自治体SDGsとは、SDGsの17の目標を達成するために各自治体が取り組む活動です。この記事では、自治体がSDGsに取り組むメリットや、理解しておきたい内閣府の取り組みなどを解説します。具体的な自治体SDGsの事例も解説しますので、ぜひご覧ください。
INDEX
自治体SDGsとは?
SDGsの達成に向けた自治体の役割について、SDGsの考え方や目標を踏まえて解説します。
そもそもSDGsとは?
外務省は、SDGsについて以下のように定義しています。
「2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」
SDGsでは、2030年を年限とする17の国際目標が定められています。
引用:SDGsとは?|外務省
SDGsの17の国際目標
SDGsの17の国際目標は、以下のとおりです。
01貧困をなくそう
02飢餓をゼロに
03すべての人に健康と福祉を
04質の高い教育をみんなに
05ジェンダー平等を実現しよう
06安全な水とトイレを世界中に
07エネルギーをみんなにそしてクリーンに
08働きがいも経済成長も
09産業と技術革新の基盤をつくろう
10人や国の不平等をなくそう
11住み続けられるまちづくりを
12つくる責任つかう責任
13気候変動に具体的な対策を
14海の豊かさを守ろう
15陸の豊かさも守ろう
16平和と公正をすべての人に
17パートナーシップで目標を達成しよう
自治体SDGsでは、このような国際目標と照らし合わせた活動が求められます。
参考:持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割 | 外務省
SDGsの達成に向けた自治体の役割
自治体には、人々が安心して暮らせる環境や支援策を整備する役割が課せられています。自治体は、国と民間を取り次ぐ存在です。国は広い視野でSDGsに取り組む一方、自治体は、国のSDGsに関する意向と、地域住民の現状の両方を把握する必要があります。
自治体SDGsに取り組むメリット
自治体SDGsは、地方創生や地域の課題や魅力の発見につながる可能性があります。自治体SDGsに取り組むメリットを解説します。
メリット01地方創生につながる
地方創生とは、過疎化による地域経済の弱体化を回復しようとする試みです。少子化や都市部への人口流出を受け、近年は多くの自治体で過疎化が進行中です。
地方創生に成功すると、企業が誘致され地域経済の活性化に弾みがつきます。また、安全で暮らしやすい自治体になると、子育て世代に移住してもらえる可能性も高まります。
メリット02自治体の課題・魅力に気がつく
SDGsに取り組む自治体は多く、他の地域の活動を参考にすると、自分たちが暮らす地域の課題や魅力が際立ってきます。課題や魅力が明確になれば、安全で暮らしやすい地域づくりの施策を考えやすくなり、企業や子育て世代にアピールするポイントも見つけられます。
自治体SDGsの歴史
2015年の国際サミットでSDGsが採択されましたが、日本には以前から「環境モデル都市」や「環境未来都市」に関する構想がありました。
環境未来都市構想とSDGsの概念を組み合わせて誕生した取り組みが、近年の自治体SDGsです。以下では、環境モデル都市と環境未来都市について解説します。
環境モデル都市構想の概要
環境モデル都市構想とは、低炭素社会の実現による環境にやさしいまちづくりを目指すプロジェクトです。二酸化炭素などを含む温室効果ガスの排出量抑制など、低炭素社会への取り組みが評価された自治体が、環境モデル都市として選抜されました。
環境未来都市構想の概要
環境未来都市構想のコンセプトは、低炭素社会の実現に加え、超高齢化社会への対応や地域特有の課題の解消です。環境未来都市構想では、幅広い世代が生き生きと暮らせるまちづくりを目指しています。
環境モデル都市のなかでも高度な取り組みを実施する自治体が、2011年に環境未来都市として選定されました。
参考:地方創生SDGs・「環境未来都市」構想|内閣府地方創生推進事務局
参考:環境モデル都市と環境未来都市|内閣府地方創生推進事務局
自治体SDGsに関する内閣府の公募
自治体SDGsで地方創生を図るべく、内閣府は「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」を毎年公募しています。
公募01SDGs未来都市
SDGs未来都市とは、SDGsを意識した優れた取り組みを提案する自治体です。「経済」「社会」「環境」の3つの観点から練られたまちづくりの提案書と、ヒアリングの内容を基に、SDGs未来都市が決まります。
毎年約30都市(30自治体)が、SDGs未来都市には選ばれています。なお、2022年度のSDGs未来都市の公募はすでに終了しました。
公募02自治体SDGsモデル事業
SDGs未来都市のなかでも特に優れた取り組みは、自治体SDGsモデル事業に選定されます。自治体SDGsモデル事業には、毎年10の事業が選ばれます。SDGs未来都市と同じく、自治体SDGsモデル事業も2022年度の公募はすでに終了しました。
SDGs未来都市や自治体SDGsモデル事業に選ばれるメリット
自治体SDGsの取り組みが、上述した内閣府の公募に選ばれるメリットを解説します。
SDGs未来都市に選ばれるメリット
SDGs未来都市に選ばれると、メディアへの露出機会が増え、地域の特色や取り組みの方向性が世間に伝わります。企業や教育機関などを含むステークホルダーに注目されると、資金の援助を受けられる、企業誘致に成功するなど地域創生が活発になると考えられます。
自治体SDGsモデル事業に選ばれるメリット
自治体SDGsモデル事業に選ばれると、2,500万円を上限として補助金が交付されます。補助金があれば、自治体SDGsの内容を充実させることができます。
補助金の使い道の一例を、以下に示しました。
- モデル事業の詳細な計画策定
- ステークホルダーとの連携体制づくり
- モデル事業認知のための宣伝やイベント
- モデル事業の実行に向けた工事や設備導入
参考:2022 年度地方創生支援事業費補助金(地方公共団体における持続可能な開発目標の達成に向けた取組の推進事業)の取扱いについて(案)|内閣府地方創生推進室
【JTBグループの法人事業】SDGs自治体事例
JTBグループの法人事業が取り組む自治体SDGsについて、背景・課題・実施内容・導入効果・今後の展望などを解説します。
01 SDGs自治体事例京都府南山城村
京都府南山城村では、高齢者や運転免許を持たない人の移動が課題でした。また、新交通推進事業としてデマンド型交通「村タク」を考案するものの、財源を確保できていませんでした。
JTBグループの法人事業は、株式会社UYEKIに南山城村の「村タク」を紹介しました。そして、同社から「企業版ふるさと納税」を受けられたことで、事業を進行できました。
村タクの成功により、南山城村では移動手段を確保でき企業とのつながりも生まれました。株式会社UYEKIとしても社会貢献に取り組め、企業活動をPRできています。今後は、村タクの観光用途への展開も見込まれます。
02 SDGs自治体事例静岡県御殿場市
静岡県御殿場市では、誘客促進を目的として「ワーケーション」の受け入れに焦点を当てています。JTBグループの法人事業は、ワーケーションを受け入れたい自治体と企業のマッチングに取り組んでいます。今回は御殿場市にてワーケーションのモニターツアーを開催し、ワーケーションの体験と課題の明確化を図りました。
モニターツアーでは、参加者にウェアラブル端末を装着してもらい、ストレス値や睡眠スコアを計測しました。計測したデータを分析したところ、ワーケーションの効果を得るためには、定期的なリピートが重要との結果が得られています。
ワーケーションが定着すると地方創生につながり、企業としても柔軟な働き方を推進できると考えられます。
03 SDGs自治体事例東北被災3県「学びのプログラム」
東北被災3県には、東日本大震災の影響が近年も色濃く残っています。JTBグループの法人事業は、東北被災3県において、2011年から東日本大震災の被害や教訓を後生に伝える「学びのプログラム」を開発しました。
学びのプログラムは、希望者に現地を訪問してもらう体験型です。震災の経験を多くの人に伝えるために、「震災前」「震災直後」「未来図」を比較できるARアプリが使われました。また、災害に巻き込まれた経験を持つ「語り部ガイド」も採用されています。
プログラムは、災害の風化を防ぎ、首都圏直下型地震などの災害に対する備えの呼びかけにも成功しました。また、体験型のプログラムを選択したことで、被災地への支援にもつながっています。
まとめ
自治体SDGsへの取り組みは、地方創生や、地域の課題や魅力の発見につながります。また、活動が内閣府の公募に選ばれると、メディアへの露出が増える、補助金がもらえるなどのメリットがあります。
JTBグループの法人事業は、北九州市立大学地域創生学群と協業し、北九州市の教育旅行プログラムを開発しました。北九州市は、全国で初めて「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選ばれています。
プログラムの目的は、地域の「交流人口の増加」と「SDGs認知度の向上」への貢献です。プログラムを実施したことで、減少していた修学旅行生の増加や、次世代を担う若者にSDGsを自分事として考えてもらうきっかけになりました。
JTBグループの法人事業については、まず以下の資料をご覧ください。