2024年春に開業された北陸新幹線延伸を機に、福井県越前市では地域活性化への期待が高まっています。しかし、その実現には、ハード面の整備に加え、地域に新たな人の流れを生み出すソフト面の施策が不可欠でした。
この課題に対し、JTBは、越前たけふ駅周辺のまちづくりをリードする戸田建設様、先進テクノロジーで社会課題解決に取り組む富士通様との共創機会を設け、地域の魅力を熟知する越前市観光協会と共に『ECHIZENクエスト』と名付けた体験型観光ツアーを企画。富士通様のNFT(※)技術を活用し、地域独自の文化体験とデジタル要素を融合させることで、新たな交流人口の創出と地域経済の活性化を目指すプロジェクトを立ち上げました。
本事例では、企業と地域がどのように従来の観光の枠を超えた地域創生を実現したのか、その全貌をご紹介します。

NFT:Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。改ざんや偽造が難しいブロックチェーン技術によって発行される代替不可能なトークンであり、所有権の識別と追跡が改ざん困難な形で可能となる点が大きな特徴の1つ。その唯一無二性を生かし、本取り組みでは各観光客の支援金/体験証明のトークン化に活用。
- 背景
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福井県越前市では、2024年春の北陸新幹線延伸に伴い、越前たけふ駅周辺の開発が進められています。戸田建設様は2021年に越前市と官民連携協定を締結し、駅周辺エリアでのスマートシティ構想の推進に参画し、地域と共創するまちづくりを進めてきました。その中で、地域住民や観光客の潜在的ニーズを把握すると同時に、新たな需要を創出し、地域経済を活性化する取り組みとして、スマートフォンを利用したアンケートや周遊・消費行動の把握など、様々なデータ取得と活用方法を模索してきました。
一方、JTBが企業に提供する経営人材育成プログラム『GSP(GLOCAL Sustainable Project)』に参加していた富士通様は、2024年に越前市を舞台としたプログラムを通じて、地域の伝統文化と課題に触れ、同社の先進技術であるNFTを活用した地域活性化事業を提案しました。しかし、越前市は豊かな伝統文化資源を持つものの、これらを活用した新たな観光体験の創出や、先進技術を取り入れた施策には、企画力や資金面で課題がありました。
このような状況の中、JTBは、地域と企業の架け橋となるべく、戸田建設様のスマートシティ構想と、富士通様のNFT活用事業、これらを越前市の地域活性化に結びつけました。そしてこの地域活性化のプロジェクトを『ECHIZENクエスト』と名付け、その実現に向けた共創のスキーム構築に着手しました。
- 課題
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戸田建設様:地域と共創し、地域経済を活性化するための具体策
昨年度までの取り組みから、滞在需要を創造することが、今後の施策のひとつと捉えていた一方で、地域に訪れた人の滞在・宿泊を促すためには、地域の特色を活かした魅力的なコンテンツや仕組みづくりなど、ソフト面での施策が必要でした。ハード面の整備だけでは、地域経済の活性化につながらないという課題意識もありました。
富士通様:先進技術の『地域課題解決』への応用と実証機会
NFTという先進技術を地域活性化に活用するアイデアはあったものの、その実証には地域の理解と協力、そして資金が必要でした。単独での事業化にはハードルがあり、具体的な実証の場を求めていました。
- 実施内容
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JTBによる『共創』スキームの構築
戸田建設様と富士通様、各社のビジョンを共有し、共創へと導く架け橋としての役割を担いました。
伝統文化とデジタル技術を融合した体験型ツアー
越前市・鯖江市・越前町の体験工房と連携し、越前和紙、越前打刃物、越前箪笥、越前漆器、越前焼、眼鏡、繊維などの伝統工芸やモノづくりを巡る体験型ツアー『ECHIZENクエスト』はプロジェクトの核となりました。
このツアーには、富士通様のNFT技術を導入しました。参加者は越前市にゆかりのある紫式部が描かれたNFTコインを受け取ります。このNFTは観光体験の証としての意味を持ち、地域への支援やお土産との交換が可能な仕組みを組み込みました。ツアー終了後には特別な称号コインが付与されるなど、デジタル要素が旅の思い出をより豊かにします。

多角的な集客戦略
ツアー参加者の募集には、在日外国人コミュニティを抱える総合情報サイト、地域の観光情報を発信する越前市観光協会様、そして地域に根ざす旅行会社と連携。幅広い層からの参加を促すため、多様なチャネルを通じて情報発信を行いました。

- 導入効果
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戸田建設様の地域との共創と、地域経済の活性化の具現化に貢献
戸田建設様が、地域に訪れた人の滞在・宿泊需要の創出と促進のための打ち手を模索される中で、JTBは、具体的な体験型ツアーと先進技術を組み合わせた、魅力的なコンテンツと仕組みを提供することができました。これにより、観光を起点に地域経済の活性化に向けた第一歩になりました。
富士通様の先進技術『NFT』の地域活性化への応用と実証
富士通様は、NFT技術を地域活性化の文脈で実証する機会を得ました。参加者がNFTコインをチップとして利用する仕組みは、地域経済への直接的な貢献に加え、伝統文化体験にデジタル要素を加えることで、新たな顧客層へのアプローチを可能にしました。将来的には、このトークンが伝統文化保存への寄付スキームや地域通貨として発展する期待も高まっています。
- お客様の声
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戸田建設株式会社 スマートシティ事業推進部
松本 様福井県越前市では越前たけふ駅前での建設事業を起点に関わる中で、伝統技術と先端テクノロジーが共存するものづくりの産地であることに、可能性を感じていました。
今回のように伝統工芸を資源にした観光コンテンツを、旅行商品として造成から販売まで、自社だけでは成し得ない実証を、JTB様・富士通様・越前市観光協会様との連携だからこそ実現できました。観光を起点にした地域経済の活性化から、持続可能なまちづくりに向けて、実感のある一歩を踏み出せたと思っています。富士通株式会社 リテール&サービス事業本部
井上 様訪日外国人向けの本技術の提供は当社としても初の試みとなっており、実際にツアー参加者の方々に興味をもってご利用いただけるかが未知数でした。JTB様のご助力もあり、ツアーのアクティビティとして組み込んでいただくことで、ツアー参加者の方全員にご利用いただくことができ、そこから今後の発展に向けた貴重なフィードバックを得ることができました。
今後は本取り組みを元とした、本技術のより効果的な活用に向けて、JTB様と検討を続けていく予定です。(一社)越前市観光協会 上城戸 様
越前市観光協会では、越前市及びその周辺地域の自然、景観、文化、歴史、産業、技術などの資源を活用し、観光の振興を図ることにより、交流人口の増加及び越前市のブランド力向上を目指し、様々な活動に取り組んできました。
現行の越前市観光振興プランでは、「手仕事」の価値を活かした、文化・観光・経済の好循環をビジョンと設定しています。
今回民間企業と連携し、実際に「手仕事」に関するツアーを実施し様々な角度から検証や議論ができたことは、ビジョン達成に向けた有意義な取り組みになったと感じています。
ECHIZENクエスト参加者(訪日旅行者)
- 福井の伝統工芸に触れる体験は、想像以上に奥深く、職人さんの情熱に感動しました。 NFTコインを活用した新しい試みも興味深かったです。
- ガイドの方の丁寧な説明と地元の方々との交流を通じて、福井の文化に深く触れることができ、日本をより身近に感じられる機会となりました。今度は家族や友人を連れて再訪し、この素晴らしい体験を共有したいです。
- 福井といえば、恐竜博物館や東尋坊のイメージでしたが、伝統工芸と新しい発想が共存しているのは新たな発見でした。過密な観光地を避けつつ、日本の伝統工芸を楽しみたい人には魅力的に映ると思います。
- JTBならではのポイント
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『共創モデル』の確立と地域創生への貢献
JTBは、単なる旅行手配会社に留まらず、異業種の企業と地域を結び、新たな価値を創造する『共創パートナー』として地域交流を支えています。このモデルは、地域が抱える複雑な課題に対し、多様なステークホルダーの知見とリソースを結集することで、持続可能な地域創生を実現できる可能性を示しています。
私自身も北陸出身者として当事者意識を持ちながら進めた今回の企画は、地域の伝統産業が先端技術と出会い、新しい価値を創り上げるということがコンセプトでした。
越前市の皆様、並びに実現に向けてご尽力いただいた戸田建設様、富士通様に改めて深く感謝申し上げます。
地域課題という一つの目的に向かい、各企業の想いと強みを繋ぎ合わせることで、全く新しいシナジーを生み出す、JTBはその場になれればと常々考えています。
今回の事例は、こうした理念を持つJTBのプロジェクト『GSP(GLOCAL Sustainable Project)』から生まれました。
この取り組みを一つの原動力に、『つなぐ・つくる・つなげる』JTBとして、引き続き日本全体での活性化に貢献して参ります。