国民の約8割が2回のワクチン接種を終え、移動やイベントに関する規制も徐々に緩和されつつあります。JTB総合研究所編集の「旅と生活の未来地図」前回号では、ウィズ・コロナにおける旅行再開の見通しと国内旅行のターゲットにすべき層をお伝えしましたが、本号ではさらに先を見据えた旅行者の姿を可視化しました。本記事では、「旅と生活の未来地図」最新号から、旅行者が観光地に求めることや旅行意欲の高い「Z世代」の傾向を抜粋して紹介します。
旅行先としての日本のイメージはポジティブに
五輪は開催地の報道が増え、その後の旅行者の増加に貢献すると言われています。JTB総合研究所はマーケティングリサーチのグローバル企業であるCintと共同で、五輪を経て日本に対する世界の意識がどう変わったか、インバウンド調査を実施しました。
豪州・英国・中国の訪日主要三国に対する調査では、1割前後が日本への旅行に「無関心」から「関心」に変わったことが明らかになっています。
「旅行の決め手」は、豪州・英国では「リゾートでのんびり滞在」、中国は「買い物と食」が楽しめることが上位に挙がり、「泊まってみたい宿泊施設があること」は三国共通で高い結果となりました。東京五輪はインバウンドに好影響を与え、日本への関心は高まっています。
感染防止対策は旅先選びの「決め手」にはなりづらいが「前提」として捉えられており、「旅行前に知っておきたい」情報として捉えられています。
国内旅行者の外出や移動に関する考え方の傾向
国内の旅行者に目を向けると、状況はどうでしょうか。
調査では「外出や移動がしやすくなった」と感じる人の割合が増加した一方、移動に不安を感じている人の割合もいまだ高く、緊急事態宣言解除後の旅行は慎重に再開されていくと見られます。また、旅行予定者の3割は消費喚起の割引キャンペーンを待っていることも明らかになりました。
旅行者の居住地別では、首都圏の人の移動や外出に対する不安や「県外客お断り」の扱いを懸念する意識がより高い傾向にあることがわかりました。旅先も関東域内や近隣県が前回調査より伸び、遠方は減少しています。
宿泊施設選びで特に重視する傾向が強まったのは、食事に関する項目で、「個室で食事ができること」「部屋食で食事ができること」が前回調査よりもっとも伸び率が高い結果でした。
飲食店での感染防止対策に対しても同様に、利用者の多くは他の顧客との接触や混雑を避ける対応や、店員の感染防止対策への意識を気にしています。“安心な食事環境”と“密や混雑の回避”について「やっていることを示す」ことは重要だと考えられます。
コロナ禍でも旅行意欲の高い日本の若者に注目
日本で旅行意欲が最も高いのは20代男女であり、物見遊山の旅より自分の関心事に合わせて旅行先や体験を選んでいることがわかっています。中でも旅行再開のための情報発信で、特に注力したいターゲットは「Z世代」です。
Z世代とは、2021年時点で10代後半から20代前半の年齢層を指します。子供の頃からスマホやSNSに親しんでいるため、自ら高い発信力を持つのが特徴です。
日本においてZ世代は人口を占める割合が小さく、消費額も大きくありません。しかし親世代と価値観を共有し、旅行・音楽・買い物など相互に影響し合っているため、より広い層にリーチできる可能性を秘めています。子からの情報に親の価値観が加わり、より高品質なものの購入につながることも考えられるため、それを意識した商品展開を考えておくことも大切です。
ワクチン・検査パッケージツアー技術実証の最前線
ウィズ・コロナの安全・安心に配慮した、旅行できる仕組みづくりに向け、観光庁と旅行各社は「ワクチン・検査パッケージツアー」の技術実証を進めています。
ワクチン・検査パッケージとは参加条件を次のいずれかに限定したツアーです。
- 出発14日前までにワクチンの2回目接種が完了している方
- PCR検査の結果が陰性の方
ワクチン・検査パッケージツアーでは参加対象者に条件を設けるだけでなく、ツアー中の感染症防止策の徹底、出発前に新型コロナウイルスに感染した場合の取消料免除やワクチン接種者への特典など各社さまざまなプランを用意しています。
ワクチン・検査パッケージツアーの詳細事例(JTB旅物語<首都圏発>の場合)
- 参加対象者
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- 出発14日前までにワクチンの2回目接種が完了している方
- 同社が用意するPCR検査の結果が陰性の方限定
⇒出発前に新型コロナウイルスの感染が理由でのお取消しの場合は、取消料不要
- 特典
- 新型コロナワクチン2回接種者に3000円分のJTB旅行券プレゼント
- ツアー中の感染防止の取り組み
- チェックイン時にワクチン2回接種済み証明書またはPCR検査結果を確認、ゆとりの座席配置など
- 訪問先の感染防止対策
- 宿泊施設、観光スポットなど訪問先はすべて、感染防止対策を確認
- ツアー参加後の取り組み
- 帰着後2週間後に体調についての電話確認(技術実証対象出発日のみ)
「旅と生活の未来地図」最新号には、JTB総合研究所の研究員が体験したJTB旅物語「バス席おひとりさま2席利用!大塚国際美術館と開運こんぴらさん参り2日間」(㈱JTBメディアリテーリング)のツアーレポートを掲載しています。1泊2日の行程中の、観光地での感染対策や密を避けた移動の工夫については、本記事の最後にご紹介しているダウンロード資料でご確認ください。
まとめ
地域は「Z世代」の波及効果を見越した商品・サービス開発を
ウィズ・コロナの観光では“安心な食事環境”と“密や混雑の回避”など引き続き「守り」を意識しつつ、Z世代へのアプローチ、ワクチン・検査パッケージツアーの導入など、「攻め」の取り組みも注目されています。
Z世代は世界的に人口構成比が高く、将来の消費のカタチに影響を及ぼすと考えられています。実際に、訪日外国人客もアジアを中心に若い世代が多く、弁当、盆栽など日本の伝統文化を新しい視点で積極的に取り入れているので、今後の観光振興のためにもぜひ傾向を押さえておきたい世代です。
「旅と生活の未来地図」最新号では、独自調査で明らかになった、Z世代を含む各世代の「地場産業品・伝統産業品との関わり方の意向」「趣味や消費に関する親子間の影響」など、観光施策立案に役立つ最新データをまとめています。旅行会社が企画するパッケージツアーの章では、自治体の皆様からご質問をいただくことも多い「パッケージツアーの分類」についても情報をまとめました。
ウィズ・コロナの旅行者の傾向を捉えるための重要なキーワードが目白押しです。ぜひダウンロード資料にて詳細をご確認ください。