コロナ禍により、大学ではオンライン授業への移行を余儀なくされました。最初は慣れない授業形態に戸惑いを感じていた学生、そして教職員も多かったのではないでしょうか。さらに、コロナ禍は家庭や学生の経済状況にも影響を与えるなどさまざまな弊害をもたらしています。一方、オンライン授業に対する満足度は決して低いわけではなく、「授業形態の多様化」にメリットを感じている学生も多いです。その背景には、学生の学ぶ意欲に応える大学の姿勢、そして学生生活を支えるためのさまざまな取り組みがあったからだと考えられます。この記事では、コロナ禍における大学の授業形態の変化と、学生生活を支えるための取り組みについて紹介します。
コロナ禍での学生生活。学生はどんな状況に直面しているのか
ここでは、文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査(結果)」を参考に、学生がコロナ禍でどのような状況・課題に直面しているのかを探っていきます。
対面による学習機会の損失
同調査によると、2020年度後期授業の実施方針として「オンラインがほとんど・すべてだった(80%~100%)」と回答した学生は59.6%、「オンラインが多かった(50%~80%未満)」は19.9%でした。
出典:「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査(結果)」|文部科学省
従来とは異なる授業形態ではあるものの、満足度を見てみると「満足」とする学生は「13.8%」、「ある程度満足」43.1%という結果になっています。「自分の選んだ場所で授業を受けられた」ことや、「自分のペースで学習できた」という点にメリットを感じている学生も多く、オンラインならではの魅力があることもうかがえます。
ただし、レポートなどの課題が多くなることや、対面よりも理解しにくい、友人と一緒に授業を受けられないなどの不満も同調査では浮き彫りとなりました。
コロナ禍における経済的な悩み
同じく文部科学省の調査では、コロナ禍における学生の経済状況についても調べています。経済的な悩みを抱える学生は40.7%にまで上っており、学納金や生活費の支払いが困難であることや、学生生活を満足に送るための費用が不足しているなど、その悩みは深刻です。
その背景として、新型コロナウイルス感染拡大の影響により家庭の経済状況が変わったこと、アルバイトの勤務時間制限による収入減少などが考えられます。
交流機会や課外活動、イベント機会の損失
キャンパス内への入構に制限が掛かったことから、友人との交流機会が減少したことに悩みを抱える学生も多い状況です。特に入学したばかりの学部1年生でその傾向が強く、学内の友人関係に関して悩みを抱える学生は全体で29.1%であるものの、1年生のみの結果を見ると46.3%と半数近くにまで上ります。
部活・クラブ活動にも制限が掛かり、入学式が中止になったり大学祭などの各種イベントもオンラインに移行したりと、学生同士、あるいは学生と教職員の従来の交流機会は著しく減少しています。
コロナ禍で大学の授業はどう変わったのか?新しい学び・教育の形を紹介
コロナ禍ではオンラインを活用した授業が実施されるようになりましたが、その形態にはいくつかの種類があります。
同時双方(リアルタイム)型授業
Web会議システムなどを活用して、学生たちと教員がつながって授業をリアルタイムで実施する方法です。対面による講義に近い形で授業を受けられるだけでなく、学生側も発言ができるため、ディスカッションやプレゼンテーションなども行えます。
オンデマンド型授業
講義を録画した映像や授業で使う資料や課題などを、教員がクラウド上にアップロードします。学生は期日までにその動画や資料をダウンロードして学習。好きなタイミングで学習を進められたり、繰り返し講義を視聴したりできるメリットがあります。
ハイブリッド型授業(ブレンド型)
ハイブリッド型授業とは、授業の内容や目的に合わせて対面とオンラインを選択する授業形態で、大きく「ブレンド型」と「ハイフレックス型」に分かれます。さらに「ブレンド型」にも次のような種類があります。
反転授業
オンデマンド型授業でまずは学習し、その後対面でディスカッションや個別指導などを行う授業形態です。
分散型授業
最初に学生をグループに分けます。一つのグループは対面で、もう一方のグループはオンラインで受講。そして次回の授業では対面とオンラインを交代していく方法です。
ハイブリッド型授業(ハイフレックス型)
ハイブリッド型授業の「ハイフレックス型」では、対面授業を実施し、その授業を同時にオンラインでも配信。学生はどちらの方法で授業を受けるか選択できます。
従来通りの対面授業への完全移行が難しい状況だとしても、対面とオンラインを組み合わせることで、学生には新たな選択肢も生まれました。このように、大学では制限のある中でさまざまな授業形態を柔軟に取り入れて、学生の学ぶ意欲に応えようとしています。
コロナ禍における学生支援など、大学の取り組みを紹介
学生の学ぶ意欲に応えるのはもちろん、学生生活を送るうえで必要なサポートも大学は実施しています。ここでは、学生と教職員を支援するさまざまな取り組みを紹介します。
対面授業再開・施設利用にあたっての取り組み
コロナ禍では授業形態の主流がオンラインに移行しましたが、学生がキャンパスに足を運ぶケースも多くあります。さらに2021年度後期には対面授業再開に向けて各大学が動き出している中、どのような取り組みが行われているのでしょうか。
キャンパス内の濃厚接触者を特定するシステムの導入
学生がキャンパスに来て各施設を利用することを踏まえて、学生が教室やフリースペースのどこに着席したかを管理できるシステムを導入している大学もあります。これは陽性者が出た場合に濃厚接触者を迅速に特定するためのもので、早期の検査や二次感染リスク低減につながるシステムです。
関連ソリューション
経済面で悩みを抱える学生への支援
コロナ禍の影響によりアルバイト収入が減少するなど、経済面で不安や悩みを抱える学生を支援する取り組みも各大学で行われています。
経済的に困窮する学生へ「食」のサポートを実施
経済面で悩みを抱える学生の中には食費を抑えている人も多く、大学によっては学食の無料チケットを配付したり、食材を提供したりといった支援を実施。企業や行政へ協力を呼びかけるなど、地域と連携した取り組みを行っている大学もあります。
支援金の給付・授業料減免
経済的な理由によって生活が困窮した学生のために、支援金を給付したり授業料を減免したりしているケースもあります。ほかにもオンライン授業の実施にあたってパソコンを貸し出すなど、学生の負担を軽減するさまざまな取り組みが行われています。
オンラインを活用したコミュニケーションの場を提供
入構制限や課外活動の制限などにより、学生同士、または教職員同士が顔を合わせて交流する機会も減少してしまった昨今。各大学では交流機会をつくるための取り組みも活発に行われています。
オンライン交流会・イベントの実施
交流会をオンライン上で実施している大学も多くあります。新入生同士が悩みを共有して横のつながりを作る場としたり、国際交流の場であったりと、その内容は実にさまざまです。ほかにも、参加者が協力し合ってクリアを目指すゲームを活用するなど、学生たちが楽しみながら一体感を得られるように取り組んでいるケースもあります。
関連ソリューション
教職員のコミュニケーション課題の解決
コロナ禍を経て、大学でもテレワークが導入されています。そのため、例年に比べて教職員もキャンパスへ足を運ぶ機会が減少しているのではないでしょうか。テレワーク環境を整えるため、パソコンの貸し出しやWeb会議システムの導入はもちろん、学会をオンライン上で開催するなど、教職員をサポートするためのさまざまな取り組みもあります。
まとめ
コロナ禍の影響により、従来通りの学びの場、交流の場を提供することが難しい状況が続いています。しかしそのような状況だからこそ、大学は学生や教職員のために何ができるのかを真摯に考え、あらゆる取り組みを実施してきました。その結果、新しい学びの形や交流の形が生まれ、そこに大きなメリットを見出している人も多いのではないでしょうか。
コロナ禍をきっかけに、今後さらに新しいことを取り入れ、変化していくことを大学は求められているのかもしれません。今回紹介した大学の取り組みを参考に、ぜひ学生や教職員が抱える悩みや課題を解決するためのヒントにしてみてください。
INDEX
- 職域接種事務局業務 ・・・ P.3
- 奨学金関連業務・給付金業務 ・・・ P.4
- 留学実施に関わる事務局業務 ・・・ P.5
- 留学時における危機管理業務 ・・・ P.6
- 外国人留学生の入国支援業務 ・・・ P.7
- 海外事務所開設・運営業務 ・・・ P.8
- オンライン学会事務局業務 ・・・ P.9
- 大学地方入試運営業務 ・・・ P.10