近年、学校教育においても生成AIは切り離せない状況になっています。2023年以降、生成AIは教育現場でも無視できない存在となり、文部科学省は2024年度にガイドラインVer.2.0を公表し、生成AIの利活用とリスクへの向き合い方を整理しました。AI前提社会を生きる子どもたちに、生成AIとの適切な付き合い方を教えることの重要性を強調しています。
一方で、生成AIは学びの質を高める大きな可能性を秘めており、校務の効率化に留まらず、探究のプロセスを支える『補助教員』のような役割を果たすことが報告されています。
生成AIとどのように向き合い、活用していくか、事例を用いながらご案内します。

生成AI活用のリスクと、なぜ“リスクを理解したうえで上手に使う姿勢”が必要なのか
生成AIは便利である一方、その出力は「統計的にもっともらしい応答」であり、誤情報や偏りを含むことがあります。文部科学省は「生成AIの回答は誤りを含む可能性が常にあり、必ずファクトチェックが必要」と明確に示しており、利用者が内容を鵜呑みにしないことが前提となります。
また、個人情報・著作権・公平性といった観点でもリスクが存在し、適切な扱いをしなければ、教育活動に深刻な影響が生じかねません。
しかし同時に、社会全体が生成AIの活用を前提に動いている中で、「使わない」「使わせない」という選択肢は現実的ではないことも強調しています。
だからこそ学校には、以下のような「リスクを理解したうえで、安全な使い方のルールを押さえながら、教育的価値を引き出すために前向きに活用する」という“バランスの取れた姿勢”が求められています。
禁止でもなく、無防備な全面解禁でもなく、「正しく知り、正しく使う」姿勢こそが、生成AIと共に生きる時代の学びに必要な態度だと言えます。

探究学習と生成AI:可能性と課題の二面性
「探究的な学び」と生成AIの相性は極めて高い一方、誤った活用が生徒の成長を阻害する可能性もあります。2024年度の未来の教室の実証事業では、生成AIは探究の補助として大きな効果を持つことが確認されています。
AIの問いかけによる思考の拡散・深化(実証事業より)
- AIが「別視点の問い」を提示することで、議論が活性化し、アイデアの多様性が増加。
- 「ツールがなければ思考が行き詰まっていた」「自分の考えが広がった」という生徒の声。
- 教員一人では難しい“個別最適な問いかけ”をAIが補完。
探究の質を高めるAIのフィードバック(DXスクール事例)
- 生徒が書いた振り返りシートについて、AIが
- 見方・考え方の抜け
- 反証の不足
- 情報の偏りといった観点でフィードバック。
- 生徒は改善点を自力で把握し、探究サイクルが高速化。
- 探究主任の負担は激減し、教員は本質的な指導へ集中。
これらは、生成AIは単に便利なツールではなく、「学びを拡張する存在」になり得ることを示しています。
しかし、AIが答えを与えるのではなく、「問いを深める相棒」として扱わない限り、探究は形骸化してしまうことも同時に明らかになっています。
情報活用能力の抜本的強化―次期学習指導要領が示す方向性
文部科学省は次期学習指導要領の議論において、学校教育が育むべき力として「情報活用能力」を中核に据える姿勢を明確にしています。
情報活用能力とは、
情報の真偽を見極め、目的に応じて適切に情報技術を使い、他者と協働しながら課題解決に向かう力、と定義されています。
生成AIの時代には、この能力はこれまで以上に重要です。
なぜ重要性が増しているのか?
- AIの出力を鵜呑みにせず、自ら検証する力が必要
- 情報の偏りを乗り越え、多様な視点を組み合わせる力が不可欠
- 「AIに使われる」のではなく「AIを使いこなす」主体性を育む必要がある
- 探究・STEAM・地域課題学習など、情報の扱いが学びの中心に位置している
これらにより、AI時代の教育では、単なるICT活用ではなく 「情報活用能力 × 探究力 × 市民性」の統合が求められています。
生成AIを活用した実践的講義「次世代AIクリエイターズプロジェクト」
「生成AIを授業でどう活用すれば良いか分からない」「生徒に実践的なスキルを身につけさせたいが、具体的な方法が見つからない」、先生方は、このような課題をお持ちではありませんか?
「次世代AIクリエイターズプロジェクト」は、文部科学省のガイドラインに準拠し、生成AIの仕組みやリスクを学びながら、未経験から2日間(4コマ)でWebサイト制作を体験できる実践的なプログラムです。
本プログラムでは、ディップ株式会社の専門講師が、生成AI(Gemini)を活用したWebサイト制作をサポート。生徒たちは、自校の魅力を伝えるWebページを制作するグループワークを通して、マーケティング思考や創造性を育みます。
「プログラミングは難しい」という生徒の意識を変え、AI時代を生きるための実践的なスキルと、将来の選択肢を広げるきっかけを提供します。生徒主体の探究活動を促進し、課題解決能力を養いたい学校に最適なプログラムです。

実践事例 長野日本大学高等学校×『次世代AIクリエイターズプロジェクト』
長野日本大学高等学校では、生成AIを活用した実践型の学習プログラムとして、生徒がAIとの協働を通じ、自ら考え、創り、発信する力を高める取り組みとして、次世代AIクリエイターズを活用したプログラムを実施しています。
実施内容や実施の背景について紹介します。

実施の背景
長野日本大学高等学校は、DXハイスクール事業を通じた取り組み内容を検討している中、今後のトレンドをふまえ、生徒が適切にAIを扱うことは必須だと考えていました。
また、WEBページ作成という生徒が興味を持ち、わかりやすい成果物が出せること等より、実施へとつながりました。
実施内容
第1回:生成AIとマーケティングの基礎を学ぶ(座学)
- 生成AIの仕組み・リスクを学ぶ
- マーケティングの基本をクイズ形式で理解する
- ターゲットの「不(不満・不安)」に着目した考え方を習得
第2回:課題設定と言語化からWebサイト制作へ進む
- AIと対話しながら企画テーマを言語化
- 「誰の・どんな不」を解決するサイトかを具体化
- キャッチコピーをAIと共に作成
- AIを活用しWebサイト制作をスタート
第3回:AIを使ったターゲット設定(ペルソナ設計)
- ターゲット設定の重要性を学ぶ
- 生成AIを使ってペルソナ(理想の利用者像)を作成
- ペアでペルソナ紹介を行い相互フィードバック
- 得られた意見をふまえて改善計画をまとめる
第4回:AI時代の生き方と動的処理の体験
- 生成AI+JavaScriptで動的処理を体験
- AIコーディングアシスタントが普及している現状を理解
- AIの発展を踏まえ「人が担うべき役割」を考える
生徒の感想
元々プログラミングに興味があり、また生成AIに対する理解を深めたかったので、今回の授業に参加しました。Webサイトを作るために必要なコードは複雑で難しい印象でしたが、生成AIに相談したら必要なコードを全部生成してくれてすごく驚きました。これから生成AIは生活に必要不可欠になっていくと思うので、メリットとデメリットを理解して使っていきたいです。また学校の人手不足の問題に対して、募集のWebページを作って導入することはすごく楽しみですし、学校が盛り上がるといいなと思っています。
まとめ
生成AIは、教育現場に大きな変化をもたらす一方で、その活用のあり方は先生方の判断と工夫に大きく委ねられている部分が大きいのが現状です。探究の質を高める支援ツールとしても、生徒の可能性を押し広げる学びのパートナーとしても、AIはこれからの教育を支える心強い存在となるはずです。
しかし、生成AIがどれほど進化しても、生徒の学びを見取り、寄り添い、未来をともに描く中心にいるのは、やはり先生方です。目的を明確にし、本当に必要な場面で適切に生成AIを活用することで、学びはより深く、豊かに、そして生徒一人ひとりの未来へとつながるものになるでしょう。
先生方には、「使えるところから、賢く・柔らかく」活用していただくことで、生成AIは先生方の思いを補い、生徒の成長を後押しする役割を果たしてもらえるはずです。
引用・出典
1. 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」2024年12月
https://www.mext.go.jp/content/20241226-mxt_shuukyo02-000030823_003.pdf
