高校で探究の実践が加速する中、生徒の探究活動をより深化させ、社会とのつながりを実感できる成果発表の場を求める学校が増えています。校外で探究の成果を発表することは、多様な価値観との出会いや自己効力感の向上など、教室内では得られない学びの機会を生徒にもたらします。
この記事では、生徒の主体的なコンテスト選びを支援するための情報提供のポイントと選定の視点を解説し、成果発表の場として活用できる高校生向けコンテストをご紹介します。(教員向けの内容です)

探究コンテストに参加するメリット
探究コンテストは、学習指導要領が目指す「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく資質・能力」を育成する絶好の機会です。
専門家や他校の生徒から得られるフィードバックは、学びの深化に役立つだけでなく、多様な価値観や異なる視点との出会いを通じて生徒の視野を大きく広げます。また、探究成果を社会に向けて発信し評価を受けることで、生徒は「自分にもできる」という確信を深め、自己肯定感の向上につながります。
この成功体験は次の探究活動への意欲を駆り立てる原動力となり、コンテスト参加は単なる発表の場を超えて、生徒が自らの探究を社会とつなげ、継続的な学びへと発展させる重要なステップとなるのです。
データで見る探究コンテストの効果
JTBが実施した調査でも、多くの高校生が探究コンテストへの参加を通じて、自己成長を実感していることが明らかになっています。あるコンテストに参加した高校1年生を対象とした調査では、全体の77.7%の生徒がコンテスト出場によって「寛容」と「柔軟性」に関する意識が向上したと回答し、66.6%の生徒が「課題設定」、「表現力」、「共感・傾聴力」、「影響力の行使」に関する意識が向上したと回答しています。この調査結果は、探究コンテストが生徒の認知能力だけでなく、非認知能力にも大きな影響をもたらす機会であることを裏付けています。
多様化する探究コンテスト
最近では、高校生向けの新たなコンテストが次々と登場し、そのテーマや形式ともに多様化しています。コンテストが増えることは、高校生にとって挑戦の機会が広がるという意味で喜ばしいことですが、選択肢の豊富さは新たな課題も生み出しています。
コンテストの数が増えるにつれ、生徒にとってはどれが自分に最適なコンテストかを判断することが困難になり、教員も生徒の探究テーマやレベルに応じてどのコンテストを薦めたらよいか迷うケースが増えています。そこで、以下では、生徒が自分に合った探究コンテストを選ぶためのポイントと、支援にあたる教員が押さえておきたい観点をご紹介します。
探究コンテストの選び方ポイント
生徒が自分にあった探究コンテストを選ぶには、自分の興味・関心や探究テーマだけでなく、進路選択や将来の学びにつながるかどうか、異なる価値観や専門性を持つ人との交流機会があるか、など様々な視点をもつことが重要です。そのためには、ホームページなどで、過去の受賞作品や参加者の声、コンテストのレベルや雰囲気、求められる内容などを調べておくことも効果的です。教員の役割は、こうした情報を生徒と共有しながら、生徒自身の「チャレンジしたい」という意欲を引き出し、生徒が主体的に探究コンテストに挑戦するよう背中を押してあげることです。そうして挑んだコンテストであれば、優れた成果や将来の大きな成長につながることでしょう。
ポイント01コンテストの募集分野
一つ目のポイントは、コンテストの募集分野が生徒の探究内容とマッチしているかという点です。最近では研究分野を問わないコンテストも増えてきていますが、多くのコンテストでは分野があらかじめ定められています。その中に生徒の探究分野が含まれているか、あらかじめ募集要項で確認しておくとよいでしょう。また、募集要項で発表形式や審査基準を確認しておくことも、生徒が実力を発揮できるコンテスト選びの大切なポイントです。
ポイント02コンテストの使用言語
二つ目は、コンテストの使用言語です。グローバルなコンテストではプレゼンテーションや審査員との質疑応答が英語で行われるものもあります。必要な英語力の目安が募集要項に記載されている場合もありますが、過去の入賞作品やプレゼン動画をホームページで確認すると参考になります。英語での質疑応答を苦手としている生徒に対しては、英語科やネイティブの先生と連携してサポートするとよいでしょう。
ポイント03事前トレーニングや参加者交流プログラム
三つ目は、コンテストに付随するプログラムです。コンテストによっては成果発表会だけでなく、事前トレーニングプログラムや参加者同士の交流プログラムが用意されているものもあります。これらは参加する生徒にとって学校の中だけでは得られない貴重な学びの機会になります。生徒の成長につながるプログラムが用意されているかどうかを基準にコンテストを選ぶ方法も検討してみてはいかがでしょうか。
おすすめの探究コンテスト5選
多彩な外部コンテストの中から、高校生が日頃の探究学習の成果を発表できるコンテストを5つご紹介します。
01日本学生科学賞
1957年に創設された中高生のための歴史と伝統ある科学コンクール。個人やグループで取り組んだ実験・研究・調査作品のなかから、地方審査を通過して都道府県代表に選ばれた作品が中央審査に進みます。優秀な成績を収めた個人やグループは、日本代表として米国で開催される世界最大の学生科学コンテストISEFに派遣されます。
2025年度データ
- 日程
- 【中央予備審査】2025年11月15日(土)、16日(日)
【中央最終審査】2025年12月13日(土)、14日(日)
【表彰式】2025年12月19日(金) - 分野
- 物理、化学、生物、地学、広領域、情報・技術、応用数学
- 言語
- ー
- 人数
- ー (ISEF派遣対象は個人または3名までのチーム)
- 募集期間
- 【物理、化学、生物、地学、広領域】2025年9月~10月 ※各都道府県ごとに異なる
【情報・技術、応用数学】2025年9月1日(月)~10月28日(火) - 主催
- 読売新聞社
- HP
02高校生国際シンポジウム

2025年度データ
- 日程
- 2026年2月18日(水)、19日(木)
- 分野
- 人文科学、社会科学、理学数学、工学、農学、医療・保健、家政、教育、芸術、総合学際、地域課題、外交・国際関係、起業・ビジネス
- 言語
- 日本語、英語
- 人数
- ー (発表は1~4名)
- 募集期間
-
2025年12月1日(月)~2026年1月9日(金)
- 主催
- 一般社団法人 Glocal Academy
- HP
03Change Maker Awards

2025年度データ
- 日程
- 【地方ブロック予選審査開始】2025年12月6日(土)
【地方ブロック決勝審査開始】2026年1月24日(土)
【全国大会】2026年3月22日(日) - 分野
- 【個人部門】「世界に伝えたい私の探究」
【チーム部門】「私たち×〇〇」 - 言語
- 英語
- 人数
- 【個人部門】1名、【チーム部門】2~4名
- エントリー期間
- 2025年10月3日(金)~12月4日(木)
- 主催
- 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会
- HP
04つくばScience Edge

2025年度データ
- 日程
- 2026年3月27日(金)、28日(土)
- 分野
- 物理、化学、生物、地学・防災、数学・情報
- 言語
- 日本語、英語
- 人数
- ー
- 募集期間
- 2025年11月4日(火)~2026年2月27日(金)
※アブストラクト投稿期間は2026年1月12日(月)まで - 主催
- つくば ScienceEdge 2026 実行委員会
- HP
05Global Link

2026年度データ(Global Link Singapore)
- 日程
- 2026年8月1日(土)~3日(月)
- 分野
- 基礎科学、応用科学、社会科学
- 言語
- 英語
- 人数
- 1チーム5名以内
- 募集期間
- 2025年12月上旬~2026年5月中旬予定
- 主催
- 一般社団法人次世代教育ネットワーキング機構
- HP
2026年度データ(Global Link Australia supported by Queensland)
- 日程
- 2026年7月29日(水)~31日(金)
- 分野
- 環境問題、環境保護について考えたアイデア・意見・提言
- 言語
- 英語
- 人数
- 1チーム5名以内
- 募集期間
- 2025年12月上旬~2026年5月中旬予定
- 共催
- 一般社団法人次世代教育ネットワーキング機構
タンガルーマ・アイランドリゾート - HP
