協働型地域探究学習プログラム「未来探究ゼミナール」を活用して、修学旅行で訪れる愛媛県松山市の探究学習を実施した高校の事例をご紹介します。事前学習では、生徒が松山市の魅力や課題をデータに基づいて掘り下げ、ポスターを制作。松山市とJTB松山支店の協力の下、ポスターを松山城に掲示して観光客や市の職員による投票をおこないました。
- 背景
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県立東海商業高校は、2022年度4月より愛知県内初の「ICTフロンティアハイスクール」として、校名も「県立東海樟風高等学校」に生まれ変わります。改編に向けて学校は、1人1台貸与されたタブレットを活用した情報特化型の授業やプログラムの導入を模索されていました。
そこで、例年実施している松山市への修学旅行の事前学習として、情報(地域におけるビッグデータ)を活用した地域探究学習ができるプログラム「未来探究ゼミナール」をご提案。学校の育成したい生徒像と、このプログラムで身につく能力がまさに合致していたため、「ぜひ導入したい」というご要望をいただきました。今年度に関しては、「EdTech導入補助金事業2021」による導入費用のサポートがあったこともあり、採用に至りました。
- 課題
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学校
- ICTフロンティアハイスクールとして、情報を活用した新たな修学旅行事前学習を行いたい。
- 全国で松山市への修学旅行実施第一号校。松山市との結びつきも強く、コロナ禍で交流が減ってきている中、新しい交流やプログラムのカタチを作りたい。
松山市
- 環境が変化してきている中、これからの観光開発のため、高校生のリアルな声を取り入れていきたい。
- 実施内容
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「キャリアデザイン」という学校独自の授業コマ数を利用し全8回実施。
観光に関するビックデータが詰まった「観光予報DS」アプリや「観光予報プラットフォーム」を利用して全国市町村の「人口」「宿泊者数」「観光客数」「気温」などを見ながら、はじめは個人で松山市の魅力や課題について考え、次に班に分かれてそれぞれの班が設定したテーマについて、グループワークを行い調べていきました。
4回目以降は、班ごとのテーマに沿ってポスターを制作。修学旅行前にポスターを完成させ、生徒間の投票によりいくつかの優秀作品を決定しました。優秀作品は松山城に掲示され、投票箱を設置して、松山を訪れた観光客や松山市の方の投票をもとに最優秀作品を選定、最優秀班の表彰も行いました。松山市は高校生が制作したポスターを、今後の若者に対する観光戦略の参考として活用します。
観光予報DS、観光予報プラットフォームについてはこちら
- 生徒の感想
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- 様々なデータを見ながら、松山について分析ができ、たくさん知らない魅力を発見することができた。
- グループワークを行い他人に発表することで、自分事になり、松山についてより深く理解することができた。
- 今まで自分の意見を言うことが苦手でしたが、グループワークを楽しく行うことができたので、積極的に発言できました。
- ぜひ来年の後輩たちにもこのプログラムを体験してから修学旅行に行ってほしい。また、見る世界が変わると思う。
- 先生の感想
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今回は、修学旅行先である松山市について、ポスター制作を行いました。修学旅行へ行く前に、事前調査としても活用でき、生徒も興味を持って調査することができました。松山市の魅力を発見し、理解したうえで、修学旅行へ出かけられたことは大変良かったです。観光DSによる、ビッグデータ活用は、生徒が簡単に扱える良いシステムです。データの組み合わせによる関係を見える化することができ、データによる議論が活発に行えます。また、客観的な根拠となるデータの制作が簡単に行うことが可能です。JTBの方から観光に対して専門的なアドバイスやマーケティングについてお話を頂くことができ、大変生徒にとって良い授業となりました。問題点を掘り下げて考えさせる取組は、今後も継続して実施していきたいと考えております。
今回、学校と地域の両者が抱えている課題や要望を上手くマッチングし解決できた好事例だと思います。松山市やJTB松山支店にも全面的に協力していただいたお陰で、学校と松山との架け橋になることができました。まさに今、学校現場が変革する中で、我々も単なる旅行のみではなく、学校に寄り添ったプログラムの提案を行えるような存在に変わっていかなければならないと感じております。これからも様々な教育を取り巻く環境を勉強し、より多くの学校の真のパートナーとなれるよう努めていきたいですね。