学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 コロナ禍における修学旅行の実態と実施に向けての対策とは

2021.09.10
国内プログラム
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チームワーク・協働力育成
中学・高校向け

新型コロナウイルス感染拡大で、昨年度は多くの学校にて修学旅行の延期や中止を余儀なくされました。2021年度は各校、感染状況を踏まえながら、なんとか実施できる道を模索しています。従来とは異なる対策・対応を求められる「コロナ禍での修学旅行」の実施状況、実施事例などについてご紹介します。

コロナ禍での修学旅行

写真はイメージです。

コロナ禍での実施状況

今年4月、文部科学省より「(修学旅行)実施にあたっては、感染防止策の事前指導や、児童生徒や同居する家族等の健康観察を徹底するとともに、感染状況を見極めながら、仮に当初の計画どおりの実施が難しい場合であっても、近距離での実施や旅行日程の短縮など実施方法の適切な変更・工夫について検討するようお願いします」という通達が出されました。

この通達もあって、「今年はなんとか生徒たちに思い出をつくらせてあげたい。かたちを変えてでも実施したい」という学校の声が多く聞かれました。その「かたちを変えてでも」の一例が、近隣を目的地とする「修学旅行のマイクロツーリズム化」※1です。コロナ禍前の2018年度は関西、首都圏、沖縄を目的地とする修学旅行が多かったのですが、2021年度は、出発地と同じエリアを目的地とする学校が確実に増えています(グラフ参照)。

※1「マイクロツーリズム」とは?
自宅から1時間の移動圏内の「地元」で観光する近距離旅行の形態のこと。特に、公共交通機関の利用を避けた自家用車による移動を中心とし、地域の魅力の再発見と地域経済への貢献を念頭に置いた旅行形態。コロナ禍により、3密を避けながら地元の方が近場で過ごす旅のスタイルとして注目されている。

「2021年度修学旅行はマイクロツーリズムが顕著に表れている」

2018年
2021年

(出発地別の目的地割比率一覧「2021年7月21日時点/JTB調べ)

例えば、岐阜県のある町立中学校では 「地元の魅力を再発見する機会」として、地元が力を入れる“航空産業”と、“ふるさと教育”を組み合わせた日帰り行事を修学旅行に替えて実施。岐阜かかみがはら航空宇宙博物館見学、地域航空会社によるチャーターフライトなどで地域産業に携わる人々とふれあい、地元への愛着を深める機会としました。また、青森県のある私立中学校では、感染者数の増加と移動手段の安全面などを考慮し、感染者の少ない近隣県(山形県、秋田県)に行き先を変更。秋田県大仙市の「大曲の花火」を担う花火職人に製作過程などを学び、オリジナルの打ち上げ花火で締めくくるといった修学旅行に替えました。

こうしたマイクロツーリズムは、修学旅行を受け入れていなかった自治体・観光地でも「地元や近隣の学校の生徒の思い出づくりに協力したい」と手を上げるようになり、広まってきました。またマイクロツーリズムの場合、陽性反応となっても保護者が迎えに行きやすいうえ、保健所を含めた緊急対応における連携もスムーズに行えるという利点があり、注目が高まっています。

このように、かたちを変えて修学旅行を実施した学校では、徹底した事前準備・感染対策を行っています。2020年3月~12月期間に実施された修学旅行での新型コロナウイルスの感染状況に関して、次のようなレポートがあります。「国内4社が同時期に取り扱った修学旅行で、参加者71万人のうち、新型コロナウイルスの感染が判明したのは30人。これは保健所および学校から旅行会社に報告があったものをまとめた数で、必ずしも修学旅行中の感染とは限らない。この数値が修学旅行の実施時に学校関係者や関係者の指導、それに基づく生徒たちの行動、観光事業者らの諸対策が感染防止の観点から一定の有効性があることを表す」というものです。

コロナ禍で修学旅行を実施するには

修学旅行を実施するにあたり、どのような対策・対応を行うべきか――2021年春に修学旅行を実施した学校での例を、㈱JTB 教育旅行名古屋支店・横道雄大に聞きました。

横道 雄大

横道 雄大

株式会社JTB 教育旅行名古屋支店

― 修学旅行の事前準備は何が必要?

コロナ禍では、行程、部屋割り、食事座席/移動時座席のレイアウトの感染対策はもちろん、万一陽性者が出た場合の対応、保護者説明会での想定問答など、あらゆる場面での対応法をシミュレーションしておくことが重要です。保護者および学校関係者の不安・疑問は、「この旅行は安全か?」に尽きますから、「ここではこのような対策をとっています/とります」と明文化した文書を用意し、共有しておくこと。私たち教育旅行名古屋支店の場合は、オリジナルの「新型コロナウイルス感染防止対策 旅行実施確認事項(マニュアル)」を作成し、校長先生や修学旅行担当の先生にお渡しし、保護者説明会の資料や「旅のしおり」に活用いただきました。「このマニュアルを見れば、様々な不安や疑問に応えられる」というものになっています。絶対に安全とは誰も言いきれないものの、保護者や生徒のあらゆる不安・疑問に答え(情報)が用意できていること――それが最も必要であることを、春の修学旅行実施の際に痛感しました。

― 修学旅行中に配慮したことは?

施設・設備でいえば、レストランや見学施設では収容人数の制限があることから、通常なら1回で済むところを2~3回転させるなど、時間の確保や場所の確保に相当配慮しました。また、出発当日を含めてどうしても集合しなくてはならない場合の3密回避も、様々な面からの配慮が必要でした。緊急事態宣言直前の修学旅行の際は、世間も敏感な時期にあったので、名古屋駅で集合した生徒を見た一般の方の「こんな時期なのに」というつぶやきが生徒の耳にも届いてしまいました。「密をなるべく避けて、私語を慎めば大丈夫だから」と、先生も私たちもフォローしましたが、生徒にとっては “コロナ禍における世間の見方、考え方”を肌で感じることとなりました。それが生徒にとって、良い体験か否かは判断が難しいものの、世情を知ることと、「何を行えば安全に旅行ができるか」を、少しでも感じてもらえる出来事だったと思います。

― 修学旅行を実施して

春の修学旅行は私自身、半年ぶりの添乗でした。生徒の喜ぶ様子、楽しそうな笑顔を見ることができて、「心から嬉しかったし、やりがいを感じた」というのが率直な感想です。生徒にとって修学旅行は、一生の思い出に残る体験ができる、かけがえのない機会。予想できない困難もあり得る時期ですが、交通機関やホテルなど様々なパートナーと協働しながら、生徒の安全を守るための施策を練り、修学旅行を実施いただける方向に進めていかなければならないと感じています。

修学旅行を実施した学校の感想

2021年春、修学旅行を実施した学校の先生に、実施後の感想をいただきました。

実施後の生徒からのアンケートで、9割以上の生徒から「楽しかった。満足した」との回答が得られ、難しい判断だったが実施して良かったです。
一般の方との接触がなるべくない行程、あるいは食事や入浴、ホテルでの感染症対策など、各所で細やかな配慮があり、安心できた。
保険関係(学校旅行総合保険等)のバックアップもあり、“コロナ禍に負けない条件”で修学旅行が実施でき、校内では感動と感謝が巻き起こっている!
コロナ禍で、何度も日程や旅行地の変更が必要で、例年の3倍以上の労力や決断力が求められた。しかし生徒にとって最高の修学旅行が実施できて、私たちも嬉しいかぎり。
緊急事態宣言延長下で実施を悩んだが、多角的視点から安心材料(各所の感染対策、保険等)を揃えてもらったことで、実施決断の後押しとなった。安心材料により、学校内、保護者、生徒の全者の理解を得られた。

費用面でのサポート

今後も緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などの発令はあり得るため、引き続き“修学旅行実施の判断自体がハードル”となることは否めません。その場合のキャンセル料のサポートなどの施策は、官民問わず新たなものが出始めています。

文部科学省では従前より、「新型コロナウイルス感染症の影響により修学旅行等を中止又は延期した場合に発生したキャンセル料等や、修学旅行等の実施にあたり、新型コロナウイルス感染症対応のために生じた追加的費用については、令和3年度においても、各自治体の判断により『新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(内閣府地方創生推進事務局)』の活用が可能」としています。自治体により判断は異なるものの、貸切バスの追加などの交通費にかかる費用、マスクや消毒液など生徒が利用する衛生用品の購入費などに交付金を活用した学校もあります。

また、保険会社と旅行会社提携による「新型コロナウイルス感染症対応 国内学校旅行キャンセル費用保険」や、陽性者が出た場合にかかる費用をサポートする「新型コロナウイルス感染症一時金特約付 国内旅行保険」など、コロナ禍の修学旅行のリスクを考慮したサービスが充実してきています。


まとめ

コロナ禍では、修学旅行のマイクロツーリズム化という潮流が高まりました。また、修学旅行で現地に行けない代わりに、VR技術を駆使した360度映像の“バーチャル修学旅行”体験や、目的地と教室をオンラインで繋ぎ、教室にいながら現地との交流や観光体験をするプログラムなどを導入する学校も増えています。はからずもコロナ禍で得られた、修学旅行におけるオンラインの活用は、事前・事後学習の強化やICT教育の促進につながるという意見も多く聞かれます。コロナ禍収束後も、この「リアル+オンライン」というハイブリッド化は、修学旅行の新たなかたちとして浸透していくかもしれません。

難しい判断を迫られるなかではありましたが、このようなかたちで修学旅行を実施したことにより、生徒が「新たな気づき」、「感謝の気持ち」といった「学び」を得たことは間違いなく、まさに「学びを止めない」実体験ができました。修学旅行は生徒にとって楽しい思い出づくりの場であると共に、多様なものの見方・考え方を働かせる「学びの場」です。“予測困難な時代”に、生徒が主体的に判断し、解決していく力を身につけていく実体験ができること、それが修学旅行の意義と言えるのではないでしょうか。

メッセージ動画「JTBが目指す修学旅行とは?」

昭和19年に始まったといわれる修学旅行。JTBグループはこれまで修学旅行の発展に積極的に関わってきました。コロナ禍で修学旅行の実施が難しい状況ですが、未来を担う子どもたちの夢の実現をサポートし続けます。修学旅行に携わるJTB社員、そして関係機関の皆さまの想いをメッセージ動画にしました。ぜひ、ご覧ください。


ホワイトペーパー(お役立ち資料) 国内修学旅行における新型コロナウイルス感染防止対策マニュアル(全29ページ)

 

このマニュアルは、観光庁や感染症専門医等の指導によって作成された旅行業ガイドライン、その他の関連機関・業界のガイドライン、および日本旅行業協会が作成した「旅行関連業における新型コロナウイルス対応ガイドラインに基づく国内修学旅行の手引き」を参考に、JTBにて旅行実施に向けた確認事項をまとめたものとなります。旅行中・旅行後の安全管理を徹底出来るよう作成しました。ぜひ、一度ご覧ください。

INDEX

  1. はじめに
  2. 旅行実施に向けた感染防止のための基本的な考え方
  3. 旅行実施前の準備
  4. 旅行中の感染防止対策
  5. 旅行中に疑わしい事象・発熱者が発生した場合の対応
  6. よくある質問
  7. コロナ対応保険

(付録)
・修学旅行 参加同意書
・お役立ちサイトまとめ

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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