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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 大学生の就職意向はどう変化している? ポイントは「自分に合った」を重視した選択

長引くコロナ禍で大学生の就職意向はどう変化を遂げているのでしょうか。近年は、従来型の「大手企業志向」や「収入面での安定性」といった単一的なキャリア志向ではなく、より自分に合った就職を臨む学生が増えています。そこで今回は、大学生の就職意識の変容に迫ります。

大学生の就職意識にどのような変化が起きているか?

長年、多くの大学生たちは大企業への就職を志望してきました。しかし、近年、その傾向が変わりつつあるといいます。2022年度卒と2023年度卒を対象とした調査によると、大手企業志向が低下。2023年度卒では48.5%で前年比2.6pt減で、一方で「中堅・中小志向」は前年比2.9pt増の47.8%となり、僅差へと近づきました。

このことから、「大手企業へ就職すること」以上に重視する価値観を持った学生たちが増えてきていると捉えることができるでしょう。

【図1】大学生の企業志向

では、学生たちは新たにどのような志向を持つようになったのでしょうか。企業選択のポイントを尋ねる調査によると、「安定している」を重視する声が最多で43.9%となりました。「安定」とはどういったことを指すのかを分解していくと、そこには様々な要素が含まれていることがわかりました。

【図2】企業に求める「安定性」の内訳

【図2】では、「福利厚生が充実している」「安心して働ける環境がある」が上位2項目となり、「知名度」「上場起業であるかどうか」などの優先度は低いという結果となりました。つまり、「安定」=「大企業」「有名企業」という発想ではなく、自身の働きやすさなどを重視している傾向が見て取れたのです。

就職活動にまつわる単一のモノサシを捨てる必要性

学生たちの能力や適性によって、「どのような企業に就職したらよいか」はそれぞれ異なります。大学では、「こんな会社で働くことが幸せである」という単一思考から脱却して、今後は一層一人ひとりの学生にフィットした就職先を探るサポートが求められるでしょう。

では、学生たちが自分に合った仕事を知るにはどのようなアプローチがあるでしょうか。ここでヒントとなる手がかりが、7つの「はたらく志向性タイプ」の分布です。7つのタイプとは、「社会課題解決タイプ」「働き方重視タイプ」「はたらく仲間重視タイプ」「スキル蓄積タイプ」「安定重視タイプ」「承認重視タイプ」「縁の下の力持ちタイプ」で、それぞれのタイプによって仕事へ求めることが異なってくることを示しています。

この7つの指向性の分布を見ると、特定のタイプに大きく偏ることはなく、1番多いタイプが「はたらく仲間重視タイプ」(19.2%)で、最も少ない分類が「縁の下の力持ちタイプ」(10.6%)となりました。

【図3】「はたらく志向性タイプ」の分類

「はたらく志向性タイプ」の分類
出典:パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」

満遍なく存在する各タイプがうまく力を合わせて業務に取り組むことで、働く上での幸福度も得られやすくなり、さらに業務を効果的に進めていくことができると捉えられるのです。

また、当然のことながら、これらのタイプでは仕事の選び方にも違いがあらわれます。例えば、「社会課題解決タイプ」では、「やりがいを感じられる」「社会に貢献できる」「自分の能力や個性が活かせる」ことを重視しています。重要なことは、自身のタイプに応じた仕事や働き方を選ぶことなのです。

学生が企業の情報や自身とのマッチングを得る機会は十分ではない

これまでお伝えしてきた通り、学生たちのキャリア志向は変化の途上にあります。しかし、コロナ禍でその志向を実現する環境が失われているという課題も生じています。図4の通り、コロナ禍でキャリアに不安を感じていると回答する学生は65%以上にのぼります。

【図4】コロナ禍で就職活動に不安を感じる割合

コロナ禍で就職活動に不安を感じる割合

また、「どのような不安を感じているか」という点でいうと、半数の学生が「オンラインでのインターンシップや面接が続き、職場で働く人の雰囲気がわからず、入社後にギャップを感じるのではないか」と回答していました。感染症防止の観点から、企業へ訪問して職場の雰囲気を確認したり、リアルに社員と接点を持ったりする機会が激減しました。学生たちは自身が安心して働ける職場を求める気持ちを強めているにも関わらず、現状、従来以上にそのマッチングを見極めにくくなっているという課題が生じているのです。

【図5】就職活動でどのような不安を感じていますか

就職活動でどのような不安を感じていますか
出典:ダイヤモンド・オンライン「息子・娘を入れたい会社2022」ダイヤモンド・ヒューマンリソース「ダイヤモンド就活ナビ」会員への【就職活動に関するアンケート】(2021年10月実施)より

なお、「オンラインでの面接では、自分の良さが相手に伝わらないのではないか」という不安を感じている学生も約48%にのぼりました。実際に採用試験を受けている段階でも、学生たちは葛藤を抱えているということが見て取れました。

学生たちにとっては、就職活動の全ての工程で企業からの情報が減少し、さらに、自身とのマッチングも見出しにくくなっているのです。学生の志向と採用の現場に大きなギャップが生じているといえるでしょう。

企業情報が不十分な状態の場合、どのような課題が生じるのでしょうか。

大きな課題としては、自身に合ったキャリア形成の視点から逆行し、ステレオタイプに会社を見るようになることです。例えば、「この会社は男性中心の職場だろうな」とイメージに基づいて敬遠してしまったり、「この会社は業務がハードなイメージがあるから」と避けたりする傾向が強まります。そうなれば、企業側も自社に合った学生を採用することができず、学生側も「自分に合った職場への就職」の道を見出しにくくなってしまいます。

大切なことは、学生が自身を深く理解し、企業側のリアルな情報と接続する機会を得て、自分に合った就職先を見つけ出していくことです。学生が自身の特性を生かせる就職ができるよう多様な側面からのサポートが求められているのです。


まとめ

近年、大学生のキャリア志向は変化を遂げています。個々の学生の特性や能力によって、幸せに活躍できる職場は異なります。大学も企業側も、従来型の「こういった企業に入社することが幸せ」という単一的なモノサシを捨て、それぞれの学生によってマッチする仕事は異なるのだと理解していくことが重要です。

なお、コロナ禍で就職活動に際する企業の情報を得にくくなっている現状があります。今後は、学生が自分自身のことを深く理解し、それに合った職場へシームレスに接続する機会を設けていくことがより一層必要になっていくといえるでしょう。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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