周遊する動機づけ・情報提供が不足
- くまモンランドの可視化(体験できるコンテンツが少ない)
- 観光客の動向・意向、くまモンのファン層のデータ、アクションを把握するための仕組みが不十分
- 実施内容
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課題解決にむけて、熊本県営業部長の肩書を持ち、国内外で知名度の高い、熊本県を代表するくまモンをメインキャラクターとしたテーマパークに見立て、くまモンと一緒に巡る観光として、阿蘇地域の空間全体の再構成を図り、熊本空港・熊本駅を起点とした熊本・阿蘇での観光行動全体でくまモンと触れ合う機会を提供し、滞在時間全体のパッケージ商品化・ブランド化、現状、主な移動手段であるレンタカー等の移動時間に付加価値をつけることを目指しました。
事業目的
くまモン×デジタル技術を活用した新たな観光資源の創出と周遊促進、観光消費額の増加
スケジュール
- 2022年4月
- 企画協議
- 6月
- 実施体制構築
- 10月
- 実証スタート
具体的な実施内容
01「くまモン× 音声カーナビ技術を活用した新しい観光モビリティ実証」
「くまモンレンタカー×スマート音声ナビ」による新たな観光体験(UX)の提供
熊本空港を起点に、音声カーナビにより地域内を周遊促進する観光レンタカー事業を試験的に実施。訪問者数・滞在時間・消費額などを通常のレンタカー利用者と比較することで回遊促進を検証。
カーナビゲーションシステムのパイオニア株式会社と連携し、会話を通してドライバーをサポートするAI搭載通信型カーナビを通じ、くまモンの言葉(モン語)でおすすめスポットや熊本の方言などの豆知識を自動で案内。
- くまモンと一緒に阿蘇を巡る移動空間として、今までにないドライブ体験を提供
- 走行履歴データの統計化により、定量データによる効果検証
02「AR 等のデジタル技術を活用した謎解きイベントの実施」
「くまモン」×「AR」 で謎解きをしながら阿蘇の周遊を楽しむ体験型イベント
03「くまモンファンコミュニティの形成に向けたCRM基盤の構築」
- くまモンファンコミュニティ会員基盤の構築
- くまモン公式Twitter・プレスリリースなど各種メディアによる情報発信
- 実証実験参加者へのアンケート実施
- くまモンファンの想いを把握・分析
- くまモンファンコミュニティ運営方針策定
- 第一回ファンサミットの実施
- 日時
- 2023年3月11日(くまモン誕生祭2023期間中)
- 参加者
- 約40名(抽選で選ばれた会員の方で、韓国、香港など海外からも参加)
04JTBによる「くまモンツアーの企画・募集・販売」
- ツアーパンフレット(募集型企画旅行商品)の造成
オプショナルプランの掲載
「くまモンレンタカーで巡る阿蘇」
「ARリアル謎解きゲーム」 - くまモングルメ開発
- 熊本県を8エリアに分け、共通の提供カテゴリー別メニュー開発
- 共通の提供ツール(容器・カトラリー)の制作
- 開発メニューを提供する店舗の選定
- くまモングルメと持ち歩きたくなるような観光ガイドブックの制作
- くまモングルメ販促プロモーション
- 導入効果
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「くまモン× 音声カーナビ技術を活用した新しい観光モビリティ実証」では、「近くにおいしい〇〇があるけどよってみるモン?」と、モン語でカーナビに話しかけられることで、予定していたスポット以外も立ち寄ってみたいと、地域内周遊促進、消費拡大につながりました。熊本の方言や豆知識も発話するなど、くまモンが一緒に熊本を案内することで、くまモンランドの世界観を旅行者に伝えるモビリティとしても効果がありました。発話回数により、レンタカーを借りた人がどういうところを周っているかなど、旅行者の行動変容が把握できるので、今後データの統計化、定量化による効果検証の実施しを検討しています。また、るるぶデータと連携し、るるぶにも載っていない地域ならではの発話ポイントを探し、阿蘇だけで100か所以上のスポットの新規追加を実施。NP1の付加価値向上を目指す連携パートナーのパイオニア株式会社様とも、Win-Winの関係を築くことができました。
「くまモンファンコミュニティの形成に向けたCRM基盤の構築」では、実証実験参加者を対象に、アンケート調査を実施し、くまモンへの想い、くまモンとの新しい接点となるファンコミュニティへの期待などを把握することができました。 また、くまモン誕生祭のイベントの一つとして第一回目のファンサミットを会員様限定で開催し、参加したファンからは多くの満足の声をいただきました。
「くまモングルメ開発」では、地元で採れた食材を使ったくまモングルメを、くまモンの活動拠点であるくまモンスクエアをはじめ、熊本県内の道の駅15か所で販売、一か月で1000個を販売するなど人気を集め、エースのオプショナルプランとしても自走化が決まりました。るるぶキッチンでもフェアを開催し、くまモンに来てもらいPRしてもらったことでSNSにアップする方が多く、るるぶ&moreでも記事化されるなど、大きな反響がありました。
実証事業成功のポイント
- 地域、関係機関、事業パートナーとの連携
- 企業と地域とのWin‐Winの関係の構築
- くまモンランドの世界観をモビリティでうまく表現
- くまモンを活用したタッチポイント、キャッシュポイントの構築
- 移動時間に今までにない付加価値のサービスを提供
今後の展望
- くまモンを主軸とした滞在空間の構築
- 蓄積したデータの活用・マーケティング
- くまモン・熊本県のブランド力向上
何度も訪れたくなる回遊型テーマパーク「くまモンランド」の実現
- おすすめポイント
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観光DXの推進やご当地キャラクターの活用でお悩みの自治体のみなさまが多いのではないでしょうか。今回は、人気キャラクターくまモンをうまく活用し、連携パートナー様との密な連携により実現した、熊本県の実証事業をご紹介しました。何度も訪れたくなる観光地、持続可能な地域づくりを目指し、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。お気軽にご相談ください。
- 関連情報
今回の事業では、熊本県内の観光周遊や消費額の増加に関する課題を解決するために、熊本県が進める「くまモンランド化構想」をフックに、最新のデジタル技術を活用した観光DXの実証を行いました。
実証を進めるにあたっては、JTB及びグループ会社のリソースを活用し、また複数の社外パートナーと連携することにより、事業効果の最大化を目指しました。
今年度は、昨年の阿蘇エリアに引き続き天草エリアで実証を行っておりますので、ぜひ熊本(くまモンランド)にお越しください。