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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 ゼロカーボンシティ宣言採択地域が推進する「観光」分野の先進事例集

2022.02.25
地域マネジメント
観光ICT
戦略策定

「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明した自治体は、2022年1月31日時点で534自治体(40都道府県、319市、15特別区、134町、26村)に達しました。表明自治体の総人口は約1億1,283万人にのぼり、実に日本の総人口の約9割に及びます。自治体の脱炭素社会への機運が高まっていることが伺えます。もっとも、脱炭素化の関心は高まっているものの、実際の取り組みはこれから検討するという自治体も多いのが現状のようです。以下では「ゼロカーボンシティ宣言」を採択し、いち早く具体的な取り組みと目標を公表した自治体の取り組み内容と進捗を紹介いたします。

ゼロカーボンシティ宣言

自治体単位で推進すべき脱炭素化の取り組みとは

自治体単位で推進すべき脱炭素化の取り組み

自治体が脱炭素化への道筋を定めるにあたり、政府が打ち出している脱炭素化事業が参考になります。例えば、政府は「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を通じて、令和4年度から複数年度にわたり地域の脱炭素化を支援する方針です。この支援は意欲的な脱炭素の取り組みを行う地方公共団体に対し、令和12年度まで継続的に交付金により支援を行うことを目的としています。対象となる事業は以下2つです。

脱炭素先行地域づくり事業

交付要件は、地方公共団体が一定地域で民生部門の電力消費に伴うCO₂排出実質ゼロ達成など、脱炭素先行地域に選定されていることです。 再エネ設備の導入に加え、再エネ利用最大化のための基盤インフラ設備(蓄電池、自営線等)や省CO₂等設備の導入、これらと一体となってその効果を高めるために実施するソフト事業を対象としており、交付率は原則2/3です。

重点対策加速化事業

屋根置きなど自家消費型の太陽光発電や住宅の省エネ性能向上などの重点対策を複合実施すること等を要件としており、交付率は2/3~1/3等とされています。

この「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」は2022年度の国家予算で200億円が割かれる見通しのビッグプロジェクトであり、政府が脱炭素に向けて重点的に取り組もうとしている分野を指し示しています。地域もこれらの施策と足並みをそろえて脱炭素化に取り組むべきであると言えるでしょう。

ゼロカーボンシティ×観光の先進事例

上述したように、ゼロカーボンシティ宣言を表明している市町村は多いものの、具体的な取り組みを始めている地方自治体はまだ少数派です。以下では、その中から観光に関係が深い事例に絞って、先行事例を3つご紹介いたします。

01 ゼロカーボンシティ×観光の先進事例 栃木県宇都宮市

栃木県宇都宮市は2020年10月から3カ月間、宇都宮駅から大谷地域までの交通や、大谷地域内の観光地間を結ぶ交通をワンストップで検索・予約・決済できる「観光型MaaSプロジェクト」の実証実験を行いました。その後、栃木県は観光型MaaSをさらに磨き上げ、JTBなど各民間企業と提携して2021年10月に新たなサービスを開始しました。

それは、日光地域において観光地の交通手段の利便性向上のみならず、EV、カーシェアリングやシェアサイクル、EVバスなど環境にやさしいモビリティを活用した国内初の環境配慮型・観光MaaS「NIKKO MaaS」です。このサービスは、スマートフォン1台でデジタルフリーパスに加え、歴史文化施設等の拝観・入場チケットやネイチャーアクティビティ等の観光コンテンツをワンストップで検索・購入・利用できるというものです。

加えて宇都宮市は民間企業と資本提携し、「宇都宮ライトパワー株式会社」を設立しました。バイオマス発電や市内の太陽光発電による再生可能エネルギーから電力調達し、LRT(最新技術が反映された次世代型路面電車)の電源を100%再エネでまかなう「ゼロカーボントランスポート」の実現にも意欲的です。

02 ゼロカーボンシティ×観光の先進事例 北海道鹿追町

北海道鹿追町(しかおいちょう)は2021年3月に「バイオガスプラントを核とした鹿追型ゼロカーボンシティ」に挑戦する旨の宣言を行いました。バイオガスプラントとは、家畜ふん尿や生ごみなどのバイオマスを発酵させ、発生するバイオガスを利用して電気や熱エネルギーを作り出す仕組みのことです。

鹿追町は酪農が盛んで飼育している乳牛の数は1万8,000頭にのぼり、以前から大量に排出されるふん尿処理が問題になっており、2007年から国内最大級のバイオガスプラントを稼働させて発電事業を開始していました。2016年には2カ所目のバイオガスプラントが稼働され、合わせて4,300頭の乳牛のふん尿から発電する体制を作り上げており、今では発電と同時に発生する熱を利用してマンゴーの栽培や高級食材のキャビアを生産するチョウザメの養殖も行っています。さらにバイオガスに含まれるメタンから水素を作って燃料電池自動車などに供給する、環境省の実証事業にも取り組んでいます。

鹿追町は、コンセプトとして「SHIKAOI“Zero Carbon+”Project(鹿追ゼロカーボンプラスプロジェクト)」を掲げ、脱炭素行動にプラスしてほかの課題解決にも資するよう取り組んできました。ふん尿を活用することで環境改善や処理のための労働時間・コスト削減のみならず、バイオガス発電によるCO₂削減や循環型社会の形成、さらには地域経済活性化の推進につなげており、まさに「同時解決型」のプロジェクトと言えるでしょう。

03 ゼロカーボンシティ×観光の先進事例 長野県・乗鞍高原(中部山岳国立公園)

長野県松本市の中部山岳国立公園の乗鞍高原は2021年3月に国内第一号となる「ゼロカーボンパーク」に登録されました。ゼロカーボンパークとは国立公園の脱炭素化を目指すとともに、脱プラスチックも含めてサステナブルな観光地づくりを実現していくエリアのことです。

具体的には地元関係者・学識者が一堂に会して「のりくら高原ゼロカーボンフォーラム」を開催したり、脱炭素・脱プラの要素をツアーコンテンツに盛り込んだ「サステナブルキャンプ」を実施したりしています。また、脱炭素の取り組みとして、脱炭素二次交通システムの構築を見越してe-Bikeのサービスを導入したり、アウトドア企業と連携したマイボトル活用促進に取り組んだりもしています。


まとめ

ゼロカーボンシティ実現に向けて一歩踏み出すなら今!

観光政策の策定でも「脱炭素」の視点は欠かせません。ここで紹介した先進事例以外にも、観光客を対象にしたシェアサイクルなどのモビリティ推進や、人気の観光スポットへの自家用車交通規制、BDF(バイオディーゼル燃料)バス運行など、環境に配慮しながら観光客と住民の利便性を向上させる取り組みが各地方自治体で進んでいます。ご紹介した交付金事業なども含めて、2022年の政府の動きも意識しながら、脱炭素を推進する観光マネジメントを考えてみてはいかがでしょうか?

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