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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 脱炭素社会に向けて観光コンテンツに取り入れたい「カーボン・オフセット」の考え方と実践事例

2022.01.27
地域マネジメント
戦略策定
誘客促進

2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を宣言しました。この壮大な目標達成のためには、温室効果ガスの排出そのものを削減するだけでなく、削減が困難な部分の排出量を投資により埋め合わせる「カーボン・オフセット」の取り組みも重要です。以下では、カーボン・オフセットとはそもそもどういう考え方なのかをご説明し、先進地域の取り組みや海外の事例をもとに、カーボン・オフセットの具体的アクションや観光コンテンツに取り入れる方法についてご紹介いたします。

カーボン・オフセット

カーボン・オフセットとは?

環境省によると「カーボン・オフセット」とは「日常生活や経済活動において避けることができないCO₂等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方」と定義されています。

カーボン・オフセットとは?

「オフセット」とは「埋め合わせ」を意味しますが、その主な方法には「カーボン・クレジットの購入」「他の場所での排出削減活動の実施」の2通りがあります。

カーボン・クレジットとは、あるプロジェクトを通じて排出削減・吸収できる温室効果ガスの量を「見える化」したものです。日本では温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が認証する「J-クレジット制度」によって実体が担保されています。

カーボンニュートラルに欠かせないカーボン・オフセット

「カーボン・オフセット」はエネルギー消費量の削減、エネルギーの脱炭素化、利用エネルギーの転換とセットで取り組むことで初めて意味を成します。日本のCO₂排出量の9割はエネルギー消費にともなう排出であるため、住民、事業者、行政が連携してエネルギー消費量を削減することがカーボンニュートラル達成の第一歩と言えます。

そのうえでエネルギー供給構造の脱炭素化、利用エネルギーの転換を図り、残余排出量に関しては吸収源・オフセット対策を講じます。

カーボン・オフセット

地域がカーボン・オフセットを推進する意義

環境省によるとカーボン・オフセットを推進する意義は以下の2点であるとされています。

  1. 市民、企業、自治体が地球温暖化を「自分ごと」と捉え、主体的に温室効果ガスを削減する活動を促進する。
  2. 国内外の排出削減・吸収を実現するプロジェクト、活動などの資金調達に貢献する。例えば、化石燃料使用の削減、森林保全などのプロジェクトは、公害問題・自然資源の改善と温室効果ガスの排出削減を同時に実現することができる。

観光業では、目的地までの交通で二酸化炭素が排出されるだけでなく、宿泊施設の清掃やリネン類の洗濯、お土産品の生産などあらゆる工程でエネルギーを消費し、間接的に二酸化炭素を排出しています。地域が観光コンテンツで「カーボン・オフセット」を推進することは、観光客や住民が「カーボンニュートラル」に向けた具体的なアクションをより「自分ごと」として考えるきっかけづくりにもなります。

カーボン・オフセットの取り組み方法と実践事例

カーボン・オフセットの主体になれるのは「製品やサービスを提供する企業・団体」「コンサートやスポーツ大会などのイベント主催者」だけではありません。製品の販売、サービスの提供、イベントの開催などを行う事業者や自治体が、製品・サービス・イベントのチケットなどにクレジットを付すことで、購入者や来場者などのカーボン・オフセットを促す取り組みも行われています。

商品使用・サービス利用時のオフセット

例えば、化石燃料を使用している交通機関はすべてCO₂を排出していますが、ANAは飛行機の乗客にCO₂排出量を埋め合わせるオプションを提供しています。

また、JTBの「CO₂ゼロ旅行®」は、旅行中に発生する温室効果ガスを最大限減らすよう努力したうえで、どうしても発生してしまう分について、グリーンエネルギー価値を購入することで、間接的に発生した温室効果ガスを相殺する取り組みです。この取り組みには、2011年度~2020年度までで延べ17,765名が参加し、総発電量914,200Whの再生可能エネルギー発電に貢献しました。

会議・イベントのオフセット事例

さらにJTBグループでは「CO₂ゼロMICE」を展開しています。これは「MICE(ミーティング・コンベンション・各種イベント・展示会・学会・国際会議など)」を実施する際に会場で使用される電気を、それと同等の「環境価値」を購入することで再生可能エネルギーに置き換え、CO₂の排出量を実質ゼロにする取り組みです。

環境価値とは
環境負荷の低減、化石燃料の節減、CO₂排出削減など、再生可能エネルギーの利用によってもたらされる電気エネルギー以外の付加価値のこと

自己活動オフセットの事例

とある小売電気事業者では、自社オフィスで使用する電力について、非化石証書を充てたCO₂排出量実質ゼロの電力を購入することで、事業活動にともなうCO₂排出量を埋め合わせています。

官民連携で進めるカーボン・オフセット

自然環境保護

ここまでは民間企業におけるカーボン・オフセットの取り組みを紹介してきましたが、世界に目を向けると観光の分野でも取り組みが進んでいます。「観光」が自然環境への負担となることに目を向け、観光コンテンツにカーボン・オフセットを導入する取り組みがすでに始まっています。

中米のコスタリカは生物多様性に富んだ自然環境を守るために1990年代から「エコツーリズム」に取り組んできました。近年力を入れているのが、観光客が自分自身の旅行のCO₂排出量に対してカーボン・オフセットを実行できる仕組みの推進です。国が政策として観光客にカーボン・オフセットを積極的に勧めるのは世界でも初めてで、観光客が支払った代金は植林などの自然保護活動に充てられます。

コスタリカ観光協会によると、首都サンホセとニューヨーク間のフライトであれば一人あたり約530㎏の二酸化炭素が排出されますが、これをオフセットするには41本の木を植える必要があり、費用に換算すると一人当たり約4ドルに相当するとのことです。費用面からみても、観光コンテンツにカーボン・オフセットを導入することは現実的であることがお分かりいただけると思います。


まとめ 観光もまちづくりも「持続可能性」が重要ワード

今や「持続可能性」は単なるトレンドワードではなく、観光やまちづくりには欠かせない視点となりました。サステナブルな観光まちづくりのためには、暮らしに関わるあらゆる分野において脱炭素を前提とした政策立案・実施を行うことが求められます。

カーボン・オフセットもその取り組みの一つといえます。自治体として本格的に取り組んでいる例はまだ少ないため、他の地域に先行して始めてみてはいかがでしょうか?

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