コロナの流行によって、思うように観光誘致ができずにお困りの自治体は今も多いと思います。一方で、人口が密集した都市部から地方へ目を向ける人や企業が増えています。
そこで施策としてオススメなのが、「ワーケーション」の取り組みによる誘致です。実際に、働き方・休み方改革の一環として「ワーケーション」に注目し、取り入れている企業は多数出てきています。
今回は、ワーケーション誘致を積極的に行っている長野県諏訪市の取り組み「SUWAーケーション」のモニターツアーの実施内容をお届けします。参加者の声にみるワーケーションの有用性についてもご紹介します。ぜひ一つの事例として参考になさってください。
INDEX
ワーケーションとは?
「ワーケーション(Workcation)」は、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、「リゾート地や地方等の普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得等を行う仕組み」です。
ワーケーションの種類はさまざまで、観光庁は特性により、下図のように休暇型(福利厚生型)と業務型(地域課題解決型、合宿型、サテライトオフィス型、ブレジャー型)に分類しています。
「個人が主体的に選択する、日常的な仕事(ワーク)に、非日常的な休暇(バケーション)の感覚を埋め込んだ柔軟な働き方」であり、新たな働き方、ワークスタイルとして注目されています。
「SUWAーケーション」モニターツアーの実施内容をレポート
ここからは、2回にわたって実施されたモニターツアーの内容をご紹介していきます。
「SUWAーケーション」推進事業 取り組みの経緯
諏訪市は、「信州リゾートテレワーク」モデル地域に指定されています。21年10月には、観光庁が進める「企業と地域によるモデル事業」の採択を受けて、諏訪市ワーケーションモデル事業を開始しました。観光庁では、職場とは異なる観光地で働きながら休暇を取るワーケーションを「新たな旅のスタイル」と位置付けています。豊かな自然と特急あずさ・しなのを利用すれば、首都圏・中京圏から約2時間強という立地を活かし、「SUWA―ケーション」と銘打って取り組みに力を入れています。
「SUWAーケーション」紹介動画
「SUWAーケーション」モニターツアーの概要
- 日程
- <1回目>2021年11月3日(水)~11月6日(土) 3泊4日
<2回目>2021年12月1日(水)~12月4日(土) 3泊4日 - 参加者
- <1回目>6名(6社)
<2回目>8名(8社) - 宿泊先
- ホテル紅や
- ワーケーションの型
- 地域課題解決型、合宿型
モニターツアーは「SUWAーケーション」推進事業の一環として、首都圏のニーズ調査を目的に行われました。1回目は以下のような旅程(3泊4日)で行われました。
諏訪市の自然を体感できるアクティビティや美術館などの観光スポットも楽しみつつ、参加者全員で会議をしたり、各自ホテルで仕事をしたり、現地の食事を味わったり…とワーケーションならではの行程となりました。初日には、地元の事業者の見学も実施。ワーケーションに、ビジネスマッチングの可能性もあることがわかりました。また3日目には、参加企業と「SUWAーケーション」の未来を考える「未来会議」も開催しました。
諏訪市の宿泊施設とワークスペースは?
諏訪市には多数の宿泊施設やワークスペースがあります。ここではその一部をご紹介します。
駅前交流テラスすわっチャオ
「すわっチャオ」はJR上諏訪駅前にある諏訪市が運営する公共施設で、館内にはフリースペースやイベントスペース、可動壁で収容人数を変えられる会議室があります。施設が充実しているので多用途で利用でき、10名以上の団体にも対応可能です。
また、館内にはフリーWi-Fiがあり、有料施設利用者向けに別回線で「Wi-Fiルーター貸出しサービス」も行っています。
原田泰治美術館
諏訪湖畔に佇む美術館。湖を一望できるカフェスペースにてお仕事が可能です。諏訪市出身の画家・グラフィックデザイナーである原田泰治氏の美術作品の鑑賞や諏訪湖畔での散歩をしてリフレッシュ。
ホテル紅や
「ホテル紅や」は上諏訪温泉が楽しめる施設の中で、諏訪湖畔の最も近くに建つホテル。最上階の14階にある温泉展望浴場「湖空の湯」から、諏訪湖を一望できるのが魅力です。他にもドライサウナや別館には露天風呂、岩盤浴室などもあり、お風呂を存分に楽しめます。
客室は和室と洋室の両方があり、全室無線LAN完備。コンベンションホール「ルビーホール」は10~100名の収容が可能で、ホワイトボード・プロジェクター・マイクもあるため、会議やセミナー、ワークショップ、展示会、ビジネス合宿などにも最適です。
RAKO 華乃井ホテル
諏訪湖畔のスパリゾートホテル。豊富な温泉はもちろんの事、1周16kmの諏訪湖周はジョギング、サイクリング用に整備されており、高原の新鮮な空気を満喫しながらテレワークできる環境です。
首都圏、中京圏からのアクセス時間も魅力でもあり短時間で異環境でのワーキングができます。
「SUWAーケーション」モニターツアー参加者の声
モニターツアーに実際に参加した企業の方々からは、以下のような声が寄せられました。
今回のワーケーション全体に関して
- チームメンバーとのコミュニケーションの場としての活用ができそう。
- 一社員として、生産性の向上、社員のリフレッシュ、他社交流に良いと思った。
- 社内のコミュニケーション強化のための合宿などで使うのは大いに有効だと思いました。今の仕事が場所を変えて出来るのではなく、社内のコミュニケーションをとれる場を提供していただければ、今後も広まっていくと思いました。
- 湖畔のベンチで2時間Web会議をしたら、東京からは「うらやましい」「楽しそう」などポジティブな意見をもらった。
- 諏訪市が素晴らしいのは湖、山、空気、それに育まれた農産物やそれを作っている人、諏訪に根付いた産業や、歴史など今回のなかでは見切れなかったものが多種類ある点です。
- 自然、温泉が良いに尽きる。
- 観光資源が豊富であり、首都圏からも近いため、ワーケーション地としてのポテンシャルがあると思う。
- 諏訪湖という観光資源を十分に活用できることが他の地域に比べて勝っていると存じます。首都圏からも中部圏からも2時間ちょっとで来られるのが素晴らしいです。
アクティビティに関して
- 普段しないことができて楽しかったです。他のメンバーとのコミュニケーションなどもできました。
- アクティビティは非常によかったです。
- 30分ほどであったが朝の諏訪湖畔を堪能できた。
- 映画『君の名は』が大好きだったので、モデルになったと言われている「立石公園」の夕景鑑賞は感動しました。
他社との交流に関して
- 会議でいろいろな方と話ができたのは嬉しい。
- モニターツアーに関しては心から楽しめた。普段働いているひとではない方と働くのがすごく新鮮。
- 新たな気づき、今後のモチベーションに繋がった。
ワーケーションの有用性は?
最後に、モニターツアー参加者の声と、JTBが行った定性調査の結果をもとに、ワーケーションの有用性を企業と従業員それぞれの視点でまとめてみました。
企業からみた有用性
モニターツアー参加者などに対して行った定性調査の結果によると、すでにワーケーションを推進中または導入済みの企業からは以下のような声が寄せられました。
- 心身のリフレッシュやモチベーションの向上につながることで、通常勤務時と同様、またはそれ以上の生産性向上を見込める。
- 非日常に身を置くことで、ビジネスにおける新しいアイデアや気づきが生まれる。
- 訪問地で他業種との交流を行うことで、新たな人脈やビジネス機会の開拓、情報交換を行うことができる。
- コロナ禍で減った従業員同士のコミュニケーションの機会になり、連帯感が醸成できる。
- 働き方改革における新たな職場環境の提供ができ、福利厚生の充実につなげられる。
参加者(従業員)からみた有用性
同じく、モニターツアーに参加した方々からは、従業員側から見たワーケーションの有用性として、以下のような声が寄せられました。
- 団体で来れば、従業員同士でコミュニケーションがとれる。
- 他社と合同で行ったり現地企業に訪問できれば、交流をしたり情報交換ができる。
- ワーク環境が整っていれば、自宅や職場と同等もしくはそれ以上の生産性が発揮できる。
- 現地が自然の多い場所であれば、環境に癒されるなど、心身のリフレッシュができる。
- 長期休暇を取りやすくなる。
まとめ
ワーケーションは、企業や従業員だけではなく、自治体にとっても有益な施策となり得ます。企業側は、従業員の生産性向上だけではなく、地域の人々や企業との交流により、新たなビジネスチャンスの創出にも期待を寄せています。これは地域にとって、経済面での活性化だけではなく、関係人口創出のチャンスにもなりえると言えます。また企業との連携により、さまざまな地域課題を解決できるかもしれません。この機会に、皆さまの地域でもワーケーションの取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
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