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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 企業版ふるさと納税で地域課題を解決 京丹波町が描く、新しい林業のかたち

2024.02.05
地域産業支援
ポイント活用、マッチング
戦略策定

2016年に企業版ふるさと納税制度がスタートいたしました。当初は広がりが低迷しておりましたが、2020年法人税の控除額が最大9割になったことをきっかけに、一気に活用企業が増え、2022年には年間341億の寄付が行われるまで広がりをみせました。

自治体と企業が出会い、地方創生が推進される制度として、双方にメリットがある制度です。

本記事ではそんな企業版ふるさと納税を通じて企業と出会い、林業DX化推進に成功した京都府船井郡京丹波町の事例を紹介します。

京丹波町

京都府のほぼ中央部に位置し、人口約1.3万人が住む。町の面接の約82%を森林が占め、豊かな緑と清らかな水が流れる自然豊かな環境が特徴。特産品として、「丹波くり」「丹波黒大豆」「丹波松茸」「大黒本しめじ」「丹波牛」などが知られている。

滋賀特機株式会社

1964年創業。滋賀県大津市に本社を構え、電気、電材、情報通信、空調、住宅関係の総合卸事業を展開。ビル、工場、オフィスなどの電気、空調、情報、 セキュリティなど、 インテリジェンス機能を支える最適なソリューションを提供している。

京丹波町の林業の経緯

ーー今回、企業版ふるさと納税を活用した林業の取り組みにフォーカスをしていきます。まずはじめに京丹波町様の林業について、これまで取り組まれたことなどを教えてください。

京丹波町
京丹波町は、町全体の面積の約82%を森林が占めています。間伐等を実施し、森林の適正管理を進めながら、近年は、皆伐・再造林により、「木を植える」「木を育てる」「木を収穫する」「木材を有効に利用する」、循環型林業を推進してきました。
町内には京都府立林業大学校があり、毎年、全国各地から林業後継者を目指して入学者が集う場所になっています。
JTBさんとは「開かれた林業」をテーマとした林業体験プログラムを設立。地域や年齢に関係なく、林業を通じた人々の交流を生み出し、その魅力を伝える取り組みを行っています。
JTB
コロナウィルスにより旅行が控えられるようになった際、各地の地方自治体が「如何にして地域の賑わいを生み出すか」という悩みを抱えていました。京丹波町様も同様の悩みを抱え、度々意見交換をしていたなかで、国の補助金を活用して生まれた事業でしたね。

ーー林業に対する課題があれば教えてください。

京丹波町
本町では森林の所有形態は零細である上に、森林所有者においては高齢化、世代交代等に伴い、林業に対する意欲、関心は減退している状況です。林業従事者においても人材不足、高齢化が進んでいます。一方で、町内の人工林の3分の2以上が本格的な利用期を迎えている中、持続可能な資源として、有効に利用する方法の検討が必要となってきています。

ーー今回はこの林業の課題に対して、企業版ふるさと納税を活用されたんですね。

JTB
そうですね。あらためて企業版ふるさと納税を簡単に説明します。

企業版ふるさと納税とは

01制度概要

2016年に創設された制度。国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対し、企業が寄付を行った場合、寄付額の最大9割が法人関係税から軽減される制度。

02活用の流れ

  1. 地方公共団体:地方版総合戦略を策定
  2. 地方公共団体:1をもとに地域再生計画を作成
  3. 内閣府:地域再生計画を認定
  4. 企業:地域再生計画に対して寄付を実施
  5. 企業:法人税、法人住民税/法人事業税の一部が控除

ーー京丹波町様は、以前から積極的に制度が活用されてきたのでしょうか?

京丹波町
京丹波町では、今回の事例以外に、1件の事例があります。
「地域資源活用プロジェクト」として、株式会社京都環境保全公社様からの寄付をきっかけに質志鐘乳洞公園の老朽化改修、リニューアルを実施。町の交流人口を増やし、地方創生の取り組みになりました。
しかし、町全体で見ると、積極的な制度活用は進んでいない状況です。

ーーなぜ活用が進みづらいのでしょうか?

京丹波町
大きな要因として、企業様に制度の内容が知られていないことがあると思います。また、それぞれの地方自治体の魅力や制度推進のポイントが伝わっていないことも要因だと思います。

ーー滋賀特機様は、企業版ふるさと納税の存在を知っていたのでしょうか?

滋賀特機
正直、企業版ふるさと納税のことはまったく知らず、JTBさんから紹介されたことで、詳しい内容を知りました。
弊社は、経営理念として「快適環境と未来創造」を掲げ、活動方針として「SDGsの理念の下、地球環境と調和した持続可能な企業経営を行い、 創・畜・省エネ技術を用いて快適な社会づくり」を目指しています。
これまでも、被災地への寄付活動を行ったり、地域の安全環境づくりのために県に防犯カメラ寄贈をするなど、さまざまな社会貢献活動に取り組んできました。
そのため、本制度にも大きな価値を感じました。

地方自治体と企業がつながるきっかけとは

JTB
滋賀特機様が長年、社会貢献活動に力を入れていらっしゃることは、強く認識していました。
2024年、滋賀特機様は創業60年を迎えます。周年のタイミングで、JTBとして新しい社会貢献のかたちを提案できないかと考え、企業版ふるさと納税を紹介させていただきました。
滋賀特機
弊社は、林業に関わる仕事も行っているため、日頃から業界の現状や課題を聞いていました。
京丹波町様の状況を聞き、決して他人事だとは思えませんでした。弊社の経営理念や活動方針と照らし合わせ、林業の発展が脱炭素やCO2削減にも繋がることは勿論ながら、それが後継者の育成、町の活性化に繋がるなら貢献したいと思い寄付をしました。
また、今回の寄付をきっかけに京丹波町や周辺地域で、滋賀特機の名前を知っていただく機会になればと期待しています。

ーーまた、今回のマッチングは京丹波町様と滋賀特機様両者を知るJTBがいたからこそ実現したと思いますが、いかがですか。

JTB
京丹波町様との過去の取り組みは国の補助金を活用していたものでした。しかし、今後は地方自治体が自走する必要があると感じていました。そのためには、企業や団体などとの連携が必要不可欠です。
そこで、京丹波町様の状況や課題、滋賀特機様の企業方針を知る私たちがハブとなり、両社をマッチングさせていただきました。

ーーインタビューの冒頭で、企業版ふるさと納税の活用が進みづらいという声がありましたが、地方自治体と企業がマッチングするうえでのポイントを教えてください。

京丹波町
地方自治体の課題と企業の意向が一致することだと思います。
また、JTBさんのように、第三者の立場でお互いの状況や考えを理解し、調整する人の存在も重要だと感じました。
滋賀特機
実際に取り組むなかで、課題と意向の一致は、とても重要だと感じました。
JTB
まずは、企業版ふるさと納税の制度自体を企業の方に知っていただく必要があると思います。
加えて、地方自治体はさまざまな課題を抱えていますが、解決策を持っている企業と出会えていないことが多いように感じます。そのため、双方が出会うきっかけづくりが重要だと感じます。

林業ドローンで地域産業活性化へ

ーー今回の寄付をきっかけに林業ドローンを導入されることになりましたが、以前とどのように変わりましたか。また変わると思われますか。

京丹波町
これまでの林業は、さまざまな作業が人の手で行われてきました。従事者の減少や高齢化により、作業負担が増大していました。
そこで、今回の寄付をきっかけに、ドローンを導入し一部作業をDX化することに。具体的には、資材や苗などを運搬する際、ドローンを活用したいと考えました。

ーー林業のDX化ですね。どんな効果を期待していますか?

京丹波町
これまで1時間かかっていた作業を10分に短縮できるため、人手不足の解消、労働時間やコスト削減が期待されています。また、働く人の安全性の向上にもつながります。
今後は働きやすく魅力的な林業へと進化させ、若い方々が林業に興味を持ち、後継者の確保につながることを期待しています。

ーー林業の新たな魅力創出につながっていくと。

京丹波町
はい。加えて、今後は京都府立林業大学校と連携しながら、林業用ドローンを活用した授業等を実施し、新しい林業の魅力を発信していきたいと考えています。

地域の課題解決の先に交流人口拡大へ

ーー今回の取り組みをきっかけに、どんな将来を描いていますか?

JTB
テクノロジーの力を使い、産業が発展することで、町自体にも注目が集まります。すると、地域外の人も町に興味を持つようになり、人が集うきっかけになります。体験してみたいという人も出てくるでしょう。
すると、人の流れが生まれ、観光誘致、交流人口の拡大へつながっていくことを期待しています。
滋賀特機
今回、あらためてお話をするなかで、京丹波町様の喜びの声を聞くことができ、とても嬉しく思っています。
私たちに企業の利益は、社会貢献から生まれてきます。
その考えを大切に、地方自治体や周辺企業と連携しながら、より良い社会をつくっていきたいです。
京丹波町
今回のふるさと納税の取り組みをきっかけに、あらためて地域の課題を深く理解し、その解決法がとても明確になりました。同時に、新しいテクノロジーを含めて、視野を広げる大切さを学びました。
DX化を通じて、新しい林業のかたちをつくりだすことができました。今後は、魅力的な林業をPRし、関心を持っていただく方を増やしていきたいと思っています。
JTB
地域の課題解決から交流人口拡大を推進していくには、地域住民のシビックプライド(地域への誇りや愛着)の醸成が重要だと思います。
地域に賑わいを創出し、育てていく。
そのためには、一部の方々だけの盛り上がりだけでは、広がっていきません。地域住民一人ひとりの意識が大切です。賑わい創出のきっかけとして、企業版ふるさと納税が有効だと思います。

JTBでは、企業版ふるさと納税を活用した、地方自治体と企業のマッチング支援を行っています。47都道府県の支店と連携し、地方自治体が抱える課題の解決支援をさせていただきます。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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