広告会社 博報堂のクリエイティブエージェンシー「博報堂ケトル」様。創業時から一貫して大切にしているコンセプトが「手口ニュートラル」というものです。「既存の広告手法に捉われず、ベストな課題解決の手口をニュートラルに考えて実行する」という意味だそうです。これは経営陣が次の世代に引き継がれても変わらない会社の根幹をなすフィロソフィー。これを言葉で教えたり伝承していくことはちょっと難しい。そこで、毎年「手口ニュートラル」を学ぶための体験の場が必要だと考えていらっしゃいます。それがケトル合宿です。
- 背景
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博報堂ケトル様では、設立時から年に1回、社員全員(ケトラー)で合宿をしています。このケトル合宿の幹事は担当制で、毎年幹事を任されたケトラーが1年かけて企画します。合宿のテーマ、旅行中の具体的なプログラム、旅行前・旅行後の仕掛けなど合宿のすべてをメンバーで徹底的に議論し決めていらっしゃいます。ケトル合宿の特徴は、一般的な会社研修や合宿とは全く異なり、合宿中は仕事の話をまったくしないこと。普段、職場では考えないこと、触れない情報、やったことのないことを体験することで良質なインプットを一気に得ることが最大の目的です。
- 課題
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- 合宿の位置づけは変えないものの、これまでとは真逆の合宿にすること
- 参加者に「手口ニュートラル」を考えてもらうための地元に根差したプログラムの開発
(協力先との交渉・手配など)
- 実施内容
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もうすぐ14周年を迎え、会社の規模も大きくなり社員も40名以上に。ちょうど学校でいう“ひとクラス”の人数だったことから、コンセプトを「ケトル学級」に。沖縄の大宜味村の廃校を舞台に、日々の業務の糧とすべく様々な先生に授業をしてもらいました。役職や年齢に関係なく「社員全員が同級生」。おそろいのジャージを着て、合間に仕事する時間も設けず2泊3日全員で昼も夜も学校で過ごしました。
授業プログラム
- うちなーぐち(沖縄方言)講座
- もーあしびー(=毛遊び)
- 三線講座
- 古くから伝わる琉球怪談を学ぶ
- 空手のルーツ「琉球空手」をガチレッスン
- 長寿になれる料理実習
- フェイクニュースを学ぶ by 沖縄タイムスさん
- ウコン畑でウコン掘り
- 泡盛講座
- 沖縄SV チーム運営に学ぶ手口ニュートラル by サッカー元日本代表高原氏(選手兼監督兼CEO)
- プログラム紹介
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実際行ったプログラムをいくつか紹介します。
01空手のルーツ「琉球空手」の護身術を学ぶ
琉球空手の実技には、全員がとても真剣に取り組んでいらっしゃいました。座学のみならず、体を動かす実技を入れられたことがプログラムの充実度を高めました。今まで知らなかったメンバーの意外な一面が随所で見れたようです。
02沖縄の長寿食を作り、食べる
沖縄と大宜味の食文化や長寿の秘訣についての講演は、参加者全員非常に興味深く聞いていらっしゃいました。講演の後は実際に沖縄の長寿食であるゴーヤーチャンプルーやジューシー、アーサ汁などを作っていただきました。
03沖縄SV高原氏から「手口ニュートラルを学ぶ」
サッカーチーム沖縄SVは、サッカー元日本代表 高原直泰氏が立ち上げたチーム。ゼロからチームを立ち上げ、さらにコーヒーや伝統工芸品など地元密着のスタートアップにも挑戦。そんな高原氏をスペシャルゲストとしてお迎えしました。講演は大盛況のうちに終了。ケトラーの皆様が目を輝かせながら耳を傾け、次々と質問をしていたのが非常に印象的でした。
- 導入効果
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小学校という環境とロケーションにより、これまでにない「滞在型の合宿」を実現。沖縄らしさ溢れるプログラムからは一見すると仕事とは関係のないこと、でもどこかで役に立つ、仕事にも繋がる学びがあったようです。時間を追うごとに参加者(ケトラー)の皆さんが、コンセプトである「手口ニュートラルの再定義」に没頭していらっしゃるのが印象的でした。参加者からも「おそろいのジャージのおかげで、会社にいる時とはまた違う関係性で話すことができた」や「研修中の立場をフラットにすることで、科目別に生まれた下克上もまた楽しかった」「夜の体育館でお酒を飲む人、バスケやサッカーをする人がいて、街中の研修とは違う体験ができた」などの声があがりました。
- おすすめポイント
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最近の社員旅行と言えば、「到着日の夜に宴会をして、次の日はチームビルディングや周辺観光」といったどちらかというと福利厚生の意味合いが強いものが多いようです。しかし、自分たちにとって大切な企業理念や行動指針を楽しく学ぶ・考えるといったことも社員旅行では可能です。働き方改革が一層加速していくこれからの時代。“あえてみんなで旅に出る”価値は、こういうところにあるのかもしれません。貴社でも検討してみてはいかがでしょうか?
幹事様とともに文字通りゼロから創りあげていく合宿ですが、期待通り、またはそれを超える参加者の反応を得られた時の喜びはひとしおでした。私どもは、幹事様の合宿づくりをサポートさせていただく立場に過ぎませんが、小学校の一棟借りをはじめとした、合宿先の地域の方々を巻き込んでの調整や仕掛けづくりからは、同時に多くの学びを得させていただいています。これからも、より高価値な場面の実現を胸に、お客様のお役に立ち続けたいと思います。