販売促進は、単なる「売るための手法」ではなく、「お客さまがいまその商品を選ぶ理由」を設計する活動です。どんなに良い商品でも、知られなければ売れず、選ばれる理由がなければ手に取ってもらえません。だからこそ販売促進は、企業にとって欠かせない役割を担っています。
その一方で、いざ担当になったときに、「何から始めればいいの?」と戸惑う方も少なくありません。この記事では、販売促進の基本から目的・代表的な手法、そして最新のトレンドや成功のポイントまでを、順を追って分かりやすく解説します。初めての方でも安心して取り組める内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

販売促進(販促)とは?―「選ばれる理由」をつくる活動

販売促進(販促)は、商品やサービスをただ宣伝するだけではなく、「お客さまが今選ぶ理由をつくること」を目的とした活動です。
値引きやキャンペーンといった施策に限らず、認知を広げ、興味を持ってもらい、購入という行動につなげるまでの流れ全体を指します。
市場の競争が激しく、商品の差別化が難しくなった今、販促は単なる売上対策ではなく、顧客との関係性を築く戦略的な役割を担うようになっています。
販売促進の3つの目的:新規獲得・顧客単価向上・リピート化

販売促進の施策は多様ですが、目的は「新規獲得」「顧客単価の向上」「リピート・ファン化」のいずれかに結びつきます。まずは、それぞれの目的に合わせた代表的な販促手法と実践のポイントを紹介します。
新規顧客獲得のための販促手法
新規顧客の獲得では、まず商品やサービスの存在を知ってもらい、興味を持った人が初めて購入するまでの流れをつくることが大切です。
Web広告やSNSで認知を広げ、サンプリングや無料体験で「試してみてもいいかも」というきっかけをつくります。さらに、初回限定の特典や紹介キャンペーンなどで購入を後押しし、最初の一歩につなげます。
顧客単価向上を実現する販促手法
顧客単価の向上は、既存のお客さまに「より良いものを、もう一品」と感じてもらうことから始まります。具体的には、ワンランク上のプランやサービスを提案する「アップセル」や、一緒に使うと便利な商品をあわせて紹介する「クロスセル」といった手法を活用し、関連商品や上位商品を自然に提案します。
あわせてまとめ買い特典や数量限定、特別仕様などへ誘導することで、満足度を損なわずに購入金額を高めることができます。
リピート購入を増やすための販促手法
リピート購入を増やす施策は、「またここで買いたい」と思ってもらえる関係づくりが軸になります。
ポイントプログラムや会員限定特典で継続利用のメリットを感じてもらい、購入後のフォローや好みに合わせたコミュニケーションによって信頼と愛着を深めていきます。
マーケティング・広告・営業との違いを理解する

販売促進の役割を正しく理解するには、マーケティングや広告、営業との違いを把握しておく必要があります。ここでは、それぞれの位置づけの違いを整理しておきましょう。
マーケティングとの違い
マーケティングは、市場調査・商品開発・価格設定・販路づくりなど、「売れる仕組み全体」を設計する広い概念です。その中で販売促進は、顧客の関心を「実際の行動」へと変える部分を担当します。
広告のように「知ってもらう」段階でもなく、営業のように「売り込む」段階でもありません。言い換えると、販売促進は「買う理由をつくる役割」を果たす部分です。マーケティング全体の中でも、売上に直結しやすいフェーズを担います。
広告との違い
広告は、商品やブランドの存在を知ってもらい、「ちょっと気になる」という状態をつくる役割です。一方、販売促進はその「次の一歩」を担当します。
つまり「買おうか迷っている人」に、具体的な行動のきっかけをつくるのが販促です。
クーポン、キャンペーン、体験イベントなど、「今選ぶ理由」を与える施策が中心になります。
広告が「知る/気になる」をつくり、販売促進が「やってみる/買ってみる」につなげる。こうした役割分担を理解しておくと、自分がどの段階を担当しているのかが見えやすくなり、施策の選択もスムーズになります。
営業との違い
営業は、顧客と直接向き合い、提案・交渉を通じて契約を獲得する活動です。一方、販売促進はその前段階で、営業が成果を出しやすいように 「売りやすい状況をつくる役割」を担います。
具体的には、
- 興味を持った見込み顧客を増やす
- 営業が提案しやすい環境や材料(キャンペーン/体験/資料など)を準備する
- 「今選ぶ理由」を明確にしておく
といった動きが中心になります。
営業が成果を出すための「土台づくり」を行うのが販売促進です。この関係性を押さえておけば、強化すべきポイントや自分の立ち位置がより明確になります。
「モノ」から「忘れられない体験」へ戦略を深化させる
「値引きしても反応が薄い」「SNSで話題になる施策が作れない」——そんな課題の背景には、「体験価値」 へのシフトがあります。価格や景品だけでは選ばれにくい時代となり、消費の価値基準は「モノ」から「体験」へ移りつつあります。ここでは、なぜ体験価値が販促の鍵になるのかを解説します。
なぜ「体験価値(コト消費)」が重要なのか?
価格や機能で差がつきづらい市場では、購買の決め手は「心が動くかどうか」にあります。
たとえば、似た商品が並ぶ中で「なんとなくこれを選んだ」経験は誰にでもあります。そのなんとなくの裏側にあるのが、顧客自身も言語化できない「本音=インサイト」です。
この「本音=インサイト」を捉え、その期待に応える体験を提供することで、商品は単なる選択肢から「記憶に残るブランド」へと変わります。
体験価値とは、購買のきっかけではなく、選ばれ続ける理由そのものになってきているのです。
体験は「アイデア」だけでは作れない
SNSなどのメディアで話題になる企画は、見た目のアイデアだけで成立しているように見えますが、実際は「どんな体験を、どんな流れで、どう届けるか」まで設計して初めて形になります。
さらに
- 会場準備
- 人員・導線設計
- オンライン連携
- リスクや法規制の確認
など、裏側には多くの実務が必要です。「アイデアが良いのに実行で失敗する」のは、ここが整っていないことが原因であるケースが少なくありません。体験価値は「設計力」と「現場力」の両方がそろってこそ顧客に届きます。
成功の鍵は「アイデア」と「実行力」の両立―パートナーシップの重要性
革新的な体験を形にするほど、裏側には多くの調整や実務が発生します。企画内容を運営に落とし込み、場所・人員・安全管理・法規制などを整えるには、経験と実行力が欠かせません。
実際、「いい企画なのに実施が難しく見送られる」ケースは珍しくありません。だからこそ、自社だけで完結できない部分は、信頼できるパートナーと連携することが、体験価値を成功に導く大きな鍵となります。
オンラインとリアルをつなげて「体験を広げる」販促トレンド

体験価値を高めるだけでは、売上や成果にはつながりません。重要なのは、その体験を 「どこで知ってもらい」「どう届け」「どう広げていくか」 という導線を設計することです。
オンラインとオフラインを組み合わせると、体験の熱量をより多くの顧客に波及できます。ここでは、そのために押さえておきたいポイントを解説します。
オンライン販促 ― 「体験のきっかけ」を生み出す
まずは「知ってもらう」こと。その入り口を広げるのがオンラインの役割です。SNSやWeb広告で興味のきっかけをつくり、サイトや予約フォームへの導線を整えることで、体験の第一歩を促します。
最近では、参加型キャンペーンやUGC(ユーザー投稿)など、共感や拡散を生む仕掛けも重要になっています。
オフライン販促 ― 「リアルな体験」でブランドを好きになってもらう
店頭イベント、試食・試乗会、展示会など、実際に商品に触れられる場は、記憶や感情に残りやすい体験を生み出します。リアルな体験は「迷っている人の背中を押す」強い力を持っています。
「買わせる」よりも「感じてもらう」「共感してもらう」ことを優先し、五感で体験できる時間を提供することで、ブランドへの愛着や信頼につなげましょう。
オンライン×オフラインの連動 ― 「体験が広がる好循環」を設計する
SNSで知り、現地で体験し、その感想をまたSNSで共有する。こうした体験の循環をつくると、販促は点ではなく面へと広がります。
重要なのは、オンラインとオフラインを「別の施策」と捉えず、ひとつの体験としてつなげることです。体験イベントやサービスの予約・参加・共有・フォローが途切れず連動する導線を組み立てれば、体験の熱量が自然に広がります。
成功のカギは「体験を支える仕組み」と「人の理解」
どれだけデータを集めても、体験するのは常に「人」です。人が何に驚き、どこで心が動くのかを理解し、その感情を支えるオペレーションや人員体制まで整えられるかが成果を左右します。
現場を熟知したパートナーと連携することで、参加者の心理や動きを踏まえた細やかな設計ができ、感情まで届く体験に磨きがかかります。
【BtoB・BtoC別】販売促進のアプローチ

法人向けと個人向けでは、購買の流れも意思決定のポイントもまったく異なります。 この記事では主にBtoC商材を扱う企業の販促を想定していますが、企業によってはBtoBと併存するケースも少なくありません。その場合、「どちらに向けた施策なのか」を最初に整理するだけで、難しく見える販促の考え方が一気に分かりやすくなります。
ここでは、それぞれに合った基本アプローチを紹介します。
BtoC ― 感情が購買を動かす「瞬間勝負の販促」
BtoCでは、消費者は商品を「論理」ではなく「感情」で選ぶことがよくあります。「欲しいと思った瞬間」にどう寄り添えるかが鍵になります。
具体的には、季節・流行・SNSの共感など、感情に響く体験やストーリー設計が効果的です。同時に、価格だけに頼るのではなく、ブランドの世界観や体験価値で「このブランドが好き」をつくることが、長く選ばれるためのポイントです。
BtoB ― 合理性と信頼で選ばれる「長期戦の販促」
BtoBでは、担当者だけでなく上司や経営層など複数の意思決定者が関わります。そのため、「なぜ導入すべきか」を論理的に説明できる材料が欠かせません。
導入後の成果イメージ、サポート体制、実績、リスク管理など、 「長く安心して取引できる相手かどうか」が判断材料になります。そのためには、継続的な情報提供や関係構築が大切です。
販売促進を企画・実行するための3ステップ

体験価値を軸にした販促を成功させるには、思いつきではなく、筋道だった進め方が必要です。ここでは、迷わず取り組めるよう、企画から実行までの流れを3つのステップに整理しました。「何から手をつければいいのか」 が分かる実践的なフレームです。
STEP1 顧客インサイトを掘り下げ、目的(KGI/KPI)を定める
販促は、いきなり「どんな施策をやるか」から考えるのではありません。まずは、「お客さまはなぜそれを欲しいと思うのか?」という気持ちの部分=インサイトを理解することがスタートです。
表面的なニーズではなく、
- 不便に感じていること
- 本当はこうしたいと思っていること
- 無意識の期待や不満
といった「心の奥にある本音」を捉えることを意識しましょう。そのうえで、
- どの状態をゴールとするのか(KGI)
- 進捗をどうはかるか(KPI)
を定めれば、施策の成功条件が明確になり、迷わず判断できるようになります。
STEP2 体験価値を核に、アイデアと手法を組み立てる
STEP1で見えたインサイトをもとに、「顧客の心に残る体験」を起点にアイデアを作ります。ここで大切なのは、まず「体験」があり、その後に「施策の手段」があるという順序です。
- どの場面で体験してもらうのか
- オンラインとオフラインをどう組み合わせるか
- 誰にどのタイミングで届けるのが最も響くか
といった要素を整理しながら、企画全体を設計していきましょう。「どんな体験を、誰に、いつ届けるか」。これがこのステップの本質です。
STEP3 実行計画の構築から効果測定、そして次への資産蓄積まで
企画がまとまったら、
- スケジュール
- 役割分担
- 必要なリソース確保
- リスク対策
といった実行の土台を整えて進めます。
施策後はKPIをもとに成果を振り返り、上手くいった点や改善点を明確にし、社内で共有しましょう。実践して終わりではなく、次の販促に生かせる「知識と仕組み」として蓄積することが重要です。
記憶に残る体験価値を生み出す販促アイデア

ここでは、企業が実際に活用できる体験型の販促アイデアを3つ紹介します。
体験そのものをギフトとして贈る
モノではなく「体験」を贈るという考え方は、顧客や従業員へのインセンティブ、キャンペーン景品、表彰などにも応用できます。
温泉旅行やアクティビティ、特別な食体験など、人の記憶に残る時間を提供すれば、「もらって終わり」ではなく「体験を通じた感情」が企業やブランドへの好意につながっていきます。
現場での体験を「物語」として伝えるプロモーション
実際に現場で体験し、そこで感じたことをリアルな言葉や映像で伝えることで、広告以上の説得力と共感を生み出す手法です。
製造現場の見学、地域の魅力発信、スタッフと来場者の対話など、その場でしか生まれない感情や気づきを「物語」としてSNS・動画・記事にすれば、人に届く熱量のあるプロモーションになります。
共感が生まれるリアルな参加型イベントをつくる
人と人が同じ場所・時間を共有し、体験や感情を分かち合う場は、ブランドへの信頼や愛着を育てます。
たとえば親子参加型イベント、地域コミュニティ向けの体験ワークショップ、顧客交流イベントなど、参加者の感情を軸にした企画は、単なるサンプリング以上の価値を生み出します。そこで生まれた共感や声は、自然な口コミやSNS発信として広がっていきます。
まとめ

販売促進は、チラシやキャンペーンを並べることではなく、顧客の心に「このブランドを選びたい」と思わせる理由をつくる活動です。モノの価値だけでは選ばれにくい時代だからこそ、印象に残る体験や共感できる物語をどう届けるかが重要になります。
そのためには、インサイトの理解、体験を支える仕組み、現場と人の力が一体となって動くことが欠かせません。そしてこのような体験価値を軸にした販促を実践するには、専門的なノウハウとリソースが必要です。
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