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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 ゼロカーボンシティ実現のために計画したい地域の具体的なアクション

2021.11.30
地域マネジメント
観光ICT
戦略策定

2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」「脱炭素社会」の実現を宣言しました。これと前後して多くの地方公共団体が2050年までに「ゼロカーボンシティ」、つまり二酸化炭素の排出を実質ゼロにする都市を目指すことを表明しています。当初は東京都、山梨県、京都市、横浜市のみでしたが、徐々にその数は増加し、2021年10月29日時点で479、それらの地方公共団体に含まれる人口は日本の総人口の87.8%まで達しました。ただ、具体的な計画策定はこれからという自治体も多いのが現状のようです。以下で取り上げる先進地域の取り組みや海外の事例を参考に「ゼロカーボンシティ」を実現するための具体的なアクションを考えてみてはいかがでしょうか?

ゼロカーボンシティとは?

「ゼロカーボン」とはCO2等の温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成した状態のことをいい、その実現を目指す地方公共団体を「ゼロカーボンシティ」と呼びます。

その実現のため、政府の「国・地方脱炭素実現会議」は2021年6月に「地域脱炭素ロードマップ」を策定し、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにするための工程を示しました。これによると、地域脱炭素は今ある技術や再エネなどの地域資源を最大限に活用することで実現できるものであり、地域の経済活性化、地域課題の解決に貢献できるとしています。

また、そのために今後5年間は政策を総動員し、人材・技術・情報・資金を積極的に支援し、2030年度までに少なくとも100カ所の「脱炭素先行地域」をつくることを目指します。その結果、全国各地で「脱炭素ドミノ」が生まれ、2050年を待たずに強靭で活力ある地域社会を実現できると想定しています。

ゼロカーボンシティ実現に必要となる対策のイメージ

脱炭素化の経済規模

環境省は、自治体や地域企業が地域脱炭素を実現するためのアクションを起こした場合にもたらされる経済・雇用の規模も試算しています。人口1,000人の脱炭素先行地域を想定し、民生部門の電力消費CO2ゼロを実現した場合の経済活動規模は、住宅・ビル・電動車・再エネなどの設備投資で40~100億円程度(雇用規模80~180人相当)、脱炭素実現後には年額約3~5億円が見込まれています。

ゼロカーボンシティの実現に関連する施策例

具体的なアクションを策定するうえでは、環境省が発表した「地方公共団体における長期の脱炭素シナリオ作成方法とその実現方策に係る参考資料」が役立ちます。その中からすでに地域が取り組み始めているアクションの一部をご紹介しましょう。

エネルギー供給

2050年において発電電力量の9割以上は低炭素電源による供給を目指します。具体的電源である再生可能エネルギーの中には、環境負荷を低減しつつ、高効率で需要家近接型の太陽光発電やポテンシャルの大きい風力、安定的な水力、地熱、バイオマス等が想定されています。それらのエネルギーを地域の状況に応じた形で発電し、最適化されたシステムによって供給します。

例えば、長野県での「ソーラーマッピング」による太陽光発電や太陽熱利用のポテンシャルの「見える化」、沖縄県久米島市での海洋温度差発電設備導入への誘致活動が具体的施策として挙げられています。

エネルギー需要

2050年に向けて、移動・運輸のエネルギー源は低炭素化した電力や再生可能エネルギーにより生産される水素が主流になっていきます。また、効率的な低炭素型物流実現のためにAIやIoT技術を活用した物流の情報化の促進、利用者の意識変革などが促されていくでしょう。例えば、神奈川県川崎市ではカーシェアリングEVの普及促進のため、事業者と提携したキャンペーンを実施しています。

さらに都市構造のコンパクト化により、徒歩・自転車の活用や効率的な輸送手段・公共交通と組み合わせた合理的で快適な移動が志向されていきます。京都府京都市ではグリーンツーリズムや持続可能な観光促進に向けた情報発信や、カーボンゼロを目指した総合交通戦略が策定されています。

土地利用・吸収源

ゼロカーボンシティ実現のためにはCO2の削減だけではなく、吸収源を増やす必要もあります。そのためには山間部においては健全な森林の整備や、効率的かつ安定的な林業経営を促進し、都市部においても水辺や緑地など自然資本を組み込んでいかなければなりません。

その点で東京都は「緑の基本計画」に基づき、都市公園の整備、官公庁施設等における緑化の促進、都市緑化における吸収量の算定や報告・検証等に関連した情報提供を行っています。

事業者との連携で実現した環境配慮型MaaSの事例

JTBを含む複数事業者は栃木県と連携し、2021年10月28日から環境配慮型・観光MaaS(Mobility as a Service)「NIKKO MaaS」のサービスを日光地域で開始しました。同サービスは日光地域のバスや鉄道をセットにしたデジタル限定フリーパスや、EVカーシェアリングやEVバスなど環境にやさしいモビリティを提供、スマートフォン1台あればシームレスに日光地域の周遊観光を楽しめます。これにより日光地域の渋滞緩和を目指すとともに、脱炭素社会への先導モデルになることを目指しています。

公式サイト「NIKKO MaaS」

海外の先進事例は?

海外での先進事例についてもご紹介しましょう。例えば、イギリス政府は2025年以降、新築の家へのガスボイラー設置を禁止しました。代替電源として注目されているのが地下鉄の排熱です。現在、ロンドンの暖房需要の38%ほどが浪費されていると推定されています。実際、ロンドン北部のイズリントン地区では地下鉄から発生する排熱を暖房電源として利用するプロジェクトを進められているようです。

また、ニューヨークは建物のエネルギー効率改善を図るために2020年10月から大型建物のエネルギー効率の可視化に取り組んでいます。水とエネルギーの利用効率を4段階で評価した等級を建物入口付近に掲示することが義務付けられており、実施しない管理会社には罰金が課されます。

自治体に求められる役割は?政府、事業者の最新動向

ゼロカーボンシティ実現に向けて今後自治体の役割はますます大きくなるものと予想されます。そのことは、地球温暖化対策推進法の一部改正案で、地域の脱炭素化に貢献する「地域脱炭素化促進事業」の認定主体を市町村とする制度が創設されている点からも分かります。

自治体には地域の脱炭素化事業に主体的にかかわり、事業者と合意形成を求める姿勢が期待されています。またSDGs未来都市やスマートシティなどのキーワードからも分かるように各自治体には、局所的ではなく俯瞰的・総合的に複数の課題を検証し、それらの同時解決を図るアプローチが必要であり、そのためには国の支援の活用が欠かせません。

地方自治体への取り組み支援策

実際、政府は地域脱炭素への取り組みに対し「①人材派遣・研修」「②情報・ノウハウ」「③資金」の観点から国が積極的、継続的かつ包括的に支援することを表明しています。地域脱炭素への取り組みに対する支援について関係省庁の主な枠組みをご紹介します。

内閣府地方創生推進交付金「Society5.0タイプ」

2020年より地方創生推進交付金に「Society5.0タイプ」を新設しました。地方創生の観点から取り組む、未来技術を活用した新たな社会システムづくりの全国的モデルとなるような事業を有識者審査会が選抜し、支援する制度です。

地方創生推進交付金はソフト面、ハード面の整備のどちらにも使いやすく、複数年で政策を実行できるのが特徴。申請のチャンスは1月と6月の年2回です。次の機会に向けて準備を進めてみてはいかがでしょうか。

環境省 脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業

地域の再エネ自給率最大化と災害時のレジリエンス強化を同時に実現する自立・分散型エネルギーシステム構築や、自動車CASE※等を活用した地域の脱炭素交通モデル構築に向けた事業等を支援するものです。自治体向けには「地域再エネ活用の検討に関するヘルプデスク」も設けられています。

「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をつなげた概念

環境省 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金

地域のカーボンニュートラルの実現に向けて新設される交付金の動向にも注目です。「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」は、政府が意欲的な脱炭素の取り組みを行う自治体を補助率3/4~1/2の交付金により支援するもので、令和4年度の予算として新設されれば200億円の予算が割り当てられる見通しです。

交付金は再エネ等設備の導入や、再エネ利用最大化のための基盤インフラ設備(蓄電池、自営線等)、その効果を高めるために実施するソフト事業が対象となります。

 

まとめ

観光もまちづくりも「持続可能性」が重要ワード

CO2等の温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡実現を目指す「ゼロカーボンシティ」。その実現のため、政府の「国・地方脱炭素実現会議」は2021年6月に「地域脱炭素ロードマップ」を策定し、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにするための工程を示しました。ゼロカーボンシティ実現に向けて今後自治体の役割はますます大きくなるものと予想されます。そのことは、地球温暖化対策推進法の一部改正案で、地域の脱炭素化に貢献する「地域脱炭素化促進事業」の認定主体を市町村とする制度が創設されている点からも分かります。

自治体には地域の脱炭素化事業に主体的にかかわり、事業者と合意形成を求める姿勢が期待されています。またSDGs未来都市やスマートシティなどのキーワードからも分かるように各自治体には、局所的ではなく俯瞰的・総合的に複数の課題を検証し、それらの同時解決を図るアプローチが必要であり、そのためには国の支援の活用が欠かせません。

2050年に向けて脱炭素先行地域では急ピッチで計画が策定され、政策が実行に移されていくことでしょう。しかし、それらを成功裏に進めるためには脱炭素先行地域の創出や重点対策の実施だけにとどまらず、まちづくりや観光などあらゆる分野において脱炭素を前提とした政策立案・実施を行うことが求められていくはずです。これを機に、地域の脱炭素化に向けて検討を始めてみてはいかがでしょうか。

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