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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 【WEBセミナーレポート】JTB次世代教育フォーラム 『参考になりすぎる探究学習実践のコツ』

2023.05.01
国内プログラム
学校運営・総合
キャリア教育

2022年度は教育界において改革が大きく進んだ、象徴的な年となりました。
スクールミッションの再定義やスクールポリシーの策定、普通科再編、更には入試改革と高大接続の流れの加速等、多くの動きがありました。中でも探究においては、新学習指導要領が高等学校においても適用となったことから、「総合的な探究の時間」をはじめ、「探究」がつく科目が増えたことは大きなインパクトがあったといえます。

今回は年度末に実施された岡本氏との対談から、改めて「総合的な探究の時間」が持つ意味や探究活動の教育的効果、更には先生方に今求められている役割に関する示唆を探ります。

本記事は2023年3月30日~4月10日にかけてオンデマンド配信された、「JTB次世代教育フォーラム 『参考になりすぎる探究学習実践のコツ』~2022年度の振り返りと成果発表の場~」をもとに執筆、一部編集してお届けいたします。

「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」

現在、探究活動は全国の学校でどのように進んでいるのでしょうか?

岡本氏
「総合的な探究の時間」が今年度から始まりましたが、そもそも「総合的な探究の時間」は何なのかということからお話したいと思います。
小学校・中学校では「総合的な学習の時間」が続いているのに対し、2022年度から高等学校のみ「総合的な探究の時間」に名前を変えました。ここには大きな意味があります。
「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」の違いの解説
出典:岡本氏の講演内容をもとに弊社にて作成

上記のように設定された背景には、キャリア観が多様化したことがあります。他の国と比べて高校の段階で「自身がどう生きたいのか」を考える機会が少ないといわれる日本において、その時間を取るためにも「総合的な探究の時間」の時間が始まりました。

つまり、小学校・中学校の「総合的な学習の時間」において、多くの他人事(他者の生き方・在り方)を知り、高校の「総合的な探究の時間」で自分事となるものを見つけていく。これが大切なプロセスであり、「総合的な探究の時間」の目的となっているものと言えます。

探究学習が生徒にもたらす3つの教育効果

この目的のもとで探究活動を進めた場合に、どのような教育効果が得られるのでしょうか?

岡本氏
探究活動の一番の特徴として、あらゆる生徒に教育効果があるという事があります。私は定時制の学校や進学校等、全国の様々な学校を訪問しますが、どの生徒にも強い教育効果があるという事を日々実感しています。

効果01他教科の重要性を認識する場

勉強した事がこの先どう社会に繋がっていくか。この事を普段の学校生活で実感するのはなかなか難しいことです。ただ「総合的な探究の時間」で「自分はこれをやりたい!」というテーマを見つけた生徒は、それを理解するために必要な知識が何であるかを知ることになります。この事が「何のために主要5教科をはじめとする教科・科目を勉強しているのか」、理由や意味を見出していくことに繋がるのです。

例えば、統計などは単体では必要性を理解しづらいですが、探究活動を行っていくと、自身の研究を根拠に基づいて話すためには統計的な処理が絶対に必要になることに気づきます。このような過程を通じて、実は教科書に載っているところに多くのヒントが隠れているということを理解していくのです。

効果02進学・進路へのつながり

全国の学校を見ていく中で、5教科や進路学習と「総合的な探究の時間」を切り離して考えているような場合も見受けられます。しかし、探究活動において出てくる「これを学びたい」「これを理解したい」という先には、進路があります。「もっと●●について知りたい」というのは、強い進学意識に繋がっていくのです。
つまり「総合的な探究の時間」は、5教科や進路学習を包括的に押し上げていくものと考えると良いかと思います。

効果03自己肯定感の向上と主体性の芽生え

更に「総合的な探究の時間」は自己肯定感にも大きく影響します。
生徒の中には、勉強をあまりしたくないと感じていたり、学校や社会を信頼出来ないと感じている場合もあるかと思います。しかし、探究は自身の内面を出す時間です。そこでは、生徒が出してくれた内面に対して、先生が返していくという対話が生まれます。この対話を通して、生徒には先生・学校・社会への信頼感が生まれ、更には自己肯定感が大きくなり、普段の勉強にも主体的に向き合う生徒が多くなるという場面をたくさん見てきました。ですので、「総合的な探究の時間」はあらゆる生徒に教育効果が高い学習の時間だと考えています。

先生に求められる事・進める上でのコツ

3つの教育効果を高める上でも、先生方のファシリテーションやコーチング能力が求められるように感じました。最後に、先生方に求められる役割や探究学習を進める上でのコツを教えてください。

01対話

岡本氏
探究学習は今まさに試行錯誤の段階だと思いますが、その中でも共通して重要な部分は対話です。生徒との対話というのはあらゆるものの基本になるので、そのベースは持っていただきたいなと思います。
例えば、生徒が探究学習で「これをやりたい」というような興味が少し出たタイミングで、「これ面白いね」「なぜこれに興味持ったの?」というような形で対話が始まっていきます。この対話が、まさに教育効果の3点目でもお話しした「自己肯定感の向上」に繋がって来るポイントでもあるのです。

02カリキュラム・マネジメント

また「総合的な探究の時間」を進めるうえで切っても切り離せないのが、カリキュラム・マネジメントです。

実は現場でどのような探究活動をすべきかという事は、答えが用意されていません。学習指導要領においても「総合的な探究の時間」の教育目標は、その学校の教育目標に準ずることとなっているのです。つまり、「何のために探究をやるのか」という事は、各校がどのような教育目標をもち、そのために生徒にどのような資質能力を身に付けてほしいのかという事に繋がっていきます。逆に、この各校の教育目標や、身に付ける資質能力がきちんと設定されていなかったり、カリキュラム・マネジメントが効いていない状況では、「総合的な探究の時間」の時間もうまく機能しなくなってしまいます。

カリキュラム・マネジメント実践のコツについては、こちらの記事でご案内しています。

03全国での事例共有

現在カリキュラム・マネジメントの進行具合も探究活動の取組みも、自治体や学校によって様々です。ただ、こういう状況で大事なのは、全国で事例を共有していくことです。それぞれの学校での教育目標や実施している探究活動の内容は違いますが、集まった事例から、どんな課題があって、そこに対してはどういう対処法があるのかというヒントが見えてくるようになります。


まとめ

今回のセミナーでは2022年度の振返りとして、岡本氏を迎え、探究学習の現状とコツという事でお話しを伺いました。冒頭では、なぜ高等学校において「総合的な探究の時間」が導入されたのか、その意図や目的を整理した上で、その学習効果について、説明して頂きました。

後半では、学校・先生に求められることとそのコツとして、以下3点を伺いました。

  • 基本となる対話の重要性
  • 「総合的な探究の時間」の教育目標に繋がるカリキュラム・マネジメントの重要性
  • 全国への事例共有を積極的に行い、その中からヒントを見出すこと

探究学習は、まだまだ試行錯誤しながらの取組みになりますが、JTBではコツの中にあった事例共有や、カリキュラム・マネジメントのサポート等を通して、探究の指導に携わる先生方をサポートして参ります。是非お気軽にお問合せください。

また探究の最後のフェーズであるまとめ・表現の場については以下の記事でも取り扱っています。併せて、ご覧ください。

【先生向け】高校生の課題研究におすすめのコンテスト5選!選び方のポイントもご紹介

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