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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 国内外のスマートシティ事例15選 ~定義やスマートシティがもたらす変化など解説~

2022.01.25
地域マネジメント
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スマートシティとは、ICTなどの新技術の活用によって都市の諸問題を解決し、生活の質を向上できる地区です。すでに国内外でスマートシティ構想が進んでいます。

この記事は、スマートシティに関係する地方自治体や事業者の担当者、決裁者に向けたものです。スマートシティとは何か、都市や住民にもたらす変化、スマートシティの基盤になる技術、国内外の事例などを解説しています。事業立案の参考にしてください。

スマートシティ

INDEX

  1. スマートシティ構想とは
  2. スマートシティが都市や住民にもたらす変化
  3. スマートシティ実現を支えるテクノロジー
  4. スマートシティが注目されている背景
  5. 国内のスマートシティ事例10選
  6. 国外のスマートシティ事例5選
  7. まとめ

スマートシティ構想とは

ここでは、スマートシティ構想を理解するために、スマートシティの定義、スーパーシティやコンパクトシティとの違いを解説します。

スマートシティの定義

国土交通省によると、スマートシティとは「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」です。

ICTとは「Information and Communication Technology」の略語で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。

上記のスマートシティの定義を構築することで、環境問題や人口減少、高齢化などの諸問題を解決し、住民の生活を向上するための事業です。

引用:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】|国土交通省都市局

スーパーシティ構想との違い

スーパーシティ構想とは、内閣府国家戦略特区が立案した計画で、AI(人工知能)やビッグデータを活用した「まるごと未来都市」を地域・事業者・国が一丸となって目指す取り組みです。まるごと未来都市とは、生活全般に渡って先進技術が実装されており、住民目線で未来社会が先取りされている都市を指します。

スマートシティはエネルギーをはじめとした「個別分野特化型」の取り組みが中心なのに対し、スーパーシティは多彩なデータを分野横断的に収集・整理して提供する「データ連携基盤(都市OS)」をもとに、住民にさまざまなサービスを提供し、住民福祉・利便向上を目指します。

また、スーパーシティは住民が主体的に参加し、住民目線でよりよい未来社会が実現できるようにネットワークを最大限に利用していくことを目的としています。

参考:スマートシティの実現に向けた国土交通省の取組|国土交通省

参考:「スーパーシティ」構想について|内閣府国家戦略特区

コンパクトシティとの違い

コンパクトシティとは、市町村の中心部に住居や商業施設、役所、医療機関などを集結させた街です。日本では高齢化と過疎化が進む地域で、コンパクトシティを構築する動きが進んでいます。また、世界各国でも地方での持続可能な生活や環境保護などの課題を解決するために、コンパクトシティが実現されてきています。

このように、コンパクトシティは主に空間を利用するのに対し、スマートシティは最新技術を利用して都市の課題に取り組むところが大きく異なります。

スマートシティが都市や住民にもたらす変化

スマートシティは都市機能を最適化し、住民に利便性や生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)向上をもたらします。ここでは具体的な変化を解説します。

都市にもたらす変化

リアルタイム情報による確度の高い予測実施

従来の静的な統計データに変わり、リアルタイムで取得可能なデータに基づいて、確度の高い予測を実現できます。たとえば、カメラ画像やGPSなどから収集した自然災害と交通状況のビッグデータをAI解析させることで、災害時の避難誘導にも応用が可能です。

参考:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】|国土交通省都市局

分野を超えたデータ活用

さまざまな都市問題の解決のために、分野横断的に実証実験を行えるようになります。その理由は、行政や小売、エネルギー、医療、交通などで、同じ情報プラットフォームを共有するからです。その結果、全体を最適化し、持続可能な都市サービスを提供できます。

上述のとおり、これまでスマートシティは「個別分野特化型」の取り組みが中心でしたが、2010年頃からはICTを活用し、複数の分野に幅広く取り組む「分野横断型」の取り組みが増加しています。

参考:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】|国土交通省都市局

エビデンスベースの施策立案

事例や主観をもとにしたエピソードベースの施策立案に変わり、エビデンスベースの客観的な施策立案ができるようになります。エビデンスベースとは、たとえばIoTで収集された定量的なデータや、分野横断的に実証された検証に基づくことです。これにより、合理的な判断が導きやすくなる他、合意形成スピードを速める効果も期待できます。

ミクロ視点での分析・判断

年齢層や地域などのマクロな視点でのヒト・モノ・コトの状況分析・判断に変わり、ミクロな視点での分析・判断を実現できます。スマートシティ内にメッシュ(網目)状に設置された各種のセンサーによって、ピンポイントでの状況把握が可能になるからです。これにより、施設や人員などの資源・財源を最適な規模で配分できます。

住民にもたらす変化

生活の質の向上

ICT技術によるリアルタイムでのデータ収集と活用が進むと、住民の生活の質が向上します。たとえば、テレワークや行政のデジタル化などにより、物理的な距離や時間的な制約を受けにくくなります。その結果、余剰時間が増え、住民の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を高められます。

経験的な活動の充実

スマートシティで生じた余剰時間を使えば、住民にとって経済的にも価値の高い仕事ができます。また、住民同士のヒト・モノ・コトの交流が活性化され、「人に出会い、交流の中で啓発を受けること」などといった経験的な活動が増えるため、有益な情報のシェアや技術革新の相乗効果などが起きやすくなります。

参考:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】|国土交通省都市局

スマートシティ実現を支えるテクノロジー

スマートシティでは、IoTや次世代の通信ネットワーク技術など、先端テクノロジーが活用されます。

IoT

IoTとは、センサー装置や稼働装置などの小さなデバイスがインターネットにつながることです。スマートシティの至るところにIoT機器が設置されることで、交通状況や人流、気温などのデータ収集に活用できます。

通信ネットワーク技術

スマートシティでは、高速モバイル通信技術の「5G」や、長距離かつ低消費電流を実現した「LPWA」が導入されます。膨大なデータのリアルタイム通信やIoT機器の普及に不可欠な技術です。

データ可視化

収集したデータを人が視覚的、感覚的に理解しやすくするアプリやサービスも必要です。たとえば、建設現場では、BIM/CIMによって設計図面を3D化することで、業務プロセスを改善しています。

BIMは「Building Information Modeling/Management」の略語です。BIMツールでビルなどの建築物の3次元モデルを作成し、そこに建築物の設計・施工・維持管理といった情報を入力していくことで、工事関係者内での共有などがスムーズになります。

CIMは「Construction Information Modeling/Management」の略語で、意味はBIMと一緒ですが、取り扱う対象が道路やダムなどのインフラになります。

また、都市構造を統計データから可視化する情報基盤やVR技術なども重要です。VRとは「Virtual Reality」の略語で、「仮想現実」とも呼ばれます。コンピュータが作り出した空間や時間を体感できる技術のことを言います。

AI

ビッグデータ解析に必要になるのがAIです。膨大な量の気象データや人流データなど、従来の方法で処理するのが難しい分野で役立ちます。

応用技術の実用化

通信ネットワークや AIの応用技術の一例として、車やドローンの自動運転があります。特定エリアの警備や清掃などをロボットに代替する実証実験も、すでに行われています。これらはスマートシティの住民の暮らしを、便利に快適にするための中核を担う技術です。

スマートシティが注目されている背景

スマートシティが注目される理由のひとつに、都市への人口流入の加速があります。このままでは、交通渋滞や行政サービスの質の低下、環境破壊などの諸問題が、ますます大きくなると見られています。一方、地方では過疎化や高齢化などの問題があります。これらの問題を解決する手段として、スマートシティを推進する国と地域が増えてきました。

国内のスマートシティ事例10選

日本では全国各所でスマートシティ構想が実現しつつあります。ここでは10の事例を紹介します。

01 北海道札幌市 DATA-SMART CITY SAPPORO

DATA-SMART CITY SAPPOROは、官民共有で利用できるデータ連携基盤「札幌市ICT活用プラットフォーム」によって、スマートシティの実現を目指すプロジェクトです。人口や経済、観光、医療、防災など、分野横断的にオープンデータを参照でき、地域経済の活性化と利便性向上に役立てられています。

02 福島県会津若松市 スマートシティ会津若松

スマートシティ会津若松は、「つなぎ続くまちへ」をコンセプトにした持続可能な地域社会を目指す取り組みです。たとえば、市内500世帯に電力消費測定装置(HEMS)を設置し、利用状況を視覚化したことで、最大27%の省エネを実現しました。また、電気自動車の普及、再生可能エネルギーの促進なども進めています。

03 埼玉県さいたま市 スマートシティさいたまモデル

スマートシティさいたまモデルは、IoTやAI、通信ネットワーク技術によって、人と人とのつながりを深め、市民生活の質の向上を目指す事業です。官・民・学の交流の中心として、アーバンデザインセンターみその(UDCMi)を設けているのが特徴です。

04 千葉県柏市 柏の葉スマートシティ

柏の葉スマートシティは、「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」の3つをキーワードにしたスマートシティ構想です。オープンデータの基盤と市民との共創拠点(ラボ)やサービス施設など、ソフトとハード両面の事業を進めています。

05 東京都渋谷区 渋谷スマートシティ

テクノロジーが先行しがちなスマートシティに対して、渋谷スマートシティでは住民共創の考え方を強く打ち出しています。この意味では、スーパーシティ構想の側面が強いプロジェクトです。たとえば、月額定額料金で近距離乗り放題の配車サービスを、スマホアプリで利用できます。

06 東京都港区 Smart City Takeshiba

Smart City Takeshibaは、国家戦略特区の竹芝エリアを中心に、都市型スマートシティの実証を行っています。現在はSTEP1のスマートビル構想が始動し、対象ビル内のあらゆるデータが収集・活用されています。STEP2では竹芝地区にソリューションを拡大、STEP3では他都市と連携する予定です。

07 神奈川県横浜市 横浜スマートシティプロジェクト

横浜スマートシティプロジェクトは、エネルギー需給バランスの最適化システムなどの実証、実装事業です。2015年からは実証事業で培ったノウハウを元に実装事業に移行しており、防災性、経済性、環境性に優れたスマートシティを整備しています。

08 兵庫県加古川市 加古川スマートシティプロジェクト

加古川スマートシティプロジェクトは、ICT活用で生活の質と市民満足度の向上を図り、豊かさと幸せを誰もが享受できるスマートシティを目指すプロジェクトです。行政情報アプリ「かこがわアプリ」やオープンデータを閲覧できる行政情報ダッシュボードなどを提供しています。

09 香川県高松市 スマートシティたかまつ

スマートシティたかまつは、国内で初めてIoT共通プラットフォームが構築されたプロジェクトです。共有データの活用によって地域課題の解決を図るために、ベンチャー企業の実証事業を積極的に支援していることも特徴です。

10 福岡県北九州市 北九州スマートコミュニティ創造事業

北九州スマートコミュニティ創造事業は、電気、熱、水素のエネルギー効率化と分散化により、持続可能な社会実現と防災対策強化を図る事業です。地域全体のエネルギーを統合管理する地域節電所を設けることで、無駄な創電を防ぎつつ、災害に強いまちづくりを目指しています。

国外のスマートシティ事例5選

海外でも、さまざまなスマートシティ構想が進んでいます。ここでは5つの事例を紹介します。

事例01イギリス・マンチェスター

イギリス・マンチェスターでは、「医療・健康」「輸送・交通」「エネルギー・環境」「文化・コミュニティ」の4領域でスマートシティ事業の実証実験を行っています。さらに、各領域は分野横断的に結びつけられています。

事例02エストニア

エストニアは電子政府サービスや最先端の情報交換基盤などの整備で世界的に有名なIT国家です。スマートシティ運用の中心にあるのは、仮想住民という考え方で運用されている電子IDカードです。これは日本のマイナンバーのようなサービスになります。

事例03カナダ・トロント

カナダ・トロントでは、交通状況によってリアルタイムで最適化される信号機や、ロボットによる廃棄物回収など、画期的な事業で注目を集めました。しかし、プライバシー保護を訴える住民の反対やコロナ禍の影響があり、2020年に事業から撤退しています。

事例04シンガポール

シンガポールでは、2014年に「スマートネーション」構想を発表しました。複数の都市で、国民デジタル認証、電子決済基盤構築、センサーネットワーク構築、交通機関のスマート化、公共サービスの横断的利用、政府内の電子化を進めるための「デジタル・ガバメント」の6分野に取り組んでいます。

事例05中国・杭州(こうしゅう)市

中国・杭州市のスマートシティ構想では、中国の主要IT企業が参画しています。カメラ画像による交通状況の可視化やAIによる信号のタイミングの調整などの先進技術が、すでに実用化されています。


まとめ

ICT技術を活用して地域の問題を解決し、生活の質を向上させるために、スマートシティ構想が国内外で進んでいます。事業立案には先行事例のリサーチが欠かせません。

JTBグループは、さまざまな人流、物流、商流を生み出し、交流を創造することで地方創生に貢献する「地域交流事業」を推進しています。地域の現状分析から戦略の立案、PDCAサイクルの検証まで、持続可能性を重視した、中長期の視点で地域の課題を解決するソリューションを提供しています。

地域固有の魅力を発掘・育成し、流通を促進することで、観光を基軸とした交流人口の拡大を図るためにぜひご活用ください。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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