少子高齢化や価値観の多様化により、行政への住民のニーズは多様化、高度化しています。一方、生産年齢人口の減少で税収入は減少傾向にあり、行政だけでは対応できない課題が増えてきているのが現状ではないでしょうか。それに加え、コロナ禍以降人々の暮らしは「非対面・非接触」の生活様式に一変しており、住民コミュニティの希薄化はさらに進行する心配があります。
今回は、内閣府地方創生推進室が選定する「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」から、住民主体化やDX化を推進する3つの事例を紹介します。地域経済活性化と行政サービス向上のための「持続可能なまちづくり」の具体例を見ていきましょう。
アフターコロナの地域振興に必要な3つの視点
単身世帯の増加や空き家問題などの課題を解決しながら、地域が持続的に発展を遂げるためには、「住民主体化」「DX化」「グリーンツーリズム」の3つは欠かせない視点です。
01住民主体化
まちづくりへの住民参加を促す「住民主体化」。これに必要なのは、自治体や企業、各種団体などが個別に行っている活動を地域全体の横断的な取り組みに変換することです。複数の主体が協働すれば、多様な人材がさまざまな関わり方でまちづくりに参加でき事業を効率化できます。
02DX化
さまざまな組織が連携するには、地域・組織間で横断的にデータを活用できるプラットフォームが必要です。制度や組織のあり方をデジタル化に合わせて変革してみるのはいかがでしょうか?デジタル技術やデータを活用するDX化は、業務の効率化だけでなく、住民の利便性を高めることにもつながります。
観光による地域活性化にテクノロジーを活用する「地域DX(デジタルトランスフォーメーション)」に注目が集まっています。地域DXについて、わかりやすく漫画にまとめてみました。ぜひ、ご覧ください。
デジタルトランスフォーメーションで、1人ひとりに寄り添える仕組み! 地域DX
03グリーンツーリズム
グリーンツーリズムとは、農村や漁村で自然や食事、文化に触れる旅行スタイルのことです。都市に住む旅行者と地元の人々の交流が、地域資源や魅力の再発見、経済の多様化などの良い影響をもたらします。農村や漁村の地域活性化を考えるうえでも注目の取り組みです。
持続可能な地域振興01 岡山県倉敷市の「住民主体化」
岡山県倉敷市は「多様な人材が活躍し、将来にわたって安心・快適に生活できるまち」「頻発・激甚化する自然災害に対し、誰一人取り残さないまち」を2030年のゴールに掲げ、『多様な人材が活躍し、自然と共存する『持続可能な流域暮らし』の創造事業』に取り組んでいます。
中でも特徴的なのは、幅広い世代・分野で持続可能なまちづくりに取り組む人材を育成する『高梁川流域みらい人材創出プロジェクト』です。これは、小学生から一般までを対象とする5つの事業で構成されています。
一般を対象とする『高梁川流域課題解決人材創出事業』では、地域の歴史や文化、地域課題の解決の手法などを学ぶ単位制の教育プログラムを構築して専門人材の育成を図りながら、地元金融機関との連携で金融人材の育成も行います。
地域の人材と地元金融機関が連携すれば、地域経済に好循環が生まれます。また次の世代を担う小・中学生をまちづくりの主体として育成していることもポイントです。青少年育成と環境保全等の活動等を通じて多様なステークホルダーと連携することで人材の創出と定着を目指しています。
持続可能な地域振興02 石川県加賀市の「DX化」
先進技術の活用で持続可能な都市を目指す手段もあります。石川県加賀市は、AI、ロボット、ビッグデータなどの先端技術を活用して、日常におけるさまざまな課題を解決する『スマートシティ加賀』を宣言し、市民との共創によるまちづくりを進めています。
令和元年5月31日、加賀市は企業と共同で、ブロックチェーン技術を活用した住民ID基盤の稼働を開始しました。また、住民一人ひとりのニーズに応じて地域サービスをマッチングする「加賀POTAL」を公開し、新たな地域サービスのプラットフォームも整備。加賀POTALのトップページ※からは、「新型コロナウイルスワクチン接種について」「障がいのある人の就労支援講演会の延期について」など、今必要とする情報にアクセスできます。
2021年3月17日時点
持続可能な地域振興03 三重県いなべ市の『グリーンツーリズム』
三重県いなべ市は、市の新庁舎隣に整備した「にぎわいの森」を拠点に、カジュアルなSDGsに資するまちづくり『グリーンクリエイティブいなべ』を推進しています。「おしゃれ」「かわいい」といった共感が生まれるデザインや事業を通して、幅広い世代の方に気軽に来場、参加してもらう機運を醸成。このような雰囲気作りで、若者の流出防止と都市部からの移住促進の実現を図ります。
「にぎわいの森」は、もともとの地形を利用して季節風を取り入れたり、雨水をトイレの水等に利用したりと自然エネルギーを活用できるよう設計されました。また、今後は山辺にも商業・観光交流拠点を充実させることで、地域住民にも都市部からの旅行者にも魅力あるまちづくりを目指します。
森林放棄地の整備は、土砂災害防止、地震減災、獣害予防に寄与するだけでなく、都心部の人を魅了する山辺ならではの付加価値を創造することにもつながります。いなべ市を参考に、自然を上手に活用して、経済・社会・環境のそれぞれに相乗効果をもたらす取り組みを考えてみてはいかがでしょうか?
まとめ
地域振興にSDGsの視点を
コロナ後の地域振興には、「誰一人として取り残さない」を誓うSDGsのアプローチが役に立ちます。まずは先端技術や専門知識を持つ企業・人材との協働で、「住民主体化」「DX化」「グリーンツーリズム」といった取り組みの輪を広げてみてはいかがでしょうか。
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