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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 コロナ後の観光振興は「高付加価値サービス」がカギ!?地域が官民連携で稼ぐ方法

2021.04.27
地域マネジメント
商品開発・販売
ICT活用

観光振興とは、すでに皆さまもご存知の通り、地域外から往来した人々の、飲食、土産物購入、宿泊、見学、体験活動、移動などによる地域経済の活性化、また、それによる地域の雇用の維持、拡大を指します。ニューノーマル時代、今すぐに以前のような訪日観光客数を期待するのは難しい状況です。このような状況だからこそ、魅力的な滞在コンテンツなど高付加価値のサービスを提供することで1人当たりの宿泊日数を伸ばしたり、単価を上げたりする努力が欠かせません。高付加価値サービスを提供するには、部署や官民の垣根を越えた連携が重要になってきます。本記事では「高付加価値サービス」の提供による観光振興に取り組むことの意義とその具体策を紹介します。

2021年は観光客一人当たりの消費額を上げる施策を

2020年9月29日の「第 39 回 観光戦略実行推進会議」では、ニューノーマル下でのインバウンド・国内旅行の拡大について、政府と有識者の意見交換が行われました。その中でも多く取り上げられたのが、密を避けた観光体験のあり方です。

新型コロナ収束後の訪日旅行全般に期待したいこと

衛生面における配慮、清潔さ、消毒などのウイルス対策全般の継続が38%

出典:2020年8月『DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2020年度 新型コロナ影響度 特別調査)』
((株)日本政策投資銀行・(公財)日本交通公社)より作成


蒲生観光庁長官はインバウンドについて、コロナ禍においても外国からの訪日意欲が高いことに触れ、日本の公衆衛生レベルの高さは今後も大きなセールスポイントとなることを強調しました。有識者の梅澤高明氏は、富裕層・高単価層の訪日観光客は5年間で約1兆円以上の観光収入の伸び代があると見込まれていることに言及したうえで、訪日観光客の受け入れまでは「国内の富裕層にどれだけ使っていただけるかが重要」と国内旅行者向けの高付加価値サービスの重要性を示唆しています。

コロナ禍においては感染拡大防止のための取り組みが最優先にはなりますが、コロナ後のインバウンド受け入れも見据えて、高付加価値サービスを造成する具体的な施策を考えてみてはいかがでしょうか。ここからは観光産業の収益力を向上させるビジネス展開の例を紹介します。

反転攻勢のための基盤整備

収益力強化・事業継続 / 感染拡大防止の取組 / 新たなビジネスモデルの構築

手段01既存観光拠点の高付加価値化

上質な滞在環境を実現するには、宿泊施設、飲食店、土産物店等の整備や老朽化した施設の整理などを行い、エリア全体の景観改善や滞在時の利便性向上に取り組むことが重要です。政府は、令和2年度3次補正予算において、「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」に550億円を投入し、施設改修補助(負担割合:1/2)で地域の観光拠点整備を支援することを決めています。また宿泊施設の経営革新等について専門家の支援を受けられる支援制度や融資制度も大幅に拡充されました。

宿泊施設や飲食店の老朽化や事業者不足は多くの地域を悩ませる課題です。そんな状況においても既存施設の魅力を向上させ、新たな価値を付加する策としては自治体や地域観光づくり法人(DMO)が観光拠点の再生計画を策定し、宿の事業承継や統合、複数の宿が一つのホテルとして運営する取り組みを後押しすることが挙げられます。また、国立公園内や文化施設等の運営に民間のノウハウを導入し、カフェなどを併設することも観光拠点を再生する策の一つです。

手段02ワーケーション誘致

旅行者一人当たりの消費額を上げるには、滞在日数を伸ばすことも有効です。その具体策としてワーケーション誘致が注目されています。ワーケーション受け入れのためにまず地域がすべきことは、宿泊施設やコワーキングスペースなどに、快適なテレワーク環境を整備することです。施設の整備にあたっては、地域課題である空き家問題とかけ合わせて、古民家や廃校をコワーキングスペースにリニューアルする取り組みも増えています。

ワーケーションを推進する企業には、働く場所を変えることで従業員の気分転換を図り、生産性を高める狙いがあります。企業がワーケーション受け地に期待する「気分転換」のニーズに応えられるよう、既存の観光拠点やアクティビティなど、バケーション部分の磨き上げも同時に検討したいものです。

ワーケーション施設整備の要点は、公開中の記事で詳しく紹介しています。

(WEBマガジン「#Think Trunk」)
ワーケーション施設に必要な設備とは?企業の需要に応える地域の施策

手段03移動の利便性向上・観光需要喚起

観光地へのアクセスを改善することは、回遊性の向上による消費の喚起につながります。ここでは、移動の利便性を高める「観光型MaaS」の導入事例を紹介します。

MaaS(Mobility as a Service)とは、鉄道やタクシー、乗り合いバスなど、マイカー以外の交通機関をアプリで連携し、移動の利便性を高めるサービスのこと。観光型MaaSは、移動手段の検索・予約・決済といった基本機能に「みる」「たべる」「あそぶ」という旅の目的を加えたもので、利用者は移動手段を手配する延長で、域内のさまざまなサービスにもアクセスできます。

大分県日田市は、『日田1日乗車券』をスマートフォンアプリ上で販売し、お得でスマートな観光体験を提供する実証実験を行いました。『日田1日乗車券』の利用者は、市の観光スポットをつなぐ「AI乗合タクシー」を定額乗り放題で利用できます。域内の移動が便利になるだけでなく、都度の支払いや経路検索などの煩わしさを大幅に軽減できることが旅行者にとってのメリットです。

「AI乗合タクシー」は人工知能(AI)が全車両の走行ルートを決定するため、地域の交通事業者が配車や走行ルートを巡って頭を悩ませることもありません。移動の利便性が向上すれば、旅行者の目的地や観光スポットでの滞在時間や訪問数が増え、一人当たりの消費額の増加につながります。

手段04スノーリゾート等の長期滞在型コンテンツの造成

自然、文化、食など、地域にはまだまだ多くの観光資源が眠っています。コロナ後のインバウンド需要回復に備えて、地域の自然や文化をスノーリゾートやアドベンチャーツーリズムなどの長期滞在型コンテンツとして磨き上げることも高付加価値化の一つの方法です。

スノーリゾートの開発では、上質なスキー場の整備、インバウンド受け入れを見据えた多言語対応、長期滞在できる域内のコンテンツ造成などが要点となります。雪がない時期にも楽しめるe-Bikeを活用したアクティビティなどがあると、ハイシーズン以外の観光需要も喚起できるのではないでしょうか。

アドベンチャーツーリズムとは、アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行のことです。日本の自然や文化に魅力を感じている外国人観光客に向けて、サイクリングやトレッキング、和太鼓体験など、地域ならではの楽しみ方を発信してみてはいかがでしょうか。


【事例紹介】
阿寒カムイルミナ&ロストカムイ~阿寒湖の森ナイトウォーク、アイヌ古式舞踊とデジタルアートの融合

アドベンチャーツーリズムにおけるデジタルアートと自然文化との融合の事例です

事例を見る

まとめ

地域のリソースを整理して、観光客の受け入れ整備を推進

ご紹介した手段のほかにも、感染拡大防止策の徹底やバリアフリーの促進、地元農作物や地域の伝統工芸品の活用、最先端技術を活用したストレスフリーな旅行の実現など、高付加価値化のためにできる施策はたくさんあります。高付加価値化のアイデアはあるけれども財源がないという場合は、国の補助金や企業版ふるさと納税による資金調達を検討してみてはいかがでしょうか。既存業務との兼ね合いで観光振興に集中できないことでお悩みなら、BPO(事務局業務のアウトソーシング)の活用もおすすめです。煩雑な事務局業務を効果的に外部委託すれば、自治体職員のリソース不足を解消できます。コロナ後、観光産業の収益力を向上させるために、「高付加価値化」という新たな観光戦略の展開を検討してみてはいかがでしょうか。


ホワイトペーパー(お役立ち情報)観光に顧客主義マーケティングを~地域CRMによる新しい観光の未来~

地域の観光関連産業が生き残るために必要な顧客主義のマーケティング。地域において新しい観光の未来を築くために、顧客主義のデジタルマーケティングを導入して、お客様とどうやって接点を持っていくのか?概要をまとめたのが本資料です。2020年8月7日に開催した「タナベ経営×JTB 地域活性化セミナー」(無料説明会) ~withコロナの地域密着企業へ向けた経営/地域の観光復興に顧客主義のデジタルマーケティングを~の資料(抜粋)です。

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