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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 「日本の未来を背負って立つ若者に何ができるか」が出発点。企業における新たな社会貢献のかたち

2022.08.05
ミーティング・イベント
会議・イベント運営

三井不動産株式会社様が創立80周年事業の一環として、日本橋地域にある中央区立常盤小学校の6年生を対象に、カンボジア、シンガポール、ドイツの3か国とオンラインでつながる「常盤小学校国際交流プログラム」を開催しました。日本橋地域を活性化させ、地域と未来を担う子どもたちに貢献したいという想いからスタートし、地域貢献の新たなかたちとして参加者から高評を得た取り組みのご紹介です。

企業情報・プロフィール

企業紹介

企業名
三井不動産株式会社
企業サイト
https://www.mitsuifudosan.co.jp/
所在地
東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
従業員数
1,898名(2022年3月31日現在)
木下豪介氏

取材に応じてくださった方

木下豪介氏

三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部

未来を担う子どもたちに学び考える体験を提供したい

今回お話を伺ったのは、6年ほど前から日本橋街づくり推進部に所属し、日本橋の街全体をプロモーションしてきた木下豪介氏。ご自身も小学生のお子さんがいらっしゃるということで、「せっかく開催できるのだから、学校では教えてもらえないことを学べる場にしたい」とテーマにこだわり、何度も打ち合わせを重ねたそうです。企画の立ち上げから当日の様子、今後の展望など、さまざまなお話を伺いました。

― まずは今回のオンライン国際交流授業が開催された背景を教えてください。

木下氏

「地域貢献」というと上から目線に聞こえてしまいますが、そうではなく、20年、30年後、日本の未来を背負って立つ若い人たちに向けて何ができるかを企業として考えたいと思ったところが出発点です。昨年、三井不動産株式会社は創立80周年を迎え、周年記念事業の一環としてやってみようと。日頃から日本橋街づくり推進部の活動で交流があったこともあり、中央区立常盤小学校に打診したところ快諾していただけました。

「災害とともに生きる」をテーマに、天災・人災について考えるイベントの一つとして開催したのが「常盤小学校国際交流プログラム」ですが、並行して進めていたのが、「リジェネラティブ・アーバニズム展」です。東日本大震災から11年を経た今、自然災害をふまえた上で次世代に向けて人間の住む都市の環境をどう整えていくかといった内容の展示で、3週間で終わってしまうのはもったいないなと。できればキャラバンして世界中の人に日本でこういった展示をやっていることを知って欲しい、バーチャルトリップのようなかたちで発信することができないかと考えていたんです。その中で、自然災害と紛争や飢餓などの災害の2つのテーマに分けて、一つは研究として展示で、もう一つは地域の子どもたちと一緒にやろうと、企画を考える中で変化していきました。

子どもたちに向けた企画だからこそクオリティにこだわりたい

― 今回のプログラムが立ち上がったきっかけの一つに、JTBが開発した「SDGsバーチャルキャンプ」があったとお聞きしました。

木下氏

以前、テレビで「SDGsバーチャルキャンプ」が紹介されていたのを見て興味を持ちました。コロナ禍で海外旅行ができない状況の中、単純に「旅って楽しいね」ということだけではなく教育的要素も組み込まれていて、なおかつ現地にいった気分にもなれる。JTBさんからアイデアをいただければ、子どもたちに向けた質の良いプログラムができるのではないかというイメージがすぐに湧きました。

今までやったことのない取り組みということで、クオリティ面で不安な部分があったのですが、JTBさんは世界中にブランチがあるのでさまざまな知見がありますよね。子ども向けだからといって質の低いものは提供できないので、安心感があるJTBさんと一緒にやらせていただきたいと思ったんです。

SDGsバーチャルキャンプ

イベント当日のプログラム

JTB小林(営業担当)

「SDGsバーチャルキャンプ」をもとに、今回の目的に沿うように相談を重ね、アレンジをしました。

小学生の理解力という点を重視し、結果的にテーマは①貧困(カンボジア)②多様性(シンガポール)③平和学習(ドイツ)となりました。

子どもたちにとってよりリアルな体験となるよう、映像を流すだけではなく、ライブ中継をはさむ、会話のキャッチボールを入れる、小学生向けにわかりやすくしてもらうなどの工夫をしました。

1日目

「SALASUSUオンラインスタディツアー」(カンボジア)

SALASUSUは、「ものづくりを通したひとづくり」を活動コンセプトに活動するNPO法人。ものづくりの現場やトレーニングを通じて、経済的・家庭的に困難な背景をもつ女性たちがライフスキルを身に付け、自分らしい人生を切り開いていけるようにサポートしている。スタディツアーでは、SALASUSUの活動紹介、作り手のインタビュー、現地の工房の様子などを通して、SALASUSUで働く人々について学んでいく。

2日目

「シンガポールバーチャルツアー」

シンガポールバーチャルツアー

シンガポールの有名観光地をクイズを交えながら体験するプログラム。楽しく、わかりやすくシンガポールについて知ることができる。

「オンラインでつなぐホームビジット体験」(シンガポール)

オンラインでつなぐホームビジット体験

旅行などに行きづらい状況の中、シンガポールの家庭へ遊びにいったような体験ができるプログラム。地元の人々の住宅事情や多民族社会の背景など、社会課題に当事者意識を持って取り組める。

「ドイツ国際平和村視察ドイツ在住日本人職員によるレクチャー」

ドイツ国際平和村
写真提供:ドイツ国際平和村
ドイツ国際平和村

アフリカ・アジアの紛争地域の子どもたち(2歳~11歳中心)をケアするドイツのボランティア組織「ドイツ国際平和村」の活動を知るプログラム。世界の現実に目を向け、自分たちが日々の中でできることは何かを考える。

「学校では教えてくれないようなこと」を考えたい

― 実施する内容については、どのように作り上げていかれたのでしょうか?

木下氏

三井不動産と常盤小学校の先生方、JTBさんの3者で協議させていただきました。私個人としては、せっかく開催できるのだから、学校では教えてくれないような内容にしたいという思いが強かったです。今回、プログラムに入れ込んだ宗教や紛争は、片側から見れば正義、片側から見れば悪となることもある。学校では取り扱いにくいテーマだからこそ、この機会に考えて欲しいと思いました。例えば、シンガポールは多民族国家で、文化や伝統、宗教が混在する中で共存しています。現地の人から実際に話を聞くことで、視野がさらに広がっていくのではないかなと。学校側と幾度となくコミュニケーションを重ねていくうちに、我々に安心して任せていただけるような雰囲気になっていきました。

また、今回の対象は6年生ということで、子どもたちが「そんなこと知ってるよ」と思われてしまうテーマではもったいないなとも思いました。中学校に進学する、大人の階段を上る今だからこそ知っておいて欲しいことを取り上げたかったんです。2日目のドイツ国際平和村のレクチャーの中では、世界で起こる紛争問題も取り上げました。今回お話していただいた現地の日本人スタッフの方は、中学生くらいのときにドイツ国際平和村の存在を知り、「平和に貢献できる活動をしたい」と今の職に就いたそうです。その話から、「もしかしたら将来自分の仕事になるかもしれない」ということを肌で感じたのではないかなと思います。平和に貢献する仕事をして欲しいということではなく、知ることによってやりたいことが見えてくる可能性があることを、臨場感を持って感じてもらえたのではないかなと思います。

― 実際に「このような仕事に就きたい」といった感想もあったそうですね。子どもたちにとって有意義な「生きた授業」になったのだなと感じました。さまざまなイベントに規制がかかる中、実現させるために大変だったことはありましたか?

木下氏
この2年間、軒並みイベントは中止となり、地域で何かやりたいと思いながらもできず悶々としていたので、この企画はなんとか実現させたいという思いがありました。もちろん緊急事態宣言が出たら中止せざるを得ないとは思っていましたが、常盤小学校のみなさんも「ぜひやりましょう」というマインドだったので、大変だったことは特になく、私たちはとにかく感染対策を徹底して、児童のみなさんも親御さんも安心して来ていただけるようにしただけです。
名橋 日本橋橋洗い
重要文化財「日本橋」で行われる「名橋 日本橋橋洗い」の様子

日本橋街づくり事業推進部が行う、「日本橋再生計画」には「産業創造」「界隈創生」「水都再生」「地域共生」の4つのテーマがあり、今回の常盤小学校との取り組みは、「地域とともに生きましょう」という「地域共生」活動のうちの一つです。普段から沿道に花を植えたり、川の清掃活動をしたり、7月の日本橋の恒例行事「橋洗い」で日本橋の橋を洗ったりと、地域のみなさんとは年がら年中コミュニケーションを取っていたこともあり、すでに信頼関係が築けていたことも大きかったと思います。

「やって良かったね」だけでは終わらないイベントにしたい

当日の会場の様子。大きなスクリーンに海外との中継を映し出しました。

― 今回のプログラム内容や当日の様子について教えてください。

木下氏

素晴らしい内容だと思いました。1日目では、カンボジアの方との交流の中で「シャワーがない」という話があって、「シャワーがないの!?」と子どもたちがとても驚いていたんです。自分たちの暮らしは当たり前ではないということを感じるだけでも、何かしらの「気づき」のきっかけになったのではないでしょうか。事前学習の内容も良かったと思います。宿題を用意したJTBさんも素晴らしいとは思いますが、取り組んでくれた子どもたちがさらに素晴らしいですよね。みなさんきちんと学習してきてくれていて、とても驚かされました。

実は私、当日の子どもたちの様子に結構感動してしまい、うるうるする場面が何度かありました。最後に挨拶をしてくれた代表の女の子の「ありがとう」という言葉に「こちらこそありがとう」という気持ちになったことを覚えています。みなさん本当に真剣に取り組んでくれていて、非常に嬉しかったです。

もし継続的にやるのであれば、次はロシアとウクライナの戦争などについても触れたいと思っています。なぜ戦争は起こるのか、どうすれば停まる可能性があるのか、今回の取り組む姿を見ていたら、常盤小の6年生なら議論できると思いました。取り扱うテーマについてはとことんこだわって、答えは出ないかもしれない「問い」を生み出していくことは大事だと思っています。

当日の会場の様子。シンガポールとドイツのお菓子を用意し、真剣な交流体験の合間に、お菓子でも異文化体験を楽しんでもらいました。

― 今回はドイツとの時差の関係で、終了時間が遅くなることもあり、2日目は親御さんにも参加していただいたそうですね。

木下氏
時間外になってしまうからお呼びしようという偶然の産物ではあったのですが、一緒に参加していただけて良かったと思っています。その場で感じて考えることももちろん大切ですが、家庭に持ち帰って学びから得たことを自分の言葉で語ることで、「やって良かったね」だけでは終わらないイベントとして昇華できたのではないかなと思っています。

未来の人材を地域ぐるみで育成していきたい

― 全体を通して、特に印象に残っていることを教えてください。

木下氏
あの最後に挨拶をしてくれた女の子の話が印象的でしたね。
JTB小林(営業担当)
そうですね、「私もこういう仕事につきたい」と明言していましたね。今回、イベントの前に将来の夢をそれぞれ聞いていて、その子は「人助けがしたい」という思いはありつつもざっくりしたイメージしかなく、自分の夢が何か少し悩んでいたそうなんです。それが今回のイベントに参加したことにより、少しかたちが見えてきたそうです。先生方からも、「キャリア教育の意味合いでも有意義だった」という感想をいただきました。
木下氏
飢餓や紛争があるという事実を知って欲しかっただけなのに、そこから社会に貢献するためにさまざまな活動をしている人が世界にいて、「こんな仕事もあるんだ」と気づいてくれた子がいました。彼女がその仕事に就くかはまだわかりませんが、我々の期待以上に伝わっていることが実感できて、とても嬉しかったです。

― 子どもだから手を抜かないという木下様の信念が伝わったのではないかなと思いました。

木下氏
私にも小学5年生の子どもがいるので、学んで欲しいこと、知って欲しいことのちょっと上を狙いたいと思ったんです。子どもは私たちが「まだ早いよ」と思うようなことでも、意外に理解できるんですよね。来年、もし開催できるのであれば、JTBさんから今回以上の素晴らしいご提案をいただけるのではないかと期待しています(笑)。

― 今後も継続して実施する予定はあるのでしょうか?

木下氏

今回はたまたま創立80周年記念事業として実施できましたが、80周年がなかったらできていなかったかもしれません。お金も労力もかかるので、あまりサステナブルな企画ではないのかなと(笑)。ただ、お金をかけたから良いものになるということでもないと思うんです。

日本橋の良いところは、企業や住民、昔から商売をしている百年企業のみなさんが一体となって街づくりをしているところです。「地域の子どもをみんなで見守ろう」という、『三丁目の夕日』の世界のような感覚でつながっている部分が大きいと思います。日本橋は企業と地域住民の関係性が近い、珍しい地域なので、持続可能なかたちで今回のような企画が続けばいいなと思っています。私たち以外にも多くの企業がありますから、今回の取り組みを知って「いいな」と思ったら大いにまねしてもらって、未来の人材を地域ぐるみでともに育成していけたらいいなと。中央区には常盤小以外にもいくつか小学校はありますから、他の小学校でも開催できるといいですよね。子どもたちの未来を一緒に応援していきましょう。


まとめ

今回は、三井不動産株式会社様が創業80周年記念事業として開催した「常盤小学校国際交流プログラム」を通して、地域貢献の新しいかたちをご紹介しました。「子どもたちに広い世界を見せたい、SDGsや多様性などの深いテーマを考えて欲しい」という担当の方の想いを実現できた今回の事例。この記事が、企業における地域貢献活動の参考になれば幸いです。

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