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自治体・行政機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 持続可能な地域づくりの実現に、課題の可視化で旅行者との新しい関係を築く

2022.03.15
地域マネジメント
地域マーケティング
戦略策定

新型コロナの流行はデジタル化を加速させ、暮らしや働き方に大きな変化をもたらしました。感染症との共生を前提に諸課題を洗い出し、解決しながら持続可能な地域づくりと向き合うにはどのような工夫が必要なのでしょうか。本記事ではJTB総合研究所「旅と生活の未来地図 情報版」の最新号より、2022年の旅行市場のポイント整理と、今、国や自治体、企業の協働で盛んに取り組まれている「SDGs(持続可能な開発目標)」に関する意識調査から、旅行者との持続的な関係を築くために必要な視点を紹介します。SDGsに着目した地域づくりの事例を参考に、豊かな地域と暮らしを創るための具体策を考えてみませんか。

持続可能な地域づくり

2022年、今後の旅行・観光の展望は?

2021年は約9カ月間が大都市部を中心に緊急事態宣言などが継続的に発出され、海外旅行者数、訪日旅行者数(推計値)はともに前年割れになりました(日本政府観光局)。国内の延べ宿泊者数も前年割れでしたが、12月の日本人の延べ宿泊者数は、緊急事態宣言が全面的に解除されたこともあり、2019年のコロナ禍前を4%上回るという好調ぶりでした(観光庁  第1次速報値)。

2022年初頭はオミクロン株の猛威で36都道府県(2022年2月14日時点)にまん延防止等重点措置が発出され、本格的な旅行回復には厳しいスタートとなっています(図1)。

国内延べ宿泊者数と新規感染者数の推移
「『旅と生活の未来地図 情報版』(3月号)特集: 持続可能な地域づくりの実現に、課題の可視化で旅行者との新しい関係を築く」より

2022年1月の延べ宿泊者数の速報値は2019年比70%、2021年比では172.7%でした(観光庁)。今後はウイルスとの共生を前提に旅行回復の波に乗れるかがポイントです。また、物価上昇が旅行をはじめとする消費に影響を及ぼす恐れもあります。新型コロナの影響によるサプライチェーンの崩壊や物流の停滞、不安定な気候による作物の収穫減などにより、あらゆる商品の価格が上昇する傾向がみられます。家計の負担感が増すと旅行などの消費にまわす余裕がなくなってしまうため、需要喚起策により一定期間経済を回す必要があるかもしれません。なお、国際旅行(インバウンド・海外旅行)の動向は、ウイルス対策による出入国管理で左右されそうです。

SDGs(持続可能な開発目標)に対する旅行者の意識と行動

JTB総合研究所はSDGsに関する旅行者の意識調査を、日本および取り組みが進んでいる欧州のスウェーデン、ドイツの3カ国で実施しました。認知度は「知っている(詳しく知っている、17のゴールは知っているの合計)」はスウェーデン、日本、ドイツの順でした。しかし日本は重要性の認識や意識的な行動はいずれも最下位、他の2国と20ポイント前後の大きな差が出ました。

旅行・観光分野について最も重要だと考える17のゴール
出典:「『旅と生活の未来地図 情報版』(3月号)特集: 持続可能な地域づくりの実現に、課題の可視化で旅行者との新しい関係を築く」より

旅行体験から観光分野で最も重要だと考える17のゴールは、「気候変動に具体的な対策を」に回答が集まりました。しかし、「どれも重要と思わない」の回答について日本は13.5%と他より大幅に高い結果となっています(図11)。日本人は食品ロスの削減やレジ袋の受け取り辞退などの行動の実施率が旅行中は大幅に低下、「旅行中は考えたくない」という心理が高いことも分かりました。

旅行中にSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供側に希望すること
出典:「『旅と生活の未来地図 情報版』(3月号)特集: 持続可能な地域づくりの実現に、課題の可視化で旅行者との新しい関係を築く」より

「旅行に行く際にSDGsを意識するには、地域や旅行商品・サービスの提供側がどんな情報発信や推進活動をするといいか」という設問について、日本の旅行者は「個人が意識しなくとも、その地域の行動が自動的にSDGs推進になるしくみができている」「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサステナビリティについての取り組みが分かる」「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる」が上位でした。

他の2国は「世界的な認定機関から『持続可能な観光を推進する旅行先』としての認証がある」が高く、約半数を占めました。「利用する交通機関のCO₂排出量が検索できる」も日本に比べ高い結果となっています。

持続可能な地域づくりの先進事例

2021年、持続可能な観光地の国際的な認証団体「グリーン・デスティネーションズ(GD)」が毎年発表しているTOP100選に、日本は最多の12地域が選出されました。ここではその一つである熊本県阿蘇市の取り組みや、SDGsを取り入れながら地域課題の解決を目指す各地の先進事例を紹介します。

国際基準で持続可能性が評価された熊本県阿蘇市

火山活動でできたカルデラ内で多くの人々が生活を営む阿蘇市。阿蘇市の草原は「放牧」「採草」「野焼き」などの生活文化と密接に関わりながら千年以上にわたり維持されてきました。火山と裾野に広がる優美な草原が織りなす景観は多くの旅行者を魅了してきましたが、畜産業の低迷、後継者不足などによって草原利用は減少し、持続的な景観保全が課題となっていました。

阿蘇市では1999年から「野焼き支援ボランティア」を募るなど草原の保全・維持のためのさまざまな取り組みを継続しています。これに加え、現在では普段は一般の人が立ち入れない「入会地(いりあいち)」において草原アクティビティを実施することで、雇用創出や参加費の一部還元による維持再生活動につなげるほか、石灰消毒など防疫対策の徹底や絶滅危惧種の保護・保全を行うなど、景観保全と観光振興の両立に注力しています。

さらに、阿蘇ならではの自然や生活文化はアドベンチャーツーリズムに適していると考えられ、今後は周辺市町村や広域を含めたツアーの展開を視野に入れています。また、観光庁の「『新たな旅のスタイル』企業と地域によるモデル事業」を活用し、ワーケーションを行う企業の誘致にも取り組んでいます。

産学官金連携でサステナブル・タウンを目指す長野県大町市

「信濃おおまちみずのわプロジェクト」は、大町市が策定したSDGs未来都市計画「SDGs共創パートナーシップにより育む『水が生まれる信濃おおまち』サステナブル・タウン構想」の実現に向け発足したSDGsプロジェクトです。

市、サントリー、JTB、八十二銀行、大町商工会議所、市教育委員会が産学官金連携でプロジェクトを推進。企画に応じて賛同、参加する企業団体を「パートナー」、観光事業者や地元メディアほかを「サポーター」と定義し、市民を巻き込みながら100年先を見据えた「まち・ひと・しごとづくり」を目指しています。

地方創生の担い手を育成する志賀高原

上信越高原国立公園の一部であり、スキーリゾート地として有名な志賀高原は、グリーンシーズンの自然を生かし「自然と人間社会の共存」を学べる教育・企業向けコンテンツ「志賀高原× SDGs STUDY TOUR」を開発しました。「志賀高原ユネスコエコパーク環境学習プログラム」「農業体験」など、自然に親しむ全18のプログラムを自在に組み合わせることで質の高い教育機会を提供しています。

この取り組みは、グリーンシーズン稼働率の向上により地域に年間を通じた安定雇用を生み出すだけでなく、関係人口の増加や、SDGsの担い手となる若者たちが地方創生を促進する役割も包括的に担っています。


まとめ 旅行者と「共感」でつながる関係づくりのために

持続可能な地域づくりのためには、ただブランディングに走るのではなく、SDGsに取り組む側の思いが理解され、共感を呼ぶ説明を日ごろから続けることが重要です。日本の旅行者のニーズである「個人が意識しなくとも、その地域での行動が自動的にSDGs推進になるしくみ」の構築や「施設のサステナビリティについての取り組みが分かる」「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる」などの要素を取り入れ、持続可能な地域づくりの実現を目指してみてはいかがでしょうか。“ツーリズム”の力を最大化し、豊かな地域と暮らしを創るための情報とヒントは「旅と生活の未来地図 情報版」の最新号でご確認ください。


ホワイトペーパー(お役立ち資料)「旅と生活の未来地図 情報版」(3月号)特集: 持続可能な地域づくりの実現に、課題の可視化で旅行者との新しい関係を築く

新型コロナウイルスが世界的流行となり3年目に入りました。新型コロナは、既に進んでいたデジタル化による変化の速度をさらに上げ、暮らしや働き方に大きな影響を与えています。感染禍が長引いたことによる影響も見過ごせません。出生数減少の加速化、テレワークを発端とする人口移動や公共交通機関への影響、国際経済など、社会構造の変化につながる事象が散見されます。これからは、新型コロナとの共生を前提に、社会の諸課題を見出し、解決しながら持続可能な社会や地域のあり方について多面的に向き合うことになると考えられます。本号では、2022年の今後の旅行市場のポイントの整理とともに、JTB総合研究所によるSDGs(持続可能な開発目標)に関する意識調査について紹介します。

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