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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 アドベンチャーツーリズムとは?自然体験型観光の推進で地域が得られるメリット

2021.08.06
地域マネジメント
地域マーケティング
インバウンド
戦略策定
誘客促進

新型コロナウイルス感染拡大は旅行の形を大きく変化させ、旅行者の志向は「少人数での旅行」「都市から離れた場所への旅行」「自然の中を楽しむ旅行」へとシフトしました。そうした旅行者のニーズを満たす新しい旅行のカタチ、それがアドベンチャーツーリズム(AT)です。日本国内には森林、火山、川、湖、海などの自然資源が豊富にあり、自然体験型のアクティビティやコンテンツの体験機会を増やすことがインバウンド誘致に貢献すると予想されています。また、アドベンチャーツーリズムの推進は交流人口の拡大と地域経済の循環にも有効であり、経済活性化を図りたい地域にとっても非常に魅力的です。本記事では、アドベンチャーツーリズムの概要と地域にもたらす効果について解説します。

アドベンチャーツーリズムとは?

世界最大のアドベンチャーツーリズム関連機関である「Adventure Travel Trade Association(ATTA)」によれば、アドベンチャーツーリズム(AT)とは、「『アクティビティ』、『自然』、『異文化体験』の3つの要素のうち2つ以上で構成される旅行形態」と定義されます。自然をテーマにした観光としては「エコツーリズム」や「グリーンツーリズム」が知られていますが、アドベンチャーツーリズムにはアクティビティや異文化体験が組み込まれ、「学び」よりも「楽しみ」を重視したレジャー性の高さが特徴です。

日本でATが発展している地域としては、40メートルの天然スライダーや滝つぼへのターザンジャンプを体験できる滑床渓谷(愛媛県)や、ハイキング、ウミガメウォッチング、ダイビング、カヤック、キャニオニングなど多様なアクティビティが体験できる屋久島(鹿児島県)などがあります。

前述のATTAは、ATを嗜好する旅行者、いわゆる「アドベンチャー・トラベラー」が旅行を通じて求める体験価値として、以下の5つのキーワードを示しています。

01The Novel and Unique

ほかの場所で味わえない、その場所ならではの体験であると感じることができるか?

02Transformation

自己が成長・変化していくと感じることができるか?

03Challenge

身体的・心理的にさまざまな意味合いでの挑戦ができるか?

04Wellness

旅行前より心身ともに健康になったと感じられるか?

05Impact

文化や自然に対する悪影響を最低限に抑えられていると感じられるか?

出展:With/Afterコロナ時代に期待されるアドベンチャーツーリズム/JTB総合研究所

「成長市場」として注目される理由

2018年3月に国土交通省 観光庁 観光資源課が公表した「地域の自然体験型観光コンテンツ-充実に向けたナレッジ集」によると、アドベンチャーツーリズム(AT)の市場規模は2016年において約49兆円でしたが、2023年には約147兆円まで拡大すると予想されています。また、AT旅行者の1回あたりの平均消費額は約33万円で、これは訪日外国人旅行者の平均消費額15万4千円の2倍以上です。

さらに日本は北海道から沖縄まで多くの山々、火山、川、湖、海の自然資源を有するほか、国立公園や自然保護区も豊富であり、アドベンチャーアクティビティの成長市場であることが海外でも知られています。このようにATは、観光立国として成長するための4要素である「文化」「食」「気候」「自然」とも合致しているため、今後の「成長市場」として注目されているのです。

アドベンチャーツーリズムの魅力とは?

アドベンチャーツーリズムは旅行者自らがじっくりその土地を歩き、五感を使って地域ストーリーを感じる旅行のスタイルです。体験できる場所、体験目的、体験の難易度によってさまざまなタイプに分類されますが、多くのAT旅行商品にはハイキング、トレッキング、サイクリング、ラフティング、カヤッキングなどが盛り込まれています。


出展:「地域の自然体験型観光コンテンツ」/国土交通省 観光庁 観光資源課

ハイキングやラフティングなどのアクティビティは、単なる「アウトドア体験」の枠にとどまらず、自然の豊かさを感じ、そのエリアの生態系や歴史文化を自らが体験するための手段にもなります。

魅力01その土地でしか体験できない本物の体験を楽しめる

アドベンチャーツーリズム(AT)では、地域の自然資源と文化、伝統、歴史等を掛け合わせることで新たな体験価値が生まれます。体験の内容としてはエキサイティングかつスリリングなアクティビティが印象的ですが、旅行慣れした旅行者ほど地域住民との交流体験を求めており、その土地に精通したガイドを伴うツアーに人気が集まりやすい傾向があります。

魅力02内面からの変化や視野の拡大を実現

出会ったことのない景色とともに、新しい自分を発見できることもアドベンチャーツーリズム(AT)の魅力です。サイクリング、ウォーキングを含むトレイルツーリングへの参加者は、自分自身の内面からの変化や視野の拡大を求めているので滞在期間も長くなる傾向があります。さらに、そうした旅行者は個人の体験を大切にするため、SNSなどを情報源に個人で旅行を手配する場合が多く、ひとり旅行者も増加しています。

推進する自治体のメリットは?

新しい旅行形態として、アドベンチャーツーリズム(AT)を推進することは自治体にとっては大きく分けて2つのメリットがあると考えられます。

1つは地方創生です。ATを好む旅行者の関心は地域の特産品や造形物にとどまらず、そこに暮らす人々との交流や暮らしにまで広がっています。ATでは地域ならではのストーリーを観光資源として活かすことができ、地域課題とも密接に関わる古民家・空き家の活用や自然環境保全にも好影響を及ぼします。また、アクティビティにおける各種ギアや、エンタメや食を含む異文化などには消費拡大に貢献する要素が含まれており、With/Afterコロナ時代における経済振興も期待できます。

2つ目にオーバーツーリズムの改善です。コロナ禍前の日本におけるツーリズムは一部の地域に外国人旅行者が集中し、自然や文化資源への影響が懸念されていました。こうしたツーリズムに一石を投じるのがATです。例えば、ATでは移動に関しても効率より旅行者が自分の力を使うことが重要な要素とされます。また、時間をかけてその土地の自然や歴史文化を体験することに重きが置かれているため、観光客数の「量」の観光から経済・社会的な観点でのサステナブルな効果を目指す「質」の観光へとシフトできます。まさに日本が目指す観光立国の姿と言えるでしょう。


まとめ

 

アドベンチャーツーリズムで地方創生を

今後自治体が地方創生を目的として、アドベンチャーツーリズム(AT)を推進していくためには、旅行者のニーズを踏まえて自然体験型コンテンツの造成や商品化に取り組むマーケティング視点が求められます。また、どのようにしてコンテンツを共に開発・提供する事業者を育成するのか、自然環境・観光資源の価値を保全していくかも重要な視点となります。

2021年9月20日(月)から9月24 日(金)の期間には、アドベンチャーツーリズム業界最大の国際イベント「Adventure Travel World Summit(ATWS)2021北海道」がバーチャル開催されます。北海道は2017年に地域アドベンチャーツーリズムマーケティング戦略を策定し、観光客、観光事業者、地域、環境の「四方よし」の観光地経営を目指すアドベンチャーツーリズム(AT)先進エリア。サミットには世界約60カ国から約800名のAT関係者がオンライン上で集い、AT体験・商談会・セミナー等が行われる予定です。

今回はアジアで開催される初のATWSであると同時に、初のバーチャル開催となることもあり、多くの注目が集まっています。自然体験型観光コンテンツの充実に向けた整備を検討されるなら、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。


関連情報

Adventure Travel World Summit(ATWS)2021北海道(外部サイト:英語)

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