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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 国内旅行の行き先に選ばれる地域の共通点!Withコロナの観光に必要な集客分散化の仕掛け

2021.10.28
地域マネジメント
地域マーケティング
誘客促進
戦略策定
認知拡大・流通促進

ワクチン接種が国内でも進み、観光回復の光がわずかに見えてきました。とはいえ、訪日インバウンドの回復まではしばらく時間がかかりそうな状況です。しばらくの間、メインターゲットは国内旅行客に絞られるでしょう。国内旅行の行き先に選ばれるためには、旅行に意欲的な層に向けて、「密を避けた観光」を提案する必要があります。観光地としての魅力を維持しながら、観光客に安心して旅行してもらうため、これまでとは異なるアプローチが必要になってきます。本記事では、マーケティングやコンテンツ開発の工夫により、「密を避けた観光」の発信に取り組む自治体の事例をご紹介。集客分散化の取り組みのポイントをお伝えします。

Withコロナの国内旅行でターゲットにすべき層とは?

JTB総合研究所は2021年8月に「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査」を行いました。「今後1年以内に旅行に行く」と回答したのは全体の34.5%でしたが、男女20代・30代と、男性60代以上のシニア層が高い旅行意欲を持っていることがわかりました。一方、27.4%は「ワクチン接種後もしばらく旅行等を控える」と回答しており、With/Afterコロナ期における誘客が一筋縄ではいかないことも伺えます。

「コロナ禍の旅行で重視すること」という設問では、「現地の受け入れ体制」について「宿泊施設の感染対策が事前にHP等で確認できること」「旅行先の地域全体に、観光客への歓迎の意があること」「旅行先の混雑状況がリアルタイムで把握できること」が重視されていることも明らかになっています。

コロナ禍の旅行で重視すること

出典:JTB総合研究所 「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2021年8月)」 本調査

また同調査では、旅行者の多くが旅行の方法として「少人数の旅行」「家族だけの旅行」といった条件を重視していることもわかっています。こうした調査結果から、国内旅行の行き先として選ばれるためには、観光地や宿泊先で密を避ける工夫および衛生面への配慮とともに、家族やグループなど少人数の観光に適したプランの提供が重要だと言えます。

観光客の分散化への取り組み

旅行先の3密回避のための観光客の分散化には、「オーバーツーリズム」への対策が参考になります。ここでは3つの方法をご紹介します。

01場所による観光客の分散化

「オーバーツーリズム」への対策については、国連世界観光機関(UNWTO)がすでに「場所による観光客の分散化」と「時間による観光客の分散化」という2つの戦略と、その具体策を示しています。まずは「場所による観光客の分散化」についてです。

 

「場所による観光客の分散化」には以下のような対策が含まれます。

  • 観光客が少ない場所で開催するイベントを増やす
  • 観光客が少ない場所で観光客向けの名所と施設を開発し、PRする
  • 都市とその周辺に共通するアイデンティティ・世界観を創出する
  • 地域の交通手段を自由に乗り降りできるトラベルカードを導入する

【事例】宮崎県高千穂町の取り組み

宮崎県高千穂町は2017年から高千穂町観光協会を中心に観光まちづくりに取り組んでいます。「神話の里」や伝統芸能「神楽」をテーマにしたブランディングで外国人の注目を集めることに成功しました。徹底したマーケット調査と観光コンテンツの刷新で順調に来訪者数を伸ばしてきましたが、コロナ禍により訪日インバウンド客は激減。新たな戦略でこの難局を乗り切ろうとしています。

観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業を利用したプロジェクトでは、体験コンテンツをスマートフォンでまとめて検索・予約できるサイトを開設し、人気の高い遊覧貸しボート以外の体験を多数紹介しています。また、スマートフォンでデジタルイラストマップを開けば、GPS機能で自分が今いる場所や行きたい場所、知りたいことをすぐに調べられる機能も搭載しました。旅ナカでの情報収集や決済手段を一本化して利便性を高めることは、周遊促進による行き先の分散化が期待できます。

また、高千穂に詳しいタクシードライバーが3時間かけて観光スポットを案内する「高千穂キャブ」も、魅力ある穴場スポットに足を延ばしてもらうための取り組みです。

02時間による観光客の分散化

次に「時間による観光客の分散化」についてです。前述したUNWTOが提唱するオーバーツーリズム対策のうち、コロナ禍でも適用できそうな手段には以下のようなものがあります。

  • リアルタイムでモニタリングし、人気の名所やイベントに時間制限を設ける
  • 新しい技術(アプリ等)を利用して、時間の観点で観光客の分散化を促進する

【事例】京都の取り組み「3密回避に役立つ京都観光快適度マップ」

京都観光オフィシャルサイトで公開中の「京都観光快適度マップ」を使うと、京都市内の7エリアの人気観光スポット11カ所周辺の観光快適度を一目で把握できます。日時のほか、当日予想される天気別でも混雑度合いを可視化しており、密を避けたい観光客にとっては旅先選びの決め手になりそうです。

また、マップ上には「とっておきの京都」のアイコンも表示されますが、これは混雑する時期でも快適に観光できるエリアを紹介するもの。さらにおすすめスポットやモデルコースも紹介しています。この「京都観光快適度マップ」は、穴場スポットを紹介しながら時間の観点でも観光客の分散化を促進する取り組みと言えます。

また、京都観光オフィシャルサイトでは、京都人だけが知っている日常生活を体験できる「朝観光」「夜観光」についても紹介しています。例えば「朝観光」中には大徳寺大慈院で体験する「セルフメンテナンス&ゆる座禅」や智積院の早朝特別拝観などのメニューもあり、朝ならではの特別プランが組まれています。このように、各スポットのディープな体験を紹介し、事前予約によって混雑を解消する取り組みは、アフターコロナの観光を考えるうえでも重要です。

03期間の分散化 ~平日・オフシーズンならではの価値の訴求~

3密回避のためには、繁忙期の混雑への解決策も持っておきたいところです。取り組みのポイントは以下の3つです。

  • オフシーズン中の観光体験をPRする
  • オフシーズン中のイベントを活性化する
  • 価格変動制を導入する

【事例】長野県白馬村の取り組み「GREEN HAKUBA」

長野県白馬村は言わずと知れたスキーリゾート地ですが、ウィンターシーズンのみならず、北アルプスの大自然をオールシーズン楽しめる「マウンテンリゾート」をテーマに打ち出しています。

2021年には、白馬のグリーンシーズンのオープニングにあたるゴールデンウィークに「GREEN HAKUBA」を開催し、幅広い年齢層が楽しめるイベントを日替わりで実施しました。

例えば、5月4日には「ゼロカーボンDay」として自然に親しめるアクティビティを通常料金の半額にし、5月6日~7日の「テレワークDay」では、白馬での「ワーケーション」を体験してもらうなどの取り組みを行いました。ほかにも、スキー場シーズン券や宿泊券が当たるイベントも用意し、年間を通じて白馬村をコンスタントに訪れてもらえるように工夫しています。

閑散期を「ウィンターシーズンの終わりとグリーンシーズンの始まりが交差する素敵な季節」と訴求したことも、観光分散化や平準化を目指すコミュニケーションのポイントです。


まとめ

Withコロナの今、近隣の観光スポットに小さなグループででかけるマイクロツーリズムの需要が高まりを見せています。しかし、その傾向が強まると、旅行者自らが交通手段や施設を調べるため、結果として人気スポットに観光客が集まってしまうことが予想されます。

これを避けるためには、迎える側が観光客のニーズを先取りして、開いている時間や場所の混雑状況、体験の予約状況などを可視化したうえで、行き先の提案をすることが有効です。これらの取り組みで滞在地としての魅力や快適さを高めることは、Withコロナ期の感染対策になることはもちろん、富裕層をターゲットにした訪日インバウンド誘客の観点からも重要と言えます。この機会に、旅行客に選んでもらえる地域を目指し、情報発信や観光コンテンツの開発を再検討してみてはいかがでしょうか。

「旅と生活の未来地図 情報版」(JTB総合研究所)では旅行の本格的回復に向けたポイントを詳しく分析しています。「SDGs(持続可能な開発目標)」と「ワーケーション」に力を入れる白馬のシナリオも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。


ホワイトペーパー(お役立ち資料)「旅と生活の未来地図 情報版」(JTB総合研究所)特集:旅行の本格的回復に向けたポイント整理と今行うべき備えとは(全10ページ)

日本国内では、訪日旅行や日本人の海外旅行の具体的な再開の見通しは立ちませんが、日本人の本格的旅行再開への期待は高まります。このような中、観光や交流による地域活性化事業に携わる皆様の準備は万全でしょうか。今回は「旅行の本格的回復に向けたポイント整理と、今行うべき備えとは」について特集します。旅行再開に向け、「人流予測」、「経済環境」そして「生活者の意識と旅行消費行動」を再整理し、コロナ禍を経た旅行のあり方と準備について考えます。ぜひ、ご覧ください。

INDEX

  1. 国際観光再開(インバウンド)の見通しは? ~旅行再開後しばらくは日本人の国内旅行が中心に~
  2. 旅行消費のマグマは爆発するか? ~コロナ禍の長期化で「特に理由はなくても行きたい」が増加~
  3. 安全・安心への意識は今後どうなるか? ~旅行先の決定に影響するものは何か~
  4. ターゲットとなる旅行者は? ~感染状況により旅行意欲の高い層は変わる~
  5. 参考になる旅行情報はどう変わっていくか? ~求められる“地域ならでは”&“スピーディー”な情報発信~
  6. 先駆的リゾート地に聞いた、今後目指すべき姿とは!? ~コロナ禍を経て白馬が描くシナリオ展開~
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