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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 【WEBセミナーレポート】カゴメの“生き方改革”とは?イノベーティブな組織作りのカギは「EVP」にあり

2021.01.15
生産性向上
HR(Human Resources)
従業員満足(ES)向上

新型コロナウイルスの流行は経済秩序だけでなく、企業で働く1人ひとりの価値観をも変化させました。ビジネスのあり方やモチベーションを維持する職場環境の整備など、迅速に対応すべきことがたくさんある中で、まずは何から取り組むべきでしょうか。

企業の将来を担う人財に対して、自社で働くことの実感価値、すなわちEVP(従業員価値提案)を高めていくことが今後重要になります。今回は、JTBが実施したオンラインセミナー「働き方の多様性が進む時代、EVP発想でイキイキ社員を作るには!」で講演されたカゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)有沢正人氏のお話から、同社が取り組む人事戦略の事例と従業員から選ばれる組織づくりの最新キーワード「EVP」についてお伝えします。

オンラインセミナー開催概要

セミナー名
働き方の多様性が進む時代、EVP発想でイキイキ社員を作るには!
日時
2020年12月10日(木) 16:00~17:00
主催者
株式会社JTB
対象者
経営層・人事総務・経営企画部門担当者、働き方改革の施策について興味のある事業者様

登壇者と講演テーマ

第1部
毎年進化するカゴメの“生き方改革”とこれからの人事制度の在り方
~“ジョブ型人事”への移行と経営に資する未来人材の育成~
カゴメ株式会社 常務執行役員Chief Human Resource Officer(最高人事責任者) 有沢 正人氏
第2部
企業が従業員に選ばれる時代、企業と従業員を結ぶキーワード…EVP
株式会社JTB  グループコーポレート執行役員 経営戦略本部 副本部長 事業開発担当 上田 泰志

働きやすさを推進する柔軟性のある取り組みと抜本的な改革

まず、カゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)有沢正人氏から、働き方改革の考え方、人財育成の取り組みについて解説していただきました。

カゴメグループが考える「生き方改革」とは

会社視点での働き方改革×従業員視点での暮らし方改革=生き方改革の推進

2012年頃のカゴメは典型的な年功序列・終身雇用が根強い企業で、社内にてイノベーションが起きにくい環境でした。人事担当としてさまざまな企業でグローバル基準の評価制度や職務等級制度を導入してきた有沢氏が、カゴメの中でまずメスを入れたのが、「働き方の多様性を重視する意識改革」です。

従業員の生産性向上に向けた働き方改革には、働く時間や場所、キャリアプランなどを従業員が自由にカスタマイズできるような制度を企業側が用意することが必要です。さらに、個人の暮らし方にも目を向け、QOL をどこまで高められるかも同時に見直さなくては、本当の意味での働き方改革にはなりません。企業に属するすべての人がイキイキと働くためには、企業における“働き方改革”と、個人における“暮らし方改革”この2つを同時に推進することが、「生き方改革」に直結します。生き方改革とは、会社で使いすぎていた時間を個人に振り向けてより充実した人生を過ごす、カゴメが考える理想の生き方です。

どこでどうやって働きたいかを尊重するカゴメの施策

持続的に成長できる「強いカゴメ」を作るためには、ダイバーシティ推進は必須です。異なる価値観を持つ人財が多様な視点を活かし機能させることで、社内にイノベーションが生まれるからです。従業員が能力を存分に発揮できる環境を整えるには、ソフト面(相互理解や尊重の土壌づくり)とハード面(制度・仕組みの整備)で施策を同時に行うことが求められます。カゴメが実践した人財育成のための取り組みを6つ紹介します。

  1. スケジューラ―を活用した総労働時間の見える化
  2. スーパーフレックスの採用
  3. 転勤回避制度のオプション「地域カード」
  4. テレワーク勤務制度
  5. 副業制度
  6. 個人の得意分野でキャリア形成できるスペシャリストコースの新設

「地域カード」は、退職理由として多い配偶者との同居と育児と仕事の両立を叶えるオプションとして新設されました。個人のライフスタイルの変化に合わせて、転勤を回避できたり、逆に希望勤務地へ移動できたりと個人の働く場所を自分が決められる仕組みです。全従業員を対象に、3年×2回の利用が可能です。

 
地域カード説明図
 

人事制度改革は「トップから変えていく」が正解

旧来の人事制度を廃し、グローバルな職務等級を中心としたジョブ型の人事制度を導入・構築するために、有沢氏はグローバル人事グループを2013年4月に新設しました。

新たな人事制度は、従業員一人ひとりが望むキャリアを自分で選択するテーラーメイド型で、世界中どこで働いても公平な基準で評価されることを目指しました。人事制度改訂のポイントは、Pay for job (年功型から職務型等級制度への移行)、Pay for Performance(より業績/評価と連動した報酬制度への改革) 、Pay for differentiation(メリハリを付けた明確な処遇の実現)という3つのPです。日本企業特有の年功的要素を排除し、ダイバーシティな働き方と適材適所に人財を配置していくことを実現します。

新しい人事制度の導入を成功に導くには、「企業のトップから行うこと」が重要だと有沢氏は話します。人事制度の改革を社内に通達すると、「不利益な変更だ」と考える人が一定数います。こうした経営層も含んだ人事制度改革は、大半がネガティブな反応を示しますが、グローバル化を目指し、積極的に人事制度を推進していくトップの揺るぎない意志と本気度を見せることで、全従業員の意思統一を図ることができます。

2013年から、「取締役評価・報酬制度」を施行。会社が変わっていくことを実感させるため、新しい人事制度の導入と同時にトップと役員の報酬を大幅に見直しました。固定報酬80%、変動報酬20%だった会長と社長の報酬をどちらも50%にしました。

上からの改革を推進したのち、課長以上の管理職向け職務評価指標を構築しました。職務の大きさと市場価値を考慮したグローバルジョブグレードは12等級。8項目の評価結果から職務の大きさを算出し、各ポジションを格付けします。これは全世界共通の評価制度で、世界中に関連会社を持つカゴメグループのさらなるグローバル展開、ダイバーシティの対応力、適正人財の配置に非常に有効な施策です。

従業員のキャリア成長と自律的な生き方改革をサポートするHRBP制度

大々的な人事制度改革のベースにある生き方改革の推進に欠かせないのが、「HRBP(HRビジネスパートナー)」です。カゴメグループでは3年前から「HRBP制度」を導入。現在、営業担当、生産調達担当、本部担当の3人のHRビジネスパートナーが活動しています。

戦略人事を実現するHRBPとは?

HRBP(Human Resource Business Partnerの略)は、経営戦略のもと、効果的な人財構成や配置、人事戦略を策定し、人と組織をサポートするビジネスパートナーのことです。新たな人事のあり方として注目されています。

カゴメグループにおけるHRビジネスパートナーの役割は、個人の自律的成長を促すと同時に、現場の人事課題を明確化し課題を解決していくことです。一般的に人事担当は、デスクワークをしている印象ですが、HRビジネスパートナーは現場に行って、キャリアについて従業員1人ひとりと面談をします。「こんな仕事をしたい」「こんなキャリアを目指したい」を現場から吸い上げ、企業の事業戦略とマッチした人財配置を促し、イキイキと働けるキャリアを自ら考えるカルチャーを醸成する重要な役割を担っています。

対面コミュニケーションが必須なポジションなので、現場の声や人事課題を熟知する人、信頼感があって寄り添える人でないと務まらない仕事と言えます。3人のHRビジネスパートナーは全員が現場経験者であり、カゴメグループの人財育成を任せたいと、有沢氏が自らヘッドハンティングしました。今後は、CDP(career development program)という従業員育成プログラムも取り組み、従業員のキャリア育成支援をさらに加速させていく構想を持っています。


【まとめ】カゴメの取り組みはこれからの時代に必要なEVPそのもの

第2部では、株式会社JTB上田よりEVPを高めることの重要性とその方法についてお伝えしました。

カゴメが取り組むグローバル基準の人事評価制度の導入は、多様な働き方を尊重し、年功的要素を排除することで、企業と従業員それぞれの「市場価値」の向上と理想的な働き方を実現するものです。この取り組みは、従業員が納得してその企業で働く価値=EVPに通じると言えるでしょう。

コロナ禍をきっかけに、従業員が企業で働く価値、企業が従業員に求めるパフォーマンスの考え方が大きく変わりつつあります。雇用の維持と事業成長、従業員が働きやすい環境の構築を実現するにはEVPの向上がカギを握るといっても過言ではありません。

イキイキと自律的に輝き続けたいと願う従業員は、1人ひとりのキャリア形成に向き合ってくれる企業を選びます。EVPの取り組みは、従業員のハピネスと企業・組織のサクセスを同時に叶える、“これからの時代を生き抜くカギ”となるはずです。「組織のマネジメントに悩んでいる」という経営者・人事ご担当の方は、EVPを高める施策を提案するパートナー企業にご相談してみてはいかがでしょうか?


ホワイトペーパー(お役立ち資料)EVP経営のすすめ ~人事管理から人的資源管理、そして人的資本経営へ~

持続的な成長を遂げていくためのカギは、『イキイキと自律的に輝き続ける従業員に選ばれる企業へと変革すること』です。そんな今注目の「EVP」。「自社ならではの体験価値」を意識したEVP経営により、エンゲージメント向上に取り組むことで、採用難・定着難の時代も乗り越える、そのための必読書です。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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