去る1月15日、厚生労働省が通知した「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」において、国、都道府県および市町村の役割分担・事務についての方針が明示されました。都道府県には「地域の卸業者との調整」「専門的相談体制の確保」などが、市町村には「医療機関等との委託契約」「医療機関以外の接種会場の確保等」などがそれぞれ割り当てられています。
ワクチン接種関連業務は何より優先して行うべきですが、職員1人当たりの負担が増えることで、通常の業務が滞ることは避けなければなりません。そこで取り組みたいのが、アウトソーシングによる「業務効率化」です。
今回は総務省から令和2年3月に公表された「地方公共団体における行政改革の取り組み」の中から、業務効率化に成功した自治体の事例を、課題や成果をとともに見ていきましょう。
職員の負担減だけじゃない!今こそ業務効率化に取り組むメリット
平成27年8月に総務大臣通知「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」が発出されたことをきっかけに、多くの自治体が指定管理者制度の導入、民間委託、庶務業務の集約化、総合窓口の設置、情報システムのクラウド化などに取り組んできました。
これらの改革は、地方財政が厳しい状況にある中、効率的・効果的に行政サービスを提供するという意図で恒常的に推進されてきましたが、国から自治体へ多くのワクチン接種関連業務が割り当てられた今は、限られた人的リソースで通常業務と臨時業務の両方をこなすためにも急務となっています。
業務のアウトソーシングや自動化・システム化を進めれば、新型コロナ関連業務でひっ迫した自治体職員のリソースを整理できるうえ、民間企業のノウハウを取り入れて行政サービスの質を高めることができます。また、「非対面・非接触」での手続きを可能にするシステム構築はウィズコロナの地域振興にも役立つでしょう。
ここからは地方自治体が実際に取り組んだ業務効率化の実践を、課題や成果とともに紹介します。あなたの自治体でもできることから始めてみませんか?
業務効率化の事例1 民間企業との連携による行政改革の推進
人口約197万人の札幌市は、業務効率化の知見を持つ民間企業と連携し、労働力不足、生産性向上に向けたBPR(業務プロセスの根本的な見直し)に取り組みました。
象徴的な取り組みは、業務のプロセスをタスクレベルに分解し、各タスクの業務量(概算時間)を集計した「全庁業務量調査」です。ここで可視化された人的コストのデータは、庁内業務のフロー図作成やオリジナルのBPR自己チェックツール開発などに活かされました。さらに、神戸市とも連携協定を結び、先進事例である「行政事務センター」とマニュアル・フローを共有。神戸市を参考に、就学援助業務で一次審査を除外するなど、プロセスの効率化を行いました。
これらの成果として、札幌市では行政改革に関する職員の意識が格段に向上。平成29年度は6件のみだった業務改善提案・意見数が1年で96件にまで増加しました。効率的にムダや工夫を発掘できる体制を強みに、ノンコア業務のアウトソーシング等の具体的な改善を続けています。
業務効率化の事例2 事務局業務を一括で民間委託
プレミアム付商品券事務局の運営
JTBでは自治体様の負担を軽減する「行政事務局サポートサービス」を提供しています。2019年度消費増税に伴い実施された、全国各地の自治体様のプレミアム付商品券事業では、申請書の受付業務やコールセンターの問い合わせ対応、振込作業等の事務局業務をワンストップで受託し、円滑な事業運営をサポートしました。
詳細は事例ページをご覧ください
アウトソーシングで負担軽減「JTBの行政事務局サポートサービス」業務効率化の事例3 定型業務の標準化とRPAの活用
山口県の宇部市・山口市・岩国市・周南市は、4市共同で「定型業務の標準化とRPAの活用」を軸とした業務効率化を推進しました。紙の申請書のデータ化についてはパンチャーの不足、委託費の高騰などの課題がありましたが、税務業務・内部管理業務を対象に業務の標準化を行い、入力インタフェースの差を解消したことで、合計約5,900 時間の作業時間を削減する見通しが立ちました。
「給与所得者等異動届出書に基づく課税異動業務」の処理では、RPA導入とともに業務手順を見直し、標準フローを作成することで効率化を達成。4市が行った業務効率化は、「山口県央連携都市圏域(愛称:山口ゆめ回廊)※」の事業としての横展開も期待されています。
山口市、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町の7市町が参加
例:異動届出入力処理の標準化
まとめ
コロナ禍における自治体様職員の業務効率化をサポート!
魅力あるまちづくりのためには、各職員が本来業務に集中できる環境を整備することが不可欠です。長期化するコロナ禍で職員の負担増が懸念される今こそ、自治体は業務の効率化を推進しましょう。
JTBには47都道府県にある法人支店ネットワークにて、自治体様の各種コロナ対策、地域活性・観光振興、震災復興関連事業をサポートしています。プレミアム付商品券事業で磨いた事務局業務のノウハウをもとに、それぞれの自治体にあった課題解決⽅法をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。