鳥取県が架空の組織として「メタバース課」を設立。日本初となる自治体オリジナルAIアバターを職員として採用しました。メタバース課はメタバース空間内での情報発信を通じ、「メタバース関係人口」を創出することを主な目的としています。鳥取県が目指すメタバース上の展開を探るべく、首都圏における鳥取県の窓口・鳥取県東京本部の中井拓也氏にお話を伺いました。
INDEX
そもそもメタバースとは何なのか?
まず「メタバース」について、おさらいしておきましょう。「高次の」「上位の」「超」などの意味を持つ「メタ」とUNIVERSEの「VERSE」を組み合わせた造語で、直訳すると「高次の空間」、意訳すると「インターネット上の仮想空間」ということになります。ユーザーは自分自身の分身である「アバター」を介し、メタバースへ参加することができます。
メタバース内には自分のアバターだけでなく、世界中から他者のアバターが参加しています。活用法としてはいまのところ、メタバース上でのイベントやゲーム開催、そしてビジネスのバーチャル会議などが挙げられます。
なぜ鳥取県にメタバース課が誕生したのか?
2023年2月、鳥取県は県庁内に架空の部署「メタバース課」を立ち上げ、日本初の「自治体オリジナルAIアバター」を職員として採用したと発表しました。「一体なぜ、鳥取県が?」、そんな風に感じた人も多いでしょう。メタバース課設立の狙いと流れを中井氏に伺いました。
メタバース課の立ち上げに至る経緯として、まず鳥取県は2022年5月、地方創生を目的としたNFTプロジェクト「ASTROBOY JAPAN NFT」に第一弾のタイアップ先として参画しました。NFTとは偽造・改竄が困難なブロックチェーン技術でデジタルコンテンツの真贋性や所有情報が証明できる鑑定書のようなもの。当該プロジェクトには鳥取県のほかに、手塚プロダクション等が参画し、県内の観光名所を背景に鉄腕アトムのキャラクターがまるで鳥取県を旅しているかのようにポーズをとるNFTトレーディングカードが制作販売されています。
中井氏 「プロジェクトは『手塚プロダクション』をはじめ、株式会社JTBと株式会社JCBの合弁会社である『J & J事業創造』、そしてドバイに拠点を持ちWEB3.0型メタバース「XANA」を運営する『NOBORDER.z』によって主導されました。おかげさまでNFTカードは大好評で、世界90ヵ国の方々にご購入エントリーいただき、2万7,000枚が完売しています。その流れの中で我々もメタバースの可能性に着目するようになったのです」
XANA:https://xana.net/ja/
AIの学習能力でアバター職員は急成長中
メタバースを活用することで鳥取県の魅力をアピールし、観光客の呼び込みや特産品販売に繋げていく…。そんなアイディアがスピーディに現実化しました。立ち上げられたばかりの「鳥取県メタバース課」は現在、どのような活動を行っているのでしょうか?
メタバース課に採用されたばかりのYAKAMIHIME職員は現在、鳥取県の魅力や情報について勉強中。ユーザーから寄せられた質問に対し誤答を返してしまうこともあるようですが、AIの学習機能やスタッフのサポートにより成長していくことが予想されます。
中井氏 「生身の職員と違い24時間365日対応可能であること、英語での対応も可能で外国人からの問い合わせにも対応可能であることが強みです。最新技術の粋であるアバター職員を通じ、鳥取県に関心を抱いていただくきっかけになることを期待しています」
メタバース課設立に大きな反響
一見、唐突に見えた鳥取県とメタバースの組み合わせ。しかし新しいものに敏感でチャレンジ精神も旺盛な平井伸治知事の開拓精神と、地方創生をサポートするプロジェクトが融合した結果、順調な滑り出しが実現しました。現在、鳥取県にはどのような反響が寄せられているのでしょうか。
中井氏 「全国ニュースで大きく取り上げていただきましたので、想像以上の反響が寄せられました。正確な数字は把握しておりませんが、少なくとも3万人前後のネットユーザーが、インターネットやアプリを通じ、「YAKAMIHIME」との交流や、XANA上に立ち上げたメタバース空間「ご当地アトムNFT鳥取県ギャラリー」へ訪問していただいているようです。全国初の試みであったため試行錯誤もありましたが、鳥取県に関心を寄せてもらうという当初の目的を達成することができたのではないかと思っています。他の自治体からのお問い合わせも、少なからずあるんですよ。人事面や予算面など、詳細に渡って質問が寄せられたこともあり、皆様の関心の高さが伺えましたね」
今回は県外や都心に在住する若年層を中心に、鳥取県の存在をアピールする試みでしたが、県民からの反響がどのようなものであったのかも、気になるところです。
中井氏 「今回の新しい取り組みに対しては、概ね好意的な反響が寄せられています。若い層、そして鳥取県に関心を持たなかった新しい層とつながっていくためのPRツールと捉えていただき、上手に活用していただければと考えています。」
鳥取県メタバース課…今後の展開と課題
新規立ち上げからまだ数ヵ月程度の時間しか経過していない「鳥取県メタバース課」。現在のところはアバター職員・YAKAMIHIMEのキャラクターが先行していますが、今後はどのような展開を予定しているのでしょうか。
中井氏 「近いところではアバター職員の教育を推進し、より正確な観光情報を案内できるところまで高めていきたいです。またメタバース空間を利用し、鳥取県とつながりをもつ方々にアバターで交流できる拠点「バーチャルとっとり」などの整備も検討しています」
大きな注目を集めている鳥取県メタバース課。現在、鳥取県東京本部に在籍する数名のスタッフのみで運営していますが、今後はプラン実現のためのステップを地道に踏み続けていくことになりそうです。
まとめ
今回、自治体でいち早くメタバースに注目した、鳥取県の事例をご紹介しました。ほかの業界ではメタバース上に出店したり、デジタル資産の売買があったりと、日に日に活発な動きが報じられていますが、いよいよ観光プロモーションにおいても「メタバースの時代」と、胸を高鳴らせている人も多いでしょう。鳥取県メタバース課。これからどのような展開があるのか。先駆的な事例なだけに、これからの展開に注目が集まります。
関連情報
- 鳥取県メタバース課
- https://www.pref.tottori.lg.jp/309184.htm
- XANA
- https://xana.net/ja/