企業版ふるさと納税とは企業が地方創生プロジェクトに寄附すると、税額控除を受けられる制度です。また、企業版ふるさと納税を利用することで、企業は節税だけでなく地域貢献が可能です。地方公共団体との連携のきっかけにもなり、地域資源を活かした新事業展開につなげられます。
今回は企業版ふるさと納税の概要や仕組み、メリットなどを解説します。ぜひご覧ください。
INDEX
企業版ふるさと納税の概要
企業版ふるさと納税の概要について解説します。
ふるさと納税とは?
そもそも「ふるさと納税」とは、たとえ違う地域に住んでいても、自分の意思で「ふるさと」に寄附できる制度のことです。個人のふるさと納税では、寄附した分の金額が「所得税及び住民税」から控除される仕組みとなっています。ふるさと納税での税額控除の対象は原則として、自己負担額の(2,000円)を除いた全額です。
企業版ふるさと納税とは?
ふるさと納税と言うと個人で行うものがよく知られていますが、制度としては企業版のふるさと納税もあります。企業版ふるさと納税の正式名は「地方創生応援税制」です。
企業版のふるさと納税では、地方公共団体が行う地方創生プロジェクトのうち、国が認定したものに寄附が行われます。企業が賛同する地方創生プロジェクトに寄附することで、法人関係税が税額控除される仕組みとなっています。
企業版ふるさと納税の目的は?
企業版ふるさと納税の目的は地方創生を活性化することです。地方公共団体が行う地方創生プロジェクトに対して、さまざまな企業からの寄附が集まることによって、地方への資金の流れを強化することが狙いとなっています。企業にとっては節税や地域貢献が可能で、地方公共団体にとっては資金集めに役立ちます。
企業版ふるさと納税の経緯・推移
企業版ふるさと納税の経緯・推移について解説します。
企業版ふるさと納税の経緯
企業版ふるさと納税の制度は、内閣府主導で2016年4月に始まりました。2020年4月の税制改正では、税額軽減が6割から最大9割に引き上げられたため、企業の実質負担は1割と軽減されます。
その後の2020年10月には人材派遣型が始められ、寄附の方法について選択肢が広がりました。企業版ふるさと納税における人材派遣型については後述します。税額控除の特別措置は2024年(令和6年)までの予定となっています。
企業版ふるさと納税の推移
2020年度の税制改正から、企業版ふるさと納税の市場規模は拡大しています。例えば、2021年度では前年と比較し、寄附金額は約2.1倍、寄附件数は約2.2倍となりました。
活用する企業の数についても、2019年と比べて2年で約6.7倍となっています。企業版ふるさと納税に注目する企業が増えていることが分かります。
企業版ふるさと納税の仕組み
企業版ふるさと納税の仕組みについて解説します。
企業版ふるさと納税で受けられる控除
企業版ふるさと納税では、企業は国が認定した「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に寄附することが必要です。企業は寄附した金額を損金算入でき、最大9割の控除が受けられます。
企業版ふるさと納税の控除上限額は、「寄附額の割合」と「税額上限」のうち、どちらか小さい方の値を合計して算出する仕組みです。通常の寄附なら損金算入できるのは約3割ですが、企業版ふるさと納税ならそれに加え、税額控除が最大6割となるため、企業の自己負担は残りの1割です。
人材派遣型・企業版ふるさと納税とは?
人材派遣型・企業版ふるさと納税とはどのような仕組みか解説します。
人材派遣型・企業版ふるさと納税の仕組み
通常の企業版ふるさと納税では、企業は地方公共団体が行う地方創生プロジェクトに対して寄附します。一方、人材派遣型・企業版ふるさと納税では、企業が寄附するのではなく、地方公共団体へ人財を派遣する仕組みです。
人材派遣型・企業版ふるさと納税では、人財を派遣した経費が税額控除の対象となります。また、企業は地域貢献ができ、地域とのつながりも構築できます。
人材派遣型・企業版ふるさと納税の条件
人材派遣型・企業版ふるさと納税では、派遣する人財については誰でも良いわけではなく、専門的知識やノウハウを持っていることが必要です。派遣した人財が地方公共団体の職員として任用されると、税額控除が適応されます。その他に、地域活性化事業を行う団体で寄附活用事業に関与するものにおいて、派遣した人財が採用された場合にも税額控除の適応が可能です。
企業版ふるさと納税のメリット
企業版ふるさと納税のメリットについて解説します。
自治体にとってのメリットとは?
企業版ふるさと納税における地方公共団体(自治体)にとってのメリットの1つは、地方創生プロジェクトへの資金調達ができることです。地方創生プロジェクトの発信によって、地域の魅力アピールや地域経済の活性化、地域の認知度向上などにもつなげられます。寄附企業との新たな連携による事業構築・展開(ノウハウ・技能の取得)も可能です。
企業にとってのメリットとは?
企業版ふるさと納税における企業にとってのメリットの1つは、寄附によって節税ができることです。また、地方創生プロジェクトに寄附することで地域貢献も可能です。そして、地方公共団体とのパートナーシップ構築のきっかけとなり、地域資源を活かした新事業展開にもつなげられます。
企業版ふるさと納税の流れ
企業版ふるさと納税の流れは以下のとおりです。
企業版ふるさと納税の最初の段階では、地方公共団体が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」(地方創生プロジェクト)を企画立案します。「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」の内容が決まれば、地域再生計画として内閣府への申請が必要です。
内閣府が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を地域再生計画として認定・公表すれば、地方公共団体も公表できるようになります。「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」が認定を受けた後は、地方公共団体が実施を進め事業費を確定することが必要です。
企業は公表された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」から、寄附するものを検討・実施します。企業が寄附した後は、寄附を受けた地方公共団体から企業に領収書が交付されます。
企業は領収書に基づき、地方公共団体や税務署に「地方創生応援税制」の適用を申告することが必要です。企業の申告が認められれば、税制上の優遇措置を受けられます。
企業版ふるさと納税の注意点
企業版ふるさと納税の注意点について解説します。
税額控除の対象となる条件
以下の条件を満たしていなければ、企業版ふるさと納税を行っても税額控除の対象とはなりません。
- 青色申告法人であること
- 1回あたりの寄附額が10万円以上であること
- 寄附先の地方公共団体が、地方交付税の不交付団体ではなこと
また、企業の本社所在地の地方公共団体への寄附は、ふるさと納税ではなくなってしまうので対象外となります。
企業版ふるさと納税では返礼品がない
個人のふるさと納税では寄附の見返りに、食品や工芸品といった返礼品を受け取れる場合があります。一方、企業版ふるさと納税では返礼品を受け取ることができません。企業版ふるさと納税においては、寄附の見返りに企業が利益を受けることが禁止されています。
企業版ふるさと納税の事例
企業版ふるさと納税の事例を紹介します。
01交通課題解決とCSR活動を実現
京都府南山城村では公共交通機関が乏しく、改善のための財源確保も難しい状態でした。そこで、CRS活動を模索していた株式会社UYEKI様に、JTBが南山城村の新交通推進事業をご紹介しました。CRSとはCorporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任を指します。
株式会社UYEKI様にご賛同いただいたことで、企業版ふるさと納税を通じてデマンド型交通「村タク」2台が購入され、地域の交通課題解決につなげられました。村タクとは予約制・オンデマンド方式の移動用車両です。
02地域資源と企業のもつ力の出会い
岡山県瀬戸内市に対して、国宝である備前刀「山鳥毛(さんちょうもう)」を譲渡したいという所有者からの申し出がありました。刀の譲渡価格(資産価値)は5億円で、瀬戸内市は税金を充てるのではなく、広く寄附を募りたいと考えました。
資金調達のため採用されたのは、企業版ふるさと納税や、通常のふるさと納税をベースにしたクラウドファンディングなど、複数の手法を組み合わせた方法です。結果として史上最大規模の寄附を集め話題となりました。山鳥毛は瀬戸内市に里帰りを果たし、ふるさと納税をきっかけとして自治体と企業とのつながりが形成さました。
まとめ
企業版ふるさと納税とは、企業が地方創生プロジェクトに寄附することで、その最大9割の税額控除を受けられる仕組みです。企業にとっては節税に活用でき、また寄附を受ける地方公共団体にとっては資金集めに役立ちます。
企業版ふるさと納税を検討しているなら、ポータルサイトの利用がおすすめです。各地方公共団体が行う地方創生プロジェクトについては、公式サイトを確認していては情報収集に手間がかかります。ポータルサイトメリットは、複数の地方創生プロジェクトの情報が一度に閲覧でき、自社に適したものを発見しやすいことです。
企業版ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとコネクト」では、企業の社会貢献をサポートしています。クレジット決済に対応しており、地方公共団体への寄附が手軽に可能です。