首都圏から近く、景勝地やワイナリーなど多くの観光資源を持つ山梨県。しかし、それぞれが離れた場所にあり、観光地を繋ぐ交通網が整備されていないため、観光の周遊性が低いことが課題でした。また観光客の7割がマイカーを利用。そのような課題を解決し、観光客に多くの山梨の魅力に触れてもらおうと実施された実証事業「やまなし観光MaaS」をご紹介します。
- 背景
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山梨県は首都圏から近く、景勝地やワイナリーなど観光資源の多い県ですが、それぞれの観光資源が離れた場所にあり、観光地を繋ぐ交通網の整備に課題がありました。また観光客の7割がマイカーを利用するため、渋滞の一因にもなっていました。また、県内の魅力的な観光の1つであるワイナリー巡りの際に「自動車で行くと運転者はその場でお酒を楽しむことができない」という声も多かったです。そのような課題を解決し、観光客に1つでも多くの観光資源に触れてもらいたいと、 2021年11月、山梨県甲府市と峡東3市(山梨市・笛吹市・甲州市)にて、やまなし観光MaaSの実証事業の実施に至りました。
- 課題
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- 観光のための交通網の整備
(観光周遊性の向上、マイカー利用を一因とする交通渋滞、ドライバーがワインを楽しめない。) - 回遊エリアの拡大
(甲府+峡東3市にある観光地の魅力発信)
- 観光のための交通網の整備
- 実施概要
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県内の周遊を促進するため、交通・観光事業者との連携により複数の交通手段・観光施設を繋ぎ、スマートフォンでルート検索・予約・決済が可能となる環境を整備。山梨県甲府市と峡東3市(山梨市・笛吹市・甲州市)を「シンゲンランド」としてテーマパークに見立て、2021年11月の土日祝日に「やまなし観光MaaS」の実証事業を実施しました。
MaaSとは
「MaaS」とは「Mobility as a Service」の略で、ICT(情報通信技術)を活用して、複数の公共交通やその他の移動サービスを統合し、検索・予約・決済などをワンストップで行う仕組みです。交通や観光周遊に課題を持つ地方の観光地の課題を解決し、観光客の満足度を上げることで地域全体を潤す効果が期待されます。
JTBのサポート
- 新たな取り組みに対し、地域の方の意見に耳を傾け、話し合いを大切にしながら協議会を実施。
- 実証事業期間中、毎日の事務局ミーティングで把握した利用者の声をもとに、迅速な改善を継続的に実施。
- 動画やブログなど新たにコンテンツ作成や、ウェブサイト上のデザイン調整など、システム面でのきめ細やかな改善。
- スタッフの配置やPiiMoの運行方法の調整等、運営面での利用者に寄り添った改善。
- これまで築いたネットワークを生かした関係機関との連携による柔軟な対応。
- 実施内容
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- 実施期間
- 2021年11月3日(水)~11月28日(日)
- 内容
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- 交通サービスの整備(シンゲンパス運行、AI乗合タクシー、新モビリティ「PiiMo」の乗車体験)
- 訪問の機会づくり(大学生によるビンゴ企画、クイズラリー、外国人インフルエンサーの招聘)
- プロモーション(ポスター・チラシ・パンフレット等の制作と配布・掲載、公式Twitter・ブログによる発信、メディア掲載)
シンゲンパス(1DAY/2DAY/シンゲンパスワイナリー)
周遊バス・昇仙峡行き路線バス・昇仙峡渓谷循環乗合バス・石和温泉甲州シャトル・山梨県立考古博物館シャトル
新モビリティ「PiiMo」(所要時間:片道約1時間/ルート:昇仙峡地区)
自動追従機能を備えた最先端観光モビリティ。屋外観光地での公道走行は日本初!
AI乗合タクシー
勝沼エリアでのAI乗合タクシーの運行は初!スマホひとつでワイナリーからワイナリーへスムーズに移動可能。
ビンゴ企画「ボンチdeビンゴ」
大学生のアイディアをもとに作成したミッション型ゲーム。シンゲンパスで甲府市・峡東三市の各スポットを巡ってもらうことを促進。
- イベントスケジュール
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2021年11月3日(水・祝) やまなし観光Maas出発式6日(土)・7日(日) 山梨学院大学生×首都圏大学生イベント13日(土)・14日(日) 中国インフルエンサー来訪20日~28日(土日祝) ワインツーリズム
- 導入効果
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一日乗車券「シンゲンパス」で効率よく周遊!
昇仙峡観光を目的とした層に多く販売することができ、各観光地の訪問状況を把握することができました。利用者からは、「お得感があって使いやすく、車がなければ行きずらい場所に効率よく回ることができました」「マイカーなしで気軽に観光が楽しめました」といった感想をいただきました。
「AI乗合タクシー」でワイナリー巡り!
利便性という点で利用者から高く評価をいただき、利用者の乗降ポイントも把握することができました。「ワイナリーでワインを楽しみながら観光ができてよかった」という声を多くいただくことができました。
新モビリティ「PiiMo」乗車体験で昇仙峡の魅力新発見!
観光地での初の行動実走ということで話題性が高く、利用者からは、「車やバスでは気づかない昇仙峡の魅力を発見することができました」「歩行が難しい方や高齢の方でも山を楽しめるのでとてもよいと思いました」「ディズニーランドのアトラクションのような体験ができ面白かったです」といった満足の感想をいただきました。
デジタルを活用した産官学連携の新しい取り組みとして、新たな観光の切り口を示すことができ、より広範なエリアからの集客の可能性にもつながる第一歩となりました。今後は、利用者のニーズを意識した交通網を整備するとともにPiiMoの運用を様々な形で継続するなど、コンテンツをより充実させ、 県内各地でMaaS対応エリアの拡大を目指します。
- おすすめポイント
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観光客が利用しやすい移動手段が少ないという地方観光地の課題とその解決に向けて、今全国各地でMaaSの取り組みが行われています。しかし、何からはじめてよいのかお悩みの自治体担当者も多いのではないでしょうか。「観光MaaS」の導入は、観光客に地域の魅力に触れる機会を提供し、利用者のニーズを意識した交通網の整備にお役立ていただけます。一緒に“また訪れたくなる街づくり”を目指しませんか?ぜひ、お気軽にご相談ください。
JTB甲府支店では、山梨県庁からの受託事業としてMaaSを活用した観光スタイルの実証事業を行いました。マイカー・レンタカーを使わずともシームレスに回遊できるよう、観光地を繋ぐ周遊バスを運行し、その一日乗車券などを販売しました。交通事業者、観光事業者など地域各所との合意形成が一番のポイントだったと感じています。丁寧な説明を行うことで皆様からご協力をいただくことができました。
結果として、期間中の10日間で1,500名を超える方にご利用いただき、実際、マイカー等が無くても観光を楽しめたというお声も多数いただきました。また、決済から乗車まで全てをスマホで完結できるというだけでなく、地域をテーマパークに見立てた観光イベントとして周知をすることで、ユニークかつ先進的な観光型MaaSの事例になったと感じています。
今後は自主事業として、山梨観光の目玉となるコンテンツの開発とその運営を多数行うことを考えています。中長期的には訪日外国人にも利用していただけるよう多言語化などにも力を入れていきたいです。