働き方や価値観が多様化するなか、社員本人だけでなく家族も大切にする福利厚生施策として、家族参加型の社員旅行を導入する企業が増えています。家族と一緒に過ごす時間を持てる魅力がある一方で、経費の扱いや当日の過ごし方など、事前に確認しておきたい点も少なくありません。
本記事では、社員旅行に家族同伴で参加する場合のメリットやデメリット、経費に関する基本的な考え方、成功させるポイントを整理して解説します。家族同伴の社員旅行を検討するときの判断材料として役立つ内容です。

この記事から分かること
- 社員旅行の費用は一定の条件を満たせば福利厚生費として経費に計上できるが、家族分の費用は原則として福利厚生費に含められず、実費負担とするのが一般的である。
- 企業から見た家族同伴には、社員の満足度やエンゲージメントの向上、企業イメージの向上、社員同士の結束強化、人材の定着、採用活動でのアピールといったメリットがある一方、企業負担の範囲によっては総コストの増加につながるほか、場合によっては社員同士の交流の希薄化、運営側の作業負担増といったデメリットもある。
- 社員から見た家族同伴には、費用を抑えた旅行、家族の職場理解、家族と過ごす時間の確保といったメリットがある一方、子ども連れへの配慮、家族のいない社員との不公平感、家族や周囲への気疲れといったデメリットもある。
- 家族同伴が向くかどうかは旅行の目的によって異なり、社員同士の交流やチームビルディングを重視する場合は社員のみの参加が、福利厚生やリフレッシュを重視する場合は家族同伴が適している。
- 家族同伴の社員旅行を成功させるには、家族の範囲や費用の事前明記、社員だけの時間の確保、幅広い世代が楽しめる行き先の選定、単独参加者への配慮、子ども連れへの行程の工夫、専門業者の活用といったポイントを押さえることが欠かせない。
まず社員旅行は経費にできるかの確認

社員旅行の費用は、一定の条件を満たせば福利厚生費として経費に計上できます。主な条件は次のとおりです。
- 旅行の参加者が全従業員のおおむね50%以上であること
- 旅行日程が4泊5日以内など常識的な範囲に収まること
- 会社負担額が社会通念上、高額になりすぎないこと
これらは、社員の慰安を目的とした旅行であることを示すための目安です。一般的には会社負担分については1人あたり10万円程度までが妥当とされますが、明確な金額基準が定められているわけではありません。条件を満たすかどうかは旅行の内容によって変わるため、企画の段階で要件を確認しておくことが大切です。
家族同伴の社員旅行は経費にできる?

一方で、社員旅行に家族が同伴する場合、家族分の費用は原則として福利厚生費には含められません。福利厚生費は従業員のために支出する費用とされるため、家族分を会社が負担すると、その従業員への給与とみなされ、給与課税の対象になる場合があります。家族の旅費は実費負担とする企業が一般的です。
ただし、家族が従業員として勤務している家族経営の会社で慰労を目的とする場合など、状況によっては経費として認められる余地もあります。判断に迷うときは、税理士へ相談したり、所属企業の規定を確認したりしておくと安心です。
社員旅行に家族が同伴する際のパターン

社員旅行に家族が同行するといっても、その形態はさまざまです。参加のしかたを段階的に用意しておくと、社員の家庭事情に合わせて選びやすくなります。
もっとも手厚いのが「全行程家族同伴」で、移動から宿泊、観光まですべてを家族一緒に楽しむスタイルです。家族サービスと社員のリフレッシュを両立できる一方、費用や幹事の手配負担は大きくなります。
「一部だけ同伴」は、宿泊は社員のみ・観光日だけ家族合流など、行程を区切って参加してもらう方法です。負担を抑えつつ家族も楽しめるバランス型といえます。
さらに手軽なのが「懇親会のみ参加」で、食事や交流の場に家族を招き、社員同士の親睦を保ちながら家族にも顔を出してもらう形です。
「フリータイムのみ合流」は、自由行動の時間帯だけ現地で家族と落ち合うスタイル。会社行事としての一体感を損なわず、家族との時間も確保できます。
企業から見た家族同伴のメリット
社員旅行に家族が同行することには、企業側と社員側の双方にさまざまな利点があります。企業から見た主なメリットは次のとおりです。
- 社員の満足度・エンゲージメントが高まる
- 「家族を大切にする会社」として企業イメージが向上する
- 家族ぐるみの交流で社員同士の結束が強まる
- 採用・定着の強化につながる
- 企業ブランディングに役立てられる
それぞれについて解説します。
社員の満足度・エンゲージメントが高まる
家族まで大切にしてくれる会社だという認識は、金銭的な報酬とは異なる強い動機づけになります。家族との時間を重視する社員にとって、家族参加型の社員旅行は職場への愛着を深める機会となり、この会社で長く働き続けたいという気持ちを後押しする要因の一つになります。
「家族を大切にする会社」として企業イメージが向上する
社員だけでなく家族も大切にする姿勢を示すことは、社外への企業イメージや採用活動にも良い影響を与えます。社員の家族が会社に好印象を持てば、働く本人を支える家庭環境が整いやすくなり、結果として企業への信頼や評判の向上にもつながると考えられます。
家族ぐるみの交流で社員同士の結束が強まる
家族を交えて時間を過ごすと、普段あまり話さない社員同士にも共通の話題が生まれます。仕事仲間の家族を知ることで親近感が増し、相手の新たな一面が見えることもあります。家族ぐるみの付き合いは社内の人間関係を円滑にし、チームとしての結束を高める効果が期待できます。
採用・定着の強化につながる
社員はもとより家族も大切にする会社だという認識が広がると、社員の会社への愛着が高まります。家族ぐるみで良好な人間関係が築かれることで人材の定着が進み、離職率の低下が期待できます。
あわせて、家族も参加できる社員旅行は手厚い福利厚生の一例として社外にも示せるため、求職者への訴求材料となり、採用面での強みにもなります。こうした採用と定着の両面から、企業の長期的な組織力の強化につながります。
企業ブランディングに役立てられる
家族も参加できる社員旅行は、社員だけでなくその家族まで大切にする会社であるという姿勢を、社外に示す機会になります。働く環境や家庭への配慮を重視する企業だという印象は、求職者はもちろん、取引先や顧客からの信頼にもつながります。人を大切にする会社というイメージを積み重ねることは、企業のブランド価値を高め、他社との差別化を図るうえでの強みになると考えられます。
企業から見た家族同伴のデメリット

逆に家族同伴は、企業から見ると以下のデメリットもあります。
- 家族の人数分だけ旅行の総コストが増える
- 本来の目的である社員同士の交流が薄れやすい
- 幹事・運営側の手配や調整の負担が増える
- 家族分の費用処理で経理や税務の手間が増える
- 家族の体調不良やトラブルへの対応責任が生じる
それぞれについて順に確認していきましょう。
家族の人数分だけ旅行の総コストが増える
家族が参加すると、その人数分の宿泊費や交通費、食事代などが加算され、旅行全体の費用は大きく膨らみます。仮に多くの社員が家族を同伴すれば、参加者総数は社員のみの場合の数倍に達することもあり、予算が限られる企業にとっては重い経営判断となります。
ただし上記の通り、基本的には家族分の費用は実費負担です。企業負担の範囲によってはコスト増につながるため、事前に費用負担ルールを整理しておくことが重要です。
本来の目的である社員同士の交流が薄れやすい
社員旅行の本来の目的は、社員同士のコミュニケーション促進やチームビルディングにあります。家族が加わると各自が家族と過ごす時間を優先しがちになり、社員同士の交流が薄れてしまう場合があります。目的が家族サービス中心に変わってしまう点には注意が必要です。
幹事・運営側の手配や調整の負担が増える
参加人数が増えるほど、予約や人数把握、当日の移動などの手配は煩雑になります。家族の急なキャンセルといった事態への対応も求められ、幹事の負担は社員だけの旅行より大きくなります。緊急時の連絡先や旅行先の医療機関を把握しておくと、運営側も落ち着いて対応できます。
家族分の費用処理で経理や税務の手間が増える
家族分の旅費を会社が負担すると、その費用は給与として課税される場合があり、経理処理が複雑になります。実費負担との線引きや証憑の管理など、税務上の対応に手間がかかる点は、企業にとって運営上の負担の一つとなります。
ただしこの点についても、初めに解説したとおり基本的に家族分は実費負担となるので該当するケースは少ないでしょう。
家族の体調不良やトラブルへの対応責任が生じる
家族が参加する分、当日の急な体調不良やけが、子どもの見守りなど、想定すべき事態は増えます。緊急時の連絡体制や旅行先の医療機関の把握など、会社側が備える範囲が広がり、運営上の責任やリスク管理の負担が大きくなります。
社員から見た家族同伴のメリット

家族同伴の社員旅行には参加する社員から見ても魅力があります。主なメリットは次のとおりです。
- 普段の家族旅行より費用を抑えて旅行できる
- 社員の家族に仕事・職場への理解を深めてもらえる
- 個人では行きにくい旅行先を体験できる
- 家族と過ごす時間をまとめて確保できる
- 日頃支えてくれる家族へ感謝を伝えられる
それぞれ順に解説します。
普段の家族旅行より費用を抑えて旅行できる
家族分は実費負担とする企業が多いものの、団体としてまとめて手配することで、個人で旅行するよりも費用を抑えられる場合があります。社員にとっては、通常より手頃な負担で家族旅行の機会を得られる点が魅力であり、福利厚生としての満足度の高さにもつながります。
社員の家族に仕事・職場への理解を深めてもらえる
社員旅行に家族が参加すると、本人が日頃どのような職場で働いているかを家族が知る機会になります。同僚や会社の雰囲気に直接触れることで仕事への理解が深まり、家庭からの支えを得やすくなる点も、家族同伴の社員旅行ならではの利点だといえます。
個人では行きにくい旅行先を体験できる
企業の社員旅行では、個人ではなかなか訪れにくい遠方の観光地や、団体向けに用意された体験プランを楽しめる場合があります。普段の家族旅行とは異なる行き先や内容に触れられることは、社員と家族の双方にとって印象に残る体験となります。
家族と過ごす時間をまとめて確保できる
繁忙期の残業や休日出勤が続くと、家族と過ごす時間を十分に取れないと感じる社員は少なくありません。社員旅行に家族を同伴できれば、まとまった休みを別に用意しなくても、旅行の機会をそのまま家族との時間に充てられます。日程や行き先の手配を会社が担う分、社員は計画の手間なく家族旅行を実現でき、仕事と家庭の両立を図りたい社員にとって満足度の高い福利厚生となります。
日頃支えてくれる家族へ感謝を伝えられる
社員が働き続けられるのは、日頃の家族の支えがあってこそだといえます。社員旅行に家族を招くことは、その支えに対して感謝を示す場になります。あわせて、家族が本人の職場の雰囲気や仕事仲間に直接触れることで、普段どのような環境で働いているかへの理解が深まります。互いの立場を思いやるきっかけとなり、家庭での支え合いをより確かなものにする効果が期待できます。
社員から見た家族同伴のデメリット

逆に、デメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 子ども連れなど参加者への配慮・トラブル対策が必要
- 子どもの体調や行動に気を配る必要がある
- 家族のいない社員との間で不公平感が生じやすい
- 家族にも周囲にも気を遣い気疲れしやすい
- 仕事と私生活の境目があいまいになりやすい
それぞれ順に解説します。
子ども連れなど参加者への配慮・トラブル対策が必要
家族同伴では、子どもから高齢の家族まで年齢や体力の異なる参加者が集まります。社員は自分の家族がトラブルの原因にならないよう注意する必要があります。可能であれば、行程に余裕を持たせる、バリアフリーに対応した施設を選ぶ、緊急時の連絡体制を整えるなど、幅広い参加者を想定した運営面の備えがトラブルの防止につながります。
子どもの体調や行動に気を配る必要がある
小さな子どもを連れて参加する場合、長時間の移動や慣れない環境で体調を崩したりぐずったりすることがあります。周囲に迷惑をかけないか気がかりになり、社員が旅行を十分に楽しめない要因となることもあります。
家族のいない社員との間で不公平感が生じやすい
家族同伴を前提にすると、独身の社員や家族が参加しない社員が疎外感を抱く場合があります。家族の有無で待遇に差があると受け止められないよう、参加は任意とする、社員単独でも楽しめる内容を用意するなど、全員が納得できる配慮が求められます。
家族にも周囲にも気を遣い気疲れしやすい
社員旅行に家族が加わると、社員は家族にも同僚にも気を配ることになります。周囲も互いの家族に気を遣うため、双方が疲れてしまう場合があります。家族ぐるみで付き合える雰囲気があるかどうかが、楽しめるかどうかの分かれ目となるでしょう。
仕事と私生活の境目があいまいになりやすい
会社行事に家族が加わることで、仕事と私生活の区別がつきにくくなる場合があります。休日を家族との時間に充てたい社員にとっては、プライベートを削る形になり、参加への心理的な負担を感じることもあります。
家族同伴の可否を判断する基準
家族同伴が向くかどうかは、社員旅行の目的によって変わります。目的があいまいなまま家族同伴を決めてしまうと、期待した効果が得られないこともあるため、まずは何のために旅行を実施するのかを整理することが大切です。目的は大きく次の2つに分けられます。
- 社員同士の交流やチームビルディングを重視する場合
- 福利厚生やリフレッシュを重視する場合
社員同士の交流やチームビルディングを重視する場合は、社員が互いに向き合える環境づくりが欠かせません。家族が加わると各自が家族と過ごす時間を優先しがちになり、社員同士の関わりが薄れる可能性があります。この目的では、原則として社員のみの参加とするか、家族の参加場面を一部に限定する形が向いています。
一方、福利厚生やリフレッシュを重視する場合は、社員が家族とともに過ごす時間そのものに価値があります。家族への感謝を示し、働く環境への満足度を高める機会として、家族同伴は有効に働きます。
このように、目的に応じて適した形は異なるため、目的を明確にしたうえで可否を判断することが、家族同伴の社員旅行を成功させる第一歩となります。
家族同伴の社員旅行を成功させるポイント

家族同伴の社員旅行を満足度の高いものにするには、事前の準備と参加者への配慮が欠かせません。成功につなげるための主なポイントは次のとおりです。
- 参加要項で家族の範囲や費用を事前に明記する
- スケジュールに社員だけの時間を組み込む
- 幅広い世代が楽しめる行き先を選ぶ
- 1人で参加する社員も満足できる内容を組み込む
- 子ども連れでも無理のない行程に配慮する
- 参加者の意見をもとにPDCAを回す
- 旅行会社など専門業者のサポートを活用する
1つずつ解説します。
参加要項で家族の範囲や費用を事前に明記する
参加できる家族の範囲や人数、日程、費用負担の有無を参加要項として事前に示しておくと、社員も参加を判断しやすくなります。家族分が実費となる場合は早めに周知し、認識のずれを防いでおくことが望まれます。
スケジュールに社員だけの時間を組み込む
家族同伴の旅行でも、会議や食事会など社員だけで過ごす時間を一部に組み込むと、社員同士の交流とチームビルディングの機会を確保できます。家族との時間と両立させることで、双方の目的を満たしやすくなります。
幅広い世代が楽しめる行き先を選ぶ
東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど、幅広い世代が楽しめる行き先を選ぶと、家族連れも参加しやすくなります。子ども向けに偏りすぎて高年齢層が楽しめないといった事態を避ける視点も重要です。
なおユニバーサル・スタジオ・ジャパンの社員旅行のイメージについては以下をご参照ください。
従業員の心を掴み、組織を強くする。「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのパーク貸切プラン」が拓く、新たな企業イベントの形
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが生み出す、記憶に残る体験~従業員のエンゲージメントを高める、非日常型イベントという選択~
1人で参加する社員も満足できる内容を組み込む
家族のいない社員や単独で参加する社員が疎外感を抱かないよう、全員で楽しめる企画を取り入れることが大切です。誰もが交流に加われる内容にすると、参加者全員の満足度を高められます。
子ども連れでも無理のない行程に配慮する
小さな子どもが同伴する場合、大人向けの行程に合わせると負担が大きくなります。移動時間を短くする、行程に余裕を持たせる、滞在型にするなど、子ども連れでも無理なく過ごせる工夫を取り入れると安心です。
参加者の意見をもとにPDCAを回す
旅行終了後、参加者の意見を集めて次回の企画や運用に活かすことが大切です。社員旅行もPDCAを回すと満足度を高めていくことが可能です。アンケートを集計して改善点がないか、次回も継続すべきよかった点はどこか確認しましょう。
JTBでは、効果測定と分析、改善案を導き出すのに役立つPDCAに役立つアンケートサービスも提供しています。ぜひご活用ください。
旅行会社など専門業者のサポートを活用する
参加人数が増えるほど手配や調整は煩雑になります。専門知識を持つ外部のサポートにより、幹事の負担を抑えながら円滑に運営でき、緊急時の対応にも余裕が生まれます。
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まとめ

社員旅行に家族が同行することは、社員の満足度向上や社員同士の結束強化など多くのメリットをもたらします。一方で、費用の増加や運営の負担、家族のいない社員への配慮といった注意点もあります。家族分の費用は原則として福利厚生費に含められないため、経費の扱いを事前に確認しておくことも大切です。
家族同伴の社員旅行は、企画の段階で経費の扱いや行き先選び、参加者への配慮など、検討すべき点が多くあります。JTBの法人向けサービスでは、職場旅行(社員旅行)の企画から手配、当日の運営までを一貫してサポートしています。健康への意識を深めたりその土地ならではの体験を通じて気づきが得られたりするなど、同伴する家族にも学びとなるようなプログラムもご用意。族同伴ならではの調整についても相談できます。社員と家族の双方が満足できる社員旅行を実現したい企業のご担当者様は、まずはお気軽にお問い合わせください。
