リモートワークによる働き方が進む中で「ワーケーション」という働き方が注目を集めています。この記事では、企業の総務人事部門における各種施策の立案・企画者および決裁者向けに、ワーケーションが人気の理由や、メリット・デメリットなどについて網羅的に解説します。ワーケーションについて深く理解いただける内容になっているため、ぜひ参考にしてください。
ワーケーションとは
ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語です。たとえば自宅以外の場所、観光地や帰省などの休暇先でリモートワークを行うことをいいます。リモートワークとの違いは自宅やカフェで行うのではなく、旅行先で仕事するという点にあります。仕事と休暇という、一見すると相反するものが両立している点は、非常におもしろい取り組みであるといえるでしょう。
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なぜワーケーションが人気なのか
ワーケーションが人気の理由は以下の2点があげられます。
- 生産性アップ
- 旅行先に長期滞在可能
それぞれについて以下で解説します。
生産性アップ
リゾート地や観光地など、普段とは違った場所で休暇を取りながら仕事をすることで、生産性が高まります。脳科学的にも人間は普段と違った場所で過ごすことで、脳が活性化されることがわかっています。これを場所ニューロンと呼びます。普段とは場所を変えて気分転換しながら仕事をすることは、ストレスの軽減や意欲向上につながるのです。
旅行先に長期滞在可能
たとえば仕事の状況により、長期休暇が取りにくい場合もあるでしょう。そんなときでも、ワーケーションなら旅行先に長期滞在することができます。旅行先で仕事ができれば、長期滞在も可能です。
そのため、仕事が忙しくて短い期間しか旅行に行けないといった不満やストレスもなくなります。
ワーケーション・テレワークに対する国の取り組み
ワーケーションやテレワークの普及は、政府が力を入れて取り組んでいる施策です。たとえば環境省はワーケーションの取り組みに対して、補助金の支給を決定しています。その他、内閣府や観光庁なども含め、国をあげて積極的にワーケーションの普及に動いています。令和3年には「沖縄テレワーク推進事業補助金」を交付するなど、ワーケーションの普及促進に力を入れています。
また旅館やキャンプ場でもワーケーションができるように、Wi-Fi環境の設備やコワーキングスペースの整備などの支援も行っています。こうした取り組みにより、今後はさらにワーケーションを取り入れる企業が多くなることが予想されています。
ワーケーションのメリット
ワーケーションのメリットは以下のようなものがあります。
- 人事採用のアピールポイントにつながる
- 社員満足度があがる
- 有給取得率があがる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
人事採用のアピールポイントにつながる
ワーケーションを企業の働き方に取り入れることで、人事採用のアピールポイントにつながります。なぜなら、働き方改革でテレワークを導入している企業はすでに数多くありますが、その一方でワーケーションを導入している企業はまだ少ないからです。昨今では働き方の内容を重視している学生も多くいます。そのため、ワーケーションの導入は人事採用のアピールポイントになるのです。
社員満足度があがる
ワーケーションを取り入れることで社員満足度があがります。その理由は、ワーケーションでは仕事をしながら休暇も取れるため、リフレッシュにつながるからです。普段とは違う環境で気分転換しながら仕事をすることで生産性が高まったり、良いアイデアも浮かびやすくなります。
その結果、会社に対しての社員満足度があがり、社員一人ひとりのモチベーションも向上します。また、リフレッシュしながら仕事ができることでストレスも軽減され、精神衛生面でも良い影響があるでしょう。
有給取得率があがる
旅行先に滞在しながら仕事ができることは、ワーケーションにおける最大のメリットです。有給休暇を使うことで滞在期間を延ばせるような仕組みを整えると、ワーケーション先でゆっくりしたり、観光旅行を楽しみたいという社員も増えるでしょう。そのため、社員の有給取得率向上が見込めます。結果的に企業全体の有給取得率が上がるため、社外に優良企業であることをアピールできるでしょう。このように、ワーケーションは有給取得率にも関係してくるのです。
ワーケーションのデメリット
一方、ワーケーションには以下のデメリットもあります。
- 仕事ができる環境が整っていない場合もある
- 仕事とプライベートの境目をつけにくい
- リモートワークが苦手な人には不向き
それぞれについて解説していきます。
仕事ができる環境が整っていない場合もある
ワーケーション先を選んだはいいものの、仕事ができる環境が整っていない場合があります。たとえば、Wi-Fi環境がない、机や椅子が揃っていないなどが考えられます。このような場所では、そもそも仕事をすることは困難です。
またWi-Fiがあったとしても、電波が悪かったり、場所が業務に向いていなかったりすることもあります。このような場合は、ワーケーション中に仕事をしていて余計なストレスを生む結果になりかねません。
仕事とプライベートの境目をつけにくい
ワーケーションは、仕事とプライベートの境目をつけにくいというデメリットもあります。そのため、仕事は仕事で集中して行い、プライベートはプライベートで楽しみたいという人にとっては、ワーケーションは不向きかもしれません。しかし、一度はワーケーションを経験してみて、自分にあっているのかどうか確かめてみるのがおすすめです。コロナ禍のテレワークも、意外に出来てしまったという人が多いからです。
リモートワークが苦手な人には不向き
ワーケーションは基本的にリモートワークで行います。そのため、会社に出勤しないと仕事モードにならないという人や、遠隔で仕事をするリモートワークスタイルが苦手な人は、そもそもワーケーションに向いていないかもしれません。他にも、個室にこもって仕事をした方が作業が捗るという人にとっても、あまり向いていない働き方かもしれません。逆に旅行先での仕事にストレスを感じてしまうかもしれません。
ワーケーションが向いている職種
ワーケーションに向く職種として、創造的なひらめきが必要な企画職などがあげられます。場所を変えることでいいアイデアが生まれることがあるためおすすめです。アイデアに煮詰まったときでも、旅先のカフェでゆっくりしたり、普段とは違う人とふれあったりすることで創造性が豊かになります。気分を変えることでひらめきが生まれ、良い企画が思いつくこともあるでしょう。
また、普段からPCで作業するIT関係の仕事もワーケーションに向いています。リモートワークが主になるエンジニアやマーケター、ライターなど、WEB関連や制作に携わる職種の人の中には、すでにワーケーションを行っている人も多いです。
職種や業種によって仕事の進め方は異なりますが、ワーケーションを行う場合はスケジュール管理をしっかりと行うことが大切になります。
ワーケーションに必要な環境
ワーケーションに必要な環境は以下のとおりです。
- Wi-Fi環境
- 観光資源
- 机、椅子
- 家族の滞在施設
それぞれ解説します。
Wi-Fi環境
Wi-Fi環境は旅行先や観光地で作業するために必須のため、ワーケーションを行うために欠かせない条件です。スマートフォンのテザリングやポケットWi-Fiでも代替できますが、電波が不安定になる可能性もあります。特にオンラインミーティングを行う場合は、電波が不安定だと仕事にならないため注意が必要です。
観光資源
ワーケーションの魅力はなんと言っても観光先のキレイな景色や温泉、食、アクティビティです。そのため、リフレッシュにつながる観光資源が豊かなところを選ぶことがポイントです。ワーケーション向けのプランを用意している自治体もありますので、各自治体のHPを確認してみてください。
机、椅子
リモートワークを行うためには、基本的に机と椅子がないとできません。しっかりした設備が整っているのか事前に調べておきましょう。ベッドやソファで仕事ができない訳ではありませんが、長時間作業すると疲れが蓄積してしまいます。そのため、仕事に適した机と椅子があるかどうかを事前に確認して、ワーケーション先を選んでください。
家族同行でも仕事ができる環境
ワーケーション先に長期滞在することになると、家族を同行させたいと考える人も多くいます。しかし、家族が一緒だと仕事に集中できない可能性もあります。特にお子さんを同行させる場合は、一緒の空間では仕事に集中できないこともあるでしょう。その場合は仕事ができる環境を家族が滞在する施設とは別に確保するなどの準備も必要です。
まとめ
昨今、多くの企業で働き方改革が推進され、新しい働き方が導入されています。ワーケーションも注目の働き方の一つです。そこで今回は、ワーケーションのメリット・デメリットとともに、向いている職種、必要な環境についてご紹介しました。ワーケーションは、社員のモチベーションと企業の生産性を向上させるだけではなく、人事採用にも良い効果が期待できます。一方、ワーケーションに向かない社員がいるのも事実です。働き方が多様化するこれからの時代、企業は社員に対して多くの選択肢を用意する必要があります。ワーケーションもその一つです。まだまだ経験した人が少ないのが実情です。貴社でもまずはワーケーションを体験してみて、本格導入を検討してみてはいかがでしょうか。