2022年度より、高校での必修科目に「総合的な探究の時間」が追加されました。探究学習が深まるにつれて、生徒の学習成果を学校内のみならず、校外でも発表できる機会を設けたいと考える先生も増えてきています。
この記事では、探究学習の成果発表の場として高校生におすすめの課題研究コンテストをご紹介します。また、先生方向けに生徒の探究テーマに応じたコンテストの選び方のポイントも紹介していますので、ぜひご覧ください。
INDEX
高校における「総合的な探究の時間」とは
変化が激しく、情報の多い現代で生きていくには、自己の在り方や生き方に関わる課題を発見しながら解決していくことが肝要です。そのような力を身につけるために、2022年度から実施された高等学校学習指導要領では「総合的な探究の時間」が必修となりました。
探究学習は、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」というサイクルを発展的に繰り返していくことが重要です。
探究の成果発表の舞台は学校の外へ
探究学習の最終段階となる「まとめ・表現」では、これまでの学習成果をポスター、スライド、動画などにまとめてプレゼンテーションする形式が多く見られます。近年では、これらの発表をクラス内や校内のみならず、学校の外でも行う動きが活発化してきています。
JTBが高校の先生を対象に行った調査でも、回答者の半数以上が生徒に外部コンテストへの参加を推奨しているというデータが出ています。最大の理由としては、外部コンテスト参加で得られる経験が、生徒の資質・能力の向上、その後のキャリア形成に大きく寄与することが挙げられます。
コンテスト参加は生徒にとってこんなにメリットがある
外部コンテストに参加することは、生徒にとっていくつものメリットがあります。その一つは、生徒が明確な目的意識を持って探究学習に取り組める点です。探究学習そのものに意味を見出しにくい生徒がいたとしても、ゴールが明確であればやる気が起きやすいといったことも期待できます。
さらに、実際にコンテストに参加すれば、自らの探究学習成果が外部から評価されることで自信や達成感が得られるほか、他校の生徒の発表や有識者からのアドバイスを通して貴重な刺激を受け、探究学習をさらに深められるというメリットもあります。
大学入試で有利になることもあるコンテスト出場実績
外部コンテストへの出場は、大学入試でも有利に働くことがあります。最近の大学入試では、学力試験以外にも多彩な方法で学生を選抜しています。その一つである総合型選抜(旧AO入試)では、生徒の主体性や学びに向かう力をはかる上で、コンテスト出場経験やそこでの入賞実績を材料として用いることがあります。
たとえば、慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部では、総合型選抜の一次選考の免除対象となるコンテスト名と所定の成績を開示しており、外部コンテスト出場実績を重視していることがうかがえます。
ただし、大学入試突破だけを目的として外部コンテスト参加を生徒にすすめることはおすすめできません。
生徒一人ひとりにあうコンテストはどう選べばいいのか?
高校での探究学習への取り組みが加速するにつれて、高校生向け課題研究コンテストの開催数も増加しています。数あるコンテストの中から、一人ひとりの生徒にマッチするコンテストを選ぶ際にチェックしておきたいポイントをご紹介します。
ポイント01コンテストの募集分野が生徒の探究内容とマッチしているか
一つ目のポイントは、コンテストの募集分野が生徒の探究内容とマッチしているかという点です。最近では研究分野を問わないコンテストも増えてきていますが、多くのコンテストでは分野があらかじめ定められています。その中に生徒の探究分野が含まれているか、あらかじめ募集要項で確認しておくとよいでしょう。また、募集要項で発表形式や審査基準を確認しておくことも、生徒が実力を発揮できるコンテスト選びの大切なポイントです。
ポイント02コンテストの使用言語
二つ目は、コンテストの使用言語です。グローバルなコンテストではプレゼンテーションや審査員との質疑応答が英語で行われるものもあります。必要な英語力の目安が募集要項に記載されている場合もありますが、過去の入賞作品やプレゼン動画をホームページで確認すると参考になります。英語での質疑応答を苦手としている生徒に対しては、英語科やネイティブの先生と連携してサポートするとよいでしょう。
ポイント03コンテストに付随するプログラム
三つ目は、コンテストに付随するプログラムです。コンテストによっては成果発表会だけでなく、事前トレーニンプログラムや参加者同士の交流プログラムが用意されているものもあります。これらは参加する生徒にとって学校の中だけでは得られない貴重な学びの機会になります。生徒の成長につながるプログラムが用意されているかどうかを基準にコンテストを選ぶ方法も検討してみてはいかがでしょうか。
生徒に外部コンテストへの参加を促す際に大切なのは、生徒自身の「チャレンジしたい」という姿勢を引き出すことです。生徒の主体性が発揮されるよう、一人ひとりにあった声掛けを行うことが最も重要なポイントと言えそうです。
探究の成果発表におすすめの課題研究コンテスト5選
ここでは、多彩な外部コンテストの中から、高校生が日頃の探究学習の成果を発表できる課題研究コンテストを5つご紹介します。
01日本学生科学賞
1957年に創設された中高生のための歴史と伝統ある科学コンクール。個人やグループで取り組んだ実験・研究・調査作品のなかから、地方審査を通過して都道府県代表に選ばれた作品が中央審査に進みます。優秀な成績を収めた個人やグループは、日本代表として米国で開催される世界最大の学生科学コンテストISEFに派遣されます。
2022年度データ
- 日程
- 2022年12月17日(土)~18日(日) ※中央最終審査
2022年12月24日(土) ※表彰式 - 分野
- 物理、化学、生物、地学、広領域、情報・技術、応用数学
- 言語
- ー
- 人数
- ー (ISEF派遣対象は個人または3名までのチーム)
- 募集期間
- 2022年9月2日~10月24日
- 主催
- 読売新聞社
- HP
02高校生国際シンポジウム
2022年度で8回目を迎える高校生のための課題研究コンテスト。参加生徒は人文社会学、自然科学、数学、ビジネスまで幅広い分野に渡る日頃の研究成果を、スライド部門またはポスター部門にて発表します。各界の有識者による基調講演やパネルディスカッション、研修会、参加者交流会なども用意され、直に本物に触れることのできる2日間のプログラムです。
2022年度データ
- 日程
- 2023年2月21日(火)~22日(水)
- 分野
- 人文科学、社会科学、理学数学、工学、農学、医療・保健、家政、教育、芸術、総合学際、地域課題、外交・国際関係、起業・ビジネス
- 言語
- 日本語、英語
- 人数
- ー (発表は1~4名)
- 募集期間
- 2022年12月1日~2023年1月7日
- 主催
- 一般社団法人 Glocal Academy
- HP
03Change Maker Awards
2022年度で5回目を迎える中高生のための英語プレゼンテーションコンテスト。従来の英語スピーチコンテストとは異なり、自分が夢中になっている探究について英語でプレゼンテーションを行って競い合う点が最大の特徴です。そのため、予選と全国大会の審査配点は、英語力2割、探究学習の内容8割となっています。
2022年度データ
- 日程
- 2023年2月19日(日) ※全国大会
- 分野
- 【個人部門】「世界に伝えたい私の探究」、【チーム部門】「私たち×〇〇」
- 言語
- 英語
- 人数
- 個人部門(1名)、チーム(2~4名)
- 募集期間
- 2022年7月8日~11月22日(プレエントリー)
- 主催
- 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会
- HP
04つくばScience Edge
2022年度で13回目を迎えた、「未来の研究者」を育成するためのサイエンスアイデアコンテスト。従来の科学コンテストは中高生にはハードルが高いという声を受け、アイデア段階のテーマ発表ができる場として創設されました。参加者は本物の研究者の前でのアイデア発表や、研究者とのディスカッションを通して、創造する楽しさや学ぶ楽しさに気づくことができます。
2022年度データ
- 日程
- 2023年3月26日(日)~27日(月)
- 分野
- 物理、化学、生物、地学、数学・情報、その他
- 言語
- 日本語、英語
- 人数
- ー
- 募集期間
- 2022年11月30日~2023年1月20日
- 主催
- つくばScience Edge2023実行委員会
- HP
05Global Link Online
共通の興味関心を持つ世界の同世代と英語で研究発表・議論・交流ができるグローバル課題研究コンテスト。もともと海外で開催されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2021年はオンライン、2022年はハイブリッドで開催されました。文理両分野をカバーするハイレベルなコンテストですが、事前トレーニングプログラムも充実しているため、英語での課題研究発表に慣れていない生徒でも安心して挑戦できます。
2022年度データ
- 日程
- 2022年8月27日(土)~28日(日)
- 分野
- 基礎科学、応用科学、社会科学
- 言語
- 英語
- 人数
- 1チーム5名以内
- 募集期間
- 2022年4月14日~6月7日
- 主催
- Global Link実行委員会
- HP
まとめ
高校で総合的な探究の時間が必修化されたことや、大学入試の選抜方法が多様化したことを背景に、最近では高校生向けの課題研究コンテストが次々と誕生し、今後もさらに増えることが予想されます。多くのコンテストの情報が溢れるなか、自分にあったコンテストをどう選べばいいか分からない生徒も多いのではないでしょうか?
こうした環境下で生徒が自分と向き合い、学びの機会を自ら選択できるようになるためには、生徒一人ひとりにあった先生のサポートが求められていると言えそうです。