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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 「タナベ経営×JTB 地域活性化セミナー」開催レポート 今後の観光復興に向けて、地域の観光関連産業が生き残るためにはどうすれば良いのか?

2020.08.31
地域マネジメント
戦略策定
地域マーケティング

伊勢神宮の参道で商店や和食堂などの商業施設を営む、創業100年の老舗「ゑびや」をご存知ですか。
それまでの「勘と経験」からデータ・ドリブン経営にシフトし、「来客予測AI」をはじめとするIoT技術を積極的に活用することにより、来客予想的中率は9割、売上・利益を大幅に伸ばしただけでなく、顧客サービスの改善、従業員の働き方の向上、新たなビジネスへの進出などを果たしました。

これは地域の観光事業者におけるデジタルマーケティングの成功事例として有名ですが、今回はそんな「デジタルマーケティング」をキーワードに、アフターコロナにおいて地域の観光関連産業が生き残るためにはどうすれば良いのか?地域の新しい観光の未来を描くために、自治体、地域企業は今どうすべきなのか?など、皆さまのお悩み解決のヒントになればと思い、地域企業の“経営”に寄り添ってきたタナベ経営と“地域交流事業”を推進するJTBが8月7日に開催したセミナーレポートをお届けします。

■セミナー概要
開催日:2020年8月7日(金)17:30~19:00
 主催:株式会社JTB、株式会社タナベ経営(共催)
 対象者:自治体担当者様、観光協会/DMO担当者様、観光関連産業に興味のある事業者様

 詳しくははこちら

■登壇者と講演テーマ
【第1部】 Withコロナを踏まえ、今取るべき地域密着型企業の成長戦略 
 株式会社タナベ経営 東京ドメインコンサルティング本部 
 本部長代理 木内 健介 氏

【第2部】 観光に顧客主義マーケティングを~地域CRMによる新しい観光の未来~
 株式会社JTB法人事業本部 
 デジタルマーケティング推進担当マネージャー 徳政 由美子

【第1部】 Withコロナを踏まえ、今取るべき地域密着型企業の成長戦略

セミナーの前半では、株式会社タナベ経営 木内健介氏に「Withコロナを踏まえ、今取るべき地域密着型企業の成長戦略」と題して講演いただきました。

01エリア格差という社会課題により新たな事業が生まれる

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によると、2015年と2045年の人口増減の比較では、全国平均16.3%減に対して、秋田県は41.2%減、青森県は37%減となっています。一方、東京は0.7%増、沖縄は0.4%減とほぼ横ばいの状況。今後、地域格差の二極化がより広がっていくと予想されます。

それにより、新たな社会課題が表面化。木内氏は「当たり前にあったものが無くなる時代。人口減少により大きな地域では当たり前にあったものが無くなっていく。それにより買い物難民や交通難民、銀行難民など様々な難民が発生する。加速度的に格差が広がっていくため地域がより重要になってくる」と指摘しています。

 

しかし悪いことばかりではないと木内氏は言います。「〇〇難民」といった地域の社会課題により新たな事業が生まれる可能性があるということなのです。例えば病院難民という課題に対して、自宅にいても往診が受けられるなど遠隔診療が進んだり、遠隔での画像診断や病理診断など新たな市場が誕生。また買い物難民を救うため、軽トラックで地域を回る移動スーパーがすでに事業化していたりと地域の課題を解決するための事業がさまざま生まれています。

02地域を取り巻く環境の変化による7つのシフト

木内氏は、コロナとそれに伴う地域を取り巻く環境の変化により企業の価値観に変化が起きていると分析しています。その変化を7つのシフトと呼んでいます。

<7つのシフト>

①多角化へのシフト       
②損益分岐点90%→80%へのシフト       
③安定収益モデルへのシフト
④企業価値のシフト         
⑤自社最適から地域最適へのシフト        
⑥脱属人化
⑦働き方改革の加速(シフ

7つのシフトの中からいくつか紹介したいと思います。まず1つが「①多角化へのシフト」です。コロナ禍において1つの事業だけではその事業が不調になった時、業績への打撃が大きいため、いくつかの事業を手がけカバーし合っていこうという考えです。次に注目したいのが「④企業価値のシフト」です。これまでは、どれだけ収益を伸ばせるのかが企業の物差しでしたが、ここに社会的価値がもう1つの物差しとして加わりました。「その企業の事業は社会的に価値があるのか?」これが企業を測る新たな尺度だというのです。もう1つ注目したいのが「⑤自社最適から地域最適へのシフト」です。自社だけではできないことも地域全体でならできる。地域を1つの事業、企業として見ることが大切だと木内氏は言います。例えば観光に携わる事業者は皆で1つの会社。各事業者がシームレスに繋がっていけば、解決できなかったこともでき、事業としても広がりを見せるはずだと指摘します。

木内氏によると、これからの地域活性化の主人公は“地域の中堅・中小企業”とのこと。地域の中堅・中小企業それぞれが自社事業の社会的価値を追い求め、そして地域最適の考えで手を取り合うことがアフターコロナにおける地域活性化の成功の鍵なのではないでしょうか?

【第2部】 観光に顧客主義マーケティングを ~地域CRMによる新しい観光の未来~

後半では、株式会社JTB 徳政由美子より地域交流においてデジタルマーケティングを推進している立場から観光における顧客主義マーケティングの大切さについてお伝えしました。

01取り巻く環境の変化 ~デジタルの活用が潮流に~

まずお伝えしたのが取り巻く環境の変化です。地方創生の一番の方針としてDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進すると国が「まち・ひと・しごと2020基本方針」で発表しています。これまでは“実証”でしたが、そうではなく“実装”の段階だとしています。また都市レベルで交通や金融、物流、行政といった分野の垣根を越えてデータを収集・整理。そのデータを住民福祉・利便性の向上のために活用するという国家戦略特区法改正案が可決しました。このように国策事業でデジタル基盤の議論が進んでいます。

一方、地域に目を向けてみると、ここ数年で観光地域でマーケティングをする組織であるDMOが様々な地域で組織されました。これまで観光の分野では調査はするもののデータはなかなかうまく使われてこなかったとのこと。一企業のようにリアルタイムでデータを使うということが難しい状況でした。しかしここ数年、データを利活用していこうとする動きが活発になってきているそうです。インバウンドの急伸により現地整備への補助、マーケティング人財支援、観光事業への積極融資といった流れがあるとのことです。ただし、観光を動かしている現場では、各種プロモーションやコンテンツの発見・整備、アンケートなどの調査といった各施策の統合に時間を要しているように感じるとのことです。

02これからの観光における顧客主義とは? ~One to ManyからOne to Oneへ~

「これまでは企業・地域から見たマーケティングが主体だった」と指摘しています。 1つの売りたい物をたくさんの人に知ってもらうことで数パーセントの人に届けるというマスマーケティングが主流でした。売り手側が売りたいものを売るという発想です。しかし、今やICTの発達により顧客はさまざまなデジタル接点からの情報で行動を判断します。一方的にメッセージを送るだけでは顧客は興味を示してくれません。

今や多くの旅行者は、旅行前、旅行中、旅行後にデジタルのチャネルを利用しています。どんな人にどのプロモーション施策が響いたのかをお客様起点で記録できるのです。顧客の行動に合わせた手段で、タイミングで情報を届けるというOne to Oneマーケティングが可能な時代です。

これから先、まずは近隣の宿泊需要から回復してくると思われます。例えば、宿泊割引クーポンは需要の先取りをしてしまい、一人の顧客の消費額も下がってしまうと懸念する地域事業者さんもあります。しかし、One to Oneマーケティングの導入で、割引クーポンによる来訪をきっかけに顧客とつながり続けることができます。プレゼントキャンペーンや地域の魅力を伝えるブログなど来訪者の属性に合わせた情報を届け、発信した情報が響いたかどうかを検証、次の施策を打つというサイクルを回し続けます。そうすることで地域のファン、リピーターを育てていくという発想です。

これがこれからの観光における顧客主義です。

 
例えば、地域のターゲットとしたい顧客モデル(ペルソナ)が地域のファンとなり、
何度も訪れてくれるようになるためには
「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」ではどんな仕掛けが必要か?
   

顧客モデル(ペルソナ)安藤 誠

大手メーカー勤務  38歳 神奈川在住  3人家族
コロナ渦で自粛をしておりそろそろ旅行がしたい。子供がまだ小さく、しばらく旅行に行っていない。在宅中は様々な場所をネットサーフィン中。


03地域全体で取り組む「エリアマーケティング」 まずは何から始めればいいのか? 

しかし、One to Oneマーケティングを実現するのは簡単なことではありません。個社でできることには限界があるため、地域という面で行うのが重要だと言います。これがエリアでマーケティングをするという考え方です。「自分のお店だけではなく、エリア内の顧客行動傾向をリアルタイムで把握する。面で取り組むことで、その地域全体の動きを把握できる」のがメリットだと言います。

こういった取り組みは以前から商工会議所や商店街で行われています。まず地域内で合意形成をし、地域活性化の基本方針を創り、地域ブランド、観光まちづくりの考え方を整理していく流れですがステークホルダーが多いためなかなか進めるのが難しいそうです。

では、まず何から始めればいいのか?「エリアの合意形成が何より大事。まずはマーケティング部会の設置がおすすめ。大規模でなくてもいい」と言います。データを活用する場合、相反する利益もあるため地域の皆さまで話すことが必要。その後、3カ年・5カ年といったスパンでのマーケティングロードマップを策定し部会で議論していく。先の姿を描いたうえで収集するデータを決めていくという流れが大切とのことです。

まとめ

今回のセミナーでは、「今後の観光復興に向けて、地域の観光関連産業が生き残るためにはどうすれば良いのか?」についてお届けしました。
第1部で講演いただいた木内氏はこれからの地域活性化の主人公は“地域の中堅・中小企業”とし、自社事業の社会的価値を追い求め、そして地域最適の考えで手を取り合うことが大切だと述べています。そして、第2部では、これからの観光振興にはエリアマーケティングが必要。そしてエリアマーケティングの成功には地域の合意形成が大切とお伝えしました。共通しているのは、「自社だけではなく地域で取り組む」ということ。地域企業、観光DMO、自治体といった多くのステークホルダーが個社最適ではなく、全体最適の目線を持ち合意形成のうえで一緒に取り組んでいくことが今後の観光振興の鍵だと言えます。

そしてもう1つの鍵がデジタルです。「来てくれたお客様へのおもてなしも大切だが、来ていただく前に”デジタルの中にお客様は常にいる“ということを忘れないでいただきたい」と言います。デジタル技術の発達により、顧客に対してできることが圧倒的に増えました。これは皆さまの地域の可能性が広がったことを意味しています。

これから取り組みを考えている方々は、小規模でも議論し合意形成を図る場を設け、できることから始めながらも「個別の施策データを蓄積し、利活用する基盤について検討するなど、段階的に始めるのがいいかもしれません。
まずは始めてみてはいかがでしょうか?

ダウンロード資料として、今回の講演資料(一部)を用意しました。ぜひご覧下さい。

■関連トピックス︓JTB とセールスフォース・ドットコム、地域 DX 推進のための『包括的連携・協⼒に関する協定』を締結 ~ ポストコロナの地域観光・地域共創⽀援における取り組みを共同推進 ~

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