学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 英語の授業で探究活動を実践!~新潟県立津南中等教育学校の挑戦~

2021.11.26
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2022年度から高等学校で本格始動する新学習指導要領の実施に向け、各教科・科目において様々な準備が進められています。英語ではこれまで以上に、読む・書く・聞く・話す(やりとり・発表)の4技能5領域をバランスよく育成することが重視されます。新潟県立津南中等教育学校の英語科・松井市子先生は、これらの力を兼ね備え、主体的に学ぶことのできる生徒を育てるため、英語の授業でも探究活動を取り入れています。具体的な取り組み内容についてお話を聞きました。

学校プロフィール

新潟県立津南中等教育学校

2006年設立の中高一貫校。『夢の実現』を教育方針に掲げ、ICTツールを積極的に活用しながら、地域と連携した探究活動や、ニュージーランドへの海外研修などを通して生徒の主体性、表現力を育んでいる。

生徒数
6学年合計約330名
所在地
新潟県津南町大字下船渡戊298番地1
ホームページ
https://tsunan-ss.jp/
新潟県立津南中等教育学校
松井市子先生
松井市子先生

総合的な探究の時間と足並みをそろえた英語の授業

― 御校が探究活動を行う背景を教えてください。

本校は、スクールポリシーと建学の精神からグランドデザインを構築し、SDGsを軸にした探究活動に力を注いでいます。学校全体のキーコンセプトは「『主体的な学び』と『徹底した地域連携』から『夢の実現』へ」です。新学習指導要領でも重視されていますが、本校においても「主体的な学び」を非常に重要な力として位置付けています。主体性を養う上で、生徒が課題意識を持って取り組む探究活動は非常に重要な取り組みですから、6年間を通じ、「総合的な探究の時間」だけでなく、教科の中でも取り組めるようにしたいと考えています。

― なぜ、英語で探究活動の実践が必要だと考えたのでしょうか。

当然ですが、英語は日本にいる限り日常的に使える環境ではありません。特に本校がおかれている山間部など外国人が少ない地域では、なかなか英語を話す機会がありません。そうなると、生徒たちにとっての英語への意識が、「教科の学習のための英語」「受験に必要な英語」となってしまいます。

英語は、便利なコミュニケーションツールです。「使えるものだ」と実感することが必要ですし、「使うことは楽しいんだ」「使うことで人の役に立てる」と気づける体験が必要です。その有効な機会となるのが、探究活動なのです。

― 6年間の英語のプログラムを教えてください。

6年間の到達度目標をCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を基に定めて、「Can-Doリスト(詳細はダウンロード資料に掲載)」を作成しています。1・2年生はシャドーイングや音読など基礎力を付け、3・4年生で海外研修があるのでそれを意識しながら読む・書く・聞く・話すの4技能をバランスよく育てていきます。5・6年生は、B2レベル(自立した言語使用者)を目指し、英語を通じて言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を身につけ、自分の考えなどを適切に伝えることとしています。

1・2年生で基礎を積み上げるため、3・4年生頃になると探究活動の取り組みが授業の中で増えます。この頃になると、インプットとアウトプットを1対1のバランスで行ない、毎授業、何かしらのタスクを設けています。

― 英語×総合的な探究の時間の実践例について教えてください。

英語科では、国連がSDGsを達成するために示した「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)」をベースに探究活動を進めています。ESDには、①思考コンピテンシー、②予測的コンピテンシー、③規範的コンピテンシー、④方略的コンピテンシー、⑤協働コンピテンシー、⑥クリテイカル思考コンピテンシー、⑦自己認識コンピテンシー、⑧統合された問題解決コンピテンシーという8つのコンピテンシーが示されています。5年生(高校2年生)では、生徒たちがこれらを津南の地域に置き換えて意訳する活動を行います。拙い表現だったとしても、自分たちでその言葉の意味を咀嚼して、表現していくことで理解が深まると考えています。

年度終わりに、そのキーコンピテンシーがどれくらい達成できたかという観点で「総合的な探究の時間」の自分の振り返りをします。また、このESDの解釈を学年ごとに更新していく取り組みも行っています。先輩の意訳を見た上で、自分たちはどう更新していくのかを検討しアップデートしていくのです。時代や地域の状況により合致した表現にすべく、継承する取り組みとして学びを重ねています。

生徒が意訳したESDコンピテンシーの日本語訳(例)

  • 規範能力:地域の成り立ちを理解し、ポジティブに地域づくりに関わる姿勢をはぐくもう!
  • 自己理解能力:地元の活性化や復興のために住民として何をすべきか考える能力
  • 未来を想像する能力:誰にとっても有益で実現可能な未来について一人一人が自分の意見を持ち、将来起こり得る変化(例:気候変動、人口減少)や、考えられるリスクや非常事態(例:災害、紛争、感染症の大流行)への対策・予防策をたてる。そして、それらについてシミュレーションを何度も繰り返しながらアイデアの具体性、現実性を高めていく能力

海外の生徒と日本や世界の課題を英語でディスカッション

― 海外研修はどのように変更したのでしょうか。

本校は4年生(高校1年生)のタイミングで、海外研修を行います。これまでは、ニュージーランドへ行き、現地の学校の授業を受けるというプログラムでした。しかし、授業を受けるだけであれば日本でもできます。そこで、探究型でニュージーランドの生徒たちと学び合うプログラムにしました。主体的に参加することで、「どうしてだろう?」「もっとうまく伝えるにはどうしたらよいかな?」と「?」を作っていくことを重視したのです。

― 実際にどのような学び合いを行ったのですか。

事前準備に1ヶ月半ほどかけ、留学生と自国のSDGsについて対話する機会を設け、暫定的に日本のSDGsの解決案を練り、海外研修に臨みました。Google Earthを使い、本校の地理的な位置づけがわかるような資料を作った上で、SDGsの課題と解決案を1グループごとに3~5分程度で英語で発表しました。

海外研修という刺激となる体験により、英語を学ぶ主体性を一層育むことができたと感じています。この体験を“点”のイベントで終わらせないために、事後の学習にも力を注ぎました。(詳細はダウンロード資料に掲載)

― 4年生での海外研修の体験はどう5・6年生の活動につなげていますか。

ニュージーランドの中高生とZoomでつなぎ、英語でコミュニケーションする機会を1ヶ月に1回程度48分授業でその30分を使って行っています。プロジェクトとして実施することもあれば、単元のまとめの際のアウトプットの場として設けることもあります。

防災について学んだ際には発表資料を作り、グループごとにブレイクアウトルームに分かれて、発表とフリーのディスカッションを行いました。私がブレイクアウトルームの状況をつぶさに把握することはできないので、生徒たちは主体的に英語でコミュニケーションを実施します。6年生(高校3年生)まで取り組みを積み重ねると、「30分では短いです」といった意見も聞かれるようになりました。

TT_学

― 取り組みを実施する上で大変なことはありませんか。

事前に両校の教員同士の打ち合わせが必要なのと、互いのICT環境を確認しておく必要はあります。海外の連携先学校を探す苦労を問われることもありますが、現在はコロナ禍でロックダウンされている国が多いため、海外の生徒たちも日本と交流できる機会を歓迎していると感じます。

つながる場所によっては、時差があってリアルタイムで対話できないこともあります。その際には、Fripgrid(フリップグリッド)というツールに動画を投稿しておき、それを見てレスポンスする活動としています。

ICTツールを活用して探究活動の時間を創出

― 授業の中で探究活動を行う時間を捻出するために工夫していることはありますか。

英作文の添削に「Write & Improve with Cambridge」というAI添削ツールを導入しました。ライティングの添削には、非常に時間がかかります。例えば、300語の文章を1クラス分添削すると、1日・2日はゆうに要していました。このツールを導入したことで、添削の時間を削減。他にも小テストをICTによる配信にして効率化するなどした結果、探究活動にかけられる時間が増加したと感じています。

1単元終えると、生徒はリテリングと文法の確認として30分程かけてライティングをします。それをWrite & Improve with Cambridgeで添削をかけて、指摘があった部分を生徒が書き直して精度を上げていくことを繰り返しています。アウトプットに対して即時フィードバックがあるので、主体的に文章を書く姿勢にもつながっていると考えています。

― 他にも指導の見直しをしていることはありますか。

最近、音読の活動をやめました。私自身は音読という学び方が好きですし、やめることに対して賛否があることもわかります。やめた理由は時間を捻出することもありますが、それよりも英語への捉え方をもっと多彩なものとしたかったからです。

音読はモデルとなる英語を提示することで、生徒に先入観を植え付けてしまうのではないかと思ったのです。この先入観により、生徒たちはネイティブスピーカーのように話さなければいけないという思いに駆られるかもしれませんし、英語を母語としない人たちを見落とした固定的なイメージで捉えてしまうかもしれません。グローバルに活躍するには色々な言葉に触れるべきですし、どれが正しいというメッセージはあまり発しない方がよいと考えたのです。現在は、生徒が真似したい英語をICTで聞いて発音するよう促しています。

コロナ禍で、改めてどのような英語教育の機会が必要なのかを考えるようになりました。時代や目の前の生徒によって授業は変わっていくものです。これからも主体的に学ぶ生徒を育てるために、どう英語力を養っていくか考え抜いていきたいと思っています。


まとめ

2022年度からの新学習指導要領実施に向け、「総合的な探究の時間」と教科・科目の授業をどう連携させればいいか?、探究型の授業にするための時間をどう捻出すればいいか?とお悩みの先生も多いのではないでしょうか?津南中等教育学校・英語科の挑戦はこうした疑問を解決するための大きなヒントになるでしょう。さらに具体的な取り組みをホワイトペーパー(お役立ち資料)にまとめましたので、是非ご覧ください。


ホワイトペーパー(お役立ち資料)【図解】学校事例レポート「英語の授業で実践する探究活動~新潟県立津南中等教育学校~」

新学習指導要領において、高校の英語は「英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」「論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」という科目構成になります。また、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の観点別評価も始まります。

英語の授業においてどうアウトプットに重きを置いた活動を促し、3観点を伸ばしていくかが今後の指導のポイントといえます。今回は津南中等教育学校への取材を基に、先生方の指導にお役立ていただける資料をまとめました。ぜひ、ご覧ください。

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