アドベンチャートラベルは世界的に人気のある旅行形態です。訪日インバウンドの中でも大きな市場規模を有しており、地方創生にも効果があるとされています。地域の価値を、体験として引き出す仕組みのアドベンチャーツーリズムの取り組みを進める自治体も増えています。観光庁の第5次観光立国推進基本計画の中でもアドベンチャーツーリズムの推進について記載があり、より一層の自然資源の観光活用は推進されると予測されます。この記事では、アドベンチャートラベルとアドベンチャーツーリズムの違いや、アドベンチャートラベルで重視される要素、アドベンチャーツーリズムの事例などを紹介します。ぜひ、ご覧ください。

アドベンチャートラベルとアドベンチャーツーリズムの違い
アドベンチャートラベルとアドベンチャーツーリズムは混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。
アドベンチャートラベルは、旅行者視点の“旅のスタイル(旅そのもの)”を指します。アドベンチャートラベル業界最大の団体であるAdventure Travel Trade Association(以下ATTA)によると、アドベンチャートラベルは「アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」と定義されています。日本政府観光局(JNTO)をはじめとする行政機関は、アドベンチャートラベルを重要なテーマの一つとして位置づけ、海外市場に向けた情報発信や商談機会の創出に取り組んでいます。
一方、アドベンチャーツーリズムは、地域・産業視点の“観光のあり方(仕組み)”を指します。エコツーリズムの視点や、サステナブルツーリズムの地域マネジメントの視点を取り入れ、地域の自然環境や文化を守りながら、安全かつ質の高い体験を提供するためのガイド育成、フィールド整備、安全管理、地域住民との合意形成など、地域全体のマネジメントを含んだ概念です。こうした運営の仕組みがあってこそ、地域は持続可能な観光地として成長していきます。
それぞれの概念を整理すると以下の通りになります。
- アドベンチャートラベル…旅行者がどのような旅をしたいか
- アドベンチャーツーリズム…地域全体をどのような観光地にしていくか
アドベンチャートラベルの市場規模は成長中
国際的に、アドベンチャートラベルの市場規模は中長期的に高い成長を続けています。
ATTAが公表した最新の市場分析によると、世界のアドベンチャートラベル市場規模は2024年時点で約1兆1,600億米ドルに達しています。
これは、従来の『特定のアウトドア愛好家向け市場』という位置づけから、『より幅広い旅行者層が参加する体験志向型市場』へと拡大していることを示しています。
ATTAは近年、アドベンチャートラベルを『身体的活動の有無』に限定せず、自然や文化との深い関わりを求める姿勢“Open to Adventure”を持つ旅行者全体として捉えており、この定義の拡張が市場規模拡大の背景にあると指摘しています。ハイキングやサイクリングといった従来型アクティビティに加え、地域の食、生活文化、ストーリーに触れる体験も、アドベンチャートラベル市場を構成する重要な要素となっています。
こうした世界的な流れの中で、アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)2023が北海道で開催されたことは、日本の自然・文化資源を活かしたアドベンチャートラベルの可能性を国際的に示す象徴的な出来事となりました。また、2026年度には山陰・せとうち地方でAdventureWEEK2026が開催されるなど、日本の魅力的なATデスティネーションとしての基盤固めが進んでいます。
ATTAが示す『没入型・地域密着型体験』への需要の高まりと、日本各地が有する自然・文化資源との親和性は高く、今後、日本におけるアドベンチャートラベルは、地方誘客や高付加価値型観光を支える重要な分野として、さらなる成長が期待されています。
参考:Adventure Travel Market Sizing and the New Adventure Traveler

アドベンチャートラベルで大切な5つの要素
ATTAでは、アドベンチャートラベルの体験価値として、5つの要素を掲げています。以下でその内容を紹介します。
01いままでにないユニークな体験要素
その場所でしか味わえない、その土地ならではの体験をアドベンチャートラベルでは重視しています。
アドベンチャートラベルを構成する要素は、アクティビティ・自然・文化体験です。ただしアクティビティや自然は世界各国に、すでに似たものが存在する可能性があります。
一方で、文化体験はその土地にしかない傾向が強いため、唯一無二の経験として参加者に提供可能です。
ローカルな文化に焦点を当て、アクティビティを組み合わせることで、他では味わえないユニークな体験を参加者に提供できると考えられています。

02挑戦要素
参加者がコンテンツを通して、体だけでなく心も含めて、さまざまな挑戦ができる要素が求められます。
挑戦要素は大きく分けると「体の挑戦」と「心の挑戦」の2つがあります。
体の挑戦とは、長距離の自転車コースやトレッキング、渓流下り、初体験のアクティビティなど、体を動かしながら自然や文化を体感することを指します。
心の挑戦とは、初めての食べ物を食べてみる、その土地の楽器に挑戦する、土地の言語で挨拶を行うなどの体験を指します。
どちらの挑戦も、達成感や成長を実感できる体験や感覚を伴うことが必要になります。

03自己変革要素
旅行を通して、自然や文化、歴史などに触れる中で、自分自身の成長や変化を感じられる要素が必要です。具体的には以下のような経験を通して、自己変革が起こると考えられています。
- 自然の雄大さや、長い時間をかけて形成されてきた過程を知る。
- その土地の人が困難を克服してきた歴史を知る。
- 自国とは異なる宗教観や価値観などを知る。
自己変革機会の提供には、自然やアクティビティのみの知識ではなく、ツアーガイドの歴史・文化の知識、感性や気持ちに共感できるコミュニケーション力が求められます。
04健康要素
旅行によって、心身ともに健康になれたと実感できる要素です。健康要素は大きく分けて「身体」と「心理」の2つの観点があります。
身体的観点とは、例えば朝に自然の中でヨガをする体験や、温泉や岩盤浴など、参加者が健康的になった感覚が得られる体験です。
心理的観点とは、スマートフォンやパソコンなどから距離を置いたり、静かに自然のなかで瞑想する時間を得たりする体験を指します。
また、その土地の文化として伝わっている伝統的な健康食品などを取り入れることも、アドベンチャートラベルの健康要素に含まれます。

05ローインパクト要素
「ローインパクト」は、旅行先の自然環境や文化になるべく負荷をかけないことを意味します。
例えば、トレッキングの場合、その山に年間何人の人が入山するのかを理解し、野生動物や植生にどのような変化・影響があるのかに注意を払います。ツアーガイドに環境保全の取り組みを紹介してもらい、旅行客にも自然や文化を守る意識をもってもらうことが大切です。
また文化に関するアクティビティでも、ローインパクトの要素は必要です。伝統民族がいる場合には、これらの文化を保護するために観光としてどのように関われるか、どのような配慮ができるかなど、ツアーを組み立てる際に配慮が求められます。
アドベンチャーツーリズムの事例
近年では日本各地でアドベンチャーツーリズムが実施されています。以下ではその事例について紹介します。
事例01広島県広島市
平和都市として認知度の高い広島で、「平和×アクティビティ」をコンセプトに、日本在住の外国人を招いてモニターツアーが実施されました。
例えば、広島市中心部から50分の立地にあり、美しい自然と清流が多く残されている湯来町は、アドベンチャーツーリズムの構築に力を入れており、近年では体験型コンテンツの開発も進んでいます。
また、平和や歴史にフォーカスをあて、コンセプトやストーリーを重視することで、観光客の自己変革を促す取り組みも行っています。
地域住民との交流会や、カヤックを使った宮島への移動、古民家への宿泊などコンテンツを磨き上げて、外国人観光客の興味を引く内容を提供しています。
■詳しくはこちら
広島でしかできないアドベンチャーツーリズムで目指す!通過型観光地からの脱却!

事例02北海道・東川町(大雪山国立公園)
北海道の東川町は手つかずの自然が多く残る地域で、その中の大雪山国立公園でアドベンチャーツーリズムの取り組みが進んでいます。
NPO法人大雪山自然学校では、地域の行政・団体・ガイドの方々と連携して、アドベンチャーツーリズムに取り組む上で欠かせない自然保護と観光地づくりを進めています。
例えば大雪山自然学校は、公園へ訪れる人々の満足度を下げずに自然環境も守っていくために、利用者に守るべきことをエンターテイメントにして伝えています。その取り組みにより、利用者が自主的に環境に配慮した行動が取れる仕組みづくりを整えています。
■詳しくはこちら
Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~(Vol.3) 「アドベンチャーツーリズム」

まとめ
近年、インバウンド市場は拡大を続ける一方で、オーバーツーリズムが一部の地域で課題になっています。都市や観光地へ集中しないよう地方への分散や周遊促進が、国の重要な政策課題と位置づけられています。
訪日外国人旅行者の関心が高いアドベンチャートラベル(アクティビティ・自然・文化体験の要素を含む旅)を、地域が持続的に提供するための観光の仕組み・政策・産業構造を示す概念がアドベンチャーツーリズムです。今回は、広島県と北海道の事例を紹介させていただきました。
最後に、ホワイトペーパー(お役立ち資料)を2つご紹介します。1つ目の「Tourism1.5 ~ツーリズムフォワード~(Vol.3)」では、スイスと北海道・大雪山のアドベンチャーツーリズムの取り組み事例をご紹介しています。2つ目の「地域に外国人を呼び込む!インバウンド向け施策」では、戦略立案から受入環境整備、販売まで、実際にJTBが自治体様に提供したインバウンド支援の事例を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

