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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 ニューノーマル時代に加速するMaaS 次年度取り組むべきは「一人ひとり個人」に目を向けた観光施策

2020.11.13
観光ICT
ICT活用

「新型コロナウイルス感染症拡大防止」と「地域経済の活性化」を両立させるため、官民連携によるさまざまな観光施策が実行された2020年。“ウィズコロナ”が観光のキーワードとなった今、「ニューノーマル時代の観光基盤を整備するには、次年度の予算を何に投じるべきか」という命題に頭を抱えている自治体担当者は少なくないでしょう。

「密集・密閉・密着」と隣り合わせの旅行が慎重に検討されるウィズコロナ時代に観光産業を活性化させるには、旅行者「個人」にフォーカスした施策が不可欠です。本記事ではJTBと自治体が共同で開発・実証を進める「観光型MaaS」の取り組みを中心に、「ニューノーマルツーリズム」の在り方と、自治体が次年度注力すべき観光施策の例を紹介します。

アフターコロナの観光は「一人ひとり」のニーズにアプローチを

「今後の旅行目的や行き先を選ぶ基準/JTB総合研究所調査(2020)」では、観光客がこれからの旅に求めるのは「安心・安全に旅行できる」「密閉・密集・密着が避けられる」の2点であることが明らかになりました。移動中や旅先での「安心・安全」が重視される今後は、三密を避け、個人やグループ単位での旅行ニーズが高まるとみられています。

今後の旅行目的や行き先を選ぶ基準<これからの旅の動機>

今後の旅行目的や行き先を選ぶ基準
JTB総合研究所調査(2020)

ここで課題となるのが、人気スポットの混雑緩和です。これまで地域が行ってきた観光マーケティングでは、個人旅行のターゲットを年齢や属性で分けた塊(20代、SNSを良くやる、アクティブな女性など)として捉えてきました。しかし、これからは観光客一人ひとりに最適化した情報を提供することで、個々人が魅力的だと感じる別のスポットに足を向けてもらう必要があります。ニューノーマル時代においては、「個」のニーズにこたえるコミュニケーション手段を持つことが地域観光の切り札となるかもしれません。

「一人ひとり」のニーズに対応するための具体策

2021年度は観光客と地域双方の「安心・安全」を前提に、個々人のニーズに対応する施策に取り組みましょう。観光地としてのホスピタリティを高めることが地域住民の「暮らしやすさ」にもつながります。

施策01ストレスのない二次交通の提供

交通網の整備は観光客の行動に大きな影響を及ぼします。主要駅や空港からの二次交通が充実すれば、観光客は既存の路線バスや電車では行きにくかったコアなスポットにも足を延ばすことができ、それが定番スポットの混雑緩和や旅行者満足向上につながります。

また、観光客が乗り合いバス等の手段で地域内を周遊できるようになれば、マイカーで来県したグループの運転手も旅行を心置きなく楽しめます。全員がお酒を楽しめる、バス等の交通手段で寝て帰れるという状況を作り出すことが観光客一人当たりの消費額の増加にも寄与するでしょう。

二次交通の整備は、観光客だけでなく地域住民の利便性向上にも貢献します。乗り合いバスは主に高齢者の交通手段としての機能が期待されていますが、地域経済のこれからを考えると、地域を訪れた観光客に上質な旅行体験を提供し、「行ってよし、暮らしてよし」というイメージを訴求することが欠かせません。二次交通の整備は、「観光」から「移住・定住」までを見据えた関係人口の増加を考えるうえでも重要な取り組みと言えます。

施策02観光客個人のニーズに合う旅行先の提案

観光サイトの整備や、時刻表を一括で確認できるアプリの提供はすでに多くの地域が取り組んでいますが、ニューノーマル時代はこれに加えて「観光地や交通手段の混雑を避ける機能」「検索・予約から決済までを済ませられる機能」が求められるようになります。観光サイト・アプリにこれらの機能を追加することは、観光客の利便性向上だけでなく、対面接客や金銭授受の機会を最小限に抑え、観光客と地域の安心・安全を維持するためにも有効です。

さらに、アプリを活用した情報発信で個人のニーズに合う行き先を提案できれば、人気スポットの混雑緩和と同時に眠っている観光資源も活性化でき、より多くの価値につながるでしょう。

地域内の回遊を促進する日本型MaaSの整備 宇都宮市大谷地区の事例

地域の魅力を発信し、観光客一人当たりの消費額の底上げを図るには、観光客の回遊を促進することが第一です。そんな中、栃木県宇都宮市はJTBが開発した「Tourism Platform Gateway™️」のソフトウエアを搭載したスマートフォン観光アプリ「Japan Travel Guide + Connect」を活用し「AI 相乗り観光タクシー」の実証実験に取り組んでいます。

ピラミッド内部のような広大な地下採掘場跡が見られるスポット「大谷資料館」を擁する宇都宮市の大谷地区は、平成30年5月に「大谷石文化」が日本遺産に認定されてから観光客数が年々増加している観光資源の豊富な地域です。

令和10年頃には観光客数120万人の達成を目指していますが、宇都宮市はもともと市民の自動車の利用率が増加し続けており、自家用車で道路が混雑する実態がありました。観光シーズンには、混雑に加え駐車場を探すための渋滞が起こる傾向があり、住民と観光客の利便性向上のために自家用車等の流入の抑制が課題となっています。観光客が大谷地域を訪れる場合は、JR宇都宮駅からの往復バスと入場券をセットにした「大谷観光1日乗車券(1,850円)」が便利です。しかし、当日に観光案内所等の窓口で並んで購入しなければならないうえ、バスで大矢資料館周辺の観光スポットに行くには周遊性の面での不便もありました。

今回、MaaS実証が行われている「大谷AI相乗り観光タクシー」は、観光客の交通手段として相乗りタクシーを提案することで、快適な周遊観光を提供する取り組みです。アプリにTourism Platform Gateway™️のソフトウエアを搭載したことで、利用施設の設備やサービスの閲覧、目的地までのルート検索が可能に。さらに、AIによるオンデマンド・リアルタイム配車サービス(SAVS Smart Access Vehicle Service)機能を連携しているので、利用者はスマホでタクシーの検索・予約から支払いまでを完結できます。

観光客にとってのメリットは、移動の利便性が向上し、目的地までの所要時間の見込みが立てやすくなること。大谷地域では、運賃は1名1,500円、3名まで3,000円(午前10時から午後6時まで自由に乗り降り可能)と手頃な設定をして、観光客の積極的な利用を促しています。

この取り組みがより広域で実装されれば、宇都宮市の課題でもあった交通混雑も緩和できると期待されています。観光施策としても街づくりとしても注目の取り組みです。


「大谷AI相乗り観光タクシー」の詳細はこちらでご確認ください。

日本初となる「環境配慮型・観光MaaS」の実現 日光市の事例

同じ栃木県の日光市では、2021年度に国内初となる環境配慮型・観光MaaS「日光MaaS」(仮称)を導入するための具体的な検討が進んでいます。栃木県が掲げる目標は「脱炭素社会への移行と周遊観光の振興による地域活性化」。電気自動車(EV)バスやEVレンタカーを中心とした二次交通の整備で、環境に配慮した観光MaaSの実現を目指します。

観光需要喚起型MaaS 千葉県中房総地区養老渓谷エリアでの検証

2020年1月、400人のモニターを対象にJTBグループが実施した千葉県中房総地区養老渓谷エリアでの需要喚起型観光MaaS実証は、多様な地域観光アプリに対応できる「Tourism Platform Gateway™️」のアプリケーションによって、周遊ルートの推奨(需要喚起)と最適移動手配(供給最適化)を組み合わせ、観光客に新たな観光需要を喚起するものです。

MaaSアプリの満足理由

MaaSアプリの満足理由
出典:JTB総合研究所調査MaaS実証より

この実証実験では、これまで知名度が高くない観光資源でも、最適な観光情報とストレスのない交通(移動)手段の提供によって周遊エリアが拡大し、旅行者満足も得られる(アプリ利用者の観光満足度は84%)」ことが示されました。参加したモニターからは「自分の知らなかった観光スポットに行けた」と満足度向上につながる意見が多数寄せられています。

情報検索⇒着地商品の購入・決済⇒移動⇒体験をシームレスにつなげることで移動需要を喚起するこの取り組みは、北海道札幌市も本格的な観光型MaaSの推進に向けた導入に向けた実証を進めています。

観光アプリの再検討で「一人ひとり」にマッチする情報提供を

アフターコロナの観光施策では、密を避ける(客数を抑える)一方で、観光客一人当たりの旅ナカでの消費額を増加させる取り組みが肝となります。各自治体は地域の課題やビジョンに根差したMaaSの導入で、個人ないしグループに上質な観光体験を提供することに注力しましょう。2021年度は訪れて頂く旅行者と地域住民に向けた回遊・消費促進のため、観光アプリの機能を再検討してみませんか?


Tourism Platform Gateway™️ とは

「Tourism Platform Gateway™️」は地域や観光事業者の皆様がお持ちの観光アプリと連携することで、MaaSにおける旅行者のニーズに応じた様々な機能を提供できるJTB独自のソフトウェアです。地域で開発された旅行商品の登録、予約、決済に利用ニーズに合わせた配車/AI運行策定機能をワンストップで提供できます。

MaaSソリューションは自治体独自のサービス名称でご利用いただけます。

機能イメージ
購入する
  1. 位置情報に応じた観光スポット・体験コンテンツを調べる
  2. 選択エリアに応じた観光スポット・体験コンテンツを調べる
  3. 調べた観光スポット入場券等を購入できる
  4. 企画乗車券を購入できる
  5. 乗合いタクシー券を購入できる
利用する
  1. 乗合タクシーの予約ができる
  2. 目的地までの複合モビリティによる経路検索ができる

電話、バス、シェアサイクル・乗合タクシー等(JRは除く。)

  • 利用者はスマートフォンアプリとして利用でき、観光スポットや体験コンテンツ・企画乗車券の情報検索、予約・決済に加え、目的地までの最適な経路検索や乗合タクシーの予約・決済をアプリ1つで手配できます。
  • 旅行商品検索~予約・決済~移動体験までをワンストップで提供することが、地域回遊促進、地域消費額向上、リピーターの獲得など地域にとっての利益にもつながります。
  • 地域に独自の観光アプリが無い場合には、JTBグループの観光アプリ「Japan Travel Guide +Connect」を活用いただけるので、導入までの初期投資を抑制できることもポイント。さらに同行者やその時の気分を選択することで最適な行先を提案する観光レコメンデーション機能も搭載しています。

詳しくはサービスページをご確認ください。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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