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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 【現場密着レポート】世界最高レベルの知に触れる!「中高生のための知的探究研修2023」

2024.01.30
国内プログラム
探究学習
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グローバル教育

2023年12月、全国から24名の中高生が都内に集まり「知的探究研修2023」が開催されました。「世界最高レベルの知に触れる」をコンセプトに、普段の学校生活では出会うことの少ない世界トップレベルの研究者やオックスフォード大・大学院の学生や卒業生らとの知的交流を通して、自らの視野を広げる機会を提供するこの研修。本記事では、3日間の活動の様子を紹介するとともに、研修コーディネーターを務めた岡本尚也氏、特別講師の梶谷真司教授、そして研修に参加した中高生の声をお届けします。

中高生が世界最高レベルの「知」に触れ、視野を広げた3日間

全国の中高生が世界トップレベルの研究者やビジネスマン、オックスフォード大学の学生に出会い、自分の視野を広げる―。そんな「知的探究研修」が2023年12月25~27日の3日間、都内で開催されました。
研修は、東大で哲学を教える梶谷教授から物事を思考するプロセスから文章の書き方を学ぶワークショップに始まり、様々な経験をしながら今を生きるビジネスマンや大学生らとの進路座談会&相談会、オックスフォード大の学生とのPBL型協働ワークショップ、と続きます。最終日には、東大の物理工学研究室の見学と世界屈指の研究者である齊藤教授との座談会、という内容で構成されました。

全体スケジュール
全体スケジュール

一般社団法人次世代教育ネットワーキング機構の理事である岡本尚也氏が中心となって実現したこの研修。初の開催だったにも関わらず、全国24名の中高生から参加申込みがありました。申し込んだ生徒はオンラインで行われた事前プログラムに参加した後、3日間の研修を通して学びたいことや目標をワークシートまとめた上で研修当日を迎えました。

本研修のコーディネーターを務めた岡本氏は開催の趣旨をこう語ります。

―――VUCAと呼ばれる時代、キャリアが多様化し、進路選択において自分を知り自分と向き合う必要性が高まっています。こうした中で多様な他者の中に自分を置くことや、世界のトップレベルの人たちとの交流によって様々な気づきを得て視野を広げる、見えていない進路に触れることはその大きな一助になります。しかし普段の学校生活の中だけでそれを実現することは難しいのが現実です。そこで全国の中高生がホンモノと出会い、ヨコやナナメの関係を築く中で自分を知り、価値観を相対化する機会を提供するためにこの研修を企画しました。

1日目 午後 東大 梶谷真司教授による文章ワークショップ ~哲学の視点で自分と他者を知る~

初日は、東京大学大学院で哲学を専門とする梶谷真司教授による文章ワークショップからスタートしました。全国から東大駒場キャンパスに集まった参加者の表情は皆どこか緊張ぎみ。グループに分かれて簡単な自己紹介を行った後、早速本題に入ります。梶谷教授が「書く作法ではなく、書く内容を見つけ、組み立てる方法を学ぶ」と位置づけるこのワークショップでは、教授の指導のもと「書くとは何か?」「考えるとは何か?」「いい文章とは?」について考えていきます。

文章作りの手順

  1. テーマを決めて問いを集める
  2. 問いを選んで書く材料を集める
  3. 発表して質問してもらいさらに材料を集める
  4. ストラクチャー(構成)を考え直す
  5. 実際に文章にしてみる
「友だち」に関する3つの問い(例)
友だちとは何か? 異性と友だちになれるか? 年の離れた人と友だちになれるか?

生徒たちはまるで自分自身と対話しているような表情で材料を書き出し、それをもとに文章を紡いでいきます。問いを立てたことで書きたいことが溢れてきたのか、ペンが一気に進んでいる生徒もいました。グループを超えた「質問ゲーム」では、初対面の生徒同士の距離も縮まり、和やかな雰囲気の中でワークが進んでいきました。

3日間のはじめにこのワークショップを置いたねらいについて岡本氏はこう語ります。

―――探究や課題研究においては、はじめに自分を知り、自分のモノの考え方の土台を作ることが極めて重要です。問いを立て、物事の考え方を整理するこのワークショップは、多様な情報に触れる3日間の研修におけるいわば「基礎体力作り」であり、研修を充実するための土台作りとして欠かせないものです。

参加した生徒からはこんな感想が聞かれました。

文章の書き方を学ぶ本は世の中にあふれていますが、書くマナーではなく、大学院生が受けるような論文の書き方について学ぶハイレベルな内容だったので、すごいいい講義だと思いました。

そもそも文章の作り方を習ってない現状を知りました。文章を作る上で3つというのが綺麗な筋だという考え方にびっくりしました。作文などの長い文章書くのが苦手なので、そういう時に使いたいと思います。

英語のクラスでよくエッセイを書くのですが、そんなときに役立ちそうです。あと、海外大学に行きたいので、その時とか将来論文書くときにも役立ちそうです。

梶谷教授は参加生徒にこんなメッセージを送ります。
―――子どもたちは、先生の言うことをそのまま信じるのではなく、この研修を通じて自分で考え、感じたことを大事にしてほしいですね(笑)。

2日目 午前 社会人パネリストによる進路座談会&進路相談会

2日目の朝、生徒たちは東京駅に隣接するリクルート本社で進路座談会と進路相談会に臨みました。進路座談会では、4名のリクルート社員と1名の起業家がパネリストとして登壇。それぞれが学生時代から今に至るまでの様々な回り道の経験談や進路を考える上で大切にしていること等を披露しました。その中の一人、リクルートの福田氏は京都大学文学部に入学したものの休学して世界一周。帰国後は法学部に転学し、留年して卒業。現在は社内にR&D(研究開発)組織を設立し、米国ミネルバ大学などとの連携プロジェクトに携わっています。有名な大学を出て有名な企業で活躍している大人が、ここに至るまで、必ずしも真っ直ぐな道を歩んできた訳ではないことに生徒は驚きつつも親近感を感じたようです。はじめに進行役の岡本氏から「昨日のワークを思い出して問いを立てながら話を聞こう」という指示があったこともあり、壇上のパネリストには生徒から沢山の質問が投げかけられました。

座談会の後は、東京大学、慶応義塾大学に通う学生も加わり、一人のパネリストを数名の生徒が取り囲む形でグループに分かれて進路相談会がスタート。生徒からは、進路に関する悩みや受験勉強に関する相談が座談会以上に次々とパネリストに寄せられ、世代を超えた熱い対話が繰り広げられました。

岡本氏はこのプログラムのねらいについてこう語ります。

―――ここに進路座談会を入れたのは、オックスフォード大学や東大の研究室に行く前に「色んな生き方があるんだな」、「皆色んな悩みがあってここに来てるんだな」、「もっと自由に考えていいんだな」というように一度広げるためです。学校には、理想通り行かないとキャリアは積めないという幻想があります。でも理想的なポジションにいる人も必ずしも理想的な辿り方はしてない。そんな「リアル」を中高生にも感じて欲しかったんです。

参加した生徒に感想を聞きました。

今日は榊原さんという起業した女性にお話を伺いました。すごい遠い存在だと思っていた起業が少し近くなりました。自分の好きなことやビジョンややりたいことを実現する手段として起業という選択肢があることを知り、とても面白そうだと思いました。

普段学校では「自分の興味のあることから大学を選びなさい」と言われますが、今日は「確かにそれも大事だけどその時々でちょくちょく変わるし、いつでも選び直せるから自分の習いたい分野という視点で選んだらいいんじゃないか」と言われました。鹿児島にいると東京の企業の人の話を聞ける機会はほとんどないので貴重な機会でした。

一番印象に残った言葉は「過去も未来も変えられる」です。今自分たちが行動することで未来だけじゃなくて過去もいいように捉えられるようになるっていうのは、すごく響きました。「あ、こうしとけばよかった」なっていう行動はやっぱりあるから、それを今これから行動していくことで肯定できるようになったらいいなと思いました。

2日目 午後 世界屈指の名門大学・オックスフォード大の学生とのワークショップ

2日目の午後は、オックスフォード大学日本事務所でオックスフォード大の学生との協働ワークショップが行われました。参加生徒は3,4名ずつ7つのグループに分かれ、そこにオックスフォード大、大学院の現役学生や卒業生がメンターとして加わります。岡本氏から提示されたディスカッションのお題は、「What is commonsense/fact which have been hidden or undermined?」(隠されたり損なわれたりした常識/事実とは何か?)。

ここからわずか2時間の間に自分たちでテーマを決め、インターネットで情報を収集し、分析結果をスライドにまとめて、全員がプレゼンテーションを行わなければいけません。しかも使用言葉は英語です。英語に自信のない生徒はそれを聞いてとても不安そうな表情を浮かべていましたが、ワークが始まるとオックスフォード大の学生が流暢な日本語を交えながらサポート。最終的には参加生徒全員が英語でのプレゼンを見事にやり遂げました。同時に、生徒たちは交流を通してオックスフォードでの生活に思いを馳せたり、日本人のオックスフォード大生に将来の自分を重ね合わせたりするなど、これまで自分の意識の外にあった世界にはじめて触れる瞬間を楽しんでいるようでした。

岡本氏はこのワークショップのねらいについてこう語ります。

―――一つは、世界の名門大学を近くに感じてもらうことです。オックスフォード大学って高校生からするとすごく遠いじゃないですか。でも話してみると意外と普通の人だなって。自分も行けるんじゃないかって(笑)。もう一つは研究の進め方です。オックスフォード大は日本の大学に比べてリサーチメソッドがしっかりしているので丁寧な指導ができます。あとは、英語プレゼンで「やればできる」という自信をつけてもらうことや、ワークでは自分が主体的に動きつつ仲間と協力しないと進まないということを感じてもらうことです。

参加生徒に聞きました。

―――オックスフォード大の学生からどんなことを教わりましたか?

  • 私たちのテーマは「貧困」だったのですが、「貧困」がふわっとした言葉なので「それがどういう定義なのかをちゃんと考えた方がいいよ」とアドバイスをもらいました。
  • ネットで調べる際は、政府や教育機関など信頼できるサイトから情報を集めることが重要だと教えてもらいました。
  • スライドを作る際は見ている人に分かりやすく、適切な情報や伝えたいことだけを出すこと、だらだらと文章を書かずにキーワードをしっかり出していくことが大事と言われました。
  • 英語が得意ではなかったので、英語でスライドを作って英語でプレゼンするのが自分にできるか不安だったんですが、日本語でもサポートしてくれたので結構できました。

3日目 午前 最先端物理工学研究室見学と東大 齊藤英治教授との座談会

研修最終日は、東京大学本郷キャンパスにある齊藤英治教授の研究室訪問です。工学部の建物内にある研究室フロアは、廊下ですれ違う先生のほとんどが世界トップクラスの研究者という、参加生徒にとってはまさに異次元の世界。なかでも齊藤教授は学術賞において国内最高の栄誉と呼ばれる日本学士院賞を受賞した、物理学において世界最高峰の研究者です。参加生徒ははじめに齊藤研究室の吉川助教から最先端の実験設備を丁寧な解説つきで案内してもらった後、齋藤教授や研究室メンバーとの座談会に臨みました。

生徒の質問に、穏やかな笑顔を浮かべながら一つ一つ丁寧に答える齊藤教授。
―――僕が一番ワクワクするのは論文執筆前です。研究で新たな発見をすると、世界でこの情報を僕だけが知っているという期間があるんです(笑)。それを一度経験をするとやめられなくなっちゃいますね。
齊藤教授の人間味あふれるコメントに会場の生徒からは思わず笑みがこぼれます。理系志望の生徒や東大を目指している生徒はここぞとばかりに齊藤教授に質問するなど、この貴重な時間を最大限に活かそうとしているようでした。

この日、見学に訪れていた宮崎県立高校の校長先生はこう語ります。
「私ども宮崎のような地方の学校において、中央の最先端の大学を目指す生徒が、実際にその大学、先生、研究を知るためには、大学が企画するオープンスクールや高校が単体で企画する大学訪問では十分ではありません。大学から先生に来ていただいて講演会等も実施しておりますが、今回、齋藤先生や研究室の皆さんから、学ぶことの本質、研究(探究)への糸口を身近に聞くことが出来る機会にご一緒して、直接出向いて本物に触れることの大切さを実感しました。」

岡本氏は齊藤研究室をプログラムに取り入れた理由をこう語ります。

―――ホンモノに出会った時のインスピレーションを中高生に感じ取ってもらいたいというのが最大の理由です。齊藤先生との会話を通じて「へえ、こんな次元で物事を見ているんだ」とか。一言で「物理」と言っても幅が広いし、日常で物理をしている人って何をしているか分からない(笑)。でも「こんなことやっているんだ」ということが分かると興味や勉強のモチベーションも湧いてくる。学校の勉強だけで学びのモチベーションや進路意識を高めるのって難しいんです。なので今回は齊藤先生に協力いただいてこのような場を実現しました。

参加生徒のアンケート回答の一部をご紹介します

  • 東京大学を見るのが初めてだったので、伝統的な建物に感銘を受け、歴史を感じることができました。研究室はガラッと変わって世界の最先端である機械や研究内容が数多くあってギャップを感じてなおさら驚きました。本当に良い経験ができました。
  • 最先端の機械や技術と触れて、すごく興味があったのでもっと調べてみたいと思いました。生で研究者の方と会って雰囲気を感じて、自分の進路の選択肢が増えました。

まとめ

最後に、参加生徒一人一人に「修了証」が手渡され、3日間の研修は幕を閉じました。研修を終えた生徒の満足そうな表情からは、普段の学校生活では出会うことのない方々との貴重な出会いを通じて、自分の世界が広がり、将来への決意を新たにした様子が見て取れます。また、お互いに連絡先を交換する姿があちらこちらで見られるなど、研修を通して生まれた参加生徒同士のヨコのつながりも生徒たちにとって貴重な財産になりました。

参加生徒のアンケートの一部をご紹介します。

  • 今回の研修を通して、自分が知っていた世界はちいさくて、そして自分の中にある偏見がなくなりました。もう高校二年生で、進路を確定しなければならない時期で焦っていたのですが、今インターネットで検索して出てくる職業とかからなにか選択しなければならないのではと考えていたのですが、気になる学びがあるなら、職業を考える必要はなくて学び続けることも一つの選択肢なのかなと感じました。また、やりたいことはとことんやっていこうと、そしてもっと夢を現実にしていくために人を頼ったり、交流を大切にしようと考えるようになることができました。
  • 3日間の研修は今までで経験したことで、本当に一番素晴らしい経験となりました。岡本氏が最後に話してくださった言葉で、地元に帰ってから現実というか日常に周りが戻ってしまっても、今回の経験は現実であって、それをしっかり自分に残して周りにあわせないで大丈夫だと言ってくださって、励まされました。鹿児島から来ていて、交通機関に乗ることさえも、あまり普段しないため不安が大きかったのですが、3日間ともみんなで協力して無事に目的地に到着することができて、自信に繋がりました。そして、経験することの大切さを身をもって感じることができました。本当にありがとうございました。

プログラム監修
一般社団法人次世代教育ネットワーキング機構
研修運営
一般社団法人Glocal Academy
企画実施
株式会社JTB

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